片側顔面けいれん、三叉神経痛 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.12

片側顔面けいれん、三叉神経痛(へんそくがんめんけいれん、さんさしんけいつう)

Hemifacial spasm , trigeminal neuralgia

別名: 顔面けいれん | 顔面痙攣 | 片側顔面痙攣 | 顔面神経痛

執筆者: 斉藤 延人

概要

 片側顔面けいれんは、一側の顔面の表情筋に発作的不随意的な収縮が起こる病気です。一方、三叉神経痛は顔面の電撃的な痛みを主訴とする病気です。どちらもそれぞれの神経が根元のところで血管による圧迫を受けていることが原因です。三叉神経痛のことを顔面の痛みという意味で”顔面神経痛”と呼ぶ人もいますが、医学的には正しくありません。顔面神経は顔の筋肉を動かす神経で、知覚の神経は三叉神経です。二つの疾患は病因や治療法が非常に近いので、本稿ではまとめて解説します。

病因

[病因と病態生理]

 顔面けいれんは顔の筋肉を動かす顔面神経が脳幹から出る根元のところで血管による圧迫を受けていることにより起こります。三叉神経痛は顔面の知覚を伝える三叉神経が脳幹に入る部分で血管による圧迫を受けていることにより起こります。顔面けいれんで圧迫の原因となることが多い血管は、前下小脳動脈や後下小脳動脈、および椎骨動脈です。三叉神経痛では上小脳動脈や前下小脳動脈、脳底動脈が圧迫血管として多くみられます。どちらも神経の途中での圧迫ではなく、脳幹からの出入り口で圧迫していることが特徴です。この部分は末梢の神経から中枢の神経に移行する部分で、血管による圧迫で障害を受けやすいためと考えられています。





 顔面けいれんの術中所見。下の図で紫の矢印の部分が圧迫している血管です。これを移動させて顔面神経が見えるようになったのが下の図です。顔面神経には黄色の部分で血管による圧痕が見られます。



 三叉神経痛の術中所見。青い矢印の部分が三叉神経です。黄色の矢印が三叉神経の根元を圧迫している血管です。

臨床症状

顔面けいれんの症状


 顔面けいれんは24時間持続しているわけではなく、発作的に始まったり止まったりします。発作は緊張しているときやストレスのあるとき、疲れているときに強くなることがあります。多くの場合、けいれんは初期には片側の目の周囲に限局していますが、次第に頬部や口角にも広がるようになります。さらに強い場合には首筋に広がることもあります。けいれんは常に片側で、この病気では両側の顔面がけいれんすることはありません。目の周囲や口角のけいれんは同期しているのが特徴です。女性に多く、美容上の問題から治療を希望されます。口角のけいれんが強い場合には、食事のしにくさが問題となります。また、けいれんの起こる側の目は見にくくなるので、交通事故などに注意しなければなりません。

三叉神経痛の症状


 特徴的な三叉神経痛の痛みは、顔面の瞬間的な刺すような強い痛みで、典型的な神経痛です。鼻や口の周囲、頬部、歯肉が痛みます。誘発部位(trigger zone)と呼ばれ、触ると痛みを誘発する部位があることがあります。痛みが強いときには「風が当たるのも嫌」と感じるようになり、歯磨きや食事、ひげ剃りをしにくくなります。ひどい場合には話をするのも嫌というようになります。虫歯のあるような場合には、歯痛と間違え抜歯をしてしまう人もいるので注意が必要です。

検査成績

 最近のMRI画像の進歩により血管の圧迫を確認できるようになってきました。血管の圧迫を証明することは、他の疾患による顔面けいれんや三叉神経痛を除外するために重要です。CISSやFIESTAなどの撮影法では、脳神経や血管を詳細に描出することができます。一方で、MRAと呼ばれる脳の血管を描出する方法の元画像では、周辺脳との位置関係を把握しながら血管の場所を見つけることができます。両者を総合することで、圧迫血管を判断することができます。



