頸部リンパ節炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.29

頸部リンパ節炎(けいぶりんぱせつえん)

Cervical lymphadenitis

執筆者: 菅原 憲子

概要

 頸部には約200個のリンパ節があり、常に細菌やウイルスなどの病原体に曝露されている頭頸部鼻腔口腔からの異物の捕捉、中和、免疫担当細胞の分化増殖などの防御機構を備えている。頸部リンパ節炎はリンパ節に炎症がおこり、痛みや腫脹を伴う場合をいい、小児では大部分が細菌やウイルス等の感染による。まれに真菌や寄生虫によるものもある。

 炎症性の頸部リンパ節腫大は症状経過により
(1)急性で一側性、
(2)急性で両側性、
(3)亜急性・慢性 に分類できる。

 (1)は主に細菌感染による急性化膿性リンパ節炎 (2)には急性ウイルス感染症(EBウイルス、サイトメガロ ウイルス、風疹、水痘など)、(3)には結核性リンパ節炎、猫ひっかき病、トキソプラズマ症などが含まれる。炎症に類似するものとしては、川崎病、亜急性壊死性リンパ節炎がある。

急性化膿性頸部リンパ節炎

病因 病態生理


 頸部の感染性リンパ節炎の多くは、ワルダイエル輪や頭頸部領域の粘膜に一次感染がおこり、リンパ流に乗って、領域リンパ節に入り込み、と好中球や他の貪食細胞の浸潤をうけて化膿性リンパ節炎となり、痛みを伴って腫脹したものである。また頸部の炎症は、上頸部のリンパ節炎から内頸静脈に沿って、下部深頸部リンパ節へと波及する。先行する一次感染として咽頭炎、扁桃炎、副鼻腔炎、口内炎、齲歯、歯周炎、中耳炎、頭頸部皮膚の化膿巣などが考えられる。

 頭頸部リンパ節と炎症巣の原発部位には以下の関係がある。 

オトガイ下リンパ節;口腔、歯肉、舌
顎下リンパ節;口腔、上顎洞、中咽頭、歯肉、舌
内深頸(内頸静脈)リンパ節;喉咽頭、甲状腺
前頸部リンパ節;甲状腺
後頭部リンパ節、耳介後部リンパ節;頭部

 急性化膿性頸部リンパ節炎をおこす細菌としては、小児では黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) やA群溶連菌(Streptococcus pyogenes)が多い。新生児では黄色ブドウ球菌が多いが、B群溶連菌もありうる。年長児や思春期には A群溶連菌と嫌気性菌(Peptostreptococcus.spp, Peptococcus.spp, Bacteroides.spp)が多い。 MRSA(methicillin-resistant S.aureus)は従来ハイリスクと考えられていた要因のない人々の中にも近年保菌者が増えており、皮膚や軟部組織の炎症の原因となっていることから、頸部リンパ節炎の病因となる可能性がある。

臨床症状


 通常、一側の1~複数個の頚部のリンパ節腫大、自発痛 圧痛がみられる。 表在性のリンパ節炎では皮膚の発赤や熱感、深在性のものではでは圧迫症状もありうる。発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともある。炎症が進むと膿瘍を形成して波動を触れ、自潰し、排膿する。蜂窩織炎に至る場合もある。

 先行する炎症により、咽頭痛 膿性鼻漏 歯痛 外傷 化膿巣 皮膚病変 中耳炎などがみられる。新生児乳児では、突然の発熱、哺乳力の低下、不機嫌等で発症し、顔や頸部の痛みを伴う発赤腫脹をみとめ、菌血症に至る場合があるが、炎症の原発巣が同定できないこともしばしばある。

 黄色ブドウ球菌とA群溶連菌感染を明確にみわけることは困難だが、水疱や痂皮をもつ膿痂疹はA群溶連菌が原因であることが多い。年長児にみられる齲歯、歯周炎に関連した嫌気性菌による頸部リンパ節炎では、頸静脈血栓静脈炎や肺塞栓、中枢神経の感染症など重篤な合併症に注意が必要である。

