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traumatized teeth
執筆者: 古森 孝英
歯の外傷は、転倒やスポーツ・交通事故・殴打などによって生じる。また全身麻酔時の喉頭鏡による偶発症としてもまれに生じる。上顎前歯、特に中切歯に発生することが多い。
歯の外傷には破折と脱臼とがあり、単独で発生することもあるが、顎骨骨折に合併することもある。どちらにしても、早期に適切な処置がなされる必要がある。
予防・防護装置としては、マウスピースあるいはマウスガードなどと呼ばれる軟性レジンで作製されたものがあり、スポーツ外傷や障害者転倒による外傷歯防止対策として使用されている。
歯冠部破折ではエナメル質や象牙質の欠損がみられ、破折が歯髄に達すると、出血や疼痛が生じる。歯根部破折では咬合痛や打診痛、歯の動揺などがみられる。
不完全脱臼では歯の位置異常、動揺、咬合痛や打診痛、歯肉溝からの出血などがみられる。完全脱臼では、歯が歯槽窩から完全に外部へ脱落したり、あるいは組織内に迷入する。
破折のX線写真では、破折線を認めるが、角度によっては破折線を認めず診断が困難となる。脱臼のX線写真では、歯槽内での歯根の移動があるので、挺出や側方転位では歯根と歯槽間の歯根膜空隙の拡大を認めるが、陥入の場合は空隙が消失した所見を呈する。
歯冠部破折で破折が歯髄に達してない場合はレジンなどで修復処置がなされる。歯髄まで達している場合は覆髄や抜髄などの歯髄処置が行われる。 歯根部破折では、破折の部位により抜歯の適応となる場合と保存できる場合がある。また抜髄処置が必要な場合とそうでない場合がある。
浅部歯根破折の場合は外科的挺出、矯正的挺出あるいは意図的再植術を行った後に補綴処置を行うのがよいこともある。
深部歯根破折の場合も、まず歯冠側破折片の整復固定を行う。このような症例の場合は、歯根膜損傷は軽度なため、歯根膜再生の考慮は必要ないので、破折部の治癒を考えて3か月程度の固定を行う。固定を行いながら歯髄の治癒を待つが、歯髄壊死が認められたら歯髄処置を行う。 このように歯根部破折でも、なるべく抜歯せずに保存を試みるが、破折線が多数に及ぶ場合や残存歯根が短い場合は抜歯の適応となる。
不完全脱臼では、特に乳歯の場合は陥入することも多いが、再萌出してくることがほとんどなので、感染に注意して経過観察をしていればよい。ただし、後継永久歯への影響がある場合は抜歯が適応となる。
永久歯の場合は、徒手あるいは抜歯鉗子などで正しい位置に整復して2週程度の固定を行う。
歯根未完成歯では歯髄壊死の危険性は低い。歯髄診断(-)の場合でも6か月程度は経過観察を行い、歯冠の変色や根尖病巣などの歯髄壊死の症状がみられた場合は歯髄処置を行う。根完成歯でも歯髄再生を認めることがあるため、6か月程度の経過観察を行い、歯髄処置の必要性を検討する。 完全脱臼歯はまず再植を試みる。
再植の対象となるのは基本的に永久歯で、乳歯の適応はきわめて狭い。特に乳犬歯萌出以前のもので、乳前歯の早期喪失により歯列周長の減少が生じる可能性が考えられる場合のみ適応となる。歯根の癒着を抑制し、歯根膜や歯槽骨の再生を促すためには、早期に生理的な状態に戻すのがよい。したがって固定法も、顎骨骨折や歯槽骨骨折がない限り柔軟な固定法がよい。まず脱臼歯を抜歯窩へ軽く挿入し、必要なら歯肉と歯頸部を密接に適合させるための縫合を行う。その後、弾力性ワイヤーと接着性レジンを用いて固定する。
完全脱臼歯の予後については、歯根膜を持たない歯や歯根膜が死滅した歯が再植された場合は、骨性癒着(アンキローシス)の原因となり歯根吸収(置換型吸収)を引き起こす。すなわち、歯根膜を持たない歯が骨組織のリモデリングに取り込まれ、破骨細胞による歯根吸収と骨芽細胞による骨の添加が同時に起こるカップリング現象によりもたらされる。
また、脱臼歯の歯髄壊死を放置することによっても歯根吸収(炎症性吸収)が生じる。これは、部分的な歯根膜の欠落部において破骨細胞によってセメント質が吸収し、露出した象牙細管を通して壊死物質や細菌が歯根表面に達し炎症反応が起き、その結果出現する破骨細胞によって歯根吸収が進行する。この炎症性吸収は通常3か月以内に観察されるので、歯髄治癒を待つ場合には特に注意して観察する必要がある。炎症性吸収がみられた場合には、歯髄処置を行うことによってこの吸収を停止させることが可能である。
このように、再植した脱臼歯は歯根吸収が進めばやがて脱落の運命をたどるが、逆に適切な処置により歯根吸収をコントロールすることができれば、長期間機能し本来の歯の寿命を全うすることができる。
1) Peter Brukner・Karim Khan 著、籾山日出樹・黒澤和生・河西理恵・赤坂清和・丸山仁司 監修:臨床スポーツ医学,医学映像教育センター 2009
2) 岡正久 著、金森勇雄 編集:歯・顎顔面検査法 (診療画像検査法),医療科学社 2002
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