中耳炎・外耳炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

中耳炎・外耳炎(ちゅうじえん・がいじえん)

otitis media / otitis externa

執筆者: 喜多村 健 岩崎 朱見

概要

 耳は3つのparts,外耳・中耳・内耳にわけられ,外耳・中耳に炎症をきたした状態が外耳炎・中耳炎である.

 主要な中耳炎として急性中耳炎,滲出性中耳炎,慢性中耳炎(化膿性中耳炎,真珠腫性中耳炎(先天性,後天性)があり,外耳炎では急性外耳道炎,外耳道湿疹がある.

 中耳炎・外耳炎はともに小児では比較的頻度の多い疾患である.

 以下,これらの疾患について記載した.

病因

 後述の病態生理参照.

病態生理

中耳炎の病態生理

急性中耳炎

 かぜや上気道の感染の後,または同時期に耳管を経由し感染するという経耳管感染が最も多い.まれには血行を介した感染,鼓膜穿孔がみられる場合の外耳道を介した感染もある.

 経耳管感染では,上気道感染により耳管に充血・浮腫が生じてその内腔が閉じた結果,中耳の換気障害が生じる.さらに,中耳の粘膜に充血・浮腫,分泌亢進の変化をおこし,中耳に分泌液が貯留する.この貯留液は膿性となり,鼓膜の発赤・肥厚が強くなり疼痛も増す.炎症が激しい場合には,分泌物の内圧と鼓膜組織が壊死することで鼓膜が自然に穿孔することがある.鼓膜が穿孔した場合は中耳内の貯留液は排膿され,疼痛も中耳内圧が低下することで減少する.その後,穿孔が自然に閉鎖,粘膜の浮腫・肥厚が軽快し,治癒する.   小児に急性中耳炎が多いのは,上気道感染が小児に多く,小児の耳管の特徴による.  上記病態の過程で,粘膜病変が残り耳管も十分開通されない場合は,滲出性中耳炎へ移行する.また,鼓膜穿孔の治癒が障害されると慢性化膿性中耳炎となる.

注釈1

滲出性中耳炎

 耳管の機能不全に伴い,鼓室の換気が悪くなり,中耳内が陰圧になると周囲の毛細血管から中耳内への液体の漏出,粘膜の分泌亢進が生じ,中耳に液体が貯留する.液体の性状は初期にはさらさらとした漿液性のものであるが,慢性的経過では粘稠度が高くなる.  急性中耳炎の経過に引き続くものと,滲出性中耳炎単独の発症とがある.

慢性中耳炎

慢性化膿性中耳炎

 慢性化膿性中耳炎は鼓膜に穿孔を認め,穿孔より耳漏が持続するあるいは耳漏の出現・消失を反復する状態である.急性中耳炎や滲出性中耳炎の反復につづいて生じる.炎症の反復の要因としては小児の耳管の特徴,鼻副鼻腔炎の反復,慢性の耳管から中耳の粘膜の炎症があげられる.

真珠腫性中耳炎

 真珠腫性中耳炎とは中耳に,角化扁平上皮が存在する状態である.先天性のものと後天性のものがある.
 ・先天性真珠腫:中耳腔に角化扁平上皮が遺残することより生じるといわれている.
 ・後天性真珠種:後天性では外耳道や鼓膜の角化扁平上皮が中耳腔に侵入することにより発生する.
  背景に耳管の機能不全や中耳粘膜の病変,乳突蜂巣の発育不良が認められることが多い.

外耳炎の病態生理

 外耳道は,外耳道孔(いわゆる耳の入り口)から鼓膜までの通路で外側1/3の軟骨部と, 内側2/3の骨部(深部)からなる,軟骨部には皮脂腺,耳垢腺という分泌する腺がある.

急性外耳道炎

 外耳道の一部におきる限局性外耳道炎と,外耳道の全体に生じるびまん性外耳道炎があり,限局性外耳道炎は耳垢腺,皮脂腺の感染により生じる.いずれも耳かきや水泳などによる刺激がきっかけとなる.

耳道湿疹

 アレルギー体質などの体質性の要素に外耳道の皮膚の刺激が加わることで生じる.刺激として中耳炎の経過中に生じた耳漏や薬剤,入浴剤,補聴器のイヤーモールドなどがある.掻痒感により湿疹を掻いて感染が生じ,急性外耳道炎と同様の病態が生じることがある.

