子宮筋腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.01

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)

執筆者: 岩下 光利

概要

 子宮筋腫は産婦人科医にとって最も経験することが多い子宮腫瘍である。子宮筋腫の治療は近年種々の新しい技術や薬物の開発により大きく変わってきており、治療法の選択肢も大幅に増えてきている。しかしながら、治療すべきか否かの決定や治療法の選択には明確な基準がなく、個々の医師が自分の経験から決めているのが現状である。本稿では、子宮筋腫を取り巻く諸問題を考察し、低侵襲性治療として近年普及してきた子宮動脈塞栓術(UAE)について概説する。

子宮悪性腫瘍との鑑別診断

 子宮筋腫の診断上の問題点は子宮悪性腫瘍との鑑別である。子宮筋腫と診断し、経過観察を行う場合や保存的治療を選択する場合は、悪性腫瘍を見逃す危険性を常に念頭において鑑別診断を行わなければならない。子宮筋腫と平滑筋肉腫などの悪性腫瘍の鑑別にはMRIが有効であり、肉腫では出血壊死や子宮筋層への浸潤を反映して、T1強調像で境界不鮮明な高信号領域が見られる。また、平滑筋肉腫の半数近くで血清LDHの高値が認められ、両者を組み合わせたときの子宮肉腫の診断精度は単独検査より向上する1)。しかしながら、変性を伴う子宮筋腫ではMRIでも平滑筋肉腫との鑑別が難しく、このような症例には針生検による病理組織学的診断が有効であることも報告されている2)

経過観察か治療かの基準

 米国産婦人科学会は単純子宮全摘出術を行うべき子宮筋腫の基準を以下のように挙げている3)
①無症状であるが腹壁から触知される大きさで患者が不安を感じている子宮筋腫、
②多量の子宮出血から貧血となる子宮筋腫、
③下腹痛、背部痛、頻尿などの圧迫による症状を伴う子宮筋腫。
 これらの条件は手術すべきかどうかの基準であるばかりでなく、子宮筋腫を治療すべきか経過観察でよいかの一般的な判断基準としても妥当であると考えられる。
 一方、妊娠を前提とした子宮筋腫や不妊症に合併した子宮筋腫では上記の基準が必ずしも当てはまるとは限らない。

子宮筋腫と妊娠

 筋腫合併妊娠では流早産、常位胎盤早期剥離、胎位異常、分娩停止、産褥異常出血などが起こりやすいとされ、筋腫自身も赤色変性を起こし、発熱、疼痛から妊娠中や産褥に長期入院を強いられる場合がある。したがって、筋腫合併妊娠では十分なインフォームドコンセントを行い、事前に起こりうるトラブルを患者に理解してもらうことが重要となる。
 妊娠中に筋腫核出術を行った患者の妊娠、産褥経過は概ね良好であるが4) 5)、止むを得ないケースを除いて、妊娠中の筋腫核出術は行うべきではないことで報告者の意見は一致している。妊娠を前提とした子宮筋腫の取り扱い、すなわち妊娠前に見つかった子宮筋腫については確立された取り扱い方はなく、既往妊娠で、合併した子宮筋腫が原因と考えられる問題が発生した場合は、次回妊娠前に米国産科婦人科学会の基準を満たさなくても筋腫核出術を考慮すべきだろう。

子宮筋腫と不妊症

 晩婚化とともに子宮筋腫を合併した不妊症患者は増加してきている。しかし、不妊症の原因は多岐にわたり、子宮筋腫が不妊原因となるかどうかは報告者により異なるため、不妊症における子宮筋腫の取り扱いは確立されたものがない。不妊症で筋腫核出術術後に妊娠率が増加する6)との報告は子宮筋腫が不妊症の原因となることを示唆する。一方、粘膜下筋腫のみが不妊と関係あるが、子宮筋腫全体で見ると不妊との関係はなく、筋腫核出術も不妊の改善に寄与しないとの反対の報告もある7)
 種々の報告を総合すると、不妊症で有症候性筋腫は無条件に筋腫核出術を、粘膜下筋腫は切除術を行い、無症候性筋腫は筋腫により子宮内腔に変形を認めるものと筋腫以外に不妊原因が見当たらない場合は筋腫核出術を考慮するのが現時点で最も受け入れやすい考えだろう。

子宮筋腫に対する治療の進歩

 手術療法として古典的な筋腫核出術と単純子宮全摘出術に加えて、近年、内視鏡下手術が子宮筋腫の治療にも導入されてきた。腹腔鏡下手術や粘膜下筋腫に対する子宮鏡下筋腫切除術など、従来の開腹手術に比較しより侵襲の低い観血的治療が選択できるようになった(図1)。子宮筋腫に対する薬物療法では従来のGnRHアゴニスト療法のほかに、GnRHアンタゴニスト8)やアロマターゼインヒビター9)、特異的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)10)や特異的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)11)などの有効性も多数報告されている。
 手術療法や薬物療法と異なる第三の低侵襲性治療として、子宮動脈塞栓術(UAE)とMRガイド下収束超音波治療(FUS)も普及し始めてきている。UAEやFUSは筋腫核そのものが除去できるわけではないが、腹腔鏡下手術に比較してもより低侵襲性で、子宮筋腫治療の選択肢がまた増えることは歓迎すべきであろう。

