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arteriovenous malformation
別名: AVM | 脳血管奇形
動脈と静脈の短絡を主体とする「動静脈奇形」のうち、頭蓋内に発症したものを「脳動静脈奇形」と呼びます。他の部位に発生するものには「脊髄動静脈奇形」「肺動静脈奇形」などがあります。脳動静脈奇形は20代から40代の若年に発症し、脳卒中の原因となる頭蓋内の血管性疾患です。
5~10万人に1人程度発症する先天性の疾患で、30代に最も多く発見されます。稀にはOsler-Weber-Rendu病という遺伝性の疾患に伴って発症することがあります。
通常、心臓から送り出された血液は動脈から(脳の)毛細血管を経て静脈に戻ってくるという構造になっていますが、病気の部分では動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながっている動静脈の短絡が疾患の本態です。ナイダスと呼ばれる短絡路の血管壁が脆弱なため出血を起こすことが多く、また周辺の脳組織に虚血を引き起こすことにより症状を呈します。
最も頻度の高い症状は頭蓋内出血で、その頻度は50%以上です。脳内出血、脳室内出血、クモ膜下出血などが含まれます。出血率は年間2%~4%程度ですが、若年で診断されることが多く、一生涯のうちの出血率はおおまかに(105−年齢)%で計算されます。例えば30歳で診断された場合は、残りの生涯で出血する危険性は75%と算出されます。一度出血を起こすと2回目の出血率は年間6%程度に上昇します。出血した場合の症状は軽い場合は頭痛程度で済むこともありますが、重症の場合は意識障害から死亡を引き起こすこともあります。初回の出血による死亡率は5~10%で、30~50%程度で永続する後遺症を残します。
出血の他にはけいれん(20~25%程度)、頭痛(15%程度)、脳の局所症状(5%程度)、血管雑音などの症状で発症します。
本疾患が疑われた場合はまず頭部CT、頭部MRIが行われます。他疾患の鑑別も必要なため、確定診断には脳血管撮影が必要不可欠です。脳虚血を呈する場合は脳血流検査が行われます。

有効な薬物療法はなく、まず以下のSpetzler-Martin分類を用いて手術のリスクを評価するのが一般的です。
大きさ、局在(機能領域か非機能領域か)、導出静脈のパターン(深部静脈を含むか否か)により、グレード1から5まで(グレード6は手術不可能)分類されます。グレード1および2は原則として外科的治療が選択され、時に血管内治療を組み合わせることがあります。手術の危険性が高い場合には定位放射線手術が適応されます。放置した場合の出血などの危険性と治療に伴う危険性を比較した上で総合的に治療方針が決定されます。いずれの治療によっても危険性が高い場合には経過観察が選択されます。

最も標準的かつ確実な治療方法ですが、可能な部位が限られます。
全摘出ができた場合の治癒率は95%以上ですが、まれには治癒した後に再発する報告もあります。合併症としては発生する場所によって四肢の麻痺や失語症、痙攣発作、術後出血、感染などの他、全身麻酔に伴う合併症などが考えられます。
3cm以下の小さい病気で、手術の危険症が高い場合に用いられます。治癒に3年~5年程度を要し、治癒率は80~90%です。合併症としては、治癒するまでの出血(治療前の半分程度)、発生する場所による四肢の麻痺や失語症、痙攣発作などの他、稀ながら放射線による二次性腫瘍の発生の危険があります。
手術前に行われることが一般的ですが、定位放射線手術との組合せや症状改善の目的で行われることもあります。単独では完全に治癒せず部分的な治療のみではより出血しやすくなるという報告もあるため、単独ではあまり行われません。治癒率は4~20%、合併症率は10~30%と報告されています。
治療自体の合併症があるものの有効な治療が行われれば疾患そのものの予後は一般的には良好です。ただし、画像上の消失をもって一応の治癒と見なされますが、治療により完全消失したのちも出血をきたすことが稀にあります。このことから、画像上消失してからも、定期的な経過観察を行うことが推奨されます。
未破裂脳動静脈奇形に対して治療を行うか行わないかについての無作為試験であるARUBA studyが、米国を中心として進行中です。一般的には治療に伴う危険性が十分低い場合には治療するメリットがあるものと判断されます。
1. 篠原 幸人ら:脳卒中治療ガイドライン(2004)、協和企画、2004
1. Ogilvy el. al: AHA Scientific Statement: Recommendations for the management of intracranial arteriovenous malformations: a statement for healthcare professionals from a special writing group of the Stroke Council, American Stroke Association. Stroke 32:1458-1471, 2001
1. Maruyama et. al: The risk of hemorrhage after radiosurgery for cerebral arteriovenous malformations. N Engl J Med 352:146-153, 2005
1) 松谷雅生・田村晃 編:脳神経外科周術期管理のすべて,メジカルビュー社
2) インターベンション時代の脳卒中学,日本臨床社
3) 寺本明 編:NS now No. 9 無症候性脳外科疾患の治療戦略,メジカルビュー社
4) 田村晃、松谷雅生、清水輝夫 編:EBMに基づく脳神経疾患の基本治療指針,メジカルビュー社
5) 青木茂樹、阿部修、増谷佳孝 編:新版 これでわかる拡散MRI,秀潤社
1) 篠原幸人 著:脳卒中治療ガイドライン2009,協和企画
2) 宜保浩彦・外間政信・大沢道彦:臨床のための脳局所解剖学,中外医学社
3) 永田和哉・河本俊介:脳神経外科手術の基本手技,中外医学社
4) 宝金清博:脳血行再建術,中外医学社
1) 高木誠 著・監修:新版 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血―もやもや病、慢性硬膜下血種、脳動脈解離ほか (よくわかる最新医学),主婦の友社 2009
2) 栗本慎一郎 著:栗本慎一郎の脳梗塞になったらあなたはどうする―予防・闘病・完全復活のガイド,たちばな出版 2000
3) 久保田競・宮井一郎 編集:脳から見たリハビリ治療 (ブルーバックス),講談社 2005
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