小児内視鏡下手術 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

小児内視鏡下手術(しょうにないしきょうかしゅじゅつ)

Pediatric Endoscopic Surgery

執筆者: 藤本 隆夫

概要

 内視鏡手術とは、広義には消化管、気道あるいは尿路内などの管腔内に内視鏡を挿入して行う管腔内手術も含まれるが、本稿では腹腔内あるいは胸腔内に内視鏡および手術器具を挿入し、通常の開腹あるいは開胸手術と同様の操作を行う内視鏡下手術について記述を加える。

 かつて多くの外科手術は開腹手術あるいは開胸手術と呼ばれる、大きな皮膚切開創を用いて、目的とする腔内を大きく広げ、対象となる臓器を直接手で触れて外科治療(切除あるいは再建)をするというのが一般的な手術方法であった。近年、成人外科、婦人科、泌尿器科領域においては、手術に伴う侵襲を軽微にするため、内視鏡下手術と呼ばれる内視鏡を用いた手術が積極的に進められている。

 本手術法は、手術の対象となる臓器の存在する腹腔あるいは胸腔に小孔を開け、手術をするための視野あるいは操作域を確保するために、二酸化炭素ガスを用いて腔内を拡張させる。引き続き、内視鏡(腹腔鏡・胸腔鏡)や手術機器を同様に数ヶ所の小孔より挿入し、内視鏡を通してモニターに映し出される映像を見ながら手術操作を行う手術のことである。




 現在では胆石症、自然気胸、噴門形成術、卵巣嚢腫などの手術は開腹手術から完全に内視鏡下手術に置き換わった感がある。各科・各領域において、さらにその適応拡大は進み、呼吸器、消化管、生殖器あるいは泌尿器など各臓器に対する多くの外科治療に積極的にその手術法が用いられている。

 本稿で取り扱う小児外科領域の内視鏡下手術においては、扱う患児の生理学的特殊性(幼弱性・未熟性)から慎重にその適応が検討されてきた。しかし、内視鏡下手術施行に伴う二酸化炭素気腹法、機器・機材の大きさ、手術視野、手術侵襲評価など様々な問題点が徐々に解決され、現在では各施設において積極的な取り組みがなされ、大変良好な成績が得られ、既に内視鏡下手術が標準術式として定着している術式もみられる。本稿では小児外科領域における内視鏡下手術についてその現況と手術適応についての解説を加える。

小児内視鏡下手術の利点

 内視鏡下手術の利点はその低侵襲性にある。従来の手術と異なり、大きな切開を必要とせず、微小な切開創あるいは小孔より全ての処置を行うため、創痛も軽微であり、手術操作が対象臓器だけに限局して行うことが可能であるため、消化管の蠕動開腹も早く、また不必要な他臓器への操作が必要ないので術後の臓器相互の癒着も軽微である。また数々の手術侵襲の程度を表す血液生化学的な指標による検討からも、手術侵襲が従来の開腹あるいは開胸法に比し軽微であることが証明されている。軽微な手術侵襲はひいては入院期間の短縮につながる。また創の美容的側面からも利点が多い。また、内視鏡下に術野を観察することにより、術野を拡大されて映像に示すことが可能となる。 さらに病巣のみの処置観察だけでなく、腹腔あるいは胸腔全体を広く観察出来ることも大きな利点であろう。

小児内視鏡下手術の欠点

 本手術法は臓器を直接手で触れて行う手術ではない。内視鏡を通してモニターに映し出された画像を見ながら手術を行う。モニターに映し出される画像は2次元の画像であるため、術者の目が2次元画像から3次元立体構造へと変換認識する訓練が必要である。このような訓練により手術器具を的確に操作するEye-hand coordinationが完成していなければならない。また、内視鏡下手術に特有の合併症の存在もあり、従来の手術術式に精通しているだけでなく、これらの生理学的特殊性について充分な訓練と知識を備えておく必要がある。

小児内視鏡下手術の基礎

小児外科領域における内視鏡下手術の特殊性


換気の問題

 先ず成人と小児の大きな違いはその腹腔あるいは胸腔容積の差である。小児の腹腔あるいは胸腔容積は非常に小さく、二酸化炭素による気腹圧が容易に上昇しすぎる危険性を秘めている。手術のために行う二酸化炭素による気腹操作は横隔膜を挙上し(頭側への移動)、さらに元来全身麻酔中の人工的な換気下では横隔膜の動きは前胸壁側で大きく、背側で殆どないため無気肺などの合併症を作り易くなる。また気道内圧を上昇させることにより生理学的死腔を増加させ、肺のコンプライアンスも低下し、機能的残気量を減少させることも知っておかねばならない。

