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hemolytic streptococcal infections
執筆者: 小椋 雅夫
連鎖球菌による感染症。連鎖球菌は血液寒天培地上の溶血性によりα型溶血(コロニー周囲に緑色の溶血環を生成)、β型溶血(透明の溶血環を生成)、γ型(溶血環を生成しない)にわけられ、さらに溶血性連鎖球菌は細胞壁の抗原性によりA~U群にわけられる(Lancefield分類)。ヒトに感染を起こすのはA群β溶血性連鎖球菌が主であり、以下A群β溶血性連鎖球菌(A群溶連菌)感染症を扱う。B群溶血性連鎖球菌(Streptococcus agalactie)は新生児の髄膜炎や敗血症の原因として重要であるが、別稿を参照されたい。
A群β溶連菌(Streptococcus pyogenes)が起炎菌となる。年間を通じて認められるが、咽頭扁桃炎は冬から春にかけ6~12歳に多く、皮膚感染症は夏から秋にかけ6歳以下に多い。潜伏期間は上気道感染症で1~3日、皮膚感染症で1~2週間といわれる。ただし、A群溶連菌は常在菌であるため無症状の咽頭から15~25%検出されることもある。
罹患児や保菌者の呼吸器分泌物による飛沫あるいは接触感染である。咽頭・皮膚で多く見られ咽頭炎、中耳炎、副鼻腔炎、乳様突起炎、肺炎、猩紅熱、膿痂疹、丹毒、蜂巣炎(近年肛門周囲炎が増加している)、創部感染、敗血症、心内膜炎、髄膜炎などの原因となる。 劇症型A群溶連菌感染症は進行が早く発症後24時間以内に多臓器不全で死亡することもある。母子感染による新生児例もあり注意が必要である。メディアによって「人食いバクテリア」の異名をつけられ注目された。
乳幼児では症状はわずかか無症状のこともあり通常の感冒症状との区別は難しい。主として発熱・咽頭痛があり、症状が強い場合は嚥下困難を訴える。咽頭扁桃の発赤・腫脹にくわえ、扁桃に白色の滲出物が付着しForschheimer斑(軟口蓋~硬口蓋の赤い小隆起)や苺舌を認める場合もある。疼痛を伴う前頚部リンパ節腫脹も伴う。
表層性の膿痂疹が多く、突発的に掻痒感のある水疱・膿疱・痂皮を形成する。猩紅熱様の皮疹はおこらず、全身状態はよい。 深部の軟部組織に感染が及ぶと蜂巣炎となり疼痛を伴う硬化性病変となる。 蜂巣炎が拡がりリンパ管炎を合併すると丹毒となる。皮膚病変は境界明瞭な紅斑と硬結を示し、発熱・嘔吐などの症状も出現する。顔面の丹毒は自然治癒することが多いが、体幹や足の丹毒は治療しないと致死的になる。
潜伏期間は1~7日、2~8歳に好発する。連鎖球菌の産生する紅斑毒素により、咽頭扁桃炎や皮膚感染症後1日ほどして苺舌(病初期は白苔を伴う)、皮疹、粘膜疹が出現する。毛包に一致する鮮紅色の小丘疹が頚部・胸部・腋窩から始まり肘・鼠径部・大腿内側に拡がる。前額部・頬部は紅潮するが口周囲は蒼白となる。第5~7病日から回復期に入り指先の落屑が始まる。
高熱から発症し急速にショック、多臓器不全または死にいたる敗血症病態。 短時間で血圧低下、腎不全、播種性血管内凝固症候群、呼吸窮迫症候群、肝障害、血小板減少、壊死性筋膜炎などの症状を呈し多臓器不全に陥る。Toxic shock like syndrome。
前述の症状に加えて、一般的な炎症所見(WBC上昇、赤沈の亢進、CRP上昇など)を認める。以下の検査所見のいずれかをもって確定診断とする。
(1) 迅速診断法(A群溶連菌の抗体を検出するrapid strep test)
(2) 咽頭培養による検出
(3) 血清抗体価の上昇(antistreptolysin;ASO、antistreptokinase;ASK) 急性期・回復期のペア血清で診断する。ASOは連鎖球菌感染後1週間で血中に出現し、3~5週間で最高値に達し、2~3ヶ月で正常値に復することが多い。
