アカラシア - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

アカラシア(あからしあ)

Achalasia

執筆者: 北山 丈二

概要

 下部食道噴門部括約筋(Lower esophageal sphincter:LES)の弛緩不全により食物の通過障害や食道の異常拡張を認める機能的疾患と定義される。発症頻度は10万人当たり1~2人程度と少ない。発症年齢は30~40代に多く、女性にやや多い。

病因

 食道壁内の神経叢の機能障害が原因と考えられるが本態は不明。病理学的には食道筋層のAuerbach神経叢の神経節細胞の消失、減少や変性などがあげられている。

病態生理

 健常者では嚥下とほぼ同時に食道が蠕動しLESが弛緩するので、嚥下した食物はスムーズに食道を通過し噴門を越え胃内に運ばれるが、アカラシアでは食道の正常な蠕動運動が消失し、LESの弛緩が起こらないために、嚥下した食物は重力によって食道下部まで徐々に落下するが、LESの弛緩がないため噴門を通過することができないために、食道が異常に拡張する。

臨床症状

 主症状は嚥下障害とつかえ感である。症状に時間的変化があること、流動物より固形物が通りやすいこと、病難期間のわりに体重減少が見られない点が悪性腫瘍による嚥下障害との相違である。逆流による口腔内逆流、胸骨部痛・背部痛を訴えることも多く、睡眠中の嘔吐・流涎、誤嚥性肺炎などを契機に診断される事も多い。

検査成績

食道造影検査


 LESの弛緩不全を反映して、食道胃移行部の平滑な嘴状狭窄像bird's beakがみられ、嚥下により拡張することが無いのが特徴である。狭窄の口側食道は著明に拡張し、正常な蠕動波はほとんど認めない。食道下部の拡張の形によって以下のように分類され、数字の大きいものほど進行している。

(1)紡錘型(spindle)

(2)フラスコ型(flask)

(3)S字状型(sigmoid)

 拡張の程度は最大横径(d)により以下のように分類される。

(I)度 d < 3.5cm

(II)度 3.5 < d < 6.0cm

(III)度 6.0cm < d

内視鏡検査


 アカラシアは機能的な疾患なので内視鏡検査が確定診断に有用なわけではないが、器質的疾患の除外診断に必要である。所見としては食道内腔の拡張、残渣の貯留、食道胃接合部の狭窄をみるが、スコープは容易に狭窄部を通過することが多い。

食道内圧検査


 嚥下時のLES弛緩不全、一次蠕動波の消失が特徴的である。LES静止圧は正常または高値を示し、食道内静止圧は上昇している。

診断・鑑別診断

 鑑別診断には、逆流性食道炎、食道癌、噴門部癌、強皮症に伴う食道狭窄などの通過障害をきたす疾患が挙げられるが、自覚症状と食道造影検査により診断は比較的容易である。初期アカラシアは、食道造影で変化が乏しいため、食道内圧検査が有用である。

治療

 LES圧を低下させ、食物を胃内に落下させる対症療法が治療の主眼となる。、薬物療法、バルーン拡張術、外科的治療が行われている。

薬物療法


 LES圧を低下させるカルシウム拮抗薬や亜硝酸薬を食前あるいは症状発現時に頓服で舌下投与する。高齢者や軽症例の症状緩和には有効であるが、長期的な寛解を得るのは困難な場合が多い。

バルーン拡張術


 内視鏡下あるいは透視下にLES部に拡張バルーンを挿入し、LESの平滑筋に亀裂を生じさせ通過障害の改善を図る。拡張時の疼痛が強いので数週間かけて低圧から開始する。横隔膜上憩室や潰瘍を合併している場合は穿孔の危険があるので避けた方がよい。拡張術は半数の症例で長期間有効であるが、効果が少ない場合は繰り返し行うより外科的治療を選択すべきである。

ボツリヌス毒素局注


 神経終末からのアセチルコリン遊離を抑制するボツリヌス毒素を内視鏡下にLESの平滑筋内に局注する方法が海外で行われており、短期的ではあるが拡張術に匹敵する成績が報告されている。

外科的治療


 手術の基本方針は通過障害の解除と逆流防止機構の修復である。LES圧を低下させる目的では、1914年にHellerが行った下部食道前後壁の粘膜外筋層切開術が有名である。それ以降多くの術式が報告されているが、現在では前壁のみの切開が広く行われている。通過障害の解除に伴い胃食道逆流を生じやすくなるため噴門形成術を付加することが多い。

予後

 嚥下機能に関しては、適切に治療すれば良好な経過をたどることが多い。アカラシアの約5%に食道癌が発生することが知られており、発症後15年以上経過した症例では定期的な内視鏡検査が必要である。

最近の動向

 最近では腹腔鏡下Heller-Dor法などの良好な成績が報告されている。

(MyMedより)推薦図書

1) 渡辺純夫 編集:消化器内科学(医学スーパーラーニングシリーズ),シュプリンガー・ジャパン株式会社 2010

2) 小野裕之 編さん:食道・胃ESD―ITナイフによるESDの実際 (症例で身につける消化器内視鏡シリーズ),羊土社 2009

3) 木下芳一 著:つらい「胸やけ」スッキリ―胃食道逆流症といわれたら,保健同人社 2007
 

免責事項

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