EBウイルス感染症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.26

EBウイルス感染症(いーびーういるすかんせんしょう)

執筆者: 脇口 宏

概要

 EBウイルスはヒトヘルペスウイルスγ亜科に属する2本鎖線状DNAウイルスである。直径110nmの正20面体のカプシドはエンベロープで覆われ、細胞内に潜伏感染している時は環状プラスミドとして存在する。EBウイルスの潜伏感染には三種の形態がある。


(表1.EBウイルス潜伏感染様式)

 潜伏抗原の表出によって規定されるが、EBNA1は細胞障害性T細胞の標的抗原になりにくいので、免疫系からエスケープするのにlatencyIは有利であるが、感染細胞の増殖力は低下する。生体内ではメモリーB細胞内に潜伏感染し、LMP2aのみを表出する。

 EBウイルス受容体は補体受容体(CD21)で、B細胞には恒常的に表出されている。

EBウイルス関連疾患

 EBウイルスはBurkittリンパ腫細胞株から発見されたものであるが、その経緯は実に示唆に富むものである。Burkittリンパ腫培養細胞株の樹立は失敗の連続であったが、濃霧のために飛行機が大幅に遅るという、偶然の産物であった。混濁した培養液の中に増殖した浮遊細胞を発見したときの感激は、根気強い探求心の継続と臨床検体を無駄にしない真摯な姿勢を継続したものだけに与えられる勲章である。飛行機が遅れたという「偶然がもたらした幸運の結果だけではない」ことを銘記しておく。

 EBウイルスと伝染性単核球症の関連の発見も示唆に富むものである。伝染性単核球症は当時の西洋諸国でポピュラーな疾患であったが、技術員が伝染性単核球症に罹患した際、Henleらはこの技術員のEBウイルス抗体を経時的に測定するとともに、末梢リンパ球の組織培養を施行した。その結果、伝染性単核球症の原因ウイルスの発見とEBウイルスによるリンパ芽球様細胞株の樹立を同時に成功させた。日頃見慣れた疾患の中にこそ,新たな発見のソースがあることを示す好例である。

 1990年代初期、EB-virus encoded small RNA(EBER)を標的としたin situ hybridization(EBER-ISH)法の併用で、種々の腫瘍細胞、T細胞、NK細胞などにもEBウイルスが感染することが示された。その結果、多彩なEBウイルス関連疾患の存在が明らかにされた。


(表2.EBウイルス関連疾患)

伝染性単核球症

病因


 伝染性単核症はEBウイルスの初感染によるが、サイトメガロウイルス(CMV)初感染によっても同様の臨床症状(CMV mononucleosis)が発症する。CMV感染は幼若乳児に多く、気管支炎、肺炎などの気道症状を伴うことが多い。

疫学


 季節的流行は示さない。飛沫、あるいは直接唾液を介して感染することから、キッス熱とも呼ばれ、家族内感染によることが多い。潜伏期は5~6週間と長い。

臨床症状


 EBウイルス初感染例の多くが無症状で経過し、一部の例に伝染性単核球症が発病する。乳幼児期では発病しても非定型的な上気道炎症状で経過する例が多いとされているが、乳幼児においても伝染性単核症は比較的多い疾患である。

 典型例では発熱、化膿性扁桃炎、頚部リンパ節腫脹,肝脾腫を伴う。発熱は38℃以上の高熱が1~2週間持続することが多い。咽頭痛を伴うことが多く、成人ではたばこの味が変化すると言われる。頸部リンパ節腫脹は約90%に見られ、多発性である。鼻咽腔リンパ組織の腫脹が高度で鼻閉を来す例も稀ではない。肝脾腫は90%近い例で観察される。眼瞼浮腫の頻度は30%程度であるが、診断的価値は高い。


(表3.伝染性単核症の症状・検査)

 苺舌様の舌乳頭腫大、軟口蓋の出血性粘膜疹もみられ、溶連菌性扁桃炎との鑑別が困難な場合が少なくない。しかも、約1/3の例では実際に溶連菌感染を合併している。その他,発疹,関節痛などが比較的高頻度に観察される。

 乳幼児では咽頭・扁桃炎が軽度の咽頭発赤にとどまる例が多い。発熱も2~3日以内の軽症例が多いが、肝脾腫、リンパ節腫脹はほとんどの例に見られる。

検査


 白血球数は15,000/μl以上が多いが、正常値を呈する例も稀ではない。異型リンパ球増加は診断上重要であるが、乳幼児では増加が著明ではない例が多く、その持続期間も短い。最近では,測定結果の客観性,安定性などに優れているタンクローン抗体を用いたCD8+HLA-DR+細胞あるいはCD8+CD45RO+細胞増加などの増加が重要視されている。その他、可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)が著明に上昇する。

