胆嚢炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

胆嚢炎(たんのうえん)

Cholecystitis

執筆者: 窪田 敬一

概要

 急性胆嚢炎とは胆嚢壁の急性炎症を主体とした病態であり、臨床的に遭遇する機会が多い疾患である。無石胆嚢炎のように胆石の無い症例にも急性胆嚢炎は発症しうるが、日常取り扱う急性胆嚢炎は胆石に起因することが多い。

病因

 胆石例に見られる急性胆嚢炎は胆嚢管閉塞があるものとないものに分類することができる。最も多いものは胆石が頚部ないし胆嚢管に嵌頓して発症する急性閉塞性胆嚢炎である(80-90%)。この他胆嚢管の奇形や捻転、隣接臓器の炎症や腫瘍による圧迫、なども原因となる。閉塞機転が生じた結果、細菌感染、内圧上昇による胆嚢壁の循環障害が加わり様々な病態を呈してくる。

病態生理

 病態は経時的変化により3期に分類できる。


うっ血・浮腫型または浮腫性胆嚢炎(edematous cholecystitis)


 胆嚢壁の循環障害を主体とした胆嚢炎であり、壁はうっ血、浮腫性になる。通常、発症から2—4日以内である。この時点では粘膜は温存されている。


出血・壊死型または壊死性胆嚢炎(necrotizing cholecystitis)


 浸出液の貯留が増加し胆嚢内圧は上昇する。胆嚢壁は壊死・出血をきたす。細小動脈の血栓形成、閉塞による血行障害が原因と考えられる。通常、発症から5—7日に見られる。


膿瘍型または化膿性胆嚢炎(suppurative cholecystitis)


 化膿が始まった胆嚢炎。壁は肥厚し、胆嚢は収縮傾向を示す。発症から7−10日に見られる。

 しかし、これらの病態は連続して起こるため、実際の臨床では3つの病態が混在していることが多い。典型的肉眼所見は粘膜の出血性変化、壁肥厚であり、この変化に黒褐色の壊死巣を呈するのが出血・壊死型であり、粘稠な膿瘍がみられるものが膿瘍型である。時に壁肥厚のない単純な壊死型もある。したがって、急性胆嚢炎がどの段階にあるのか考慮しながら治療することが肝要である。

臨床症状

 発熱、嘔気、嘔吐に加え、右上腹部(季肋部)痛、心窩部痛、右肩、背部放散痛、がみられる。典型的な症例では、右季肋部に筋性防御を認め、腫大した胆嚢を触知する。また、軽度の黄疸を呈することがある。進行すると胆嚢穿孔、胆汁性腹膜炎をきたすことがある。多くは胆嚢周囲に留まるが、時に汎発性腹膜炎を来たし致命的になることがある。高熱、著明な白血球増多を伴う腹膜刺激症状、超音波で胆嚢周囲の液体貯留、が認められた場合はこの状態を疑うべきである。

 胆嚢壁の炎症が腸管に及び瘻孔を形成すると胆嚢腸管瘻となる。瘻孔を介して結石が腸管内に逸脱することにより、腹痛および描出されていた結石が消失し、腹部単純X線写真で肝内胆管内にガス像(胆道気腫)を認める。時に胆石性イレウスを発症することもある。

検査成績

一般検査所見


 白血球増多、核左方移動、CRP上昇、などの炎症所見のほか、血清ALP, γ-GTP, GOT, GPT, LDH, ビリルビン値の上昇、などの軽度肝機能異常を認める。

画像所見


 腹部単純X線写真で胆石陰影を認めることがあり(胆石にカルシウム成分が多い場合)、経静脈性胆嚢造影(drip infusion cholangiography; DIC)で胆嚢が描出されない。また、腹部超音波検査により、胆嚢腫大、胆嚢内debrisなどの内部エコーの出現、胆嚢壁肥厚、壁の浮腫性変化を示す sonolucent layer、腫大した胆嚢直上を手指あるいは超音波プローブで圧迫した時の圧痛(Murphy’s sign)、のうち3つ以上の所見が認められた場合急性胆嚢炎である可能性が高い。

 CTでも胆嚢腫大、胆嚢壁の肥厚、壁の浮腫性変化、頚部に嵌頓した結石を確認することができる。

診断・鑑別診断

 以上の所見を総合すれば診断は難しくないが、右上腹部痛を来す胃・十二指腸潰瘍、急性膵炎、急性虫垂炎、急性腎盂腎炎、尿管結石を鑑別する必要がある。心窩部から前胸部痛を訴えている場合は心筋梗塞も念頭に置く。

治療

保存的治療


 基本は絶飲食とし輸液、鎮痛・鎮痙剤を投与するとともに、グラム陰性菌に効く胆汁移行の良い抗生物質を投与することで全身状態の改善をはかることである。

 また、超音波ガイド下に腫大した胆嚢を経肝的に穿刺し、内容をドレナージしドレナージチューブを留置することができる(percutaneous transhepatic gallbladder drainage:PTGBD)。

 チューブを留置することなく1回の穿刺で症状が軽減する場合もある。炎症が消退すると結石の嵌頓も解除され胆管が造影されるようになる。時に局麻下に胆嚢外瘻を造設することもある。


外科的治療


 どの時期に胆嚢摘出術を施行するか患者の全身状態を考慮にいれ決定する。胆嚢摘出術をしなくては全身状態が改善しないと判断された場合、または保存的治療により全身状態が改善すればすぐに手術しても良い(早期手術)。または2-3週間保存的治療を施行し局所の炎症が消退してから手術を行う場合もある(待機手術)。心疾患、呼吸器疾患など特別なリスクがない限り早期に手術に踏み切る場合が多い。

 基本的は胆嚢摘出術である。手術既往がない場合は急性期でも腹腔鏡下胆嚢摘出術が可能な場合がある。しかし、炎症が著明で出血しやすく経験を積んだ外科医が施行すべきであり、解剖学的関係の把握が難しい場合は無理することなく開腹に移行するべきである。術中胆道造影により総胆管結石の有無を確認し、あれば結石を除去する。

予後

 急性胆嚢炎から胆汁性腹膜炎、敗血症を併発した場合は予後が悪い場合があるが、特別なリスクがない限り保存的治療の後、胆嚢摘出術を施行することにより良好な予後が得られる。

最近の動向

 急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドラインが作成され、治療の指針になっている

(MyMedより)推薦図書

1) 急性胆道炎の診療ガイドライン作成出版委員会:科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン,医学図書出版 2005

2) 田中照二, 桂きみよ, 佐伯節子, 高橋敦子:胆石・胆のう炎・膵炎の人の食事 (健康21シリーズ),女子栄養大学出版部 2004

3) 税所宏光 編集:防ぐ、治す 胆のう・胆管の病気 (健康ライブラリー イラスト版),講談社 2005
 

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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