ウイルス性咽頭扁桃炎(アデノウイルス感染症、EBウイルス感染症など)、ブドウ球菌性膿痂疹など。 猩紅熱は発熱を伴う発疹性ウイルス疾患(風疹など)、Reye症候群、川崎病などと鑑別を要するが、経過・随伴症状から鑑別は比較的容易である。
内服を開始すれば症状はすぐに緩和する。しかし後述する合併症予防のため、症状が消失しても期間を守って内服をすることが重要である。アミノベンジルペニシリンは伝染性単核症では高率に皮疹が出現するため、鑑別が難しいときは避けた方がよい。その場合、セフェム系抗菌薬も有効である。同胞間でA群溶連菌を伝播し合うこともあるため、抗菌薬を十分な量と十分な期間使用した場合で再発する場合は保菌者の検索を行う。
治療例
1) アモキシシリン30~50 mg/kg、分3、10日間。海外では50 mg/kg、分1、10日間でも有効との報告がある。
2) アモキシシリン・クラブラン酸カリウム30~60 mg/kg、分3、10日間。ペニシリン系で臨床効果が得られない場合(βラクタマーゼ陽性の場合)。
3) エリスロマイシン40 mg/kg、分2~3、10日間クラリスロマイシン10~15 mg/kg、分2~3、10日間アジスロマイシン10 mg/kg、分1、3日間。ペニシリンアレルギーがある場合。ただし本邦ではマクロライド耐性菌が多いので注意。
治療の基本は切開排膿あるいは壊死組織の外科的切除(デブリードマン)。抗菌薬は静注薬を大量に使用する。
治療例
1)蜂巣炎 中等症
セファゾリン30~50 mg/kgを8時間ごとに静注 あるいはアンピシリン50 mg/kgを6時間ごとに静注
2) 蜂巣炎 重症
セフォタキシム50 mg/kgを8時間ごとに静注
+クリンダマイシン10 mg/kgを6時間ごとに点滴静注
+VCMも考慮(黄色ブドウ球菌が否定できないとき)
3) 壊死性筋膜炎
壊死組織の外科的切除は必須、Toxic shockの時は保持療法も行いつつ抗菌薬投与。
パニペネム/ベタミプロン25 mg/kgを6時間ごとに点滴静注
+クリンダマイシン10 mg/kgを6時間ごとに点滴静注
劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症以外は予後良好と考えられる。
溶連菌感染時に適切な治療がなされない場合、溶連菌感染後1~5週で以下の非化膿性合併症を起こすことがある。
1. リウマチ熱
発熱・移動性多発性関節炎・心内膜炎・輪状紅斑・舞踏病・皮下結節などの急性症状が種々の組み合わせで出現する。感染後平均20日程度で発症する。感染時に適切な治療が行われた場合のリウマチ熱発生頻度は、行わなかった場合の1/100まで減少すると言われる。
2.溶連菌感染後急性糸球体腎炎
感染後10~20日で発症する。肉眼的血尿・浮腫・高血圧・乏尿などの症状を呈する。感染後2~3週で検尿を行い早期発見につとめる。
A群溶連菌関連小児自己免疫神経精神疾患PANDAS(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with Streptococcus pyogenes)はA群溶連菌感染と関連が示唆されている強迫性障害、チック症、Tourette症候群などの神経精神疾患群を指す。
A群溶連菌に対する抗体が大脳基底核組織と交差反応をおこし急激に上記のような神経精神疾患を発症すると言われる。
溶連菌感染と思われるエピソードの後に急激に症状が発現した場合は疑ってみる必要がある。
1) 川瀬 昌宏 著:臨床医のための小児診療ハンドブック,日経メディカル開発 2008
2) 藤本卓司 著:感染症レジデントマニュアル,医学書院 2004
3) 岩田健太郎 著・編集:感染症999の謎,メディカルサイエンスインターナショナル 2010
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