小腸・大腸悪性リンパ腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.01

小腸・大腸悪性リンパ腫(しょうちょう・だいちょうあくせいりんぱしゅ)

執筆者: 赤須 孝之

概要

 悪性リンパ腫は地理病理学的に変化に富むので,本項では,本邦の悪性リンパ腫を中心に述べる.

 悪性リンパ腫(malignant lymphoma)はリンパ球に由来する悪性腫瘍の総称である.悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別され,非ホジキンリンパ腫は発生・機能の点からB細胞型,T細胞型,natural killer (NK)細胞型に分類される.さらに,種々の因子から細分されるが,これについては最新の新WHO分類[1]を参照されたい.本邦で最も多いのはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBL)で,次がMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫である.[2]

 腸管の悪性リンパ腫には,腸管原発のものと多臓器にわたる悪性リンパ腫の腸管浸潤とがある.腸管原発の悪性リンパ腫の診断基準としては後述するDawsonの基準がある.[3]本邦の小腸悪性リンパ腫では,DLBLとMALTリンパ腫が多く[4],T細胞リンパ腫,Burkittリンパ腫,マントル細胞(mantle cell)リンパ腫等も発生する.大腸では,MALTリンパ腫が多く,マントル細胞リンパ腫も比較的多い.[5]MALTリンパ腫は,小腸のPeyer板に代表される粘膜関連のリンパ組織(MALT)に由来するB細胞型リンパ腫である.

 DLBLは本邦全悪性リンパ腫中33%を占める.[2]DLBLはあらゆる年齢層にみられるが,小児にはまれで,60歳代を中心とした中高年齢層に多く,わずかに男性に多い。リンパ節だけでなく,あらゆる臓器に発生する.40%はリンパ節以外の臓器に原発し,70%はなんらかの節外病変を有する.

 MALTリンパ腫は本邦全悪性リンパ腫中8%である.[2]発症年齢中央値は61歳で,女性にやや多い.発生臓器としては消化管が多く,50%を占め,そのうちの85%が胃である.

 米国のSEERプログラムのデータ[6]によると,小腸悪性リンパ腫の年間発生率は1.1/1,000,000であった.小腸悪性リンパ腫の発生率のピークは60歳代にみられ,男性にやや多い.大腸悪性リンパ腫は高齢者に多く,性差はない.本邦の八尾らの報告では,原発性小腸腫瘍に占める悪性リンパ腫の割合は30.4%であった.[7]

 悪性リンパ腫の疾患分類の最も新しいものは新WHO分類[1]である.小腸,虫垂,大腸の悪性リンパ腫の分類については,消化器腫瘍の WHO分類[8]も参照されたい(表1[8]).非ホジキンリンパ腫全般の病期分類としては,Ann Arbor分類を改変したCotswoldsの改訂病期分類[9]があるが,腸管悪性リンパ腫の病期分類としてはLugano分類[10]が用いられる(表2[10]).

病因

 MALTリンパ腫の一部は染色体転座などの異常がapoptosis 関連遺伝子の部位に起こって発生すると考えられている.DLBLは病因論的・臨床病理学的・細胞学的に多様な疾患の集団である.DLBLの一部はMALT リンパ腫にさらに別の遺伝子異常が蓄積されてtransformすることにより発生する.一部はMALTリンパ腫を経ずに de no voに発生すると考えられている.MALTリンパ腫およびDLBLの発生機序についてはいまだ完全には解明されていない.

 腸管の悪性リンパ腫では,炎症性腸疾患,特に潰瘍性大腸炎は危険因子である.

病態生理

 腸管悪性リンパ腫の肉眼像は多彩である.B細胞型では,ポリープ状,隆起型,潰瘍型,耳たぶ様等を呈する.T/NK系では,境界不明瞭で,小さなものではひきつれを伴わない不整形,大きなものでは潰瘍型,瀰漫浸潤型,狭窄型等を呈する.病変は単発のことが多い.マントル細胞リンパ腫の multiple lymphomatous polyposisでは,直径5-20 mmのポリープ状の病変が広範囲の腸管に多発する.

