頻脈・不整脈 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.26

頻脈・不整脈(ひんみゃく・ふせいみゃく)

arrhythmia

執筆者: 金子 正英

概要

 日常の小児科臨床において、もっとも遭遇する不整脈は期外収縮であり、学校検診や診察上の心音の不整で指摘を受けることが多い。ほとんどのものが治療の必要がなく、経過観察となる。ときに頻脈発作で気づかれるものは、発作性上室性頻拍として受診する。逆に、先天性心疾患の診療をしているもののとって、不整脈はよく遭遇し、時に治療に難渋することがある。各診療体系において担当する不整脈レベルは異なるが、いづれも正確な診断のうえに、治療・管理は成り立つ。不整脈の誘発要因や重症化の可能性を評価・判断し、過剰な制限や治療に至らず、かつ安全にフォローできるような診療が理想である。

病因

病因・病態生理


 頻脈性不整脈の病態として、一般に(1)リエントリー(2)自動能亢進(3)Triggered activityによると考えられる。リエントリーは、電気興奮が回路を回ることで頻脈となる。WPW症候群の房室回帰性頻脈や房室結節回帰性頻脈が主である。また、先天性心疾患術後に合併する頻脈も、切開創を回るリエントリーであることが多い。自動能亢進では、一部の心筋自動能が亢進することで頻脈となり、異所性心房頻拍や心臓術後にみられる接合部頻拍(junctional ectopic tachycardia;JET)などがある。Triggered activityは心筋細胞が活動電位を形成した後に、異常な後電位(afterdepolarization)を形成することで、不整脈を発生させるもので、QT延長症候群での多形性心室頻拍(Torsade de pointes)やジギタリス・カテコラミン投与での不整脈がある。

 徐脈性不整脈では、洞機能不全症候群、房室ブロックによる。基礎疾患を伴わないI度からWenchebach型房室ブロックは、副交感神経亢進が関与し運動により改善する良好なものが多い。先天性完全房室ブロックは母体の抗SS-A,B抗体の関連である場合が多い。洞機能不全症候群や房室ブロックは、先天性心疾患術後の合併が主である。特に修正大血管転位や多脾症候群では手術の有無によらず合併が多い。

臨床症状

自覚症状


 年長児以上でないと、的確な自覚症状の表現は難しいが、一般的には動悸(ドキドキする、脈が飛ぶ、ドクンと感じるなど)、胸痛、めまい、失神などである。胸痛ではなく、腹痛として訴える場合もある。

他覚症状


 低年齢の場合は、発見は他覚症状によることが多い。一番重篤なのは、心停止、チアノーゼ、失神、意識消失である。特に運動時の意識消失は危険を伴うことがあるので、不整脈特にQT延長症候群を念頭に置いた精査が必要である。乳児の頻脈ではミルク飲みの低下、活気の低下、ぐったりするといった形で見つかることも多い。期外収縮では、脈の不整を検診や風邪の診療などでたまたま指摘されることが多い。

検査成績

不整脈診療のための検査


 自覚症状の有無や失神の有無の確認や、突然死の家族歴の聴取を行う。心臓超音波検査にて器質的要因の有無を一度は見ておくべきである。

 最もよく遭遇する期外収縮は、学校検診で指摘されることが多い。運動により増加するかどうか、特に学校管理指導表のような運動制限をする必要があるかどうかの判断が必要となるため、学童期以上では、一度ダブルマスターやトレッドミル、エルゴメーターによる運動負荷を行うとよい。基礎疾患のない期外収縮は、運動によって減少し、運動制限を必要としない予後良好なタイプである事が多い。また、連発の有無や好発時間帯の評価にはホルター心電図検査も症例に応じて行う。

 頻脈発作で来院した場合を除き、動悸の主訴で頻脈性不整脈を疑う場合は、動悸が頻脈によるものであるという証拠を得なければいけない。発作時に医療機関で発作時心電図を記録できればベストであるが、持続しないものも多い。そのための方法として、ホルター心電図や携帯型心電図記録装置が有効である。さらに運動負荷検査にて誘発を試みるのも有用である。加算平均心電図は心筋症など基礎疾患を有する場合には心室頻拍のリスク評価になる。

