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最終更新日:2010.02.22

心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)

ventricular septal defect (VSD)

執筆者: 磯松 幸尚 益田 宗孝

概要

概要・病因


 全先天性心疾患の15-20%を占め,最も高頻度である.1000出生時のうち1.5-2.0人とされる.心室中隔の何れの部位にも生じうるので,欠損孔の部位により分類されるが種々の分類がある.近年広く使われている分類(Anderson分類)では膜性周囲部欠損,筋性部欠損,大血管下漏斗部欠損,の3種類に分類される.また前2者は欠損孔の伸展する部位により,心室流入部型,肉柱部型,心室流出路型,の3亜型に小分類される(例えば,膜性周囲部欠損・心室流入部型,のように表記される)

病態生理

 右室と左室を隔てる心室中隔の一部に欠損孔があるために,通常左右短絡がある(図2A).小ないし中欠損例では自然閉鎖がありうる.大欠損例では肺高血圧を併発して乳児期に発症し,進行すると肺合併症から死亡する可能性がある.出生後生理的に肺血管抵抗が高い時期には(欠損孔の大きさにかかわらず)短絡量は少ない.

図2A

臨床症状

 大欠損では,肺血管抵抗が低下するのに伴って左右短絡量が増え肺血流量が増加する(左室容量負荷).このために肺うっ血を来し,多呼吸・呼吸障害がみられる.肺血流量が著明に増加すると肺高血圧の状態となり,哺乳障害を起こすので体重増加不良が認められるようになる.
 小欠損では左右短絡量が少ないので,心雑音はあるが,臨床的には無症状であることが多い.大血管下漏斗部欠損はアジア人に多く,大動脈弁右冠尖の逸脱(右冠尖が変形して欠損孔にはまり込む)を起こしやすく,その結果大動脈弁閉鎖不全を来すことが多い.

検査成績

1.経胸壁心エコー検査が必須である.心室中隔欠損分類の内何れの分類か,さらに3亜型の内どれに該当するか,を診断する.肺体血流比・推定右室収縮期圧等も算出可能である.また合併症の検索として,心房中隔欠損,動脈管開存,僧帽弁の異常の有無(検索の付着・乳頭筋の位置と数・弁の形態・裂隙の有無),肺動脈弁狭窄などを診断する.

2.心臓カテーテル検査では肺体血流比・左右短絡率の算出,肺動脈圧の測定,肺血管抵抗の評価が重要である.特に肺動脈圧が大動脈圧の75%以上の時,高度肺高血圧とされる.この高度肺高血圧には,短絡量が多いことに起因する高肺血流型肺高血圧と,肺血管抵抗が高く短絡量は少ない高肺血管抵抗型肺高血圧とがある.後者が進行した病態がアイゼンメンジャー症候群であり,手術適応から外れる.

治療

 外科的治療が行われる.人工心肺を用いた体外循環下に心停止として,欠損孔をパッチを用いて閉鎖する.パッチの材質は世界的にゴアテックスが使用されている.
 1歳未満の乳児期の手術(膜性周囲部欠損に肺高血圧を合併している場合,乳児期手術が殆どである)に於いて通常は困難とされる無輸血手術(他家血を使用しない手術)や,手術創をなるべく小さくする小切開手術を積極的に採用する施設もある.

図2B

予後

 心室中隔欠損症単独例における手術成績は,日本胸部外科学会の調査によると2001-2005年において0.5から1.1%の術後病院死亡率(理由の如何を問わず同症に対する手術後に死亡した場合)が報告されている.

執筆者による主な図書

1) 安井久喬 監修,角秀秋・益田宗孝 編:先天性心疾患手術書,Medical View
 
2) 高本眞一 監修,角秀秋 編:
小児心臓外科の要点と盲点 (心臓外科Knack & Pitfalls),文光堂
 
3) 新井達太 編:心臓外科,医学書院
 
4) 門間和夫 編:ガイドラインに基づく成人先天性心疾患の臨床,中外医学社
 
5) 岡田昌義 監修,松田暉・藤原巍・安倍十三夫・今村洋二・北村信夫 編:心臓血管外科の最前線,先端医療技術研究所
 
6) 四津良平 監修:心臓血管外科テクニック,メディカ出版
 
7) 矢崎義雄・島田和幸・井上博・永井良三 編:別冊・医学のあゆみ 循環器疾患,医歯薬出版
 
8) Yasui H, Kado H. Masuda M, ed:Cardiovascular Surgery for Congenital Heart disease,Springer

執筆者による推薦図書

1) 龍野勝彦・重松宏・幕内晴朗・四津良平・安達秀雄 編:心臓血管外科テキスト,中外医学社
 
2) 川島康生 編:心臓血管外科,朝倉書店
 
3) 小柳仁・黒澤博身 編:心臓血管外科手術のための解剖学,Medical View

4) Stark J, de Leval M, ed.:Surgery for congenital heart defects,Saunders
 
5) Kirklin JW, Barratt-Boyes BG, ed.:Cardiac Surgery』 Churchill Livingstone

(MyMedより)その他推薦図書

1) 高橋長裕 著:図解 先天性心疾患―血行動態の理解と外科治療,医学書院 第2版 2007

2) 中澤誠 編集:先天性心疾患 (新目でみる循環器病シリーズ),メジカルビュー社 2005

3) 坂本喜三郎 監修,四津良平 総監修:心臓血管外科テクニック4 先天性心疾患編 DVD付 (DVD Book CIRCULATION VISUAL BEST),メディカ出版 2009

4) 門間和夫 著:こどもの心臓病 (お母さんシリーズ (4)),日本小児医事出版社 改訂第7版 1999

5) 菅野敦・橋本創一・玉井邦夫 編集,池田由紀江 監修:ダウン症ハンドブック,日本文化科学社 2005

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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