図1図1

UAEの臨床成績

 最後に、我々の行っているUAEの臨床成績について述べる。
 UAEの特徴の一つは持続的な筋腫の縮小が得られ再増大がほとんどないことで、GnRHアゴニスト療法にはない利点を有する。UAE後6ヶ月位まで筋腫核は徐々に縮小し、施行前の約50%の体積となる(図2)。筋腫の位置や大きさ、単発、多発による縮小率の差はあまり見られない。UAE施行後は筋腫核の縮小だけでなく、大部分の患者で筋腫に起因する月経時の症状も軽減され(表1)、過多月経に伴う貧血も改善される。したがって、有症候性の子宮筋腫の治療としてもUAEは有効である。
 UAEの副作用として最も多く見られるのは、子宮動脈塞栓による虚血で下腹部疼痛、悪心嘔吐、発熱、炎症反応上昇をきたす塞栓術後症候群で、UAE後90%以上に見られる(表2)。症状は一過性で消炎鎮痛剤投与により改善され、大きな問題とはならない。UAE後の変性筋腫核への感染や腟内への筋腫の排出も時として見られる。稀ではあるが重篤な副作用として、敗血症による死亡、子宮壊死、卵巣機能不全、肺血栓塞栓なども報告されている。
 このように、UAEは子宮筋腫の治療として100%安全な手技とはいえないが、合併症頻度は手術療法より少なく、入院日数と就労までの期間は短く、症状改善率は両者で同等であるなど12)13) 、手術療法と比較したUAEの低侵襲性が認識されつつある。しかしながら、UAEでは子宮筋腫が残存する上に、子宮動脈塞栓後の子宮機能への影響は未知であるため、米国産婦人科学会では「挙児希望患者に対するUAEの安全性はさらに検討が必要であり、これらの患者に対してUAEは相対的禁忌である」との勧告を行っている14) 。妊孕能温存希望がなくかつ症状を有する筋腫で、手術療法を望まない患者にはUAEは第一選択となるが、不妊症や妊娠を希望する者にUAEを施行することは慎重であるべきである。

図2図2

表1表1

表2表2

参考文献

1.    Goto A, Takeuchi S, Sugimura K, Maruo T. Usefulness of Gd-DTPA contrast-enhanced dynamic MRI and serum determination of LDH and its isozymes in the differential diagnosis of leiomyosarcoma from degenerated leiomyoma of the uterus. Int J Gynecol Cancer 12:354-361, 2002 
2.      川村直樹:針生検による子宮筋腫管理の実際とその問題点 日産婦誌 59:1671-1678, 2007  
3.    Uterine leiomyomata. Number 192--May 1994. ACOG technical bulletin. Int J Gynaecol Obstet. 46:73-82, 1994.  
4.    Celik C, Acar A, Cicek N, Gezginc K, Akyurek C. Can myomectomy be performed during pregnancy? Gynecol Obstet Invest 53:79-83, 2002  
5.    De Carolis S, Fatigante G, Ferrazzani S, Trivellini C, De Santis L, Mancuso S, Caruso A. Uterine myomectomy in pregnant women. Fetal Diagn Ther 16:116-119, 2001  
6.    Sudik R, Husch K, Steller J, Daume E. Fertility and pregnancy outcome after myomectomy in sterility patients. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 65:209-214, 1996  
7.    Pritts EA. Fibroids and infertility: a systematic review of the evidence. Obstet Gynecol Surv 56:483-491, 2001  
8.  Flierman PA, Oberye JJ, van der Hulst VP, de Blok S. Rapid reduction of leiomyoma volume during treatment with the GnRH antagonist ganirelix. BJOG. 112:638-642, 2005  
9.   Shozu M, Murakami K, Inoue M. Aromatase and leiomyoma of the uterus. Semin Reprod Med. 22:51-60, 2004  
10.   Hendrix SL, McNeeley SG. Effect of selective estrogen receptor modulators on reproductive tissues other than endometrium. Ann N Y Acad Sci. 949:243-250, 2001  
11.   Chwalisz K, Perez MC, Demanno D, Winkel C, Schubert G, Elger W. Selective progesterone receptor modulator development and use in the treatment of leiomyomata and endometriosis. Endocr Rev. 2005 26:423-438, 2005  
12.    Hehenkamp WJ, Volkers NA, Donderwinkel PF, de Blok S, Birnie E, Ankum WM, Reekers JA. Uterine artery embolization versus hysterectomy in the treatment of symptomatic uterine fibroids (EMMY trial): peri- and postprocedural results from a randomized controlled trial. Am J Obstet Gynecol. 2005 193:1618-1629, 2005  
13. Goodwin SC, Bradley LD, Lipman JC, Stewart EA, Nosher JL, Sterling KM, Barth MH, Siskin GP, Shlansky-Goldberg RD; UAE versus Myomectomy Study Group. Uterine artery embolization versus myomectomy: a multicenter comparative study. Fertil Steril. 85:14-21, 2006  
14. Committee on Gynecologic Practice, American College of Obstetricians and Gynecologists. ACOG Committee Opinion. Uterine artery embolization. Obstet Gynecol. 103:403-404, 2004

(MyMedより)推薦図書

1) 平松祐司 編集:子宮筋腫の臨床,メジカルビュー社 2008

2) 加藤 肇 著:子宮筋腫 切らずに治せるUAE,創元社 2003

3) 武内裕之 著:名医の図解 Q&Aでわかる子宮筋腫安心読本 (名医の図解-Home Doctor-),主婦と生活社 2006

 

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