診断、鑑別診断


 触診にて圧痛のあるリンパ節を触知し、一次感染源が同定されれば診断がつきやすい。その際、頭頸部リンパ節と炎症巣の原発部位との関係を理解することが感染源の検索に役立つ。鑑別の対象となるのは、増大傾向のある頸部腫瘤のうち、リンパ節性ではないもの(耳下腺、甲状腺、胎生期遺残性腫瘍等)の炎症、リンパ節性のもののうち、腫瘍性のもの(悪性リンパ腫、白血病等)、非腫瘍性のリンパ節腫脹のうち、ウイルス等の全身性感染症に伴うリンパ節腫大などである。必要に応じて以下の検査を行う。血算 CRP GOT GPT LDHフェリチン ASO 血沈 抗核抗体 ウイルス抗体価 ツ反 胸部X線写真 超音波検査 CT等

検査


 末梢血検査では核の左方移動を伴った白血球数の増加 CRP上昇 (A群溶連菌の場合は)ASO値上昇膿瘍形成が疑われる場合、エコー等による画像診断を行う排膿の内容物から起炎菌を培養同定する

治療


(1)抗生剤投与;Staphylococcus aureus やStreptococcus pyogenesに有効なものを選択するが、伝染性単核症との鑑別がつかない場合はペニシリン系抗生剤の投与を避ける。

(2)表在性リンパ節で膿瘍を形成した場合、切開排膿を行う。

予後


 適切な抗生剤投与にて1週間以内に縮小・軟化等改善がみられる。 A群溶連菌の感染後には非化膿性の合併症にも注意する(溶連菌感染後急性糸球体腎炎、リウマチ熱など)。難治性のものの中に免疫不全症が含まれる場合がある。

ネコひっかき病(Cat-scratch Diseasse)

⇒詳細は: 別疾患ページ参照
 グラム陰性桿菌Bartonella henselae. を病原菌とする。ネコに引っ掻かれた1~2週後に細菌侵入部位に丘疹性紅斑が出現し、その約2週後に領域リンパ節が腫脹、25~30%が化膿する。腫脹したリンパ節を覆う皮膚に、圧痛、熱感、発赤、硬結をみとめる。

結核性リンパ節炎

 結核性リンパ節炎はMycobacterium Tuberculosisを病原体とする。肺の初感染巣からの進展によるものと、肺外初感染巣の初期変化群としてみられるものがある。病初期にはリンパ節は無痛性であり、孤立性腫瘤として認められるが、次第に周囲組織や皮膚との癒着、リンパ節同士の融合をみとめる。さらに病変部が乾酪壊死化し、膿瘍を形成、自潰する。低年齢の小児ではM. TuberculosisよりもM..avium-intracellulare, M.scrofulaceum, M.kansasiiなどの非定型抗酸菌によるリンパ節炎のほうが多い。結核菌、非定型好酸菌によるリンパ節炎では切開により、瘻孔を形成し長期に及ぶ。

ウイルス感染症に関連する頸部リンパ節腫大

 ウイルス感染症では、感染したウイルスが、まず侵入局所における所属リンパ節で増殖し、局所での発症をおこす。その後リンパ流から血流へ入り、第一次ウイルス血症を起こして全身に散布される。さらにウイルス親和性の高い臓器で増殖し、第二次ウイルス血症をきたして再び全身に散布され、種々の症状を呈する。

 Epstein-Barr(EB) virus,  Cytomegalovirus,  Herpes simplex virus1,2, Adenovirus, Enterovirus,  Rubella virus, Human herpes virus-6,  Varicella-zostervirus, Measles virus, Mumps virus, Coxackie virus, Influenza virus ,Parainfluenza virus, Respiratory syncytial (RS)virus等が原因となる。

 上気道のウイルス感染に伴って腫大したリンパ節は細菌感染に比べて一般に小さく軟らかく、両側性にみられる。リンパ節を覆う皮膚の発赤や熱感もほとんどない。

 原因となるウイルスは、頸部リンパ節腫脹以外の臨床症状により、ある程度鑑別できる。

伝染性単核症⇒EBvirus, Cytomegalovirus 


⇒詳細は別疾患ページ参照
 EBウイルス感染では全身のリンパ節腫脹がみられるが、頸部リンパ節腫脹が著明であり、発熱、滲出性咽頭扁桃炎、肝脾腫が主要な症状である。末梢血液像では10%以上の異型リンパ球を伴う白血球増多、VCA-IgM抗体値s、抗early antigen(EA)抗体値の上昇、GOT GPT LDHなどの上昇がみられる。