臨床症状

自覚症状

中耳炎の自覚症状

急性中耳炎

 耳痛が最初の症状である.耳痛は時に拍動性の強い痛みとなる.鼻汁,鼻閉などのかぜ様症状を同時に生じていることが多い. 乳幼児では耳痛を直接訴えないので,発熱,啼泣,不機嫌,耳に手をやるなどの症状になる.  発熱,耳漏を認めることもある.

滲出性中耳炎

 トンネルの中に入ったような耳閉感,軽度難聴が主な症状であり,耳痛はない.  耳の中で音がするという症状のこともある.  幼少時では自分からこのような症状を訴えることは少なく,テレビのボリュームが大きい,呼んでも気づかないと家族が心配して来院して診断されたり,3歳児検診で偶然発見されることも多い.

慢性中耳炎

・慢性化膿性中耳炎
 繰り返す耳漏,難聴が主な自覚症状である.耳閉感,耳鳴があることもある.

・真珠腫性中耳炎(先天性,後天性)
 先天性真珠種では初期には症状のないことが多い.難聴,耳鳴,頭重感を主な症状とする.感染すると,急性中耳炎症状である耳痛,耳漏などを生じることもある.

外耳炎の自覚症状

急性外耳道炎

 耳痛が主な症状であり,耳漏を伴うことがある.食事をとる際などの顎の関節運動にて痛みが増強する.外耳道の腫脹がある際には軽度の難聴がみられる場合がある.

外耳道湿疹

耳の掻痒感(かゆみ),灼熱感(あつい感じ),耳痛,耳漏が主な症状である.掻痒感のために耳かきを繰り返した結果,感染を起こし,急性外耳道炎の症状を伴うことがある.

他覚症状

中耳炎の他覚症状

急性中耳炎

 他覚症状としては発熱,耳漏を認めたり,かぜ様症状を呈していることがある. 前述のように乳幼児では耳痛を直接訴えないので,発熱,啼泣,不機嫌,耳に手をやるなどの症状となる.

滲出性中耳炎

 難聴の他覚症状として,テレビのボリュームが大きい,呼んでも気づかない,よく聞きかえすなどがある.

慢性中耳炎

・慢性化膿性中耳炎
 耳漏を繰り返し,難聴の他覚症状(前述)があること.また,中耳炎の反復の既往があることである.

・真珠腫性中耳炎(先天性,後天性)
 先天性真珠腫の初期は無症状のことも多い.

 後天性真珠腫では慢性化膿性中耳炎と同じような症状を呈する.

 真珠腫に感染がおきた場合,耳漏が生じることがある.

外耳炎の他覚症状

急性外耳道炎

 耳介をひっぱる,耳珠を圧迫することで痛みが生じる耳介牽引痛,耳珠圧迫痛が特徴的である.

 炎症の程度が重度の場合には耳周囲の腫脹(耳介聳立)が生じることがある.

外耳道湿疹

耳介,外耳道入口部の発赤・腫脹や水疱,びらん,さらさらした漿液性の分泌物を認める.

検査成績

中耳炎の検査成績

耳鏡所見

注釈2

・急性中耳炎:耳鏡による鼓膜の観察で,急性中耳炎は診断が可能である.

 鼓膜所見は,初期にはツチ骨柄にそって血管の拡張が見られる.炎症が高度になると鼓膜全体の血管が拡張し鼓膜は充血する.また,鼓膜は肥厚,膨隆した結果,ツチ骨柄の輪郭は不明瞭となる.鼓膜を通して貯留液が透見できる.また,鼓膜に水疱を形成することもある.治癒過程の途中で鼓膜の発赤・肥厚は消失し,鼓膜穿孔を生じる場合にも多くは閉鎖する.

・滲出性中耳炎:耳鏡による鼓膜の観察で診断が可能なことが多い.

 貯留液が鼓膜を通してみることができる.鼓膜全体が貯留液で満たされている場合には鼓膜は透明でなく有色となる.黄色,オレンジ色,あるいは高度な炎症の場合には青色と貯留している期間により色は異なる.貯留液が少量の場合には鼓膜を通して貯留した液体の水面が観察できる.また鼓膜が内陥している場合にはツチ骨の短突起が正常の場合より傾いて見える.