 肝機能障害はほとんどの例に観察されるが、多くの例ではALT300-400IU/L以下で、小児例で黄疸を伴うことは稀である。AST、ALTのピーク値は第2病週に見られることが多く、2,000~3,000IU/L以上の高度の肝障害を伴う例もある。


(表3.伝染性単核症の症状・検査)

EBウイルス抗体の読み方


 一般的にIgM抗体は初感染急性期、IgA抗体は活動性感染症で陽性となり、IgG抗体は感染歴を反映して長期間にわたって持続する。EBウイルス抗体は、VCA-IgG抗体、VCA-IgM抗体、VCA-IgA抗体、EA-IgG抗体、EA-IgA抗体、EBNA抗体が測定される。

 VCA-IgG抗体はEBウイルス感染歴を反映し、VCA-IgM抗体は初感染急性期に陽性になる。上咽頭癌、慢性活動性EBウイルス感染症などの高度な再活性化でもVCA-IgM抗体、VCA-IgA抗体が上昇する。EA抗体はEBウイルス感染症の早期回復期あるいは再活性化で上昇し、EBウイルス感染の活動性を反映するが、VCA-IgA抗体よりも鋭敏である。EBNA抗体は数カ月以上の経過で陽転する。

 EBウイルスは潜伏期が長いので、VCA-IgG抗体は急性期にピーク値を示すことが多い。しかし、乳児では急性期のVCA-IgG抗体が低く、回復期以降に上昇する例が多く、VCA-IgM抗体の陽性率が低い。


(図1.年齢階層別にみたSumayaの基準項目の感度)

診断、鑑別診断


 臨床症状に加え、白血球増多、リンパ球増多、異型リンパ球(あるいはCD8+HLA-DR+細胞)増多があれば、臨床的に伝染性単核症と診断できる。 血清診断には表4のように複数の抗体の測定が必要な場合が多い。


(表4.小児伝染性単核症の判断基準)

 上述のように、乳児と幼児期以降とでは抗体反応に差が見られる。


(図1.年齢階層別にみたSumayaの基準項目感度)

 著者らは血清学的に診断確定率の高い組合せとして、(1)乳児であればVCA-IgG抗体とEBNA抗体を急性期と3-5週後のペア血清で測定する、(2)2歳以上であれば急性期にVCA-IgM抗体とEBNA抗体を測定するのがよいと考えている。

 しかし,保険診療では1回の採血で1ウイルス当たり1項目の抗体しか測定できないので、(1)1才6ヵ月未満であればVCA-IgG抗体をペア血清で測定する、(2)2才以上であれば急性期にVCA-IgM抗体を測定することを推奨している。

 サイトメガロウイルス(CMV)感染症との鑑別は臨床的にはほとんど不可能で、一般検査所見からも鑑別できない。強いていえば、咽頭扁桃炎、頸部リンパ節腫脹が明らかでなく、肺炎、喘息様気管支炎、RSウイルス感染を思わせる等の呼吸器症状がある例は、CMV感染である場合が多い。また、EBウイルスとCMVとの重複感染例も稀でなく、この場合には乳児であっても重症例が多いので注意を要する。

 その他、扁桃炎の所見は溶連菌感染症、肝脾腫は敗血症、急性リンパ性白血病、血球貪食性リンパ組織球症、ランゲルハンス細胞組織球症などの重症感染症や腫瘍性疾患との鑑別が必要な場合がある。

EBウイルス感染症における免疫反応


 伝染性単核症ではCD4細胞の減少とCD8細胞、とくにCD8+HLA-DR+T細胞の増加がみられる。抗体反応と同様にCD8+HLA-DR+T細胞の増加には明らかな年齢依存性が見られる。2歳未満の乳幼児では、2才以上に比較すると明らかに低値である。


(図2.IM患者の年齢別CD8+HLA-DR+細胞の比率)

 伝染性単核症急性期では血中IL-10が増加する。IL-10にはEBウイルス由来のvIL-10と生体が産生するTh2サイトカインであるhIL-10とがある。vIL-10はEBウイルスの増殖サイクル(lytic cycle)で産生される。IL-10はいずれもTh1細胞の機能を抑制し,T細胞の増殖、インターフェロンγ、IL-2などの産生を抑制する。逆に、B細胞の増殖、免疫グロブリン産生、EBウイルス感染B細胞の増殖などを促進する。

治療


 確実に有効な治療はなく、本症がself limitedな経過をとる予後良好な疾患であるので、一般的には対症療法を行う。溶連菌感染症を合併している例では、セフェム系抗生物質を併用する。アンピシリンはアレルギー反応を起こし易いので禁忌とされている。

