消化管異物 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.19

消化管異物(しょうかかんいぶつ)

foreign body in alimentary tract

別名: 異物誤飲

執筆者: 五藤 周

概要

 口から誤飲して消化管に入った、外来性の異物を消化管異物と呼ぶ。形状や臭い、味に関わらず、身近にある口の中に入りうる全てのものが異物となりうる。本稿では固形異物を対象とし、タバコや薬剤などの可溶性異物あるいは液体異物など中毒を起こしうるような異物については、別項を参照していただきたい薬物中毒

病因

年齢

 生後6か月から3歳頃の小児は、身の回りの興味があるものをすぐに口に持っていく特徴をもっており、これらを誤飲してしまうと消化管異物となる。よって、6か月から3歳くらいまでが消化管異物の好発年齢であるが、年長児でも口腔内に含んでいたときに泣く、笑う、驚く、走る、立つなどの急激な動作を契機に誤飲してしまうことがある。

異物の種類

 上記の通り、身の回りにある口の中に入りうる全てのものが消化管異物となりうる。その中で最も多いものは硬貨とボタン型電池で、これら2つでおよそ1/2を占める。その他には、玩具、針、画鋲、釘、パチンコ玉、磁石、安全ピン、指輪・ヘアピンなどの装身具などが比較的多いが、その他にもあらゆる種類の異物が報告されている。

病態生理

 消化管異物は、その大きさや誤嚥からの経過時間によって、消化管のあらゆる部位にみられるが、異物が生理的に通過しにくい部位は、消化管の中でもやや狭い部位で、(1)食道第1生理的狭窄部(咽頭食道接合部)、(2)食道第2(気管分岐部背側)生理的狭窄部、(3)食道第3生理的狭窄部(食道胃接合部)(4)幽門(胃の出口)、(5)回盲弁(小腸と結腸の接合部)、(5)肛門などである。その中でも、食道の第1および第2狭窄部は異物の通過を妨げる最初の「関門」であり、食道異物は同部位に存在することが多い。次いで、幽門部が比較的大きな異物の通過を妨げるが、小腸にまで進んだ異物はその多くが、自然に排泄される。

臨床症状

 食道異物では、嚥下障害や異物感、胸骨裏面の痛みなどを訴える場合があるが、胃以下に進んだ異物では、一般に無症状であることが多く、また胃まで進んだ異物の95%以上が無症状のまま便と共に排泄される。胃以下に進んだ消化管異物により症状を呈する状況は、(1)機械的な消化管閉塞、(2)物理的・化学的な影響による消化管損傷、(3)可溶性異物による中毒症状(薬物中毒を参照)に大別できる。

消化管閉塞

 異物が消化管内腔を閉塞すると、消化管の通過障害を来たして、腹痛や嘔吐、腹部膨満の原因となる。

物理的・化学的な消化管損傷

 異物が同一部位に長期に留まることで、びらん・潰瘍を形成し、さらに進めば穿孔へ至る可能性がある。食道異物が長期に停滞した例では、縦隔炎や気管食道瘻を生じることがある。また、小腸に進んだ異物は、ほとんどが自然に排泄されるので、鋭利な異物では消化管壁を貫通して穿孔し、腹膜炎に至ることがある。他に特に注意を要する異物としては、ボタン型電池や複数個の磁石が挙げられ、注意を要する。ボタン型電池は、胃内では胃液の電気分解が起こり、強いアルカリを産生するため、短時間(3時間程度から)に潰瘍を形成し、さらには穿孔に至る。またボタン型電池を複数個誤飲した例では、腸管壁を介して放電し合い、腸管の穿孔をきたすことがある。複数個の磁石の誤飲例では、消化管壁を介して引き合い、圧迫による穿孔・穿通をきたすことがある。

診断・鑑別診断

病歴聴取

 異物誤飲の現場を目撃した場合には、診断は容易であるが、実際には「児が手に持っていたものがなくなっており、見つからない」といった訴えで受診することが多い。受診の際に誤飲した(と思われる)ものを持参すると、その大きさや形状、材質などがわかり、診断・治療に有用な情報が得られやすい。 

理学所見 

 上述のように、消化管異物の大半は無症状であり、理学所見にもほとんど異常がないため、理学所見から異物の有無や存在部位を判断することは困難である。 

単純X線撮影・消化管造影 

 消化管異物の約90%がX線非透過性異物であり、これらの存在診断は単純X線撮影にて容易である。しかし、異物がどこに存在するかは不明であるので、咽頭や頸部食道を含んだ胸部単純X線および腹部単純X線が必要となる。食道異物と気管異物の鑑別や胃内異物の確認には、側面像が有効である。消化管異物の約10%を占めるプラスチックなどX線透過性異物は、単純X線撮影での診断は困難である。X線透過性異物の誤飲が疑われた場合、食道異物は全て摘出の治療の対象となるため、食道造影にて食道異物の存在を確認する必要がある。その際に造影剤にバリウムを用いると、後に内視鏡を行わなければならないときに異物の確認が困難となることがあるため、水溶性造影剤を用いる。

