ネフローゼ症候群 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

ネフローゼ症候群(ねふろーぜしょうこうぐん)

Nephrotic Syndrome

執筆者: 濱口 武士

概要

 ネフローゼ症候群とは、その名の通り1つの病気の名前ではなく、状態を示す言葉である。ある一定の条件(診断、鑑別診断の項目参照)を満たせば良いのであって、その結果、Aという腎臓病でもまたBでもCという腎臓病でも条件を満たせばネフローゼといって良いことになる。しかし一般的にあの子はネフローゼであるというときには1つの病気の名前として認識されている。その場合は、ネフローゼ症候群を示す腎臓病のうち最も頻度の高い疾患を指して言っているわけである(いわゆる代表格)。それは微小変化型といわれるもので、腎生検の光学顕微鏡所見が健常人のものとほとんど同じで、ネフローゼ状態を呈するものである。以下の項目は主としてこの微小変化型ネフローゼについて説明したものである。

病因

 長年の研究にもかかわらず、今もってその病因は不明のままである。

病態生理

 原因は不明であるが、蛋白質が尿中に大量に漏れ出すことから病気が始まる。尿は血液から作られるが、その最初の段階が腎臓の糸球体という場所での血液の濾過である。

 健常人では、糸球体から濾過された尿の元(原尿)には低分子の蛋白は含まれているが、アルブミン以上の分子量の蛋白質は含まれていない。

 それは蛋白質の通過が糸球体係蹄壁において制限されているからで、ポアといわれる壁孔のサイズと壁の陰性荷電が主役を演じている。前者はsize barrier、後者はcharge barrierといわれている。微小変化型のネフローゼではsize barrierにはほとんど変化がないが、charge barrierが減弱するため陰性に荷電している蛋白(アルブミンが主体)が壁の陰性の反発を受けず尿中に濾出する。size barrierのためアルブミンよりも大きい分子量の蛋白は濾出しにくい。

 この陰性荷電が減弱するメカニズムの詳細は不明であるが、微小変化型ネフローゼではさまざまな免疫異常を思わせる所見があり、患者の血清ないしリンパ球培養上清中に血管透過性因子または蛋白尿惹起因子があるとの報告もある。おそらくウイルス感染などにより患者のリンパ球からなんらかの液性因子が放出され、それが係蹄壁の陰性荷電を減弱するのではないかと想像されるが、その液性因子は未だ同定はされていない。

 次に血漿のアルブミンが大量に尿中に漏れるため低アルブミン血症になる。size barrierは保たれているためアルブミンより分子量の大きい蛋白質の透過性はあまり亢進していない(高選択性の蛋白尿)。アルブミンは血漿における膠質浸透圧の主成分であり、低アルブミン血症になると血漿浸透圧が低下する。血漿浸透圧は血管内の水分を血管内に保持するのに重要で、その低下により体液が血管内から血管外(間質)へ移動するため浮腫(組織間液の過剰)が生じる。その結果、循環血漿量は低下し、腎血漿流量も低下、尿量が減少する(乏尿)。また、低アルブミン血症を代償するために肝臓でのアルブミンの合成が亢進する。それと同時にリポ蛋白質の合成も刺激され高コレステロール血症になる。

臨床症状

自覚症状

 全身倦怠感を訴える子もいるが、多くは無症状である。ときに腹痛があることがあるが病初期にはあまりみられない。

他覚症状

 なんと言っても浮腫である。顔面、四肢、全身が腫れてきたと言って来院することが多い。男児の場合は陰嚢や陰茎包皮がパンパンになったということも多い。

検査成績

 ネフローゼ症候群の診断のための必須検査項目は、尿蛋白と血清アルブミン(あるいは総蛋白)、血清コレステロールである。その他、必須ではないが、尿沈渣、血清補体価、免疫グロブリン(微小変化型は高IgE血症を伴うことがあるのでIgEも含めて)、血清クレアチニン、血中尿素窒素、血清電解質なども必要である。また、糸球体での蛋白質の漏れが分子量の大きいものまであるのか、小さいものが主なものであるのかをみるための検査(尿蛋白の選択性)も行うことがある。

診断・鑑別診断

 最初にも述べたネフローゼ症候群というための一定の条件とは以下の通りである。
 


 このうち蛋白尿、低蛋白血症は必須の条件である。高脂血症、浮腫は以前は必須であったが現在は必須条件ではない。しかし、これを認めた場合はその診断はより確実となる。蛋白尿の持続とは3~5日以上をいう。

 このような条件が満たされればネフローゼ症候群といえるわけであるが、元の腎臓病が微小変化型なのかどうかの鑑別診断は、まず基本的治療を行い、その治療に対する反応をみてから考慮するのが一般的であり、最終的には腎生検を要することもある。また何らかの疾患に腎臓病が合併する場合(二次性腎疾患)にはその基礎となる疾患の診断ための検査も必要になる。

治療

 微小変化型のネフローゼ症候群の治療の第一選択薬剤は、副腎皮質ステロイドホルモン(代表はプレドニゾロン)である。その具体的な投与方法についてのガイドラインの1.0版が日本小児腎臓病学会学術委員会から発表になり、日本小児科学会雑誌の第109巻 第8号に掲載されている。

 ここで注意したいのはこのガイドラインが唯一無二のものではないということである。特にステロイドを大量に投与しているときは調子が良いが、減量したときにすぐに再発を繰り返すような場合(ステロイド依存性頻回再発)いろいろな投与方法を模索しなければならないことは非常に多いものである。

 病初期の重篤な浮腫(腹水、胸水などによる呼吸困難)に対してはアルブミンの輸注および利尿剤により対処する。

 ステロイド以外の治療薬としては、数種類の免疫抑制剤(ミゾリビン、サイクロフォスファマイド、シクロスポリン)や漢方薬などがあり、ステロイドの長期投与による副作用や問題点が出てきたときに考慮される。

予後

 微小変化型ネフローゼ症候群は一般的にステロイドホルモン治療によく反応して予後良好である。将来にわたって腎機能が低下することもない。ただし多くは再発を繰り返しやすい。しかし年齢が長じるにつれて再発しにくくなるのが一般的である。

最近の動向

 蛋白尿について、従来、糸球体血管壁の蛋白透過性を防ぐメインバリアは糸球体基底膜とする考え方が一般的であったが、近年、糸球体上皮細胞の足突起間に存在するスリット膜と呼ばれる構造がバリアとして重要でスリット膜の機能低下が蛋白尿の発症に関与していると考えられてきている。スリット膜に関連する分子としては、ネフリン、ポドシン、α-アクチニン-4などが知られている。微小変化型ネフローゼの代表的な動物モデルはピュアロマイシン アミノヌクレオシッド腎症であり、このモデルではネフリンやポドシンの発現低下や局在異常の存在が示され、蛋白尿の原因と密に関わっていると考えられている。

(MyMedより)推薦図書

1) 槙野博史 著:New専門医を目指すケース・メソッド・アプローチ 5,日本醫事新報社 2007

2) 坂井建雄・河原克雅 著:カラー図解 人体の正常構造と機能〈5〉腎・泌尿器,日本医事新報社 1999
 

免責事項

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