合併症

 
 合併症には肺炎、髄膜脳炎、ギランバレー症候群、関節炎、特発性血小板減少性紫斑病、血球貪食性リンパ組織球症HLH、重症肝炎など多数のものがある。

致死的EBウイルス感染症

 高熱、肝脾腫、リンパ節腫脹、間質性肺炎などを呈し、EBウイルス抗体価の高度な異常、肝障害、血液障害などを伴う重症慢性活動性EBウイルス感染症、EBウイルスウイルス特異的免疫不全症とされるX連鎖リンパ増殖症XLP、致死的伝染性単核球症の代表的疾患であるEBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症EBV-HLH、移植後リンパ増殖症PTLD等があげられる。

慢性活動性EBウイルス感染症


 遷延する発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹などの伝染性単核球症様症状、蚊刺過敏症などを主症状とし、種々の全身臓器に合併症をきたす疾患である。


(表5.慢性活動性ウイルス感染症の臨床症状と合併症)

 EBウイルス感染細胞がT細胞(主にCD4陽性T細胞)、あるいはNK細胞という特徴を示す。


(表6.CAEBVにおけるEBV感染細胞)

 NK細胞の例ではT細胞の例よりも進行が緩やかであるが、無治療で放置すれば、数年で約50%、20年の経過ではいずれもほぼ全例が死亡する予後不良な疾患である。治療は現在のところ唯一治癒可能なものとして、造血幹細胞移植が推奨されている。

 EBウイルス感染症研究会では、表7に示すような慢性活動性EBウイルス感染症の診断指針を提唱している。


(表7.慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)診断指針)

 末梢血や侵襲臓器から、大量のEBウイルスゲノムとEBウイルス感染細胞の浸潤が示され、臨床症状と異常に高いEBウイルス抗体価、末梢血など侵襲臓器中のEBウイルスゲノム量の増加が診断に重要である。

 検出されるEBウイルスゲノム量は血球貪食性リンパ組織球症EBV-HLH、移植後リンパ増殖症PTLDと同等で、伝染性単核症急性期の100倍以上という大量のウイルスゲノム量で、latencyIIである。さらに、CD8陽性細胞が主体であるEBV-HLHと同様に、クローン性のEBウイルス感染細胞増殖性疾患で、約50%の例に染色体異常がみられることなどから、本症は単なる重症遷延性感染症ではなく、T細胞あるいはNK細胞リンパ増殖性疾患(LPD)と考えられている。同様に、蚊刺過敏症はEBウイルス関連NK-LPDと考えられており、顆粒リンパ球増多がない時期からクローン性のEBウイルス感染NK細胞が観察される。

X連鎖リンパ増殖症XLP


 Duncan病とも呼ばれ、EBウイルスに対する特異的免疫不全症である。多くの例が、EBウイルス初感染時に致死的伝染性単核球症に罹患する。生存例は無γグロブリン血症、悪性リンパ腫、再発性致死的伝染性単核球症などを合併し、40歳までにほぼ全例が死亡する予後不良な疾患である。責任遺伝子はSAP/SH2D1Aである。


(表8.X連鎖性リンパ増殖症XLP)

 当初は我が国では患者が居ないと考えられていたが、責任遺伝子の発見で、本邦例はほとんどが孤発例であるが、我が国でも決して稀ではないことが明らかにされた。

 移植後リンパ増殖症PTLDは細胞性免疫に障害がある原発性免疫不全症やAIDSで高率に合併するEBウイルス関連Bリンパ増殖性疾患(日和見リンパ腫)として知られていた。病初期はlatency IIIで免疫の回復で消失することが期待できるが、進行が早いのでlatency Iで診断されることが少なくない。予後不良な臓器移植合併症の1つである。心肺移植,小腸移植などではきわめて高頻度に本症を合併する。


(表9.移植臓器とPTLD発生頻度)

 多くの場合、PTLD発症前には末梢血中のEBウイルス遺伝子量が増加するので、定期的なウイルスモニタリングが行われる。しかし、末梢単核球中のEBウイルス陽性細胞が増加しないでPTLDを発症する例もある。

参考文献

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(MyMedより)推薦図書

1) 砂川慶介・尾内一信 編・著:小児感染症治療ハンドブック,診断と治療社 2008

2) 日本小児感染症学会 編集:日常診療に役立つ小児感染症マニュアル〈2007〉,東京医学社 2006

3) 国立成育医療研究センター 編集:ナースのための小児感染症―予防と対策,中山書店 2010
 

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