循環器へ影響

 腹腔内圧の過度の上昇は下大静脈圧を圧迫することとなり、右心への静脈還流を阻害し、血圧の変動などを来たすことがある。

二酸化炭素ガスによる影響

 新生児・幼弱幼児では極めて慎重に気腹を行う必要がある。元来二酸化炭素ガスはボンベの中では液化した状態で保存してある。気腹時に気化して腹腔内に注入される際に気化熱を奪い、ガスは冷却されている。従って、その急速注入は新生児あるいは幼弱乳児では低体温を惹起することが知られている。また著しく高圧の気腹圧の設定は二酸化炭素ガスの腹膜あるいは胸膜からの吸収を助長することがあるので注意を要する。極く稀な合併症であるが二酸化炭素ガスによる塞栓症の報告もある。

小児内視鏡下手術に用いる機器・機材

 内視鏡下手術には多くの特殊な機器・機材を必要とする。








気腹器

 二酸化炭素ガスを設定した適正な圧と量で対象とする腹腔あるいは胸腔内へ注入し、その内圧維持をし、持続的に腔内の拡張を行う機器である。小児には微量注入可能な機械の方が望ましい。われわれは0.1L/minきざみの注入速度微量調整ができる機械を用いている。

内視鏡およびカメラ

 腹腔あるいは胸腔内で行う操作をモニターに映すためには視野角の広い内視鏡が必要である。内視鏡は硬性鏡(Rigid scope)が主流である。特にRod lens systemを用いた内視鏡は視野が明るく広く使い易い(Hopkins rod-lens system)。小児では3mmから5mm径の内視鏡が汎用されている。対物レンズの斜角は0度から75度のものを揃えている。

 また、先端がFlexibleに動くFiber scopeも開発され、成人領域では使用されているが、小児ではFlexibleに動く先端のworking lengthが長く、新生児・乳児期の狭い腹腔あるいは胸腔内では使いにくい印象がある。カメラには3CCDの高解像度を有するものが用いられ、デジタル化され画像を液晶モニターに転送している。

ポート

 内視鏡や手術機械を腔内に誘導するために用いる。様々の径のものが販売されており、再利用可能なものからDisposableのものまで様々な特徴を備えている。

手術機械

 手術のために用いる機械類は基本的には通常の開腹あるいは開胸手術で用いる機械に柄をつけ長くし、遠隔操作を可能にしたものであると考えてもらって差し支えない。種々の鉗子、剪刀、持針器、結紮機器、Thermal Instrumentsが内視鏡下手術用に工夫され作製されている。血管処理なども小児の血管は細いので、Thermal instrumentsと言われるMonopolorあるいはBipolor型電気メス, 超音波振動を用いたHarmonic scalpel®, Radio frequencyを用いたLigasure®などで結紮せずに切断できる場合もある。また腔内での結紮操作を簡単にした縫合結紮器(Suture assistant®)や自動吻合器(End GIA® など)も工夫されている。

小児内視鏡下手術の実際

術前処置

 術前処置に関しては開腹あるいは開胸手術の術前処置と大きくかわるところはないが、小児の内視鏡下手術、特に腹腔鏡下手術の際には小児の腹腔容積は小さいので、少しでも視野の妨げになる可能性となる消化管内圧は下げておくことが重要であり、緩下剤の投与あるいは浣腸などの充分な消化管のpreparationを行っておく。

小児内視鏡下手術時の麻酔

 内視鏡下手術の際に行われる麻酔は気管内挿管下の全身麻酔であることは言うまでもない。安全な気腹を行うには、十分な筋弛緩がされていることが重要である。麻酔時のモニターは経皮モニターによる酸素飽和度だけではなく、腔内に注入された余剰二酸化炭素ガスが吸収され呼気から排泄されるため呼気終末二酸化炭素濃度(Endotidal Co2 :ETCO2)のモニターが重要である。麻酔医はこのETCO2モニター値の変化に対応して過換気を行うこともある。また輸液経路は上肢からとり気腹の影響を受けないようにする。麻酔科医にとっては常識的なことであるが、笑気ガスの使用は消化管内への再分布を来たし、消化管拡張につながり、術野の妨げになるため使用を控えることは言うまでもない。

