骨巨細胞腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.12

骨巨細胞腫(こつきょさいぼうしゅ)

Giant cell tumor of bone

執筆者: 河野 博隆

概要

 骨巨細胞腫は良性の骨腫瘍に分類されますが、他の良性骨腫様と比べ再発しやすく、肺転移を起こすこともあるという特徴があります。また、非常にまれですが悪性骨巨細胞腫に変化することがあります。骨巨細胞腫は主に20~45歳の人に発生し、女性にやや多く生じます。骨の成長が終わっていない人にはほとんど発生しません。発生部位は大腿骨遠位端(膝の上)、脛骨近位端(膝の下)ならびに橈骨遠位端(手首の親指側)、上腕骨近位端(肩の下)、仙骨(臀部の上)が発生しやすいとされています。

 骨巨細胞腫の発生頻度は、全原発性骨腫瘍の約5%と比較的高い割合を占めます。


病因

 組織学的に破骨細胞に似た巨細胞が多く見られることから、古くは「破骨細胞腫」と呼ばれていました。しかし、実際には腫瘍は巨細胞間にある間質細胞が主体と考えられており、実際にはどのような細胞から発生したのかわかっていません。原因となる遺伝子異常も解明されていません。

臨床症状

骨巨細胞腫特有の症状はありません。症状の多くは、骨強度の低下に伴う微少骨折によって生じると考えられる局所の痛み、腫脹ならびに関節の運動制限です。病的骨折が生じた場合、非常に軽い外傷後に、長期間にわたって疼痛を持続する症状が見られることがあります。

診断・鑑別診断

 骨軟部腫瘍に習熟した整形外科医であれば臨床経過、年齢、典型的な画像所見から比較的容易に診断はできますが、確定診断には切開生検術(腫瘍組織を一部採取する手術)による組織診断が必要です。

 血液検査では血中酸フォスファターゼ値の高値を示す症例が多く、疾患の広がりや治療効果の程度をみるのにマーカーとして、ある程度有効なことが明らかになりました。

 骨巨細胞腫は通常の良性骨腫瘍に対する手術方法では再発率が極めて高いため、診断と治療には専門的な知識と経験が必要です。骨軟部腫瘍を専門に扱っている病院を受診することをお勧めします。

治療

 根治療法としては手術療法しかありません。また、手術療法が困難な場合には放射線療法も行われますが、照射後悪性転化率が高いとされています。しかし、重粒子線という新しい放射線治療法を手術不能例に対して行ったという報告があり、結果が待たれているところです。

 手術療法では通常の良性骨腫瘍に対する手術と異なり、「準広範切除」が行われます。「広範切除」は悪性腫瘍に対して行われる手術方法で、腫瘍の再発を避けるために腫瘍組織を周囲組織ごと切除する方法です。詳しくは「骨肉腫」の項を御参照ください。「準広範切除」は広範切除に準じた切除法という意味です。骨巨細胞腫は良性腫瘍ですが、局所において非常に活動性が高いため、単純に腫瘍を掻爬(掻き出すこと)するだけではほぼ半数の症例が再発します。そのため腫瘍を掻爬したあと、サージエアトーム(歯科医などで使う高速回転するドリル)で腫瘍があった周囲の骨を掘削し、さらに腫瘍を掻爬します。その後、残存腫瘍細胞を殺傷するため、エタノールやフェノールなどを用いて周囲骨を処理します。エタノール処理の他に、液体窒素を用いる方法や骨セメントを充填して骨セメントが硬化する際に出す熱で処理する方法があります。このような処理をすることで再発率は10~20%程度まで下がります。

 再発率を下げるには、広範切除が望ましいのですが、周囲の組織欠損に伴う機能障害が大きくなることから、通常は第一選択とはなりません。しかし、病的骨折のために腫瘍が周囲組織に播種(巻き散らかされている)しているような場合には、周囲の軟部組織ごと腫瘍を切除するため、広範切除が必要となることがあります。

 また、橈骨の骨巨細胞腫に対しては、不十分な切除になりやすいため、準広範切除を行わずに、橈骨ごと腫瘍を切除して、腓骨(すねの外側の骨)を移植する方法を用いることがあります。

 肺転移巣に対する治療法は外科的治療のみですが、増大傾向を示さないものも多く、場合によっては経過観察だけの場合もあります。

予後

 局所の再発率は高いですが、良性腫瘍であり生命予後は良好です。最終的には96~100%の症例で局所のコントロールが得られます。

 骨巨細胞腫では、肺転移を起こした場合でも、転移巣の成長が非常に緩徐であったり、自然に縮小したりすることがあり、必ずしも生命に影響を与えるとはいえません。
局所再発は生命予後には影響を与えませんが、複数回の手術によって、骨関節の破壊や変形が進行し、患肢機能が悪くなることが問題となります。

(MyMedより)推薦図書

1) 森岡秀夫 編さん、戸山芳昭・大谷俊郎 監修:骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4),羊土社 2009

2) 岩本幸英 編集:骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls),文光堂 2005

3) 柳下章 著:エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI 第2版,三輪書店 2010
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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