・慢性中耳炎

 ・慢性化膿性中耳炎鼓膜は穿孔し,残っている鼓膜は充血,肥厚して一部石灰化が見られることもある.

 ・真珠腫性中耳炎(先天性,後天性)

 先天性では鼓膜に穿孔がなく,鼓膜を通して白色の真珠腫が確認できることが多い.感染を合併すると穿孔を起こし,後天性と同じ所見をみる場合もある. 

 後天性では鼓膜の内陥や癒着を認め,鼓膜周囲の骨が欠損して内部に白色の角化物を見る.鼓膜の上方から進展する弛緩部型,鼓膜の中心部から進展する緊張部型がある.感染が生じると穿孔を起こし耳漏を認める.

細菌学的検査

 急性中耳炎では肺炎球菌,インフルエンザ菌,モラキセラ・カタラーリスが3大起因菌である.肺炎球菌,インフルエンザ菌ではペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP), β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)を代表とする薬剤耐性菌が近年増加傾向である.

聴力検査

 中耳炎全般に伝音難聴を示す.ただし,中耳の炎症が内耳にまで波及した場合には感音難聴を合併し,中耳炎の炎症が内耳にまで及んでいる徴候となる.

注釈3

注釈4

ティンパノメトリー

 滲出性中耳炎で有用な検査であり,B型あるいはC型が見られる.しかし,泣いてしまうと施行ができないため,低年齢では施行が困難なことが多い,   【注釈5

画像検査

・急性中耳炎:画像診断を行うことはまれである.
 急性乳突洞炎などを疑った場合に施行する.  乳突洞炎では骨壁の浸食性・破壊性変化を認める.

・滲出性中耳炎:ほとんど画像検査を施行しない.
側頭骨CTでは,鼓室,乳突洞の含気腔は軟部陰影に置き換えられるが,骨の浸食性変化は見られない.おおむね乳突洞蜂巣の発達は良好である. 

・真珠腫中耳炎:骨の浸食性変化の程度,病変の進展範囲を診断するのに重要な検査である.
先天性では,初期には耳小骨内側に限局する軟部陰影を認め,乳突洞の発育は良好である.後天性では,乳突洞の発育が悪いことが多い.いずれも進行すると耳小骨破壊,乳突洞への進展などを示す.

注釈6

外耳道炎の検査成績

耳鏡所見

・急性外耳道炎

外耳道軟骨部の発赤,腫脹があり,外耳道狭窄がみられる.鼓膜は正常のことが多い. 

・外耳道湿疹

耳介,外耳道入口部とともに軟骨部外耳道において皮膚の発赤,腫脹,びらん,さらさらとした漿液性分泌物を認める.鼓膜は正常である.

細菌学的検査

耳漏を伴う場合に本検査を施行する.起因菌はブドウ球菌,溶連菌のことが多い.

その他

外耳道炎は,聴力は通常正常である.

外耳道の腫脹により音を伝えるスペースがない場合,聴力検査で伝音難聴を示す.

診断・鑑別診断

 診断においては前述の自覚症状,他覚症状,検査成績よりおこなう.

中耳炎と外耳炎の鑑別診断

 急性外耳道炎と急性中耳炎は,いずれも疼痛,耳漏を伴い鑑別に困難なことがある. 急性外耳道炎は発熱などの全身症状は通常はなく,外耳道の腫脹が主な所見で,鼓膜の炎症はあっても軽度である.また,急性外耳道炎は耳介牽引痛,耳珠圧迫痛を伴う.

 滲出性中耳炎は耳痛の訴えがなく,急性中耳炎,外耳道炎とは鑑別は容易である.

 また,急性乳様突起炎,顔面神経麻痺,めまいなどの中耳炎に伴う重大な合併症の有無も検討する.

注釈7

注釈8

急性乳突洞炎・乳様突起炎

急性乳突洞炎・乳様突起炎は急性中耳炎の合併症として重要な疾患である.

原因菌としては中耳炎と同様であるが,耐性菌のことが多い.

炎症が乳突洞,乳突蜂巣に波及して骨膜炎をおこす状態であり,膿瘍を生じることもあ  る.(症状及び鑑別は耳介聳立を参照)

 点滴治療や鼓膜切開による排膿,骨膜の膿瘍部の穿刺や切開にて軽快する場合もあるが,顔面神経麻痺などが生じるなど炎症が高度な場合には,手術による病変の開放を行うこともある.

