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最終更新日:2009.05.11

混合性結合組織病(こんごうせいけつごうそしきびょう)

Mixed Connective Tissue Disease(MCTD)

執筆者: 横田俊平

概要

概要  
  小児期発症の混合性結合組織病(MCTD)は、臨床像が多彩であり、疾患の長期経過・予後の観察が十分でないため疾患そのものを考える過程は複雑である。成人では若年者ほど全身性エリテマトーデス(SLE)様所見が強く、老年者ほど強皮症(SSc)様所見が強い傾向から推察されるように、小児例の臨床像はSLE様所見が多くSSc様所見が少ない(1)。このことからSLEとの鑑別が重要になるが、さらに複雑なことにはMCTD疾患標識抗体である抗U1-RNP抗体とともに、SLE疾患標識抗体である抗dsDNA抗体を有する「SLE-MCTD中間型病態」も存在する。このような例では、SLEのループス腎炎、中枢神経ループスなど、またMCTDの肺高血圧症など、それぞれの疾患予後を念頭においた対応が必要になる。とくに肺高血圧症に対しては定期的な心超音波検査の励行が望まれる(2)。
 腎炎の併発は少ないが、組織分類上は膜性腎症(WHO分類Ⅴ型、Ⅴ+Ⅳ型)が多い。これまで膜性腎症は治療が困難であったが、マイコフェノレート・モフェチール(MMF)(セルセプト®)が、メザンギウム増殖性腎炎とともに膜性腎症の治療に用いられるようになり効果をあげている。
 日常生活の指導においては、小児期は絶えず成長と発達を遂げている時期であることを念頭に置き、また学業・進学などに支障が生じないように、治療法の選択や治療期間などについて配慮することが必要である5),6)

【疾患の概念】
 
小児期発症のMCTDの臨床像は、先行してRaynaud現象が出現し、数ヶ月から数年後に発熱、関節炎(痛)、筋痛・筋力低下、顔面紅斑を含む皮疹などの症状を伴って顕在化する。成人に比べSLE様所見が強く、SSc様所見や皮膚筋炎(DM)様所見を認める例は少ない。低補体性腎炎を伴う例は約7%あり併発例は難治のことが多く、また約1/3の症例でシェーグレン症候群を合併する。予後は、肺高血圧症の進展に依存している。
 

臨床症状

【症状・症候】
1.   Raynaud現象  Raynaud現象はMCTDの初発症状であることが多く、ほぼ全例にみられる。指動脈の可逆的なスパスムスによるもので、手指および足指の皮膚の蒼白化、チアノーゼ、紅潮を経て数10分で正常の色調に戻る。寒冷刺激や、精神的緊張により誘発される。冬季にRaynaud現象を繰り返すと、指尖部小潰瘍を形成し、甚だしい疼痛を訴える(3)。
2.   手指の腫脹と発赤 ソーセージ様手指を伴う手指の腫脹はMCTDに特徴的な所見であり、成人では頻度が高いが、小児では比較的少ない。同様の所見は強皮症の初期の浮腫期にも認められるが、小児期のMCTDでは徐々に進行するため、目立つことがない。手掌や手背と異なり、手指はつねに発赤した状態を呈し、冷たい。
3.   SLE様症状  SLE様症状として、発熱、顔面紅斑、リンパ節腫脹、多発関節炎、胸膜炎・心膜炎などを認める。関節症状は頻度も高く、若年性特発性関節炎と区別がつかない骨破壊像や関節変形をきたす例がある(4)。成人では混合所見に関節リウマチ様症状として加える考え方もある。腎炎は小児例では約7%に認めるが、ループス腎炎と異なるところはメザンギウム増殖性腎炎像だけでなく、膜性腎症の頻度が高いことである。SLEに比較すると腎炎の頻度は著しく低いが、MCTDの腎炎は難治例が多い。
4.   強皮症様症状  手指に限局した皮膚硬化、肺線維症、食道蠕動低下がみられることがあるが、小児では少ない。
5.   筋炎様症状  筋炎の所見として体幹近位筋の筋力低下、筋痛を認めることがあり、血清中のCK、アルドラーゼ、ミオグロビンなどの筋原性酵素・蛋白の上昇を伴う。筋炎症状も小児では比較的少ない。
6.   肺高血圧症  MCTDの予後に関わるもっとも重要な因子で、成人MCTDの死因の第一位を占める。成人ではMCTDの4%に併発するが、小児での頻度は不明である(5)。必ずしも肺病変が先行するわけではない。臨床像も病理像も、原発性肺高血圧症と区別がつかない。無治療例では2~4年の間に肺線維症が進行し、予後不良であったとの複数例の報告がある。年1~2回は心超音波検査を繰り返す。  