 顔面けいれんのMRI画像。左は脳や脳神経の形を重視した画像。青い矢印の部分に顔面神経が見えています。右は血管が白く見えるようにした画像。黄色の矢印の部分にある血管が責任血管です。両方の画像を比較しながら判断することにより、顔面神経の圧迫を知ることができます。


診断・鑑別診断

顔面けいれんの鑑別診断


 眼瞼けいれん(両側の眼瞼のけいれん)、顔面ミオキミア、チック、Meige症候群など


三叉神経痛の鑑別診断


 帯状疱疹後三叉神経痛、多発性硬化症、腫瘍による三叉神経の圧迫(類上皮腫、髄膜腫、三叉神経鞘腫など)

治療

神経血管減圧術


 血管の圧迫がこれらの病気の原因なので、根本的な治療はこの血管を手術により移動させ、圧迫を解除することです。微小血管減圧術と呼ばれます。全身麻酔で耳の後下方の皮膚を切開して、骨に小さな穴を開け手術を行います。顕微鏡下に、顔面神経や三叉神経を露出して圧迫血管を移動させます。移動させた血管はテフロンなどの繊維で周囲の硬膜に癒着させたり、スポンジのクッションを入れたりして固定します。術後1-2日は頭痛、めまい、嘔気がありますが、速やかに消失します。三叉神経痛の場合には手術直後より痛みが消失していることが多いですが、顔面けいれんの場合には直後よりけいれんが消失している場合と、1週間から1ヶ月程度をかけて徐々にけいれんが消失していく場合があります。顔面けいれん・三叉神経痛ともに、手術によって約8割で症状は消失し、約1割で軽快します。無効例が1割程度にあるとされています。手術の合併症としては、顔面神経の障害により顔の麻痺がみられることがあります。麻痺の程度が軽い場合や、遅発性におこった顔面神経麻痺の場合は比較的速やかに回復してきます。また、顔面神経のすぐ隣にある聴神経の障害により手術側の難聴が起こることがあります。この予防のためにABRという電気反応の検査を行いがら手術を行います。その他の合併症として、髄液漏、髄膜炎、創部感染、嚥下困難、顔面のしびれ、眼球運動障害、脳出血、脳梗塞、肺炎、深部静脈血栓症・肺塞栓症などがおこることがあります。


その他の治療法

顔面けいれん


 薬物療法としては、ジアゼパム、クロナゼパム、バクロフェン、カルバマゼピンなどが使われますが、あまり効果のないことが多いとされています。 2000年より本邦においても片側顔面けいれんに対するボツリヌス毒素の局所注射による治療が可能になりました。顔面表情筋に直接注射をしてけいれんを止めます。A型ボツリヌス毒素により神経筋接合部でのアセチルコリンの放出を抑えることで効果を発揮します。ただし効果は3~6ヶ月しか続かず、効果が切れてきたところで再度注射をする必要があります。


三叉神経痛


 軽度の三叉神経痛の場合には、まずカルバマゼピンやフェニトインの内服から治療が始められます。服薬開始当初はふらつき、めまい、眠気、嘔気などの副作用を感じることがありますが、内服を続けるうちに慣れていきます。副作用により薬の内服ができなかったり、痛みが強くて大量の薬でないと痛みをコントロールできない場合には他の治療法を考えます。

予後

 顔面けいれんや三叉神経痛の症状は緩解増悪が見られることはあるものの、基本的に進行性です。顔面けいれん三叉神経痛ともに、手術により治癒した場合でも再発することがあります。

(MyMedより)推薦図書

1) 小林武夫 編:顔面筋の異常運動 片側顔面痙攣と病的共同運動の臨床,金原出版 2002

2) 栢森良二 著:顔面神経麻痺のリハビリテーション―動画DVD付,医歯薬出版 2010

3) 佐々木 真理 著:塗って覚えて理解する!脳の神経・血管解剖,メディカ出版 2008

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