注釈9

注釈10

外耳炎の鑑別診断

・耳垢栓塞

 耳垢は,外耳道が完全に閉塞するまでは無症状であるが,外耳道を閉塞すると難聴や耳閉感,疼痛の症状が出る.軟性の耳垢は柔らかく,耳漏と見間違えることがある.  耳垢栓塞と中耳炎を合併していることもある.

・外耳道異物

 小児の耳痛は,外耳道の異物のことがある.幼少児では異物に気づかないまま放置されていることがある.その場合は耳痛や周囲の外耳道の炎症を引き起こし,外耳道炎の症状として気づかれる.

耳痛があるが,鼓膜や画像所見に異常がみられない場合

 耳痛が関連痛による可能性がある.外耳・中耳の支配神経として三叉神経,舌咽神経,迷走神経が分布しているからである.
三叉神経第3枝である耳介側頭枝:鼻副鼻腔,側頭部頭皮,顎関節の病変の有無の検索
舌咽神経(Jacobson’s branch),迷走神経(Arnold’s branch):扁桃や咽頭病変の有無の検索を行う.

注釈11

治療

中耳炎の治療

急性中耳炎

症状の程度,経過にあわせて治療方法を選択する.

使用方法は下記の小児急性中耳炎ガイドラインを参考にし,個々の状態に応じて治療方法を選択する.

注釈12

 鼓膜の発赤・腫脹が高度なとき,耳痛が高度あるいは顔面神経麻痺,感音難聴などの合併症を呈している急性中耳炎では,排膿を目的に鼓膜切開を施行する.  排膿が既にあれば耳内を清掃し,耳漏を吸引・除去する  中耳炎は,耳痛や発熱の症状が軽快しても炎症が持続していることもあるので,完治するまでの治療が必要である.  低年齢,保育園児は重症化しやすいので注意を要する.

日常の注意点 身体的な安静を指導する.全身状態が良好であれば,必ずしも自宅安静は必要ではないが,運動は急性期には症状を悪化させるので差し控える.  



滲出性中耳炎

 鼻副鼻腔や耳管周囲の炎症を治療することが中耳病変の治癒につながる.

 鼻の治療:アレルギー性鼻炎・鼻副鼻腔炎を合併している場合にはその治療を行う.一般的には鼻処置やネブライザー,内服治療を行う.  急性期で鼻汁が膿汁の場合には抗菌薬を短期間使用する.耐性菌が疑われる場合には,後鼻腔の細菌検査を行ってから使用する薬剤を決める.また,マクロライド系の抗菌薬の少量投与も有効である.

耳管の治療:耳管通気も有効である.

上記を施行しても貯留液を認める場合には鼓膜切開の施行を検討する.長期にわたる場合には鼓膜チューブ留置を検討する.幼少児で外来にて鼓膜の処置が難しいと思われる症例では,全身麻酔にて鼓膜切開や鼓膜チューブ留置を検討する.アデノイド肥大が原因の一つと考えられる場合にはアデノイド切除術も同時に検討する.  鼓膜チューブ留置の期間は中耳の換気を保つ意味では長期が好ましいが,穿孔を残すこともあるので,その両方を考慮して期間を決定する.

注釈13

日常の注意点

 鼻をすすらないように,なるべく鼻の換気をよくする.鼓膜切開を行い,鼓膜に穴が開いている場合,鼓膜チューブを留置している場合には耳に水が入らないように耳栓などを使用し気をつける.

慢性化膿性中耳炎

 中耳の換気をよくすることが治療の基本である.

 耳漏が認められる場合には耳漏を吸引し,換気をよくし乾燥させるようにする.

 感染を起こし耳漏が多量に認められている活動期には抗菌薬の内服や点耳薬で耳漏を止める.点耳薬は内耳を障害させないものを選択する.

 穿孔した鼓膜は穿孔の周りの上皮が上皮化して自然には閉鎖をしないことがある.その際には手術にて穿孔を閉鎖する手術を検討する.小児では耳小骨の連鎖は保たれていることが多く,鼓膜穿孔閉鎖の手術では耳管機能が良好,手術時に耳漏が出ていないこと,パッチテスト(一時的に和紙などで穿孔を塞ぎ,聴力の改善の有無を見る検査)で結果がよいことが条件としてあげられる.