治療

 異物の存在部位、異物の種類・大きさによって、治療戦略は異なる。

食道異物

 食道に異物が停滞すると、食道が穿孔し縦隔炎を起こしたり、気管に穿通して気管食道瘻を生じるなど、重篤な合併症をきたすことがあるため、全ての食道異物が治療の対象となる。硬貨など鋭利でない異物は、バルーンカテーテルによる摘出が適応となる。無麻酔・X線透視下に、経口的にバルーンカテーテル(10~12Fr.)を異物より先まで挿入し、バルーンを適量の水で膨らませて、異物ごとゆっくりと咽頭まで引き抜く。咽頭まで異物を引き上げれば、異物を吐出させるか、速やかに取り除く。この際に異物を気道に落とさないように注意する。鋭利な異物は、バルーンカテーテルによる摘出では食道損傷をきたす恐れがあるため、内視鏡的に摘出する。また長時間食道に留まったまま経過した異物は、鋭利なものでなくても、食道壁損傷の有無を観察するために内視鏡的摘出の適応となる。内視鏡的摘出は体動や内視鏡による気道の圧迫などの問題があるため、全身麻酔下に行うことを原則とする。摘出が難しい異物は、安全なものであるならば、胃内に落とすことも考慮してよい。

胃内異物

 噴門を通って胃内に達した異物の95%以上が自然排泄するとされ、小さく安全な胃内異物は、原則的に経過観察とする。その際には必ず、その後の便をよく観察することにより、異物の排泄を確認しなければならない。一方、胃内は非開腹的に摘出可能な最後の場所であり、幽門を越えてから閉塞をきたす可能性のある大きな異物や消化管損傷をきたす可能性のある異物は、摘出しなければならない。またボタン型電池は、胃内では胃液の電気分解を起こして強いアルカリを産生するため、数時間で潰瘍を形成しうるとされるため、早期の摘出が必要である。ボタン型電池など磁気を有する異物は、マグネットカテーテルによる摘出が適応となる。無麻酔・X線透視下に、経口的に先端に磁石のついたカテーテルを胃内に挿入し、異物を付着させた後、ゆっくりと咽頭まで引き抜いて異物を摘出する。その際に食道異物の項で述べた、バルーンカテーテルを食道内で下支えに用いて摘出を試みると、摘出が容易になることがある。マグネットカテーテルはすでに製品化されており、消化管異物を扱う医療機関では常備すべきである。自然排出されにくい比較的大きな異物(500円硬貨や長さが5cm以上ある異物など)や幽門を越えてから閉塞あるいは消化管損傷をきたす可能性のある異物(膨張性の異物や鋭利な異物など)は、内視鏡的に摘出する。

腸内異物

 小腸以下にまで進んだ異物は、基本的に非開腹的な摘出は不能である。しかしそのほとんどが自然排泄されるので、原則的に異物の自然排泄を期待して経過観察する。幽門を通過した異物は、多くは2~3日中に排泄されるが、1~2週間かかることもしばしばある。一方、経過観察中に消化管閉塞や消化管損傷による症状を呈した場合は、緊急開腹手術の適応となる。また回盲部やメッケル憩室(メッケル憩室を参照)などで、長期に停滞して自然排泄が困難な場合があり、開腹手術の適応となる。経過観察中、特に注意をすべき異物としては、非常に鋭利な異物やボタン型電池、複数個の磁石などがあり、X線写真で追跡するなど、厳重な経過観察が必要である。

予後

 ほとんどの消化管異物は無症状のまま、摘出あるいは自然排泄され、その予後はきわめて良好である。また症状を呈した場合でも、適切な処置を行えば、多くは予後良好である。しかし、まれには重篤な合併症を来たし、治療に難渋する例もある。消化管異物は不可避的な「疾病」ではなく、注意すれば回避しうる「事故」であり、万が一にも再発するようなことがあってはならない。


(MyMedより)推薦図書

1) 市川光太郎 著:小児救急のおとし穴 (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (1)),シービーアール 2004

2) 川瀬昌宏 著:臨床医のための小児診療ハンドブック,日経メディカル開発 2008

3) 市川光太郎 編集:プライマリ・ケア救急 小児編―即座の判断が必要なとき,プリメド社 2008
 

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