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Thromboangiitis Obliterans Buerger's disease
若年の喫煙男性に発症する原因不明の血管炎である。従来の本邦における末梢動脈閉塞の主たる原因疾患であったが、生活の欧米化が進むにつれ閉塞性動脈硬化症が激増し、それとともに新規発生は激減してきている。
全層性の血管炎にともなう末梢動脈閉塞である。従来から喫煙の関与が報告されているが、血管炎自体の病因自体は解明されていない。厚生労働省難治性血管炎調査研究班において疫学的臨床的検討が継続されてきた中で、血管炎を惹起する因子として、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、抗内皮細胞抗体 (AECA)などの自己抗体や内皮細胞上の細胞接着因子の関与が挙げられてきた。またさらに歯周病との関係が報告されているが、はっきりとした原因は未だ解明されていない。
バージャー病の診断は、厚生労働省難治性血管炎調査研究班による診断基準(表1)によりなされる。ASOも含めた末梢動脈疾患ではこれまでFontaine分類による重症度分類が行われてきたが、診断基準もこれに準じた自覚症状にて表記されている。

表1. Buerger病診断基準
軽症の場合、指趾の冷感、痺れ感(FontaineI度)のみを訴える。重症になるに従い、間歇性跛行(FontaineII度)、安静時痛 (FontaineIII度)や虚血性潰瘍(FontaineIV度)を呈する。これら動脈系の症状に加えて、遊走性静脈炎を呈することも知られている。(表 2)

表2. Fontaine分類
冷感や間歇性跛行などの比較的軽い症状を呈して受診する場合もあるが、初診時に既に安静時痛や虚血性潰瘍を呈していることも少なくない。
血液生化学検査に特別な異常を認めることは少ない。虚血性潰瘍を呈する場合には軽度の炎症所見を認めるが、潰瘍壊死部に細菌性感染が認められる場合にはその限りではない。
非侵襲適検査では、ABI(Ankle Brachial Pressure Index)が一般的に用いられるが、足部の血管が侵された場合は、ABIでは虚血の程度は評価できない。また潰瘍形成や安静時痛を呈する急性増悪時には ABIが0であることも稀ではない。ただし寛解期には0.2程度に低下している症例においても社会生活を送ることが可能であることが多い。
閉塞部位の確認や手術適応の決定には、血管撮影が必須である。その特徴は(1)膝関節や肘関節より末梢に病変を認める。(2)中枢の主幹動脈に病変を認めず、壁はsmoothである。(3)血管閉塞や途絶、先細り、コルク栓抜き状、樹根状、橋状といった特徴をもつ。ただし、TAOは主幹動脈の中でも末梢側の血管の侵されることから、一般的に間欠性跛行に対して血行再建術を行うことは少なく、その場合には現在はCTアンギオで血行動態を検討することが可能である。
安静時痛、虚血性潰瘍を認める場合には、SPP(skin perfusion Pressure)が治癒の可能性を予測するのに有用である。SPPが40mmHg以上である場合には、保存的治療により潰瘍の治癒が得られることも多い。
TAOの診断基準は表1のように定められており、基本的には除外診断のすえ確定診断される。ただし、血管造影像は特異的であり、教科書的にCork Screwと称される造影像が認められる場合には本疾患と考えてよい。この像は、閉塞し主幹動脈の外膜の小血管が側副血行路として発達したものである。ごく稀に下腿動脈の中枢の動脈に炎症が及び大腿動脈や腸骨動脈に閉塞の認められることもある。
鑑別疾患として、同様に末梢の血管炎をきたすことの多い膠原病が挙げられる。その他若年発症したバージャー病症例が、年齢が進むにつれ閉塞性動脈硬化症を合併して重症虚血に陥ることもある。
治療の第一歩は、禁煙であり、禁煙なくしてTAOの治療は成立しない。
間歇性跛行までの比較的軽症のTAOの場合、禁煙に加えて、抗血小板剤の内服により寛解が得られる場合が多い。安静時痛や虚血性潰瘍の重症症例に対しては、末梢の下腿3分枝のいずれかにおいても足関節レベルでも吻合可能な血管が認められる場合には自家静脈を用いたdistal bypassを行う。適切な自家静脈がなかったり、吻合可能な動脈のない場合には腰部交感神経節切除が行われる。上肢の場合、下肢の場合と異なり、血行再建が必要となることはほとんどなく保存的治療もしくは胸腔鏡による胸部交感神経節切除により軽快することが多い。近年、血管新生療法が本疾患に有効であるとの報告がなされている。幹細胞や各種増殖因子が使用されているが、保険適応とはなっておらず各施設における治験の段階である。
保存的治療にしろ外科的治療にしろ、いったん寛解に至った症例では、禁煙が遵守されている限りにおいては症状の再燃することは少なく、再燃した場合にも重症化することは非常に稀である。しかしながら、喫煙を再開すると、症状再燃も高頻度となり、重症化して大切断にいたることも稀ではない。
虚血肢の予後は、必ずしも良好とはいえず、全体として15-20%の症例において下肢大切断にいたる。しかしながら上肢においては大切断に陥ることはほとんどなく、重症症例においてもほとんどの症例において指切断でとどまる。また若年発症であるため、高齢になった際に、高血圧や糖尿病、高脂血症などを認め閉塞性動脈硬化症を合併する症例も認められ、大切断にいたる症例も認められる。
生命予後は、基本的に健常人と同様良好とされる。ただし、喫煙者がその大多数であるために、高齢になるまで経過を追うと、肺癌や食道癌に罹患する症例も見られ、注意が必要である。
1) 宮田哲郎 編集:一般外科医のための血管外科の要点と盲点 (Knack & Pitfalls),文光堂 2010
2) 横井良明・河原田修身 編集:重症虚血肢の診断と治療,メディアルファ 2007
3) 中井祐之 著:大学生のための禁煙講座―21世紀 禁煙化社会から取り残されないために,牧歌舎 2006
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