痔瘻 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.10.28

痔瘻(じろう)

anal fistula

執筆者: 松島 誠

概要

 痔瘻とは「肛門管と交通のある後天的な管」と定義されている。基本的に外科的治療を要する。痔瘻の多くは括約筋の中に存在・進んでいくものであり、その治療には括約筋機能への充分な配慮を必要とする。また長期間経過した例でまれに癌化することがある。

病因

 痔瘻の発生は肛門小窩肛門腺感染説(Crypt-glandular infection theory)で説明されている。すなわち便中の細菌が肛門小窩(肛門内側の小さなくぼみ)から侵入し肛門腺に感染し膿瘍(膿の溜まり)を作る。この膿瘍が自然に破れまたは外科的に切開排膿された結果、肛門小窩(原発口または一次口という)→排膿口(二次口)という連絡経路(=瘻管)が形成されるというものである。膿瘍期を肛門周囲膿瘍または直腸肛門周囲膿瘍、排膿され炎症が沈静化した状態を痔瘻と称する。予防することは困難な疾患である。

 痔瘻の分類は、肛門周囲の括約筋などの構造内をどのように瘻管が走行するかにより分類され、臨床的診断や治療法選択の際によく利用されている。


肛門周囲膿瘍の病態 痔瘻の病態

臨床症状

 直腸肛門周囲膿瘍の時期と痔瘻の時期では症状が異なる。

直腸肛門周囲膿瘍の症状

 1~2日程度の短期間のうちに徐々に強くなる肛門部の痛みがあり、肛門周囲の腫れやしこりを触れる。排便や入浴などでは痛みの変化は少ない。肛門の奥に拡がる深部膿瘍では浅いタイプに比べ初期の疼痛は軽く、重苦しさや残便感程度である。発熱だけが症状のこともまれではなく、風邪と判断されることも少なくない。病状が進むと便や尿の排泄がし難くなる事もある。自壊(膿瘍が体表に向かって進み膨らんで自然に破れ排膿されること)や外科的に切開排膿されると症状は急速に消退する。

痔瘻の症状

 痔瘻の時期になると疼痛は軽いかまったく無くなる。肛門周囲のしこりや小さな穴や分泌物で気付くことが多い。炎症があるときには圧痛や腫れた感じなどを伴うが自覚症状のほとんどないものが大多数である。

検査成績

 膿瘍期には、白血球数増加・炎症反応の上昇、発熱が認められる。炎症が治まった痔瘻の時期には特に異常を認めない。経肛門的超音波検査で膿瘍や瘻管を確認できる。

診断・鑑別診断

 問診を行うだけでも充分に推察できる。直腸肛門指診や肛門部の視診でほとんどが診断可能であるが、経肛門的超音波検査やMRIなども有用である。 内痔核、外痔核、血栓性外痔核、肛門潰瘍、炎症性腸疾患に合併した痔瘻、潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸癌などとの鑑別を要する。

治療

 膿瘍期には切開排膿を第一選択にすべきである。この時期に膿瘍はその内圧を高めながら周囲組織の構造的に弱い方向に向かって拡がろうとするので切開排膿して減圧することが重要で、抗生物質等による保存的治療は無効である。浅部の膿瘍は局所麻酔下での外来処置が可能であるが、深部膿瘍の場合は確実で充分な処置と患者の苦痛軽減の面から腰椎麻酔や静脈麻酔で行う。
 
 痔瘻の治療は手術治療が原則となる。手術は膿瘍期と異なり緊急性はなく、待機的に可能であるが膿瘍の再燃は予想できないので、診断を受けたときは速やかに治療を進める。しかし長年無症状で生活上まったく支障のない症例もありすべての痔瘻を手術しなければならない訳ではない。
 
 痔瘻手術の原則は原発口、原発巣という痔瘻の原因となる部分を確実に処理しそれに続く瘻管を肛門機能や形態に影響与えないように切除することである。根治性の面からは開放術式が最も確実であるが肛門の変形や機能障害などの可能性があるので適応を充分に考慮して行う。そのほか時間をかけながらゆっくりと開放手術を行うシートン法や、括約筋内の瘻管をくり貫いて括約筋を温存する方法、痔瘻を切除処理した後の括約筋の縫合や形成を行って肛門の変形や機能障害を最小限に止める方法などがある。痔瘻のタイプ・病期などを正確に診断し各術式の特徴を充分に知った上で治療法を選択組み合わせる。

最新の方法

 痔瘻瘻管にプラグ状の物質を挿入し瘻管を閉鎖しようとする方法や自己の間葉系幹細胞を移植(注入)して治療する方法などが研究されているようだが一般的な実際の治療には供されてはいない。

執筆者による主な図書

松島誠 著:「痔学」,悠飛社 2003

(MyMedより)推薦図書

1) 岩垂純一 著:実地医家のための肛門疾患診療プラクティス,永井書店 2007

2) 幕内雅敏 監修、杉原健一 編集:大腸・肛門外科の要点と盲点 第2版 Knack & Pitfalls,文光堂 2005

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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