二酸化炭素気腹の実際

 腹腔鏡下手術では腔内で視野を充分に確保し、かつ対象の臓器に対して手術操作を行うためのスペース(Working space)を得るための二酸化炭素ガス注入による気腹法が必要なことは前述した。二酸化炭素ガス気腹を得るためにはカニューラを腹腔内へ挿入してガスを送り込まねばならない。この経路を得るためには2種類の方法がある。盲目的穿刺により気腹専用のベレース針を腔内に挿入する方法( Closed method)と小切開・小開腹(胸)を置き、第一番目のカニューラを直視下に挿入する開腹法(Open Hasson method)があるが、例外なく本邦施設での小児内視鏡下手術では開腹法が用いられている。気腹の経路が得られたら、1L/min程度の緩速気腹速度により慎重に気腹を始める。最終腹腔内圧は10mmHg程度に留めておくが、手術視野の得られ方によっては15mmHgまでは可能であるとする報告もある。

 二酸化炭素ガス気腹に伴う合併症には、その経路確保に伴うものと、気腹圧あるいは速度に伴うもの、気腹ガスそのものに起因するものなど様々なものが報告されている。経路確保に伴う合併症の代表的なものはポート穿刺の際の臓器損傷あるいは血管損傷による出血である。また小児の腹壁はコンプライアンスが低く、伸展しやすく、腹膜も伸びやすいために、斜めにポートが穿刺されると腹膜下に入りやすく皮下気腫になることもよく知られている。その代表的なものをに記載しておく。



 気腹ガスに起因するものは急速注入による低体温、過剰な気腹圧による血圧低下、緊張性気胸、高二酸化炭素血症、換気障害による低酸素血症、稀に二酸化炭素ガス塞栓症などがある。

小児外科領域における内視鏡下手術の適応

 国内外多くの施設で小児外科特有の疾病に対して、数多くの取り組みがなされている。年々その適応拡大が進み、内視鏡下手術の適応がなされている疾患が増えている。以下に現在本邦小児外科医の合意が得られている代表的内視鏡下手術適応疾患を中心にその利点と簡単な術式についての記載を加える。さらにに腹腔鏡下手術およびに胸腔鏡下手術の対象となる疾患を列挙した。



 その一部はまだ先進的な国外の施設でチャレンジされているものもあるが、それらの疾患についても列記した。

 一方、絶対に内視鏡下手術を施行してはならない絶対禁忌の条件については重症血液凝固異常、補助治療を必要とするような非常に不安定な循環動態、呼吸不全などが上げられている。

 いずれにしろ、内視鏡下手術を行うにあったては、常に開腹術あるいは開胸術へ移行できる備えをしておくことは当然のことである。

腹腔鏡下手術

胃-食道逆流症(噴門形成術)

 本症はほぼ内視鏡下手術が標準術式になっていると言っても過言ではない。小児外科領域の内視鏡下手術として最も広く適応とされ施行されている対象疾患である。本症の病態については別稿に譲るが、従来、開腹法では極めて手術視野の悪かった、脊椎側弯や前弯などの骨格奇形の強い患児でも良好な視野で手術が可能となった。 直径5mmの4-5本のカニューラを挿入して手術を行う。様々な逆流防止のための噴門形成術が応用されているが、Nissen法が小児内視鏡下手術では最も広く応用されている。



脾腫を伴う血液疾患(脾臓摘出術)

 小児期に内視鏡下脾臓摘出術の適応になる疾患には、特発性血小板減少性紫斑病、遺伝性球状赤血球症などの血液疾患があげられる。遺伝性球状赤血球症には胆石症を伴うこともあり、脾臓摘出術と胆嚢摘出術が同時に内視鏡下手術で行われることも稀ではない。内径の太い脾動静脈の処理にはEndoGIAと呼ばれる自動縫合器やLigasureと呼ばれるThermal instrumentsなどが用いられる。切除された巨大な脾臓は腹腔内でバッグに収められ細切され摘出される。



ヒルシュスプルング病(直腸Pull through術)

 ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)の手術も多くの施設で内視鏡下手術が基本術式になりつつある。最も良い適応になるのは下部直腸無神経節症あるいは直腸ーS状結腸型と呼ばれる無神経節腸管が短い型である。いわゆる全結腸型あるいは広範囲無神経節症のような広範な消化管切除の必要な症例についての適応については今だ議論が多い。これまで開腹で行われていた手術法であるSoave法、Swenson法、Duhamel法などをそのまま踏襲して内視鏡下手術に適応されている。

【補】無神経節腸管が短い型には内視鏡下手術手技を用いず、経肛門的操作のみでSoave手術を行う方法もあり、多くの施設で行われている。

鎖肛根治術(直腸―肛門形成術)

