サイトメガロウイルス感染症 - MyMed 医療電子教科書

MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2010.11.12

サイトメガロウイルス感染症(さいとめがろういるすかんせんしょう)

Cytomegalovirus:CMV

執筆者: 垣内 五月

概要

 サイトメガロウィルス(CMV)はヘルペス群第5番目のDNAウイルスである。ウイルスゲノムは240kb、直径200nmであり、20面体ウイルスカプシド内に64nmのウイルスコアがある。ウイルスカプシドの周囲に不定形な外壁、その外側に脂質を含有したエンベロープが存在する。ヒト繊維芽細胞に成育し、細胞間感染の際にはHLA classI抗原をレセプターとする。

 人類に広く分布しほとんどのCMV感染症は不顕性である。健常人でも初感染に際して伝染性単核球様の症状を呈する場合がある。主に臨床的に問題となるのは先天感染および免疫不全患者での日和見感染症である。

病態生理

 巨細胞はCMV感染の病理学的特徴であり、巨大化した上皮または実質細胞で核内に大きな封入体があり、細胞質内にもそれよりすこし小さな封入体がある。臓器に単核球浸潤が起きる場合もあるが、巨細胞を伴う場合もそうでない場合もある。脳や肝臓に巣状の壊死がみられる場合もあり、石灰化や顆粒状変化も伴う。肺、肝臓、腎臓、消化管、唾液腺、その他外分泌腺などに病変が見られやすい。感染臓器の病変の重症度やウイルス量は、巨細胞封入体細胞の数とは直接は関連しない。

診断・鑑別診断

細胞培養 

 シェルバイアルアッセイ:
培養細胞に検体を摂取し感染させ、感染細で産生された抗原をモノクローナル抗体で検出する
CMVアンチゲネミア:白血球核内の初期抗原をモノクローナル抗体で染色する
PCR、DNAハイブリダイゼーションなど分子生物学的手法

血清抗体価の測定

 補体結合法(CF)、中和反応、間接蛍光抗体(IFA)などが定量的 
RIA(radioimmunoassay)やELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)の信頼度はやや劣る

 CMV-IgM抗体:初感染の指標 再感染でもまれに出現する(0.1~2%)
CMV-IgG抗体:過去の感染または現在の感染(間隔を置いて4倍以上の上昇があれば現在の感染、但し初感染か再感染かは不明)

免疫不全患者

 再感染でもIgM抗体が上昇するなど、初感染と再感染の鑑別は難しい。ウイルス血症が証明されたり血液からCMVDNAが検出される場合は感染が活動性であることが示唆され、重篤である。

先天感染

 先天性CMV感染の確定診断は生直後から3週間以内の尿や唾液のウイルス分離またはPCRによる。母体からの移行があるので、血清IgG抗体は陽性でも感染とは限らないが、陰性なら先天感染は可能性が低い。IgM抗体は上昇があれば、先天性CMV感染を示唆するが、陰性でも否定できない。

 羊水からCMVが分離されたら、胎児の先天感染を診断できるが、されなくても否定はできない。感染が証明できても、児が症候性かどうかはわからない。

治療

免疫能正常な場合

 経過はself-limitingで対症療法のみでよい。

免疫不全患者の場合

 a抗ウイルス剤:
ガンシクロビル(GCV): CMVのDNAポリメラーゼを抑制する。
副作用は、好中球減少・血小板減少・肝機能異常・造精能低下・胃腸症状・腎機能異常など、
頻度が高く重症なものが多い。
ホスカネット: 小児での使用経験がほとんどない。
シドホビル: 本邦では未承認・未認可である。
 b静注用ガンマグロブリン(IVIG)またはCMV高力価IVIG

先天性感染の治療

 GCV投与にて聴力改善が期待できるとの報告があるがまだ確立されたプロトコールはない。

予後

免疫正常な場合

 サイトメガロウイルスによる単核球症の患者はたいてい後遺症なく回復する。まれに免疫異常をきたし、発熱・肝機能異常・発疹が遷延する例もある。

免疫不全患者の場合

 適切な治療により回復可能であるが、間質性肺炎によって低酸素血症を来たす場合予後不良である。AIDS患者ではCMV感染は重症化しターミナルイベントとなる場合もある。

先天性感染

 巨細胞封入体症の児では90%以上の児で精神運動発達遅滞や聴力障害を来たす。
無症候性先天感染では、5~10%に感音性難聴、3~5%に脈絡網膜炎が見られる。発達異常・小頭症・発達遅滞などが低い頻度ながら見られる。

感染経路

 CMVは最もありふれた先天感染症のひとつであり、人類に広く分布している。CMVの抗体保有率は国ごとによって異なり、その中でも年齢層、社会的階層によっても異なる。一般に発展途上国ほど、低所得層ほど、高年齢層ほど高い傾向にある。

 CMVは感染既往者の唾液、尿、便、母乳、精液、膣分泌物、涙液に存在し、また血液・各種臓器にも潜伏している。通常の単回接触では感染しないが、濃厚な接触や繰り返しの接で感染する確率は高まる。

 先天感染は子宮内胎児への経胎盤的ウイルス移行による。妊娠中の母体初感染では、40%程度と高率に児に先天感染がおきるとされる。一方、母体再感染の場合は母体の抗体が保護的に働き先天感染の可能性は1%未満である。

 生後6ヶ月未満の初感染は、産道感染および母乳を介した感染が原因と考えられている。1歳以降、集団保育などを通じて子供同士で感染が広がり、幼児期のうちに感染率は過半数に上昇する。青年期は感染率が性行為を介して感染が広がり、この期間年間10~20%の率で感染率が上昇していく。

