大腸血管形成異常 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.10.28

大腸血管形成異常(だいちょうけっかんけいせいいじょう)

angiodysplasia of colon

執筆者: 緒方 裕

概要

 下部消化管出血の原因として、血管の病変に基づく血管形成異常がある。この血管病変の中でも大腸血管形成異常(angiodysplasia) は、1960年Margulisら[1]が血管造影によって描出されるarteriovenous malformationとして報告した疾患概念である。その後、1972年にBartelheimerら[2]によりhemangiomaとして、 1976年にSkibbaら[3]がangiodysplasiaとして報告され、1979年にはその病態がBoleyら[4]によってvascular ectasiaであることが明らかにされている。

 Morson & Dawson [5]は著書の中でその名称をvascular ectasia(angiodysplasia)とし、60歳以上の上行結腸、盲腸にみられる5 mm以下の小血管病変で、しばしば多発し、組織学的には粘膜および粘膜下層の静脈、小細血管、毛細血管の拡張であり、加齢による粘膜下層の血管閉塞であると述べている。しかし、必ずしも右側結腸の局在病変ではなく、大腸に広く分布することが明らかになっている[6]。angiodysplasiaは非腫瘍性で一般的には後天性に形成される病変と考えられているが、小児や若年者にも発症することから先天性要因の関与も完全には否定できない[7]。また、本邦における大腸内視鏡検査での発見頻度は欧米のそれに比べて低く、人種間差が推測されている。

病因

 永年にわたる腸管の収縮と弛緩により腸管壁の筋層を貫通する粘膜下静脈が閉塞した結果、慢性的な虚血状態が生じ、最終的に静脈の拡張蛇行や動静脈短絡がおこるとされている。

病態生理

 酒井ら[8]はangiodysplasiaを内視鏡像からクモ状血管腫様病変、限局血管怒張病変、血管瘤様病変の3群に分類している。

 クモ状血管腫様病変は細小毛管が限定した局所に多数放射状に重畳して赤色斑を呈するもので、血管の集簇度が高いと均質で境界明瞭な円形斑となり、粗な場合は境界不明瞭な滲み斑を示す。

 限局血管怒張病変は単独または少数の血管が拡張し、本来の粘膜血管網とは別に出現するもので、集合してメズサ頭のような所見を示すもの、ときには少数のうねうねと腫大した血管の蛇行を示す。

 血管瘤様病変は前2者とは異質であり、内腔に突出する極めて限局的な血管の一部で丘状または半球状を呈する。また、多発例は肝硬変例が2/3を占めるとの報告もあり[8]、クモ状血管腫様病変に限局血管怒張病変が加わり反復出血をきたすことが推測されている。したがって、門脈圧亢進症など特定の背景下ではより注意が必要である。

臨床症状

 症状は下血であるが、内視鏡で発見されたangiodysplasiaの80%は症状がなかったと報告されている[9]ように多くの場合は無症状に経過する。下血は腹痛を伴わず突然発症し、しばしば大量で間欠的反復性である。

検査成績

 下部消化管出血の診断では大腸内視鏡検査が第一選択となる。しかし、緊急で十分な前処置ができない場合には、出血部位の診断ができないことがある。出血のない間欠期の内視鏡検査の特徴は、小病変では平坦な発赤斑としてとらえられ、近接すると拡張、蛇行した血管が集合したvascular spider様所見を呈する。比較的大きな病変は境界不明瞭な隆起で青色を帯び、cherry red spot、hematocytic spotなどのR-C signを伴う血管瘤の所見を示す。また、限局的な血管怒張所見の場合もある。

 内視鏡で出血源が診断できない場合には、出血シンチグラフィが有用である。とくに、小児の下血では疾患の特殊性と侵襲の少ない点で有用性は高い。血管造影検査に比べて出血シンチグラフィは低侵襲であり、より少量の出血(0.01~0.1 ml/分)を診断可能である[10]。ちなみに血管造影での診断には0.5 ml/分以上の出血が必要とされる[11]。出血シンチグラフィに用いられるトレーサーには、放射性コロイド、熱処理赤血球など比較的早く血液中から消失するものと、99mTc-RBCや99mTc-HASなど長時間血管内にとどまるものがある。前者の利点としては出血部位以外のバックグラウンドが少ない画像が得られること、後者の利点として間欠的出血に対しても診断が可能であることがあげられる[12]。

 急性大量下血においては診断および治療を目的とした選択的腹部血管造影が有用である。造影剤の血管外漏出の証明[13]、また動脈相における不整な拡張、蛇行した小血管の集簇、vascular tuft、流出静脈の早期濃染および拡張等が血管形成異常の特徴としてあげられる[14]。これらが証明されれば塞栓術の適応となる。