 従来、高位鎖肛根治手術には仙骨・尾骨側からの後方矢状切開法と開腹法の両方の併用が必要であった。しかしながら内視鏡下手術の本法への応用は画期的なアプローチ法となった。



 高位鎖肛(病態・病型の詳細は別稿参照)では直腸前立腺尿道瘻、直腸膣瘻などの高位に存在する瘻孔の処理と直腸盲端のPull throughについては開腹以外では到達処理不能であった。これらの操作を内視鏡下手術で行うことによって開腹術が不必要となった。また、直腸挙上筋群の中央に直腸をPull-throughするためには、従来仙骨側からの背部切開法により筋群を同定する他なかったが、内視鏡観察により、腹腔側より正確に直腸挙上筋群あるいは骨盤底筋群の中央を同定し、容易にかつ正確にpull throughすることが可能となった。



 中間位鎖肛についてはその瘻孔処理が尾側にあり、腹腔内頭側からの内視鏡観察が困難なこともあり、いまだその適応には議論が多いところである。

肥厚性幽門狭窄症(粘膜外筋層切開術:Ramstedt法)

 従来のRamstedt法がそのまま内視鏡下手術に適応された。本症における内視鏡下手術の利点は肥厚した幽門部を把持したり、牽引したりの操作がないので、筋層切開後幽門部の浮腫が少なく、開腹法に比して経口摂取開始時間が極めて早い点にある。



 われわれは最近ではカメラ以外にはポートを挿入せず、3mmの小切開で直接機械を挿入する微小創を用いて内視鏡下手術を行っている。

急性虫垂炎(虫垂切除術)

 様々な程度の炎症所見を示す急性虫垂炎に対しても積極的に腹腔鏡下虫垂切除術が適応されている。



 本症に対する内視鏡下手術の利点は、術後の回復が速やかな点に加え、臨床症状あるいは画像診断で腹痛の原因が確定診断し得ない症例などでは、他臓器を充分観察し的確な診断が出来る点にある。膿瘍形成が著明な症例、あるいは虫垂根部が同定困難な症例などでは開腹術に移行することもある。

停留精巣(腹腔内精巣・非触知精巣)

 停留精巣のなかでソケイ管内に精巣の存在が触知できない、非触知精巣の場合は確定診断と治療のために内視鏡下手術が行われることがある。腹腔内精巣で血管茎に余裕がある場合は1期的手術が行われるが、精巣血管に余裕がない場合には、精巣血管を切断し(輸精管側よりの血管の増生を期待する)可動性を高めた後に陰嚢内に固定するFowler Stephens法が行われている。本法には1期的手術と2期的手術があり、日本小児泌尿器科学会の統計によると2期手術の方が成功率92%と1期手術(78%)に比して良好な成績を示している。

腎疾患に対する腎臓全(部分)摘出術

 感染を繰り返す萎縮腎に対する腎臓摘出術はその血管茎(腎動脈・静脈)が狭小で血管処理はHarmonic scalpelやLigasureで結紮せずとも切離が可能であり、良い適応となる。到達経路は経腹膜的に入る場合と後腹膜腔経路がある。経腹膜的アプローチは前述した種々の腹腔鏡下手術手技と変わることがなく、結腸の受動術によって腎臓を露出する。後腹膜経路はGerota筋膜内をバルーンで拡張剥離し、術野を確保し、腎臓を露出する方法である。腎臓部分切除は異所性尿管瘤に対して腎上極部分切除が行われる。

腹腔内嚢腫性疾患(嚢腫摘出、吸引排液、嚢腫天蓋切除)

 小児期には種々の嚢腫性疾患が発生する。その代表は卵巣嚢腫であるが、本症は在胎中に受ける母体ホルモンの影響で出現し、その多くは自然消退するが、5cm以上の巨大なもので、かつ縮小傾向のないものには内視鏡下手術が適応となる場合がある。



 そのほか腸管膜嚢腫、腹腔内リンパ管腫などの嚢腫疾患も適応となることがある。

ソケイヘルニア

 小児外科で最も多く扱う疾患の一つである本症にも内視鏡下手術が適応され始めている。次第にその施行施設も広がりつつある。ソケイヘルニアに対する内視鏡下手術の術式は必ずしも一定ではなく、施設ごとに様々な工夫がなされている。現在本症に対する内視鏡下手術の研究会も毎年開催されているが、内視鏡下手術下ヘルニア根治術がまだ標準術式と認知されるまでには至っていない。

