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purulent mastitis
執筆者: 太田 智彦
感染を伴わない乳汁のうっ滞による炎症をうっ滞乳腺炎といい、化膿菌が感染したものを化膿性乳腺炎と呼ぶ。さらに炎症が波及し乳腺組織内に膿が貯留したものを乳腺膿瘍という。
授乳期の乳汁排出不良による乳汁うっ滞に、授乳による乳頭の擦過傷や咬傷からの細菌感染が原因となって生じる。特に産褥期に多い。
起炎菌は黄色ブドウ球菌、連鎖球菌の順に多い。誘因なく発症する場合もあるが授乳期以外に生じることはまれである。
初産婦では、乳管の発育が未熟であり、授乳が不慣れなため、乳汁のうっ滞が起こりやすく感染巣となりやすい。
化膿性乳腺炎は、自発痛、腫脹、硬結、圧痛、発赤、熱感などの局所症状が強く、さらに、腋窩リンパ節の腫大や、発熱(時に38度以上の高熱となる)や悪寒などの全身症状を認める。
化膿性乳腺炎や乳腺膿瘍では、血液検査で、CRPの上昇、白血球増多を認める。乳腺膿瘍を形成した場合には、超音波検査で低エコー域として、膿の存在を確認できる。腋窩には圧痛のある腫大したリンパ節が認められる。
化膿性乳腺炎は局所症状に加え全身所見、血液検査による炎症所見を診断の手がかりとする。膿汁の分泌を認めれば、細菌検査、薬剤感受性検査を行う。乳腺膿瘍では超音波にて膿の存在を確認し、穿刺すると膿汁が吸引されるため、診断できる。
炎症性乳癌 inflammatory breast cancerとの鑑別が重要である。炎症性乳癌では、特徴的な皮膚の発赤や浮腫に伴う所見(豚皮状、橙皮状)がみられるが、強い局所炎症所見に対し、自発痛、圧痛、発熱、白血球増多がない。癌の転移によるリンパ節腫大が類円形であるのに対し、化膿性乳腺炎による腋窩リンパ節腫大ではリンパ門が保たれ、馬蹄形を呈する場合が多い。
うっ滞性乳腺炎では乳頭部を清潔に保ち、搾乳や授乳によりうっ滞を除くが、化膿性乳腺炎では、患側の授乳を中止し、十分な搾乳や乳房マッサージで乳汁のうっ滞を回避する。
局所の発赤部、発熱部に冷罨法を行う。
ペニシリンやセフェム系抗生物質や消炎鎮痛薬を投与する。
乳腺膿瘍を形成した場合は、局所麻酔下で切開排膿を行い、ドレーンの留置を行う。
小さな膿瘍の場合は穿刺吸引により排膿し、排膿後に抗生物質を注入することもある。しかし、膿瘍が広範囲に及ぶ場合は、膿瘍内に隔壁が存在することがあるため、切開部より用指的に隔壁を破り、十分にドレナージする。
良性疾患のため、予後良好。膿瘍形成した場合には、治療に数ヶ月を要する場合がある。
1) デヴィッド L サイメル・ドルモンド レニー 著、日経メディカル 編集、竹本毅 翻訳:JAMA版 論理的診察の技術 ―エビデンスに基づく診断のノウハウ―,日経BP社 2010
2) 石山公一・佐志隆士・角田博子・大貫幸二 著:マンモグラフィのあすなろ教室 (画像診断別冊),秀潤社 2007
3) 星野寛美 監修:女性の医学オール百科―気になる症状から引ける 乙女のお悩みファイル付き,新星出版社 2007
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