 腸管原発のDLBLは浸潤性に局所進展するとともに腸間膜リンパ節,傍大動脈リンパ節へと浸潤し,節外臓器,他の消化管,全身へと進展する.MALTリンパ腫はMALT臓器に発生し,通常長期間発生臓器に限局し,緩除な経過をたどる.その後,領域リンパ節,骨髄,他のMALT臓器に浸潤する.

臨床症状

 小腸の悪性リンパ腫の初発症状は,頻度の高い順から,腹痛,腸閉塞,体重減少,下血,下痢,発熱と報告されている.[4]大腸悪性リンパ腫では下血,下痢,腹痛,粘液排泄,便秘,体重減少,腹部腫瘤の順である.[11]このように,発熱以外には悪性リンパ腫に特異的な症状はない.後述する診断基準にあるように,体表リンパ節腫大,肝・脾腫を伴うような場合には,腸管原発でないか腸管原発であっても高度進展例である可能性が高い.

検査成績

一般検査


 末梢血中および骨髄中のリンパ腫細胞の有無を検索する.これらにリンパ腫細胞が認められればstage IVである.血清中のLDH, βsub2/sub microglobulin, ferritin, 可溶性CD25,可溶性Il-2レセプターなどを測定する.これらは腫瘍量や病勢を反映する.後述するように血清LDH値は予後指標として用いられる.[12]


画像診断


 病理の項で述べたような肉眼形を反映した内視鏡所見および消化管二重造影所見を呈する.

 CTでは,原発腸管悪性リンパ腫は分節状の腫瘤を形成し,徐々に正常腸管壁に移行し,内腔の拡張が認められるのが特徴である.また,腫大したリンパ節内を血管が貫通する所見もリンパ腫に特徴的であるとされる.CTは全身の進展の評価に最も重要である.しかし,中枢神経,筋,骨髄,脾への浸潤の検出に劣る.

 MRIは中枢神経,筋,骨髄への浸潤の検出に優れる.しかし,肺,脾内の病変の描出に難がある.ガリウムシンチグラフィは全身の検索に有用である.最近ではPETが有用であるとする報告がある.

診断・鑑別診断

 腸管悪性リンパ腫が疑われる場合には,上部消化管・小腸・大腸の内視鏡検査または二重造影検査,胸部・腹部・骨盤部CT,ガリウムシンチグラフィ,骨髄検査を行い,診断の確定とともに病変の広がりを診断する.確定診断は病理組織診断で行われる.最近,全身の検索にPETが有用であるとする報告がある.

 腸管原発悪性リンパ腫の診断基準としては,Dawsonら[3]の提案した以下のような基準がある:

(1)表在リンパ節が触知されない

(2)胸部X線検査で上縦隔リンパ節の腫大が認められない

(3)末梢血で白血球や分画に異常がない

(4)術中所見で主病変は腸管にあり,所属リンパ節のみが侵される

(5)肝・脾に腫瘍が認められない.

 腸管悪性リンパ腫は多彩な病像を呈することから,小腸および結腸の腫瘍性疾患と炎症性疾患との鑑別が必要である.鑑別は基本的には病理組織診断でなされる.

治療

 悪性リンパ腫が腸管に限局していれば,外科的切除を行う.領域リンパ節は十分に郭清すべきである.後述するように完全切除できない場合の予後は不良である.完全切除後の化学療法については賛否両論があり,これを検証する比較試験が必要である.

 病変が腸管に限局しない場合には,外科的切除の適応について慎重に判断する.腸管病変が切除可能であれば,腸管外病変を含め可及的完全に切除した後に化学療法を行うか,または,切除せずに化学療法を行う.腸管病変が切除不可能であれば,化学療法を行う.いずれにしても,腸管病変が残っている場合には,化学療法中に腸管の穿孔や穿通が起こる危険性に備えていなければならない.

 DLBLおよびMALTリンパ腫に対する主たる化学療法は,cyclophosphamide,hydroxydaunomycin, vincristine,predonisoneを併用するCHOP療法である.また,最近,rituximab(抗CD20抗体,リツキサン)と CHOPの併用療法の有用性が報告されている.

