喉頭・気管軟化症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.26

喉頭・気管軟化症(こうとう・きかんなんかしょう)

執筆者: 池袋 賢一

概要

 喉頭や気管などの気道が必要な剛性に欠けるために呼吸困難をきたす状態を気道軟化症と言い、病変の部位によって喉頭軟化症、気管軟化症、気管支軟化症などと分類する。

病因

 気道は呼吸の際にそれ自身は形のない空気の通り道となるため、フレームを維持するために軟骨が各所に存在している。気管気管支では馬蹄形の気管軟骨が膜様部とともに管腔を作り、適度な剛性を維持して胸郭や気管内腔の圧変化により内腔がひしゃげないようにしている。

【注釈1】

 この、備えるべき適度な剛性が未熟な状態が気道軟化症の病因で、その多くは先天性といえる。
 喉頭軟化症も先天的であるが、気管気管支軟化症とは異なり、基礎疾患がなく、明らかな原因が不明の例が多い。

病態生理

 胸郭内の気管気管支については、吸気時には胸郭内の陰圧より気管内の圧のほうが高く、気管内腔を広げる方向に力がかかるが、呼気時にはこの圧差が逆転し、気管を圧迫することになるため、気管は自らの剛性でこの圧迫に抵抗して内腔を維持しなければならない。このためには、気管軟骨が適度な剛性を持っていることに加えて、気管膜様部が過剰に広くないことも必要である。これらの性質が十分でなく、呼吸困難をきたした状態が気管気管支軟化症である。気管が本来持つべき剛性持っていないという点では軟化症というより脆弱症というべきと考える。

 一方、胸郭外に存在する喉頭については胸郭内の圧を受けてひしゃげることはないが、吸気時の気道内腔の陰圧に対して内腔を保持できなければならない。また、空気の入り口である喉頭の声門裂には周囲に喉頭蓋や小角結節などの構造があり、これらの剛性が不足している場合も、これらが吸気時に声門裂に吸い込まれ、吸気性の呼吸困難を生じる。

臨床症状

 気管気管支軟化症の場合は呼気時の喘鳴を伴う呼吸困難を認める。一方、喉頭軟化症の場合は頸部で強く聞かれる吸気時の喘鳴であり、多くは出生直後には症状に乏しく、生後1-2週間で増強してくることが多い。

検査成績

 気管気管支軟化症の胸部単純X線写真では肺は過膨張であることが多いが、基礎疾患の状況、軟化症の重症度や撮影された呼吸の相により一定の傾向を示さないことも多い。喉頭軟化症では胸部単純X線写真に所見はない。

診断・鑑別診断

 気管気管支軟化症についてはファイバースコープまたは硬性気管支鏡による気管気管支鏡検査で気道の脆弱性を確認する必要がある。しかし、自発呼吸や調節呼吸下でのダイナミックな気管内と胸郭内の圧変化を把握しつつ気管の形態を評価しなければならないため、定量的な評価は容易ではない。典型例では前後に扁平な気管内腔や過剰に幅広い膜様部を認める。自発呼吸下に気管内腔を観察できれば呼気時の偏平化を観察できるが、どのような原因でも呼吸困難があれば必ず努力呼吸があり、それにより胸郭内の圧変化の振幅は大きくなるので、それによる過大な気管の形態変化との鑑別、所見に対する気管軟化症の影響度の判定は容易ではない。一般的に、全身麻酔下、自発呼吸下の気管支鏡で気管内腔を観察した時に、呼気時に気管膜様部が気管前壁に接する場合は明らかな気管軟化症と言える。

【注釈2】

 また、咳反射の際など強い呼気の時に気管膜様部が気管前壁に接する場合は気管軟化症を疑う。主肺動脈による圧排が関与する左気管支軟化症の場合は、全身麻酔下の調節呼吸下で、気管支の前後壁が接していることが少なくない。