 必要に応じて、血液検査を行い電解質(Na,K,CL,Ca,Mg)のチェックする必要がある。BNP(脳性利尿ペプチド)は、不整脈による心負荷の評価、心筋症の発生の指標になる。

 徐脈の評価として、房室ブロックが運動負荷で改善するかどうか、また最大ポーズの評価として、ホルター心電図の検査が重症度評価として必要である。

診断・鑑別診断

[診断・治療]

 不整脈の診療においては、不整脈の鑑別、そして血行動態が保たれているかが大事である。頻脈性不整脈でショック状態や意識レベルの低下を認めるようなら積極的に直流通電による治療を考える。安定している場合は、まず安静にし、vital signを確認しながら、酸素投与を行い、種々の薬物や除細動器も動作確認して処置を始めるのが望ましい。徐脈性不整脈では症状に応じてペースメーカー治療の適応を慎重に判断する。

Narrow QRS頻拍


発作性上室性頻拍 (paroxismal supraventricular tachycardia;PSVT)

 一般に頻脈発作で一番多い。WPW症候群にともなう房室回帰性頻拍、房室結節回帰性頻拍が主で、前者の頻度が高い。デルタ波を伴わないWPW(不顕性)であることも多く、電気生理検査を行わなければ両者の鑑別はできない。心拍数150-250/min.程の頻拍でP波はQRSに隠れるかQRS直後にあることが多い。通常、血行動態は保たれるため、まず迷走神経刺激手技を施行する。息こらえが年長児では簡便にできる。一般に顔面冷水刺激として、年長児では氷水の洗面器に顔をつけ、乳幼児では氷の袋を顔面を覆い、同時に鼻と口をふさぐ。数秒から10秒ほど行い、一時休憩し数回施行可能。無効の場合、ATPを原液のまま急速静注し、生理食塩水などで後押しする。ゆっくりだと効果がなく、ATPの原液を心臓にぶつけるイメージで、フラッシュも数ml急速に行う。気管支喘息、虚血性心疾患例は禁忌であり、テオフィリン、カフェイン投与例は効きにくく、ジピリダモールは逆に効きやすくなる。ベラパミル静注は年長児には有効だが、血圧が低下する可能性があるため乳幼児はさける。

 上記治療が無効例、再発を繰り返す例はIa群プロカインアミド、リスモダン、Ic群を静注し、持続療法を施行する。陰性変力作用があるため心機能低下例は慎重投与。無効な場合、直流通電(0.5-2J/kg)を施行する。顕性WPW症候群ではジゴキシン、ベラパミルは副伝導路の不応期を短縮させ頻拍増悪(心室頻拍の可能性)するため注意する。5才以上で、発作を繰り返す場合はカテーテルアブレーションを検討すべきである。

心房頻拍(AT)

 異所P波を示す頻拍。洞性頻拍との鑑別にはATP投与が有効。自然消失例があり、3才未満で78%が自然消失し、3才以上では16%のみだったという報告がある。頻拍が持続するものは二次性の心筋症を誘発の可能性がある。治療はβブロッカーが有効である。他に、ベラパミル、ATPも効く例、Ic,III群が有効のものもある。直流通電は無効である。薬剤抵抗例では、年齢も考慮しカテーテルアブレーションも検討する。

心房粗動 (AFL)

 頻度は低いが、心臓術後例か、特発性では胎児、新生児例に多く認める。2:1伝導の場合、PSVTとの鑑別が難しく、ATP投与にてF波の出現、頻拍持続で鑑別可能。直流通電(0.5-2J/kg)が、確実に洞調律にできる方法である。Ia群、Ic群、III群抗不整脈薬が有効であり、特に粗動停止にはNaブロッカーよりIII群Kチャネルブロッカーがより有効性が高いという報告がある。開始前にジゴキシンの投与を行う(単独では1:1伝導する可能性)。術後症例で繰り返す場合はカテーテルアブレーションが適応となる。