予後

 非ホジキン悪性リンパ腫全体の予後指標としてはInternational Prognositic Index (IPI)がある.年齢,performance status,血清LDH値,臨床病期など12の予後因子の有無から予後が判定される.[12]

 小腸原発悪性リンパ腫について,Nakamuraらは十二指腸4例を含む本邦80例につき検討し,5年生存率はlow grade B細胞で94%,high grade B細胞で52%,T細胞で8%と報告した.また,Stage IE/IIE1(5年生存率84% vs. 21%),MALT由来(84% vs. 33%),穿孔なし(59% vs. <14%),発熱なし(63% vs. 9%),完全切除(73% vs. 34%),大腸/胃浸潤なし(60% vs. 22%),びまん浸潤型以外の肉眼型(60% vs. 27%)の群でそうでない群に対し有意に予後が良好であった.[4]

 大腸原発悪性リンパ腫について,岩下らは直腸7例を含む本邦26例につき検討し,5年生存率は全体で42%と報告した.また,腫瘍径10 cm未満(5年生存率58% vs. 15%),low grade(62% vs. 11%),MALT由来(71% vs. 23%)の群でそうでない群に対し有意に予後が良好であった.[5]

表1. 原発性小腸腫瘍のWHO分類(Hamiltonらの2000年の分類より引用)[8]


表2. 消化管非ホジキンリンパ腫の病期分類[10]

(表2[10]).

文献

[1]Jaffe ES, Hariris NL, Stein H, editors. World Health Organization Classification of Tumors: Tumors of haematopoietic and lymphoid tissues. Lyon; IARC Press: 2001.

[2]Lymphoma Study Group of Japanese Pathologists. The World Health Organization classification of malignant lymphomas in Japan: incidence of recently recognized entities. Pathol Int 2000;50:696.

[3]Dowson IMP, Cornes JS, Morson BC. Primary malignant lymphoid tumors of the intestinal tract: report of 37 cases with a study of factors influencing prognosis. Br J Surg 1961;49:80.

[4]Nakamura S, Matsumoto T, Takeshita M, et al. A clinicopathologic study of primary small intestinal lymphoma: prognositic significance of mucosa-associated lymphoid tissue-derived lymphoma. Cancer 2000;88:286.

[5]岩下明徳,竹下重盛,竹村聡.原発性大腸悪性リンパ腫の臨床病理学的検索.胃と腸 1995;30:869.

[6] Chow JS, Chen CC, Ahsan H, Neugut AI. A population-based study of the incidence of malignant small bowel tumours: SEER, 1973-1990. Int J Epidemiol 1996;25:722-8.

[7]八尾恒良,八尾建史,真武弘明,他.小腸腫瘍:最近5年間(1995~1999)の本邦報告例の集計.胃と腸 2001;36:871-81.

[8]Hamilton SR, Aaltonen LA, editors. World Health Organization classification of tumours: pathology and genetics of tumours of the digestive system. Lyon: IARC Press, 2000.

[9]Lister TA, Crowther D, Sutcliffe SB, et al. Report of a committee convened to discuss the evaluation and staging of patients with Hodgkin's disease; Cotswolds meeting. J Clin Oncol 1989;7:1630.

[10]Rohatiner A. Report on a workshop convened to discuss the pathological and staging classifications of gastrointestinal tract lymphoma. Ann Oncol 1994;5:397-400.

[11]Shepherd NA, Hall PA, Coast PJ, et al. Primary malignant lymphoma of the colon and rectum: a histopathological and immunohistochemical analysis of 45 cases with clinicopathological correlations. Histopathology 1988;12:235.

[12]The International Non-Hoddkin's Lymphoma Prognostic Factors Project: a predictive model for aggressive non-Hodgkin's lymphoma. N Engl J Med 1993;329:987.

(MyMedより)推薦図書

1) 下山孝 監修、里見匡迪・福田能啓 編集:潰瘍性大腸炎ってどんな病気,診断と治療社 2000

2) 佐原力三郎 著、主婦の友社 編集:大腸がん・潰瘍性大腸炎・過敏性腸症候群 (よくわかる最新医学),主婦の友社 2006

3) 静岡県立静岡がんセンター 著、山口建 監修、日本大学短期大学部 食物栄養学科 編集:抗がん剤・放射線治療と食事のくふう―症状で選ぶ! がん患者さんと家族のための (がんよろず相談Q&Aシリーズ),女子栄養大学出版部 2007
 

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