痛風・高尿酸血症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

痛風・高尿酸血症(つうふう・こうにょうさんけつしょう)

gout/ hyperuricemia

執筆者: 大野 岩男 細谷 龍男

概要

 痛風は1960年頃までは稀な疾患であったが、食生活の欧米化やアルコール摂取の増加により年々増加の一途をたどっており、現在では本邦において約 60万人の患者がいると推定されている。また痛風の基礎病態である高尿酸血症も増加しており、現在成人男性の20~25%が高尿酸血症であると考えられている。 痛風は高尿酸血症を基礎にもち、尿酸塩結晶の析出による痛風関節炎や痛風結節をきたす疾患であり、血清尿酸値をコントロールせずに放置すると痛風関節炎が頻発し、慢性関節炎に移行する。さらに高尿酸血症が持続すると尿酸塩沈着による慢性間質性腎炎である痛風腎を併発し、また尿路結石を高率に合併してくる。
 最近の大規模臨床研究の成績から高尿酸血症が心血管疾患の独立した危険因子であることが次第に明らかになってきている。さらに高尿酸血症は生活習慣病やその集族であるメタボリックシンドロームと密接に関連しており、またメタボリックシンドロームの基盤であるインスリン抵抗性は高尿酸血症、酸性尿を介して痛風・高尿酸血症の腎合併症である痛風腎の発症・進展に関与していることがわかってきている。メタボリックシンドロームの各パラメーターと高尿酸血症の関連する機序は図1のように考えられている。すなわちメタボリックシンドロームの源流に位置する内臓脂肪蓄積は、尿酸産生の亢進およびインスリン抵抗性による腎での尿酸排泄低下の両面から高尿酸血症を惹起するとされている。

病態生理

高尿酸血症の成因


 高尿酸血症はその成因から、尿酸産生量の増加(尿酸産生過剰型)、尿中尿酸排泄能の低下(尿酸排泄低下型)および両者の混在した混合型に分けられる。高尿酸血症の病型分類は表1sup1)/supに示すように、単位時間当たりの尿中尿酸排泄量から求められる尿酸産生量と、尿酸クリアランスから算出されるが、尿酸産生量(EUA)が0.51mg/kg/時より高ければ尿酸産生過剰型、尿酸クリアランス(CUA)が6.2ml/minより低ければ尿酸排泄低下型と診断することになる。中村らの報告では、高尿酸血症の病型頻度は尿酸産生過剰型12%、尿酸排泄低下型60%、混合型25%、正常型3%であったとしているsup2)/sup。(表1)



 一方、高尿酸血症は他の疾患や薬物投与から二次的に起きることが知られており、二次性痛風は全痛風症例中約5%を占めるとされている。二次性高尿酸血症をきたす疾患、薬物を表2に示す。(表2)



痛風関節炎が起こる機序


 尿酸は難溶性であり血清尿酸値が7mg/dlを超えると過飽和の状態となり、尿酸塩結晶として腎臓、皮下組織、滑膜などの組織に沈着しやすくなる。尿酸塩結晶の組織沈着には高尿酸血症の程度、組織の温度やpH、組織障害の有無が関係しているとされている。痛風関節炎の好発部位である第1中足趾節関節は、温度が低く、外傷などを受けやすい部位なので痛風関節炎が起きやすいと考えられている。痛風関節炎の発症には尿酸塩結晶が関節腔内で析出することが必要である。この尿酸塩結晶の関節腔内での析出は通常、尿酸塩結晶が沈着している滑膜から関節腔内に脱落すること(crystal shedding)によって起こる。尿酸塩結晶の関節腔内への脱落には血清尿酸値の変動が関係するとされており、このために痛風発作は尿酸降下療法の開始時や、過食、飲酒、脱水など血清尿酸値が変動を示す時に起きやすいと考えられている。関節腔内に析出した尿酸塩結晶は貪食細胞に認識され、続いて起きる好中球の浸潤・活性化により痛風関節炎(急性炎症)が完成する。

臨床症状

 痛風関節炎は激烈な疼痛で突然に発症する単関節炎であり、圧倒的に男性に多い。痛風関節炎の好発部位としては第1中足趾節関節であり、同部位に発赤、腫脹、圧痛、局所熱感を認める。発作は24時間以内にピークに達し、通常7~10日で完全に消失するとされている。