真珠腫性中耳炎(先天性,後天性)

感染を合併している時期には,慢性化膿性中耳炎と同様に治療を行う.

長期的には真珠種を除去し,聴力を保存・改善することが目的となる.手術法に鼓室形成術があり,真珠種の除去,伝音系の温存または再建を行なう.

小児では進展が早いこと,手術の際に一度で真珠種を除去することが難しく,何回かにわける段階的鼓室形成術が施行されることが多い.

外耳炎

・急性外耳道炎

 局所を清掃し,抗菌薬の軟膏や点耳薬の局所塗布を行う.  また,炎症が高度の場合には抗菌薬の全身投与を行う.  痛みに対しては鎮痛剤を使用し,外耳道内の膿瘍を認める場合には切開排膿を施行する.

・外耳道湿疹

 外耳道を刺激しないように清掃し,副腎皮質ホルモンの軟膏を塗布する.また,掻痒による皮膚炎をさけるため,綿棒などで外耳道を触らないように促す.また,掻痒感が強い場合には抗ヒスタミン剤の内服を施行する.

日常の注意点

 外耳道の刺激になるような,耳かきや耳に手をいれたりする行動を控える.乳幼児では手袋を装用して耳を傷つけないように保護することもある.

予後

 急性中耳炎の多くは2〜3週間で治癒に至る.一部で滲出性中耳炎に移行する.鼓膜穿孔を残して治癒し,慢性中耳炎に移行する難治例もある.

 滲出性中耳炎は難治症例でも耳管機能が発達した10歳頃に治癒することが多いが,一部に治癒しない症例もある.癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎などに移行する例もあるため,治癒しない症例では経過観察が重要である.

 慢性中耳炎は,長く罹患している場合は聴力の悪化が認められる.

 真珠腫性中耳炎は,前述のように手術が基本であるが,先天性真珠腫は真珠腫の遺残,後天性真珠腫は再発に注意し,長期の経過観察が必要である.

 また,慢性化膿性中耳炎・真珠腫性中耳炎の感染,急性中耳炎の合併症として,まれではあるが乳様突起炎,顔面神経麻痺,内耳炎,頭蓋内合併症(硬膜外膿瘍,脳膿瘍,静脈洞炎)などが起こりうるのでめまいの症状や顔の動き,全身状態に注意を要する.

参考文献

尾尻博也著: 頭頸部の臨床画像診断学. 南江堂, 東京, 2005, pp295-364

川城信子編: 診療プラクティス 小児の耳鼻咽喉科診療. 文光堂. 東京, 2002, pp88-103

野村恭也他編著: 新耳鼻咽喉科学第10版. 南山堂, 東京, 2004, pp.115-168

小児急性中耳炎ガイドライン委員会編: 小児急性中耳炎ガイドライン, Otol Jpn16(3): Suppl.1-34,2006

神崎仁, 小川郁編: 耳鼻咽喉科薬物療法マニュアル. 金原出版. 東京, 1997, pp125-135

野末道彦, 神崎仁, 飯沼壽孝編: 耳鼻咽喉科診療マニュアル. 金原出版. 東京, 1997, pp182-192

三谷幸恵他: 小児内科 Vol.34 No.4, 2002-4, pp467-468

注釈


注釈1

耳管 上咽頭と中耳をつなぐ管であり,中耳の換気の役割を果たしている. 小児の耳管は成人と比較して,以下の特徴がある.

・解剖学的に長さが短く,角度も水平に近い.
・耳管軟骨が脆弱であることなど機能が未熟.
以上の特徴により,経耳管感染が生じやすい.  また,上咽頭の耳管の入り口が,物理的ならびに機能的に閉鎖されると耳管の機能不全を起こす.



-注釈2
耳鏡 耳の中を見るために使用する道具であり,外耳道の毛などが邪魔にならずに内部を観察ことができる.照明を用いて肉眼や顕微鏡下で使用する.また,鼓膜を拡大して見ることのできる拡大耳鏡がある.耳鏡の他にはファイバースコープで耳内を観察することもある.



-注釈3
伝音難聴 音を伝える耳の構造の,外耳・中耳・内耳の中で音を伝える部位の,外耳・中耳が原因で難聴がひきおこされた状態をいう.



-注釈4
感音難聴 音を伝える耳の構造の,外耳・中耳・内耳の中で音を感じ取る場所である内耳が原因で難聴がひきおこされた状態をいう.