検査成績

【検査】
1.   自己抗体  MCTDの診断を確定する自己抗体が、抗U1-RNP抗体である。抗核抗体にも特徴があり、多くの例では高値陽性で(> 2560倍)、染色型は斑紋(speckled)型である。リウマトイド因子が約60%で陽性である。発症時、疾患活動性が高い例では、一過性に抗DNA抗体、抗Sm抗体などが低値陽性になることがあるが、治療の導入とともに消失していく。なお、SLEとMCTDの両方の自己抗体パターンを呈する例(中間型)があり(6)、このような例ではSLEとMCTDの双方についても経過観察が必須である。すなわちSLEとしてはループス腎炎、中枢神経ループスなど、MCTDとしては肺高血圧症への対応が必要である。 約40%の例で抗SS-A抗体が検出され、口唇生検でシェーグレン症候群の併発が診断される。
2.   一般検査所見  白血球数は5,000~8,000/ulの例が多く、SLEのように4,000/ul以下になることは少ない。血小板減少症を伴うことがある。疾患活動性が高い例では赤沈値亢進を認めるが、SLEとは異なりCRPも陽性となる。蛋白分画でγ-グロブリン分画が高値となり、IgGは2,000 g/dlを超える例が多い。 抗リン脂質抗体(ループス・アンチコアグラント、β2-GPI)が陽性で、PT正常、aPTT延長が認められれば、活動性の抗リン脂質抗体症候群であり、抗凝固、抗血栓療法の導入が必要である。 腎炎の併発例では低補体血症が進行しているが、C3正常、C4のみ低値の場合には膜性腎症を疑う。筋炎の併発は小児では少ないが、CK、アルドラーゼ、ミオグロビンとともに、FDP-EやD-dimerの検査を加える。
3.   画像所見  X線検査では、しばしば両側下肺野に肺線維症を認め、肺拡散能(DLco)の低下、%VCの低下を認める。後背部の肺野の所見を明らかにするために胸部CTスキャンを実施する。 MCTDの関節炎は、SLEとは異なり関節破壊の可能性のある関節炎である。関節腫脹を認める場合には、造影MRIも行うとよい。 筋の把握痛、筋力低下など筋炎の疑われる例には、臨床症状のある筋のMRI検査が有用である。T2強調で高信号部位を特定する。皮膚、皮下組織、筋膜、筋実質の区別を行う。
4.   腎生検所見  小児期のMCTDは約7%に腎炎を併発するので、尿所見、低補体血症などを呈する例では腎生検は必須である(7)。基本的にはSLEと同様にメザンギウム増殖性腎炎であるが、膜性腎症を伴う頻度が高い。また尿細管細胞に抗U1-RNP抗体が染色される。  

診断・鑑別診断

【診断】
 小児期発症のMCTDの診断は、成人とは異なる臨床像を呈するため、成人の診断基準では約2/3の症例が診断に至らない。そこで全国調査を基盤にして、Raynaud現象と抗U1-RNP抗体の存在を中核とした「小児MCTDの診断の手引き」が作成され用いられている(表1)(8)。この「小児MCTDの診断の手引き」の感度は、診断時89.4%、全経過95.5%、SLEに対する特異性は0.9である。   表1:小児MCTD診断のための手引き   Ⅰ. 中核的所見 1.     レイノー現象 2.     抗U1-RNP抗体陽性 Ⅱ. 臨床症状および検査所見 1. 手指の腫脹・浮腫 2. 顔面紅斑 3. 関節痛・関節炎 4. 筋炎(筋原性酵素上昇、筋電図所見、生検所見) 5. 高γ-グロブリン血症(蛋白分画の20%以上) 6. リウマトイド因子陽性 7. 血球数減少(白血球数<4,000/ul、血小板数<10万/ul) 以上の(Ⅰ)中核的所見2項目を満たし、かつ(Ⅱ)臨床症状および検査所見7項目中3項目を満たす場合、小児混合性結合組織病と診断する。  

治療

【治療】
1.   基本的な考え方  
薬物療法は、長期的視点に立ち、臨床症状の種類・重症度に応じて選択されるべきである。また、小児期発症MCTDは、寛解と増悪を繰り返すリウマチ・膠原病一般の特徴を有しており、増悪期を早期に把握して強力に炎症抑制を図ることにより、炎症の慢性化を防止する。 小児期はたえず成長と発達を遂げている時期であることを理解し、また学業・進学などに支障が生じないように治療法や治療期間について配慮する。たとえば寛解導入療法でのステロイド゙薬投与では、プレドニゾロンの蓄積を避け、入院期間を短縮するため、メチルプレドニゾロン・パルス療法を導入する。寛解維持にはマイコフェノレート・モフェチールを加え、ステロイド薬を少量にすることにより、ステロイド゙薬の長期投与に伴う副作用への配慮を行う。 Raynaud現象に対する効果的な治療法はない。日常的に手指の保温に努める、冬季にはプロスタグランデインの静注のために、週1回の通院を行う。最近、ボセンタンの効果が報告されているが、小児例の報告はない。
2.   日常生活の指導  
小児MCTDは慢性炎症性疾患であり、患児が学業期にあることに鑑み、治療や検査のみならず、学業も含めた生活全般にわたっての助言と指導、あるいは相談に十分な時間を割くようにする。Raynaud現象に対処するため、寒冷暴露を避け、保温に努めることを話す(表2)。   表2: 小児MCTDにおける日常生活への一般注意 ①    過労や寝不足を避ける。 ②    全身の保温に努める。 ③    Raynaud現象に対しては寒冷暴露を避け、「使い捨てカイロ」などの携帯を薦める。 ④    皮膚および爪周囲に外傷をうけないように注意する。  
3.   薬物療法
小児MCTDの臨床病態を以下の3段階に分け、各段階の臨床所見と治療法の実際について述べる。
(段階I) Raynaud現象や関節痛など軽微な自・他覚所見のみの場合 ①    非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を用いて対症的に経過をみてよい時期がある。なお診断が確定するまでの処置として同様の方法をとることがある。この段階の治療は長期的にみると過渡期的な治療になる。 ②    関節炎など少数の自・他覚所見に対しては、プレドニゾロン(10~20 mg/日)を投与し、反応をみて漸減し5~10 mg/日を維持量として経過観察する。
(段階 弛張熱、関節炎、筋炎、皮疹など定型的症状の発症、あるいは再燃時の対処 ①    初期治療としてプレドニゾロン(15~20 mg/日)の内服を行う。同時にマイコフェノレート・モフェチール(MMF)を併用することもある。プレドニゾロンは2~4週間を初期治療の目安として、以後漸減に入り、5~10 mg/日を維持量とする。 ②    約4週間の間に寛解に至らなければ、次の(段階III)に準じた治療に切り替える。 受診・診断確定までに長時間を経て、筋炎、関節炎などが進行している場合には、この間に寛解に入らなければ次の(段階III)に準じた寛解導入を行う。
(段階 段階IIの定型的症状に加え、①~⑥の所見がある場合この段階の治療は、以下の①~⑥の所見があり、重症度の高い小児MCTDに適応される治療である。また(段階II)の治療では寛解に入らない場合も適応となる。 ①    発熱の持続 ②    心膜炎、心筋炎などの心合併症 ③    胸膜炎 ④    低補体血症を伴う腎炎 ⑤    ネフローゼ型腎炎 ⑥    肺高血圧症  
1) 寛解導入療法   
メチルプレドニゾロン・パルス療法を第一選択として2クール実施する。1クールは、メチルプレドニゾロン 30 mg/kg/日(最大量:1 g/日)を3日間点滴静注とする。以下に、小児MCTDに対するメチルプレドニゾロン・パルス療法の注意点を挙げる ①    開始前後に眼圧測定、血圧測定、尿糖の検索を行う。 ②    眼圧が高い場合には緑内障点眼治療薬を用い、血圧が高い場合にはパルス療法の適応からはずす。 ③    尿糖は一過性に陽性になることがあり、治療後経過を追う。 ④    メチルプレドニゾロン 30 mg/kg/日の点滴静注は2時間以上かけて行い、同時にヘパリン、ウロキナーゼなどの抗凝固療法を必ず加える。点滴中の血圧のモニタリングは必須である。
2) 寛解維持療法
マイコフェノレート・モフェチール(MMF)はメチルプレドニゾロン・パルス療法開始とともに投薬を始める。経口プレドニゾロン後療法(15~20 mg/日)はメチルプレドニゾロン・パルス療法終了翌日より開始する。2~4週間後より漸減を始め、数週間ごとに2.5mg/日ずつ漸減し、5~10 mg/日にて寛解維持を行う。
3) 特殊な症状、緊急を要する病態に対する治療
(1)異常な高γ-グロブリン血症に伴う症状(呼吸障害、出血症状、全身痛など)を呈する場合には、血漿交換療法・血液浄化療法などが適応となる(9)。 (2)肺高血圧症、増殖性血管炎、急速進行性腎炎を伴う場合(最重症例)には、[段階III]の寛解導入療法に加え、シクロホスファミド・パルス療法を早期から導入する。
4.   その他の治療法
日常的な問題として肺高血圧症による日常動作の制限、Raynaud現象による手指・足指の指尖部疼痛・小潰瘍がある。プロスタグランデインなどの血管拡張薬、ボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)などを適宜使用する。 1)     Raynaud現象などに対して血管拡張薬、エンドセリン受容体拮抗薬が投与される。成人MCTDに準じて治療する。カルシウム拮抗薬、プロスタグランディン、ボセンタンなどを用いる。 2)     著しい免疫異常、低補体性腎炎の進行、血行障害の増悪に対して成人MCTDに準じて血漿交換療法も考慮される。しかし単独の治療法としての効果は一時的であり、一般に基礎的な薬物療法を行いつつ補完的治療法として用いる。

おわりに

 小児期発症のMCTDは、その疾患概念の普及が遅れているために小児科領域では診断が困難な疾患のひとつである。とくにリウマチ・膠原病は、個々の疾患がきわめて類縁の関係にあることも疾患概念の構築を難しくしている。しかし臨床所見と検査所見を車の両輪のようにして特徴を探っていくと、それぞれの疾患が明確に際立ってくる。MCTDについてもRaynaud現象を核にして臨床所見を組み立てていくことで、疾患の理解が容易になると思われる。

文献

1. Swart JF, Wulffraat NM. Diangostic workup for mixed connective tissue disease in childhood. Isr Med Assoc J 2008;10:650-2. 2. Michels H. Course of mixed connective tissue disease in children. Ann Med 1997;29:359-64. 3. Grader-Beck T, Wigley FM. Raynaud’s phenomenon in mixed connective tissue disease. Rheum Dis Clin North Am 2005;31:465-81. 4. Yang YH, Tsai MJ, Lin SC, et al. J Formos Med Assoc 2000;99:158-61. 5. Rosenberg AM, Petty RE, Cumming GR, et al. Pulmonary hypertension in a child with mixed connective tissue disease. J Rheumatol 1979;6:700-4. 6. Miyamae T, Ito S, Machida H, et al. Clinical features and laboratory findings in children with both anti-dsDNA and anti-U1-RNP antibody. Nihon Rinsho Menneki Gakkai Kaishi 2008;31:405-14. 7. Ito S, Nakamura T, Kurosawa R, et al. Glomerulonephritis in children with mixed connective tissue disease. Clin Nephrol 2006;66:160-5. 8. Yokota S. Mixed connective tissue disease in childhood. Acta Paediatr Jpn 1993;35:472-9.

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