 痛風の罹病期間が長い症例では尿酸塩を中心とした肉芽腫である痛風結節がみられる。痛風結節は第1中足趾節関節、肘頭滑液包、耳介などにみられ、無痛性であることが多く、大きさは1mm程度から6~7cm程度まで様々である。結節内は白色チョーク状の物質で満たされており、皮下の結節では時に自潰して尿酸塩に富む内容物が排出されることがある。痛風関節炎を繰り返す慢性関節炎では関節変形をきたすことがあり、同部位には痛風結節を伴っていることも多い。ここで痛風結節や慢性痛風関節炎は、早期から高尿酸血症が治療されるようになったことから最近では少なくなってきている。

検査成績

1) 高尿酸血症の定義

 血清尿酸値には著明な性差があることが知られているが、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは高尿酸血症の定義として、尿酸の溶解度に基づいて性・年齢を問わず、血漿中の尿酸溶解度である7.0 mg/dlを正常上限とし、これを超えるものを高尿酸血症と定義している。

2) 尿検査

 通常は蛋白尿や血尿は示さないが、痛風患者では尿pH6.0以下の酸性尿を示すことが多い。尿潜血陽性(顕微鏡的血尿)は尿路結石の存在を示唆する。痛風の腎合併症である痛風腎では、腎髄質障害がおこるために早期からフィッシュバーグ尿濃縮試験における最高尿浸透圧の低下をみる。

3) X線検査

 骨・関節のX線検査において尿酸塩による骨破壊像であるpunched out像(overhanging margin)を認める。

4) 関節液検査

 関節液検査において偏光顕微鏡にて負の複屈折性を有する尿酸塩の針状結晶とそれを貪食する好中球を認める。

5) 病理検査

 結節の生検標本の病理検査にて尿酸塩を中心とした肉芽腫である痛風結節を認める。

診断・鑑別診断

痛風の診断


 痛風関節炎は、以前から高尿酸血症を指摘されている患者の第1中足趾節関節などに発赤、腫脹を伴う急性関節炎が出現した場合に診断できる。診断基準はアメリカリウマチ学会のものがよく用いられている(表3)sup3)/sup。確定診断の上で重要なことは可能な限り腫脹関節より関節液を採取し偏光顕微鏡で観察し好中球に貪食された尿酸1ナトリウムの針状結晶を証明することである。



痛風の鑑別診断


 痛風の鑑別診断には関節部の発赤、疼痛、腫脹をきたす疾患がすべて含まれることになる。以下に鑑別を要する代表的な疾患の特徴を示す。

1) 偽痛風

 関節軟骨に沈着したピロリン酸カルシウムの結晶が関節腔に脱落することによって生じる結晶誘発性関節炎である。膝関節に好発し、X線写真で軟骨の石灰化像を認めることが特徴である。関節液検査にて白血球に貪食された、偏光顕微鏡にて正の複屈折性を示すピロリン酸カルシウムの結晶を認め、高齢者、女性に多い。

2) 関節リウマチ

 自己免疫機序に基づく慢性炎症性多発性関節炎であり、女性に多い。高率に朝のこわばりがみられ、対称性多発性関節炎がみられる。リウマチ因子、抗CCP抗体が陽性となる。

3) 回帰性リウマチ

 再発性の発作性関節炎をくりかえす原因不明の疾患であり、発作の間欠期には無症状であることなど、痛風関節炎に類似する。1つの関節に突然、発赤、疼痛、腫脹を伴った関節炎が出現し、通常は1日~数日で自然軽快する。関節炎は膝、手、手指関節にみられることが多いが、痛風の好発部位である第1中足趾節関節にはみられることは少ない。

4) 細菌性関節炎

 細菌感染による関節炎で、関節炎症状が急速に進行する。黄色ブドウ球菌やβ溶連菌などによる敗血症症状の1つとして起こる血行性の化膿性関節炎であり、単関節炎で起こることが多い。関節破壊が急速に進行するので注意が必要である。また関節近くの皮膚感染症からの波及、関節穿刺や手術の合併症で起こる事もある。

5) 峰窩織炎

 関節炎ではなく皮下の感染性炎症である。足背に出現すると痛風関節炎と見誤ることがある。皮下の炎症であることから関節部に圧痛はなく、関節部の他動的運動にても疼痛は増強しない。

