変形性股関節症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

執筆者: 苅田 達郎

概要

 股関節は脚の付け根と骨盤との間にあります。ボール型をした大腿骨頭とソケット状の骨盤(寛骨臼)からなる関節で、関節面は軟骨に覆われており、両者が擦れ合って動くところです。軟骨は氷の何倍も滑りやすく、通常はスムーズに動くのでなんら痛みを感じません。しかし、軟骨がさまざまな原因のために傷つき、軟骨の厚みが減ったり、無くなったりしますと病的な状態となります。そうすると、軟骨の下にある骨自体が変化して、骨頭の形や寛骨臼の形が少しずつ変わっていきます。これが変形性股関節症と呼ばれるものです。

病因

 変形性股関節症の病因にはさまざまなものがあります。一次性と二次性と分けています。一次性とは力学的負荷や加齢現象のため起こる股関節症で明らかな原因疾患がない場合のことです。一方、二次性とはもともと何らかの疾患に続発して起こるものです。もとになる疾患として、寛骨臼の被覆が少ない臼蓋形成不全症がわが国では多いといわれています。この点に関連して変形性股関節症の関連遺伝子に関しての研究が行われています。その他、化膿性股関節炎、ペルルテス病、大腿骨頭すべり症、外傷性の股関節脱臼、骨系統疾患などに起因した軟骨の変性により発症します。

臨床症状

 股関節痛が主ですが、大腿から膝までの違和感や痛み、臀部、ソケイ部の痛みとして自覚されることがあります。また、脚が上がりにくい、爪が切りにくい、靴下の履きにくさといった股関節の動きにくさで自覚されることもあります。他の人からは歩行時の体の揺れを指摘されて気づくこともあります。

診断・鑑別診断

 いままでの症状の経過と画像から診断することになりますが、基本的にはレントゲン画像を用います。大腿骨頭と寛骨臼との関節は、通常レントゲンである程度開いて見えます。これは軟骨があるためですが、変形性股関節症となるとこの関節の幅が、狭くなったり、なくなったりしていきます。日本整形外科学会では関節裂隙幅を柱として変形性股関節症の病期を決めています。関節の幅が狭くなり始めたのが初期、関節の幅が一部無くなったのが進行期、関節の幅が全くなくなってしまったのが末期としています。不思議なことにレントゲン画像での見え方が、必ずしも疼痛の程度と一致しているわけではないのですが、疼痛が持続していれば、すこしずつ関節の変形は進んでいくこと、つまり、レントゲン上の病期が進行していくことが知られています。

治療

 年齢と股関節の変形(病期)や疼痛の程度によりさまざまなオプションがあります。

保存療法

 股関節周囲の筋力トレーニングや、脚の補高、杖を使用することで股関節にかかる負荷を減らす方法があります。非ステロイド性消炎鎮痛剤は短期間には除痛効果があるといわれますが、副作用もありますので注意して使うことが大切でしょう。

手術療法

関節温存手術

 自分の骨の形の再建をして、股関節へ力のかかり方を変化させ、股関節症の進行を予防して、疼痛を軽減し日常生活への支障を少なくすることを目的とする方法です。比較的若年者ですでに痛みがあり、関節の変形が末期までいってない場合には、寛骨臼回転骨切り術(RAO)(寛骨臼移動術(TAO))、キアリ骨切り術などの骨盤側の骨切り術と、大腿骨側の骨切り術として大腿骨内反骨切り術、大腿骨外反骨切り術があります。また筋腱部分に外科的処置を加える筋解離術などもあります。これらの外科手術の適応をどうするかについては、いろいろな要素があります。例えば、年齢、反対側の股関節の状態、脚長差がどれくらいあるか、関節の動く範囲がどれくらいあるかなどの他、体重、性別、社会的に置かれた状況などの複雑な要因が影響するため、股関節外科医への相談をお勧めします。

人工股関節置換術

 すでに痛みがあり、股関節症の病期が末期にあたる場合には、人工股関節置換術がオプションになります。変形した大腿骨頭を切除して、骨盤側に操作を加えて人工の股関節を設置します。人工股関節置換術は広く行われる術式ですが、残された課題があります。

1.免疫をもたないため感染に対して弱いこと。最悪の場合股関節を抜去せざるをえないことがあります。そのため感染の予防が大切です。

2.股関節を深く曲げる、内側に曲げて股関節を捻るような動作をすると脱臼する(人工関節がはずれる)ことがあります。その場合、自分ではもとに戻せません。

3.人工股関節のボールとソケットは擦れ合いますので、すこしずつ摩耗していきます。そのためいずれ再手術をようする可能性があります。

(MyMedより)推薦図書

1) 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・変形性股関節症ガイドライン策定委員会 編集:変形性股関節症診療ガイドライン,南江堂 2008

2) 久保俊一・杉山肇 編集:変形性股関節症―基本とUP TO DATE,南江堂 2010

3) 杉岡洋一 監修、岩田久・武藤芳照・伊藤晴夫 編集:変形性股関節症の運動・生活ガイド―運動療法と日常生活動作の手引き,日本医事新報社 2004

4) 大谷内輝夫 著、林和生 監修:股関節痛を自分で治す本,マキノ出版 2010
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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