風疹⇒Rubella virus

⇒詳細は別項目参照
 全身性の紅斑性斑状丘疹、発熱、全身のリンパ節腫脹が特徴であるが、とくに、後頭下、耳後部、頸部のリンパ節腫脹が明らかである。

歯肉口内炎⇒Herpes simplex virus


 前頸部、オトガイ下、顎下リンパ節が腫脹し、疼痛を伴う。

咽頭結膜熱⇒adenovirus

 
 前頸部、後頸部リンパ節の腫脹がみられる。アデノウイルス感染の症状は多彩であるが、小児の急性上気道感染においては、両側性の頸部リンパ節腫脹は主要な症状である。

 ヘルパンギーナ⇒Coxackie virus, Enterocytopathogenic virus、 皮疹⇒Cytomegalovirus Rubella virus, HHV-6, EBvirusなどでみられる。

 ウイルス感染症に関連するリンパ節腫脹は通常、治療を必要とせず、支持療法のみで1~2週間以内に軽快する。

川崎病(MCLS)

 
⇒詳細は: 別疾患ページ参照
 乳幼児に好発する全身性の血管炎である。急性の非化膿性頸部リンパ節腫脹が著明であり、多くは片側性であり、複数の腫大したリンパ節が塊になったものを触れる。発熱、眼球結膜充血 発疹 口唇口腔の発赤 四肢末端の変化などとともに主要症状のひとつとされる。

亜急性壊死性リンパ節炎


 10~30代に多いとされる原因不明の非化膿性リンパ節壊死病変を特徴とする疾患。頸部を主とする有痛性のリンパ節腫脹で、発熱・皮疹、まれには無菌性髄膜炎や劇症肝炎、心筋炎などの重篤な合併症を伴う。大多数は片側性で周囲組織との癒着や癒合傾向はなく可動性がある。GOT GPT上昇 LDH上昇 白血球減少をみとめる。確定診断は生検による。

参考文献

1) Cynthia Szelc Kelly,MD,and Robert E.Kelly,Jr,MD:Lymphadenopathy in children.Pediatric clinics of North America45:875-885,1998

2) Rebeccah L.Brown,MD,and Richard G.Azizkhan,MD:Pediatric head and neck lesions. Pediatric clinics of North America45:889-905,1998

3) Nawaf Al-Dajani,MD,Susan H.Wootton,MD:Cervical Lymphadenitis,Suppurative Parotis,Thyroiditis,and Infected Cyst.Infect Dis Clin N Am21:523-541,2007

4) 高橋光明,小林祐希:頸部リンパ節炎,伝染性単核症.耳喉頭頸77(8):545-550,2005

5) 岩井大:結核性リンパ節炎. 耳喉頭頸77(8):551-555,2005

6) 秋田泰孝,鈴木賢二:特殊な頸部リンパ節腫脹.耳喉頭頸77(8):563-567,2005

7) 豊原清臣:リンパ節腫大.開業医の外来小児科学.改定5版,南山堂:123-125,2007

8) 井田孔明:リンパ節腫脹.これだけは知っておきたい小児医療の知識.新興医学出版社:305-307,2006

9) 絹巻宏:リンパ節腫大.小児内科Vol.25増刊号:333-335,1993

10) 梁茂雄:頸部のはれ.小児内科 Vol.28.No.10:1418-1422,1996

11) 駒田美弘:細菌感染とリンパ節腫脹.小児内科.Vol20.No.4,27-31,1988

12) 岡部信彦:ウイルス感染とリンパ節腫脹.小児内科.Vol20.No.4,32-36,1988

13) 川戸英彦,山本あつ子,他:亜急性壊死性リンパ節炎:小児内科.Vol20.No.4,66-74,1988

14) 米国小児科学会編集、岡部信彦ら:R-Book 2003 小児感染症の手引き:日本小児医事出版社

(MyMedより)推薦図書

1) 砂川慶介・尾内一信 編著:小児感染症治療ハンドブック,診断と治療社 2008

2) 日本小児感染症学会 編集:日常診療に役立つ小児感染症マニュアル〈2007〉,東京医学社 2006

3) 岡部信彦 編集:小児感染症学,診断と治療社 2007
 

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