Wide QRS tachycardia


 上室性頻拍症の心室内伝導障害を伴ったものが鑑別される。

心室性頻拍 (VT)

 QRS幅の広い、心拍数100-120以上の3連発以上の頻拍である。小児では特発性のものが多いが、心筋炎、心筋症や心臓術後などにも認める。血行動態が保たれなければ、直流通電を行う。上室性頻拍との鑑別では、房室解離、心室補足、融合収縮を認めればVTと診断できる。迷う場合、診断的治療としてATP投与を行い、PSVTやATP感受性(左脚ブロック右軸偏位)VTであれば頻拍を停止できる可能性が高い。心房粗動、細動の変行伝導も鑑別できる。効果がない場合やVTの診断が確定なら、リドカインを投与する。右脚ブロック左軸偏位型(比較的QRS幅が狭い)にはベラパミルが有効であり、左脚ブロック右軸偏位型はβブロッカー,ATPが有効である。無効例はプロカインアミドなどの静注を考慮する。心機能低下例では、心筋抑制がないためニフェカラントが有用であるが、副作用のQT延長に注意する。以上の治療で効果ない場合、直流通電(1-2J/kg)を行う。

期外収縮


 上室性期外収縮(心房性)、心室性期外収縮に分類される。先行するP波をしっかり同定することが必要で、一見wideQRSであっても上室性期外収縮の変行伝導によることもある。新生児期に認める場合は、通常自然経過で消退する。上室性期外収縮は、通常フォロー不要である。心室性は、運動で増加するものや連発するもの以外は、運動制限なしでフォロー可能で、投薬も必要がない。自覚症状があったり、連発したりする場合は治療を検討し、運動で増悪するものはβブロッカーが効果的で、ほかはメキシレチンなどI群の抗不整脈薬を検討する。

徐脈


 原因として、洞徐脈、洞機能不全、房室ブロックなどがある。徐脈により循環動態が破綻する場合は、硫酸アトロピンの静注やイソプロテレノールの持続静注、または一時的ペーシングが行われる。症状のないもの、危険性の少ないものは、経過観察を行い、症状の発現(心不全、Adams-Stokes等)、心拍休止(ポーズ)が3-4秒以上、QT延長、心室性不整脈の出現・増悪などがあればペースメーカー植え込み術を検討する。

QT延長症候群


 QT延長症候群は、QT時間の延長によりTorsades de pointesが誘発され、失神や突然死を起こす可能性のある疾患である。Bazettの式(QT時間/√先行RR時間 )でQTcを計算し、Schwartsの診断基準にて判定する。一見QTがやや長め程度でも、運動時やホルター検査にて明らかとなる例もある。失神の有無や家族歴の突然死の有無が非常に大事であり、疑わしいものは専門施設に紹介すべきである。Torsades de pointesにはプロプラノロールがfirst choice、他にリドカイン、ベラパミル、硫酸マグネシウム、直流通電が有効である。


薬用量


Ia群

Procainamide(アミサリン) 5-15mg/kg 0.5mg/kg/min以内の速度で静注、15-80μg/kg/min.維持。陰性変力作用があるため心不全時は注意。

Disopyramide(リスモダン) 1-2mg/kg 5分以上かけて静注、0.2-0.5mg/kg/h維持 陰性変力作用(Procainamideより強い印象)。

Ib群

Phenytoin diphenylhydantoin(アレビアチン) 10mg/kg 10分以上かけて静注

Lidocain(キシロカイン) 1mg/kg静注、25-50μg/kg/min.維持

Ic群

Flecainide(タンボコール)1-2mg/kg 10分で希釈静注、内服1-4mg/kg 分2-3

II群

Propranolol(インデラル) 0.05-0.1mg/kg 10分で静注、内服1-2mg/kg/day 分3

III群

Sotalol hydrochloride(ソタコール)1-2mg/kgから開始し8mg/kgまで増量

Amiodarone (アンカロン)内服 10mg/kg 分1-2を1-2週間、その後5mg/kg 分1-2、静注は基本は添付文書に沿って投与。小児ではまだ定まっていないが、海外のtextには5mg/kgのLaoding、7-10mg/kg/dayの維持と記載がある。静注では血圧低下に注意。