治療

 大量出血例や慢性反復性の出血を認める症例では、多発病変や病変が大きい場合、また出血部位が同定できないときには、外科的治療が最も確実な方法である。しかし、消化管の血管形成異常症の外科治療の再発率は5~37% [15]とけっして少なくなく、術後の長期にわたる観察が必要である。また、angiodysplasiaが非腫瘍性の病変であるだけに腸管切除に躊躇する側面がある。

 一方、内視鏡下の止血法は血管造影に引き続く塞栓術とともに緊急止血法としてまずとられるべき治療法である。欧米では出血との関連を憂慮してhot biopsyが実施されており、国内にも類似の報告がある。また、アルゴン・レーザーによる報告[16]もある。ただこれらの焼灼など熱を加えた治療法は再発率も高く、保存的治療法と差がなく、手術例の約2倍の再発率であることが判明している[17]。また、血管拡張の立体構築が不明のままhot biopsyやレーザーを実施することは粘膜の熱変性を伴うだけに慎重に行うべきであろう。エタノールの局注も脱水凝固であり、血管瘤の出血例を除いては好ましくない。内視鏡的止血法としてはクリップによる止血が勧められ、熱変性を加えるのであれば熱の影響が表層にとどまるアルゴン・プラズマ凝固法が適している。

予後

 大腸血管形成異常の多くは無症状であり、出血をきたしても適切な止血法によりコントロール可能である。しかし、保存的治療により止血し得た後に反腹性の再出血がみられること、またIVRによる塞栓術、内視鏡下止血や外科的腸管切除後にも再発が少なくないことより、止血後も厳重な経過観察が必要である。

参考文献

1) Marguilis AR, Heinbecker P, Bernad HR: Operative mesenteric arteriography in the search for the site of bleeding in unexplained gastrointestinal hemorrhage. Surgery 48:534-539, 1960

2) Bartelheimer W, Remmele W, Ottenjann R: Colonoscopic recognition of hemangiomas in the colon ascendens. Endoscopy 4:109-114, 1972

3) Skibba RM, Hartong WA, Mantz FA, et al: Angiodysplasia of the cecum: Colonoscopic diagnosis. Gastrointest Endosc 22:177-179, 1976

4) Boley SJ, Sammartano R, Brandt LJ, et al: Vascular ectasias of the colon. Surg Gynecol Obstet 194:353-359, 1979

5) Marson BC, Dawson IMP: Gastrointestinal Pathology, 2nd ed. Blackwell, London, pp379-391, 1979

6) 鈴木康元, 西野晴夫, 渡辺 豊, ほか:大腸angiodysplasia 79例の臨床的検討.消化器内視鏡の進歩 40:221-224, 1992

7) Mayer CT, Troncale FG, Galloway S, et al: Arteriovenous malformations of the bowel; An analysis of 22 cases and a review of the literature. Medicine 60:36-48, 1981

8) 酒井義浩, 須田浩晃, 小林博之, ほか: 大腸のangiectasiaとangiodysplasia.胃と腸 35:763-769, 2000

9) Hochter W, Weingart J, Kuhner W, et al: Angiodysplasia in the colon and rectum; Endoscopic morphology, localization and frequency. Endoscopy 17:182-185, 1985

10) Thorne DA, Datz FI, Remley K, et al: Bleeding rates necessary for detecting acute gastrointestinal bleeding with technetium-99m-labeld red blood cells in an experimental model. J Nucl ed 28:514-520, 1987

11) Nusbaum M, Baum S: Radiographic demonstration unknown site of gastrointestinal bleeding. Surg Forum 14:374-375, 1963

12) 久田欣一監修:最新臨床核医学第3版,金原出版,東京,pp452-456, 1999

13) Koval G, Benner KG, Rosch J, et al: Aggressive angiographic diagnosis in acute lower gastrointestinal hemorrhage. Dig Dis Sci 32:248-253, 1987

14) Gologher J: Surgery of the anus erctum and colon. Bailiere Tidall, London, pp1058-1074, 1984

15) 柳 秀憲, 楠 正人, 山村武平, ほか:消化管形成異常.臨床外科 45:581589, 1990

16) Fruhmorgen P, Bodem F, Reidenbach HD: Endoscopic laser coagulation of bleeding gastrointestinal lesions with a report of the first therapeutic application in man. Gastrointest Endosc 23:73-75, 1976

17) Richten JM, Christensen MR, Colditz GA, et al: Angiodysplasia, natural history and efficacy of therapeutic interventions. Dig Dis Sci 34:1542-1546, 1989

(MyMedより)推薦図書

1) 日本消化器病学会 編集:肝硬変診療ガイドライン,南江堂 2010

2) 鈴木康元 著:大腸内視鏡挿入攻略法―「モニター画像」と「手の感覚」から判断する,南江堂 2005

3) 多田正大 著:内視鏡所見のよみ方と鑑別診断下部消化管 第2版,医学書院 2009
 

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