-注釈5
ティンパノメトリー外耳道をプローブで密閉し,外耳道の気圧を+200から−200daPaと変化させた時の鼓膜の動きを見る検査である.

・A型:ティンパノメトリーのピークが+100daPa以内であるもの
・B型:ティンパノメトリーのピークがみられなく,平坦な曲線であるもの
・C型:ティンパノメトリーのピークが−100daPa以下であるもの



-注釈6
耳小骨 中耳にあり,音を伝える小さな骨の構造物のこと.ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨の3つの骨からなる.鼓膜とツチ骨が接しており,キヌタ骨・アブミ骨の順に音を増幅して伝える.アブミ骨は内耳への入り口となる.



-注釈7
顔面神経麻痺 耳の近くには顔を動かす神経である顔面神経が走行しており,炎症により神経が障害されると顔の動きがにぶくなる顔面神経麻痺が生じることがある.


-注釈8
内耳炎によるめまい

 内耳の機能には音を感じる機能と体のバランスをとる機能の2つの機能があり,それぞれ蝸牛,耳石器・三半規管がこれを担っている.中耳の炎症が内耳にまでおよんだ場合,音を感じる機能が障害され感音難聴になったり,体のバランスをとる機能が障害されめまいを生じることがある.


-注釈9
鼓膜切開 鼓膜に鼓膜切開刀やレーザーなどで穴をあけ,中耳にたまった貯留液や膿汁を出す手技である.鼓膜切開で作った穴は自然に塞がることがほとんどであるが,まれに穿孔を残すことがある.


-注釈10
耳介聳立(じかいしょうりつ)
耳介の後部が腫脹することで,普通の位置より耳介が立って見えることをいう,急性外耳道炎と乳様突起炎が鑑別にあがるが,治療法や重症度が異なるので注意を要する.

急性外耳道炎と乳様突起炎の鑑別 (表1)




-注釈11
関連痛:実際に痛みを起こしている場所から遠いところで痛みが起きていると感じる痛みのこと.同じ知覚神経が走行している部位で生じる.


-注釈12
小児急性中耳炎診療ガイドライン 2006年に日本耳科学会,日本小児耳鼻咽喉科学会,日本小児感染症研究会の代表からなる作成委員会が作成した急性中耳炎のガイドラインがある.

小児急性中耳炎の診療スコア 年齢と臨床症状,鼓膜所見のスコアの合計点で重症度を3段階に分類する.  3歳未満は重症化しやすいため,年齢の項目が追加となっている. (表2)




治療アルゴリズム 一般的なケースで推奨される方法を軽症,中等症,重症にわけて示している.  これらを背景に固有の状況を考慮して治療をする必要がある.

〜軽症 (スコア0〜5 点)〜(表3) 
 


〜中等症(スコア6〜11点)〜(表4)



〜重症 (スコア12点以上)〜(表5)



いずれの症例においても

・耳痛,発熱(38.5度以上)の時にはアセトアミノフェン10mg/kgを頓用で使用する.
・鼻所見がある際には鼻処置を施行する.
・上咽頭(鼻咽腔)細菌検査を施行する

また,内服投薬時にはビフィズス菌製剤,耐性乳酸菌製剤を加えること,成人の常用量を超えないことに注意をする.


-注釈13
鼓膜チューブ留置鼓膜切開では鼓膜にあけた穴が数日で自然に塞がる.滲出性中耳炎を繰り返している場合に,鼓膜に穴があいた状態を維持して,鼓膜を通して中耳の換気を保つために,切開部分にチューブを挿入する手技である.

執筆者による主な図書

1) 喜多村 健・森山 寛:NEW 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学,南江堂

2) 日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会、日本耳鼻咽喉科感染症研究会:小児急性中耳炎診療ガイドライン 2009年版,金原出版
 

執筆者による推薦図書

1) 切替一郎・野村恭也:新耳鼻咽喉科学,南山堂

(MyMedより)その他推薦図書

1) 老木浩之 著:中耳炎 (専門のお医者さんが語るQ&A),保健同人社 2000

2) 上出洋介 著、森山寛 監修:内視鏡画像による急性中耳炎・鼓膜アトラス,メジカルビュー社 2005
 
3) 佐久間孝久 著:アトラスさくま小児咽頭所見 第2版―フルカラーオリジナル症例写真284点,丸善プラネット 2008

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