【注釈3】

 喉頭軟化症の場合は、多くは新生児期に吸気性喘鳴で受診するので、外来で喉頭ファイバースコープを行い、吸気時の喘鳴と吸気時の喉頭の変形が一致することを確認できれば確定診断としてよい。変形として喉頭の左右方向の扁平化、または、喉頭蓋や披裂喉頭蓋ヒダ~小角結節の声門裂への引き込まれなどが観察される。


【注釈4】

 鑑別診断として喉頭嚢腫、声帯麻痺を見逃さないようにする。

治療

 気管気管支軟化症に対しては気道壁の脆弱性を治療する根本的な治療法はない。治療法は、結果としての呼吸困難の程度によってさまざまで、気管内挿管を要しない程度であれば経過を観察して患児の成長を待つことで症状の改善が期待できる。内腔から気管壁を保持しようとする内ステント留置術、気管外から気管壁を保持しようとする外ステント縫着術が行われたこともあったが、気管内肉芽形成や、患児の成長に追従できるかどうかなど問題が多く、主流といえる手段とはなってない。食道閉鎖症に合併した気管軟化症のように、病変が気管に限られる場合は大動脈つり上げ固定術が行われる場合もある。たびたび気管内挿管を必要とする場合や、気管内挿管の後に抜管ができなければ気管切開により管理しなくてはならないが、管腔を通る気体の通りやすさは、管腔の内径の4乗に比例するため、患児の成長により少しでも気管内腔の拡大が得られれば症状は大きく改善される。また、気管の脆弱性も、幼児期には改善することが期待できるので、いずれは気管切開からの離脱が期待できる。気管切開のまま経過観察できるならば、患児の成長による自然な改善を待ったほうがよいと考える。

 喉頭軟化症に対しては、喉頭ファイバースコープでの診断が得られていて、経口哺乳による体重増加が十分あるならばそのまま経過を観察する。呼吸困難により哺乳が十分でなく体重増加が得られないなら入院の上で経管栄養を行う。SpOsub2/subの低下を頻発するなら手術室で呼吸管理下での喉頭ファイバースコープに加えて気管気管支の精査をしたほうがよい。

予後

 気管気管支軟化症では成長による気管内腔の拡大、気管壁の脆弱性の改善により、気管気管支軟化症自体は自然に改善するものと考える。経過中の基礎疾患の状況や、気管切開など気道管理に関連する合併症などで患児の予後は大きく左右されるので、経過観察して成長を待機する場合も慎重な気道管理が必要となる。

 喉頭軟化症では6か月から1歳までに自然に寛解し、吸気性喘鳴が消失することが多い。

最近の動向

 喉頭軟化症で吸気時に小角結節や披裂喉頭蓋ヒダが声門裂に引き込まれる所見のみの場合は、これらの構造をLASERで焼灼することで症状を速やかに改善させることができる。

注釈

【注釈1】

 正常気管、気管分岐部の内腔 左が正常の気管内腔で、馬蹄形の気管軟骨と呼気終末のため内腔に盛り上がっている膜様部が観察できる。右は正常の気管分岐部で、左右の主気管支はよく開いている。

【注釈2】

 気管軟化症の気管支鏡像。左が吸気時で右が呼気時。全体に前後に偏平な気管で、膜様部も過剰に広い。呼気時には膜様部が気管前壁に接してしまう。

【注釈3】

 左気管支軟化症の気管支鏡像。左の主気管支の入り口は前後壁が接していて閉塞しているかのように見える

【注釈4】

 喉頭軟化症の気管支鏡像。喉頭蓋をよけて声門裂を正面から観察したところ。左が呼気時で右が吸気時。吸気時に披裂喉頭蓋ヒダから小角結節が声門裂に吸い込まれ、この相で喘鳴を聞く

(MyMedより)推薦図書

1) 青山和義 著:必ずうまくいく!気管挿管 第2版―カラー写真とイラストでわかる手技とコツ ,羊土社 2009

2) 樫山鉄矢・山本むつみ 著:ナースのためのやさしくわかる人工呼吸ケア ,ナツメ社 2007

3) 川瀬昌宏 著:臨床医のための小児診療ハンドブック,日経メディカル開発 2008
 

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