 院内感染は輸血によるものがほとんどである。輸血による感染は免疫能が正常なら通常不顕性だが、繰り返しの輸血によりウイルス量が増大すると顕性感染となることもある。免疫不全状態の患者では輸血による感染が顕性感染となる確率は10~30%とされている。臓器移植後の感染には移植された臓器に潜在していたウイルスが増殖する場合と、レシピエントにもともと潜伏していたものが免疫抑制剤により再活性化する場合とがある。抗体を保有しない患者に抗体陽性の患者から臓器が移植される場合、間質性肺炎の発症のリスクがもっとも高い。骨髄移植におけるCMV病ではレシピエントのCMVの再活性化が第一の原因である。

 未熟児では、輸血やもらい母乳によるCMV感染で先天感染様の重篤な症状が報告されている。

臨床像

正常免疫宿主

 CMV感染はほとんどの場合不顕性である。顕性である場合、臨床像は年齢、感染経路、免疫状態などにより異なる。幼少な小児では初感染のCMVは肺炎・肝炎・点状出血をおこすことがある。年長の小児や思春期や成人では単核球症様となり、倦怠感・悪心・筋肉痛・頭痛・発熱・肝脾腫・肝機能異常・異型リンパ球症などの症状がみられる。CMVによる単核球症の経過は通常おだやかで2,3週間で終息する。時に発熱が遷延し重篤な肝機能障害や発疹を呈する場合がある。免疫正常な場合、再感染は不顕性のことが多い。

免疫不全宿主

 再感染・初感染とも顕性化しやすい。初感染の症状では肺炎が最も多く、その他肝炎、胃腸炎、白血球減少を伴う発熱などがあり、しばしば致命的となる。骨髄移植患者やAIDS患者は罹患しやすく、肺臓炎、脈絡網膜炎、中枢神経症状、胃腸症状がみられる。消化管においては粘膜下潰瘍から出血や穿孔を来たす。膵炎や胆嚢炎も報告がある。

先天感染

 先天性CMV感染症のうち巨細胞封入体症は約5%で、軽い症状が見られるものが5%であり、残り90%は不顕性である。典型的な巨細胞封入体症例ではIUGR、肝脾腫、黄疸、血小板減少、紫斑、小頭症、頭蓋内石灰化などが見られる。その他脈絡網膜炎、感音性難聴、髄液タンパク軽度上昇などがある。症候性の新生児は一目で明らかなことが多く、母体は初感染であることが多い。無症候性でも感音性難聴がおよそ7%に見られるといわれている。

周産期感染

 分娩時の産道感染や母乳経由での感染は、母体からの受動抗体がある場合でも起こりうる。抗体陽性の母のうちおよそ6~12%から頚管膣粘液経由で児にウイルスが移行し、母乳経由では50%で移行がある。児のほとんどは無症候性であるが、時に肺炎をきたすことがある。未熟児や病的成熟児では神経症候や精神運動発達遅延が起きることがあるが、難聴・脈絡網膜炎・小頭症とはならないとされる。

 抗体陰性の極小未熟児では輸血によるCMV感染のうち40%に肝脾腫、肺炎、黄疸、点状出血、血小板減少、異型リンパ球症、溶血性貧血をみるリスクがある。

予防

輸血時の予防

 とくに未熟児への輸血においてはCMV陰性の血液製剤を用いる。白血球フィルターは予防的な効果がある。移植においてはなるだけCMV陰性のドナーからの提供臓器が望ましい。やむをえない場合は予防的な抗ウイルス剤の投与を行う。

先天感染の予防

 妊婦は抗体検査を受けることが薦められる。抗体陽性な場合は児に重篤な先天感染が起きる可能性は低いが、陰性の妊婦では妊娠中に初感染を起こさない注意が必要である。特に幼少な子供がいる場合は、CMVウイルスを排泄し、妊婦である母親に移す可能性があるので注意が必要である。妊婦は手洗いや消毒をこころがけ、特に経口の接触を避けるべきである。

受動免疫

 臓器移植や骨髄移植におけるIVIGやCMV高力価IVIGの感染予防目的の使用は、重症な症候を予防するものの、感染そのものは減少させない。予防投与は骨髄移植など、初感染により重度な疾患が起きると考えられる場合に有効である。確立された投与プロトコールはない。

能動免疫

 現在本邦で利用可能なCMVワクチンはない。


参考文献

1) Stango S : Cytomegalovirus. Textbook of Pediatrics 16th ed , W.B. Saunders Company ,Philadelphia,pp981-984 ,2000

2) Freiz BJ , Sever JL : Cytomegalovirus Infections. Neonatology 6th ed , Lippincott Williams and Wilkins , Philadelphia , pp1291-1296 , 2006

3) Stango S , Britt W : Cytomegalovirus Infections. Infectious disease of the newborn 6th ed , Elsevier , Philadelphia , pp739-781 , 2006

4) 大石勉 : サイトメガロウイルス感染症. 小児内科第35巻増刊号:985-991 , 2002

(MyMedより)推薦図書

1) 高橋公太 編集:臓器移植におけるサイトメガロウイルス感染症,日本医学館 1997

2) 砂川慶介、尾内一信 編著:小児感染症治療ハンドブック,診断と治療社 2008

3) 岡部信彦 編集:小児感染症学,診断と治療社 2007
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷

診療科別


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: