骨嚢腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.12

骨嚢腫(こつのうしゅ)

Simple bone cyst (Solitary bone cyst, Unicameral bone cyst)

執筆者: 河野 博隆

概要

 骨嚢腫は骨内に液体の貯留した袋(嚢腫)ができ、この嚢腫の圧排によって骨が吸収される疾患です。嚢腫が拡大して骨内部から骨を圧排していくため、骨の腫瘍と一見間違えられますが、どこにも腫瘍細胞の増殖はなく、厳密には腫瘍ではありません。骨腫瘍類似疾患に分類されます。

 10歳前後で発症する場合が多く、上腕骨(肩の下)や大腿骨(脚の付け根)などによくみられます。性差は3:1で男性に多く発生します。骨髄腔(こつずいくう:骨の中心の部分)の中に薄い膜でおおわれた透明な液体(嚢腫液(のうしゅえき))が貯留する病変です。



病因

 嚢腫ができた部分の静脈灌流異常(静脈血の流れに異常が出ること)や外傷、炎症などによるという説がありますが、はっきりとした原因はわかっていません。これらの原因が元で、嚢腫のなかに入る血漿(血液の透明な成分)が、嚢腫の内部にどんどんたまっていき、圧力が高くなって、周囲の骨を圧排するため病変が拡大し、骨が押されて薄くなると考えられています。

臨床症状

 骨嚢腫自体は自覚症状がないことがほとんどです。交通事故などでX線検査を行ったときに偶然発見されることもあります。症状があるのは病的骨折を起こした場合です。嚢腫が大きくなるに従って皮質骨が薄くなり骨強度が低下するため、通常では骨折を来すことがないような軽微な外力で骨折(病的骨折)を起こします。また、発生部位が成長板(骨が成長する部分)に近いため病的骨折後に骨の成長障害が発生すること、あるいは大腿骨頚部(脚の付け根の部分)で病的骨折したあとに骨内の血行が悪くなり大腿骨無腐性骨壊死(細菌感染などがないのに骨が部分的に壊死すること)を起こすこともあります。

診断・鑑別診断

 X線写真で診断がつくことが多いですが、診断を確実にするためCT、MRIを行います。

 X線写真では骨内に境界がはっきりとした骨透亮像(骨が薄い部分)として写ります。嚢腫に圧排された部分の皮質骨は薄くなり、まわりに膨らんでいます。骨が薄くなって強度が低下する結果、骨折が起こります。嚢腫は嚢腫液が貯留した空洞なので、骨折のときにできた小さい骨片が嚢腫内へ落ちて見えるのが特徴です。落ちていない場合は骨を溶かす腫瘍との鑑別が必要です。

 CTでは、X線写真では確認できない嚢腫内の骨片が確認できることがあります。MRIでは、内部に液体のみがたまっていて嚢腫壁に造影剤で染まる厚みをもった病変が存在しなければ骨嚢腫と考えられます。造影剤で染まる病変がある時は、動脈瘤性骨嚢腫や骨巨細胞腫、軟骨芽細胞腫などの腫瘍、あるいは線維性骨異形成が嚢腫様変化を起こしたものなどが疑われます。これらの腫瘍との鑑別診断には専門的な知識と経験が必要なので、骨軟部腫瘍を専門に扱っている病院を受診することをお勧めします。

治療

 嚢腫液により、病巣内部の圧力が上がっていることが原因と考えられるため、治療として内部の圧力を何らかの方法で下げることが行われます。骨折を起こしている場合には、まず、骨折をギプスなどで治療してから手術を行います。骨折によって嚢腫壁が壊れ、内圧が下がるために自然に治癒することもあります。

 手術法には大きく分けて二つの方法があります。
ひとつは、嚢腫液を作り出している嚢腫壁の膜構造物を掻爬(掻き出すこと)して除去した上に、自分の骨もしくは人工骨を移植する方法です。この方法は骨嚢腫が成長板(骨が成長する部分)に接していない場合に行われます。当院では自分の骨に置き換わるβ-TCPという人工骨を用いて空洞部分を充填します。数ヶ月から数年で自分の骨に置換されます。

 もうひとつは、嚢腫壁に穴を開け、内部の液体を流出させることで内圧を下げる方法です。嚢腫壁に鋼線で穴を開けたり、金属製や人工骨のチューブを入れたりする方法があります。この方法は、骨嚢腫が成長板に接している場合に行われます。成長板に接している部分では成長板を損傷しない操作が必要なため、この部分で嚢腫壁の掻爬が不十分になるからです。この方法を行うことで骨嚢腫が完全に消失する場合から部分的に残存する場合まで手術結果は様々ですが、部分的に残存した場合でも病巣を成長板から離すことはできるので掻爬術を行うことができるようになります。

 その他の治療法として、病巣内にステロイド薬を注入する方法が報告されています。
1/3の症例で再発したり、病巣が残ったりすると報告されています。再発した場合に再手術を行うかどうかは再発がどの部分に起こり、病的骨折の危険性や骨の変形によって異なります。問題を起こさないと判断された場合は手術せずに経過観察される場合もあります。
また、踵骨発生例は症状がない場合、経過観察のみで問題ないことがほとんどです。

予後

 生命にかかわるものではないので、局所の変形ならびに病的骨折が問題となります。どのような腫瘍でも同じですが、適切な時期に、適切な治療を受けることが重要です。術後再発率は10~20%と報告されています。

(MyMedより)推薦図書

1) 森岡秀夫 編さん、戸山芳昭・大谷俊郎 監修:骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4),羊土社 2009

2) 岩本幸英 編集:骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls),文光堂 2005
 

免責事項

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