後部尿道弁 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

後部尿道弁(こうぶにょうどうべん)

Posterior urethral valve

執筆者: 多田 実

概要

 精丘から遠位側に向かって左右両側に分かれ、膜様部尿道に向けて斜走する粘膜隆起が著しくなって弁となったものである(Young I型)。YoungはI~III型に分類したが、大部分はI型である。

病因

 Wolf氏管の痕跡である精丘ヒダの退化不全によると考えられている。

病態生理

 弁は排尿時に尿流の通過障害を引き起こす。膀胱内圧は高圧化し、尿管膀胱移行部機構の破綻によって二次的に膀胱尿管逆流や水腎水尿管症を発生させる。

臨床症状

自覚症状

 弁状狭窄の程度によって異なる。高度な場合は出生直後より尿閉のために腹部膨満や尿性腹水、腎低形成合併に伴って急性腎不全徴候などが見られる。軽度な場合は幼少時期は無自覚であるが、尿路感染症や学童期になってから遺尿症を契機として発見されることが多い。

他覚症状

 高度な場合は胎生期に尿量減少のため、羊水過少症を呈している。学童期になり、集団生活の中で今まで自覚、他覚されていなかった尿線が細い(尿線細小)、排尿に時間がかかる(遷延性排尿)などの排尿困難の症状や、尿失禁が見られることがある。

検査成績

 弁の構造上、排尿時のみ尿流通過障害が生じるため、排尿時膀胱尿道造影(VCUG)にてタイミング良く弁状狭窄を描出する必要がある。この際、同時に高圧膀胱による膀胱変形や二次的な膀胱尿管逆流の有無、程度(grade)を観察する。腎低形成や続発する膀胱尿管逆流, 水腎水尿管症による腎機能障害を評価する目的でRI検査(99mTc-DMSA, 99mTc-DTSA, 99mTc-MAG3)を付加する。腹部超音波検査は簡便、無侵襲で小児でもほとんど鎮静なしに行えるため、排尿時膀胱尿道造影を行う前のスクリーニングとして有用である。カテーテル操作なしに残尿量の測定や膀胱変形、腎変形、水腎水尿管症の検出が可能である。他に尿水力学的検査(UDS)として尿流量測定(UFM)、膀胱内圧測定(CMG)、尿道内圧測定(UPP)などが病態の把握に有用である。

診断・鑑別診断

 排尿時膀胱尿道造影と尿路内視鏡所見にて確定診断される。鑑別疾患としては先天性尿道(リング状)狭窄があげられる。

治療

 尿路内視鏡を用いて弁の切開もしくは切除をおこなう(経尿道的弁切開術:TUI)。膀胱内に灌流液を充満させ、膀胱部を経皮的に術者の手で圧迫すると内視鏡下に弁の確認が容易となり、切開もしやすくなる。

予後

 弁切開により続発性膀胱尿管逆流のうち1/3が自然消失すると言われている。弁切開後、1年間以上、膀胱尿管逆流が消失しないときは尿管膀胱新吻合術を検討する。生後まもなくで、十分な弁切開が不可能な場合や腎低形成、高度な膀胱尿管逆流、水腎水尿管症があり、腎機能保持および尿路感染症対策のために一時的尿路変更が必要の時は無カテーテル式膀胱婁造設術(Blocksom)を行い、成長を待って弁切開術や尿管膀胱新吻合術を施行する。

最近の動向

 早期からの腎機能保持を目的として胎児期に子宮内で膀胱婁を作成し、尿を羊水内にドレナージし(膀胱―羊水腔シャントV-A shunt)、上部尿路の負担を軽減する胎児手術も一部施設で行われている。

参考文献

1) 森 義則:後部尿道弁。小児泌尿器科学書、生駒文彦 監修、pp254-256、金原出版、東京、1998

2) 島田憲次、他:閉塞性尿路疾患に対する胎児治療の長期予後。小児外科、36(12)、pp1546-1550、2004

(MyMedより)推薦図書

1) 岡田正 著:系統小児外科学,永井書店 2005

2) 柿崎秀宏 編集:小児泌尿器科手術 (新Urologic Surgeryシリーズ),メジカルビュー社 2010
 

免責事項

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