6) 外反母趾

 第1中足趾節関節が外反変形した状態で、X線写真では関節面は比較的正常であり、女性に多い。靴などの圧迫により滑液包炎を起こすと痛風関節炎と類似の症状を示す。

治療

痛風関節炎の治療


 痛風関節炎は疼痛が激しく短期間ではあるが著しく患者のQOLを低下させる。また痛風関節炎の経験は、原因となる高尿酸血症の長期治療へ導入する上でも重要であり、関節炎の沈静化をもって治療が終了したと考えてはならない。痛風関節炎の治療としては、コルヒチン、NSAID、ステロイドの3種類の薬剤が用いられる。コルヒチンは痛風発作の前兆期に少量のみ予防的に用いる。発作極期にはNSAIDの短期大量投与が推奨されている。ステロイドは経口投与や関節内投与などで用いられ、重症関節炎、多発性関節炎、NSAIDが使用できない腎機能低下患者などに使われる。また痛風発作時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いため、発作中には尿酸降下薬を開始しないことが原則となる。


高尿酸血症の治療


1) 治療方針

 痛風・高尿酸血症の治療目的は、まず痛風関節炎の発症を防ぐことである。さらに、高尿酸血症の合併症である腎障害(痛風腎)、尿路結石を発症、進展させないことはより重要となる。また痛風・高尿酸血症には高脂血症、高血圧、耐糖能異常、肥満などの生活習慣病が高率に合併することが知られ、このような合併症が虚血性心疾患や脳血管障害の発症率を高くしていると考えられているので、血清尿酸値のコントロールだけでなく、合併症に対する十分な配慮も重要となってくる。高尿酸血症の治療指針を図2に示す。



 諸外国においても痛風患者の尿酸降下療法の適応としては、再発性関節炎、多発性関節炎、痛風結節、X線変化を伴う痛風、尿酸結石症例などであると考えられており、日本の治療方針と大きな差異はない。痛風関節炎や痛風結節を認めない「無症候性高尿酸血症」に対する治療については、国により考え方が異なっている。日本と異なり欧米では特殊な症例を除き無症候性高尿酸血症は治療が不要であるとされていることもある。

 最近の大規模臨床研究の成績から高尿酸血症が心血管疾患の独立した危険因子であることが次第に明らかになってきている。また、特に高血圧患者においては高尿酸血症が心血管障害の独立した危険因子であることが一層明らかとなってきている。血圧が良好にコントロールされた本態性高血圧患者を対象にしたWorsite Studyにおいて、心血管疾患(CVD)発症率(年齢と性で補正済み)は血清尿酸値と正の相関を示しており、血清尿酸値の低い群に比し高い群ではCVD 発症の相対危険度は1.48であったとされている。これらの成績から血清尿酸値が男性で7.6mg/dl以上、女性で6.2mg/dl以上で心血管事故が増加すると報告しているsup4/supsup)/sup。これらの点を踏まえて高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、高尿酸血症を合併した高血圧の治療チャートを図3のように示している。ここで尿酸が下がる降圧薬にはα1遮断薬、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、アンジオテンシン㈼受容体拮抗薬のロサルタンなどがある。



2) 尿酸降下薬の選択

 尿酸降下薬には尿酸生成抑制薬(アロプリノール)と尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロンなど)がある。高尿酸血症はその成因によって尿酸産生過剰型と尿酸排泄低下型に大別されるが、前者には尿酸生成抑制薬を後者には尿酸排泄促進薬を使用するのが原則となる。ただし、尿路結石の既往や保有例あるいは中等度以上の腎機能障害例には、尿酸排泄促進薬は尿中尿酸排泄量を増加させこれらの合併症を増悪させる可能性があるので好ましくなく、病型にかかわらず尿酸生成抑制薬で尿酸排泄量を抑制する必要がある。

3) 治療目標血清尿酸値

 治療目標血清尿酸値は、痛風発作回数の減少および痛風発作の予防の観点から、および関節液の尿酸結晶減少の観点からも、血清尿酸値6 mg/dl以下を治療目標として良いとのエビデンスが出ている。Shojiらは血清尿酸値と痛風発作再発率を後ろ向きに検討した成績において、痛風発作再発率は血清尿酸値の低下と共に低下しており、尿酸降下薬の投与量を考慮すると目標血清尿酸値としては6 mg/dl以下が良いと報告しているsup5/supsup)/sup。