Nifecalant(シンビット) 0.3mg/kgを5分以上かけて静注、0.4mg/kg/hで維持。QT延長に注意。

IV群

Verapamil(ワソラン)0.1mg/kg 5分以上で静注、内服 3-6mg/kg 分2



ATP(アデホス) 0.1-0.3mg/kg/dose max 20mg 一気に静注。遅いとだめ。繰り返し使える。一時的に徐脈になり気持ち悪くなる。気管支喘息、虚血性心疾患には禁忌。

Digoxin 0.005-0.01mg/kg/day 分2 静注は内服の2/3くらいがいい。*急速飽和例 0.01mg/kg内服、8-12時間ごとに0.01mg/kgの追加を2回。これでtotal 0.03mg/kgの飽和になる。以後12時間後より0.005mg/kg

硫酸マグネシウム 10-20mg/kgを 1-2分で静注、持続静注50-300μg/kg/min.

徐脈治療薬

硫酸アトロピン 0.01-0.02mg/kgの静注

イソプロテレノール 持続静注 0.005-0.1μg/kg/min. 少量より漸増

予後

 期外収縮は、基礎疾患を伴わないものは問題のないものが多い。逆に心筋症、心筋炎に伴う不整脈特に、心室頻拍は致命的になる可能性がある。発作性上室性頻拍は、通常問題ないことが多い。しかし、WPW症候群では、小児ではまれではあるが突然死の可能性がある。QT延長症候群は、致死的な不整脈となりうるため、厳格な治療、運動管理が必要となる。徐脈性不整脈では、Adams-Stokesを起こすものかどうかによるが、ペースメーカー治療を行ったものは決して予後は悪くはない。しかし、完全房室ブロックでは、心筋症に進展するものがあり注意が必要である。

最近の動向

 小児不整脈の治療ガイドラインとして、「小児不整脈治療のガイドライン」が2000年日本小児循環器学会雑誌に掲載されている。通常遭遇する小児の不整脈に関しては、基本的にこのガイドラインにしたがって治療すべきである。学校検診でひっかかるような、期外収縮等の管理に関しては同雑誌掲載の「学校心臓検診二次以降の進めかた」に記載されている。日本循環器学会からの「不整脈薬物治療に関するガイドライン」も参考にすべきである。

 頻脈性不整脈に関しては、近年小児でのカテーテルアブレーションによる治療が比較的安全に行えるようになってきている。漫然とした薬物治療を行うより、必要な症例では積極的にアブレーション治療を考慮すべきである。

 新しい薬として、Caチャンネルブロッカーに属するベプリコールは、実際にはアミオダロンと同様のマルチチャンネルブロッカーであり、難治性心室性不整脈への適応であるが、最近成人の心房細動に有効とされている。また、小児への治療経験も報告されている。本年アミオダロンの静注薬が発売されるようになり、今後小児でも治療経験が積み重ねられるであろう。

参考文献

1) 馬場國蔵、浅利利夫、北田実男 他:学校心臓検診二次以降の進めかた、日本小児循環器学会16巻6号 965-966,2000

2)  長嶋正實、相羽純、牛ノ濱 大也 他:小児不整脈治療のガイドライン.日本小児循環器学会16巻6号 967-972,2000

3) 長嶋正實、住友直方、牛ノ濱大也:小児不整脈、診断と治療社、2005 

4)  児玉逸雄、相澤義房、井上博 他:不整脈薬物治療に関するガイドライン、Circulation J 68(suppl IV)、2004

(MyMedより)推薦図書

1) 川瀬昌宏 著:臨床医のための小児診療ハンドブック,日経メディカル開発 2008

2) 安次嶺馨・我那覇仁 編集:小児科レジデントマニュアル 第2版,医学書院; 版 2002

3) 真部淳・上村克徳 著, 翻訳:小児科研修の素朴な疑問に答えます,メディカルサイエンスインターナショナル 2008
 

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