先天性股関節脱臼 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)

Developmental Dysplasia of the Hip(DDH)

執筆者: 薩摩 真一

概要

 新生児期から乳児期における小児整形外科分野の代表的疾患である.

 発生頻度は人種的,地域的にかなりの差があるが,おおむね0.1~0.2%と報告されている.性別では女児に多く一般に男児の4~5倍とされることが多い.ちなみに当科(兵庫県立こども病院,整形外科)において1971年から2006年の36年間に治療した症例の性別を調査すると男女比は1:8で通常の報告に比べ女児の比率がより高かった. 罹患側では両側例が1割を占め,片側例では左が右の2倍多い.

病因

 単一因子ではなく多因子が関与していると考えられており内因性因子と外因性因子に分けられる.内因性因子としては人種的特性,靭帯弛緩性,ホルモン分泌,遺伝的素因などが関与しているとされ,外因性因子としては出産前の子宮内肢位(特に臀位),出生後の股関節肢位などが関与している.

 内因性因子の影響下で生下時にはいわゆる不安定股(肢位によって脱臼したり整復されたりする不安定な股関節の状態を指す)の状態にある新生児が,育児の過程で股関節を脱臼しやすい肢位におかれると(外因性因子)疾患が成立すると考えられている.このことを踏まえ近年欧米ではcongenitalではなくdevelopmentalという用語に置き換えられ使用されている.

病態生理

 骨盤寛骨臼と大腿骨頭それぞれの関節軟骨が全く接触面をもたないものを脱臼,部分的に接触面をもつものを亜脱臼と呼んでいる.外傷性脱臼との大きなちがいは本症では大腿骨頭は関節包に覆われたまま脱臼しているという点にある.したがって脱臼している患児に痛みはない.

臨床症状

 開排制限,大腿皮膚溝の非対称 患児を仰臥位とし両側の股関節を検者の両手で同様の強さで屈曲,外転していくと患側股関節では開排制限が見られる.この検査は大腿皮膚溝の非対称とあわせて最も簡便に行えるので,保健所などの新生児,乳児健診でスクリーニングに用いられることが多い.ただし,これらの症状があるからといって必ずしも脱臼が存在するわけではない.

脚長差

 患児を仰臥位とし両足をそろえ,股および膝関節を屈曲し,左右の膝の高さを比較し判定する.脱臼側で膝が低くなる.

クリックサイン

 患児の股関節を開排させたり閉じたりすると脱臼股ではコクッとした整復感あるいは脱臼感が触知される.

検査成績

 血液生化学検査上は異常なく,診断は臨床症状と画像所見により確定される.

診断・鑑別診断

超音波像

 新生児期や乳児期初期では骨頭の軟骨成分が多く単純X 線像での判読が非常に困難であるため超音波診断は有用である.Grafの外側アプローチ法が最も一般的である.

単純X 線像

 乳幼児期では通常生後3ヶ月を過ぎると,大腿骨近位の二次性骨化核が出現するので,診断的価値が高くなる.

股関節造影

 全身麻酔下にX線透視下で両股関節腔内に水溶性造影剤を各々1~2ml注入し,得られた陰性像を判読する.

MRI

 骨端核出現以前の新生児期,乳児期初期における骨頭の観察には有力で,非侵襲で骨化中心や成長軟骨板の形成,発育の障害等が画像から推測されうる.ただし動的な状態は反映しにくい.

治療

 当科においては(1)Pavlik装具を使用した整復法(リーメンビューゲル法,以下RB法),(2)牽引後全麻下徒手整復法,(3)観血的整復術を3つの柱とし,治療開始時期,脱臼整復の難易度等により整復方法を選択している.

RB法

 乳児期に治療を開始する場合第一選択としている.臨床症状やX線像により整復が確認されれば3ヶ月間装着を続ける.本法による整復率は80%程度である.

 一方,整復が得られない場合は最長2週間ですみやかに装具を除去することにしている.これは骨頭壊死の合併を予防するためである.



牽引後全麻下徒手整復法





RB法による非整復例あるいは治療開始が乳幼児期後半以降(月齢6ヵ月以降)の場合は入院のうえ本法を試みる.3~4週間の牽引ののち全麻下に徒手整復を試みる.約80%で整復される.整復されればラッパ型に広がった開排ギブス(図4)で4週間固定したのち開排位ブカブカ装具を3ヶ月間装着する(図5).





 一方,全麻下に整復不可能なもの,あるいは整復はされても安定性が悪いものは観血的整復術の適応となる.

観血的整復術

保存的治療で整復の得られない症例,あるいは未治療の年長児などが適応となる.

予後

 当科で治療し14歳以上まで経過観察できた170例182関節の長期予後を紹介する.整復治療後なんら特別な治療を加えないでも良好であった症例は78%であったが,整復治療後なんらかの補正手術により良好な結果に転じた症例も含めると96%で好結果を得た.このことは,先天性股関節脱臼がタイミングよく適切な治療がなされれば,決して重大な後遺症を遺残する疾患ではないことを示している.

(MyMedより)推薦図書

1) 山田順亮 著:先天性股関節脱臼診療のポイント―これだけは知っておきたい,金原出版 2002

2) 日本小児整形外科学会教育研修委員会 編集:小児整形外科テキスト,メジカルビュー社 2004

3) 坂巻豊教 編集:整形外科医のための小児日常診療ABC,メジカルビュー社 2003 

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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