悪性腫瘍に対する内視鏡下手術

 現在悪性腫瘍に対する内視鏡下手術は原則として早期癌に限られている。神経芽細胞腫のStage I ,IIなどが良い適応とされている。欧米では進行癌に対しても先ず内視鏡下に生検を行い、その後の化学療法により縮小を図り、内視鏡下手術で残存腫瘍全摘出とリンパ節廓清を行っている施設も散見される。しかしながら悪性腫瘍、特に進行例に対する内視鏡下手術の適応についてはまだ統一した見解が得られていないのが現状である。

胸腔鏡下手術

自然気胸(Bulla,Bleb切除術)

 肺尖部にある BullaあるいはBlebの破綻によって生じる自然気胸に対する胸腔鏡下手術はどの施設でも標準術式となっている。開胸法に比して,腋窩および側胸部の小さなポート3本ですみ、Blebの切除も前記したEndoGIAを用いることにより安全にかつ的確に行うことが可能である。

肺切除術

 さまざまな程度の肺切除が内視鏡下手術手技を用いて行われている。肺嚢胞性疾患、肺分画症などに対する肺葉切除術をはじめ、腎芽腫、肝芽腫、骨肉腫など肺転移巣に対する肺部分切除なども積極的に行われようになってきている。胸腔鏡下手術時も低圧で二酸化炭素ガス気胸を行うことにより、片側肺換気法を用いなくても良好な視野を得る事が可能である。気管支の切離・断端閉鎖から肺静脈、肺動脈の切離までもEndoGIAを用いることによって安全に施行することが可能である。

縦隔腫瘍

 縦隔腫瘍のなかでも良性腫瘍は良い適応となる。気管支原性嚢胞、神経原性腫瘍、胸腺腫などが適応とされている。縦隔腫瘍の手術の際も肺をいかに圧排し良好な視野を得るかがポイントとなる。片肺換気による患側肺虚脱法を用いると大変良好な視野を得る事が可能である。

横隔膜疾患

 全身状態の良い新生児横隔膜ヘルニアあるいは遅発性横隔膜ヘルニアに対する横隔膜形成術、横隔膜弛緩症に対する横隔膜縫縮術などが現在適応となってきている疾患である。内視鏡下手術の絶対禁忌の項でも記載したように、呼吸・循環動態の不隠な状態は内視鏡下手術の適応とはならない。

食道疾患

 食道無弛緩症(食道アカラジア)に対する下部食道筋層切除(Myectomy)は腹腔鏡下手術で行われることが多いが胸腔下のアプローチを好む施設もある。また食道壁に発生する平滑筋腫の核出術も良い適応となる。欧米の施設では先天性食道閉鎖症に対する胸腔鏡下手術の適応が進んで来ているが、まだ標準術式であるとは言い難い。

漏斗胸

 漏斗胸の手術はPectus Barを入れて陥凹している胸骨を飜転するというNussの手術が行われている。その心膜と陥凹胸骨の間にBarを挿入する際に、胸腔鏡下に観察しながら安全に剥離とBar挿入の経路を作成している。

おわりに

 最近の小児内視鏡下手術の基礎と臨床につき記載を加えた。この領域の進歩は著しく、現在も内外の多くの先進的施設を中心に数々の先天性疾患に対して工夫をこらした、新たな内視鏡下手術のチャレンジが行われている。また周辺機器・機材の開発・研究も様々な試みが行われている。3次元画像表示の改良、ロボット技術を含めた遠隔手術への取り組み、触覚伝達への取り組みなどが産学協同研究で進められている。

 本項に記載した内視鏡下手術法はこども達に優しい手術であることは絶対に間違いない。本領域のさらなる進歩と適応拡大を期待する。

参考文献

1) Fujimoto T: Laparoscopic Pyloromyotomy in Operative Endoscopy and Endoscopic Surgery in Infants and Children. Chief Ed : Azad Najmaldin Hodder Arnold New York 2005

2) 藤本隆夫:小児内視鏡下手術 腹腔鏡下手術テクニックマニュアル 加納宣康(編) 南江堂 2001

3) 藤本隆夫:小児腹腔鏡下手術 新外科学体系 追補4 小児外科、形成外科 幕内雅敏(監修) 中山書店 

(MyMedより)推薦図書

1) 加納宣康 著、木村泰三 監修:基本手術手技 (消化器内視鏡下手術シリーズ―標準的手技を学ぶ),へるす出版 2008

2) 岡田正 著:系統小児外科学,永井書店 2005
 

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