尿路管理


 コントロール不良の痛風・高尿酸血症患者では、高尿酸血症、高尿酸尿症が持続するために腎合併症である痛風腎と尿路合併症である尿路結石症が問題となる。痛風における腎障害の発症機序を図4に示すが、痛風腎の診断には超音波検査が有用である。超音波検査上、正常腎では腎髄質は腎皮質より低いエコーレベルを示すが、痛風腎では腎皮質よりも高いエコーレベルに描出されるhyperechoic medullaの所見を呈する。また高尿酸血症に伴う高尿酸尿症は尿酸結石形成ばかりでなく、カルシウム結石形成の危険因子であることも知られており、痛風・高尿酸血症患者には尿路結石が高率に合併してくることが知られている。教室の成績では痛風・高尿酸血症患者の28.4%に結石形成を認めている sup6/supsup)/sup。



 痛風腎・尿路結石の治療・予防には、低プリン食とアロプリノールを用いた高尿酸血症・高尿酸尿症対策に加えて、尿量を1日2000ml以上保つように飲水指導を行い、また食事療法(尿をアルカリ化する食品、但し腎機能障害患者には低カリウム食と低蛋白食が必要)と尿アルカリ化薬(クエン酸K・クエン酸Na配合剤など)により尿pHを6.0~7.0に保つ尿路管理が重要となる。

生活指導


 高尿酸血症・痛風患者の治療には薬物療法ばかりではなく生活指導が重要となってくる。生活指導は、表4に示すように食事療法、飲酒制限、運動の推奨が中心となる。

予後

 痛風患者の死因は、以前は腎不全による尿毒症が多かったが、最近では尿毒症が激減し、心血管障害が増えてきている。

参考文献

1) 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン, 第1版.高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン作成委員会編集.日本痛風・核酸代謝学会発行.2002年, 東京.

2) 中村 徹:高尿酸血症の成因と病態.—実地医家のための—高尿酸血症・痛風の診療、中村 徹編、メディカルレビュー社、pp21-38, 2001.

3) Wallace SL, Robinson H, Masi AT, et al: Preliminary criteria for the classification of the acute arthritis of primary gout. Arthritis Rheum 20: 895-900, 1977.

4) Alderman MH, Cohen H, Madhavan S, et al: Serum uric acid and cardiovascular events in successfully treated hypertensive patients. Hypertension 34: 144-150, 1999.

5) Shoji A, Yamanaka H, Kamatani N: A retrospective study of the relationship between serum urate level and recurrent attacks of gouty arthritis: evidence for reduction of recurrent gouty arthritis with antihyperuricemic therapy. Arthritis Rheum 51:321-325, 2004.

6) Okabe H, Hosoya T, Hikita M, et al: Analysis of urolithiasis in patients with gout and hyperuricemia using ultrasonography. Jpn J Rheum 9: 239-244, 1999.

6

執筆者による主な図書

1) 細谷龍男・下村伊一郎 編さん:メタボリックシンドロームにおける高尿酸血症の意義とその管理―近年の研究からわかってきたこと,フジメディカル出版 2010 

2) 細谷龍男 監修:スーパー図解 痛風・高尿酸血症―確実に尿酸をコントロールして激痛発作を防ぐ (トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ),法研 2007

3) 細谷龍男 著:高尿酸血症・痛風診療ハンドブック―実地医家にすぐ役立つ,文光堂 2005

4) 井上八重子・細谷龍男 監修:痛風・高尿酸血症を治すらくらくレシピ―美味しさいっぱいの食事療法,法研 2004

5) 細谷龍男・重松隆 編集:透析患者合併症のマネジメント,医薬ジャーナル社 2002

6) 細谷龍男・奈良昌治 著:健診で尿酸値が高めですよと言われた人の本,法研 2001

7) 荒牧麻子・細谷龍男 監修:痛風の人の食卓 (美味しい・ヘルシー・クッキング),保健同人社 2000

8) 北本清・細谷龍男・藤井正満・上田尚彦・鈴木洋通 著:腎機能検査の正しい評価―その方法と測定値の解釈,診断と治療社 1998

9) 細谷龍男 著:痛風―痛みと尿酸を抑える (名医の医書シリーズ),法研 1994
 

(MyMedより)推薦図書

1) 納光弘 著:痛風はビールを飲みながらでも治る!―患者になった専門医が明かす闘病記&克服法 (小学館文庫),小学館 2004

2) 山中寿 著:尿酸値を下げたいあなたへ,保健同人社 2008

3) 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風セ 編さん:膠原病・リウマチ診療 改訂第2版―Evidence Based Medicineを活かす,メジカルビュー社 2007

4) 上野征夫 著:リウマチ病診療ビジュアルテキスト 第2版,医学書院 2008

 

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