アメーバ症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

アメーバ症(あめーばしょう)

執筆者: 板橋 道朗

概要

 アメーバ症は世界各地に分布しており、世界で約5億人が感染している1)。発症率は、アジアでは10%を超えるのに対してヨーロッパでは0.5%である2)。赤痢アメーバはEntamoeba histolyticaと呼ばれる病原種とEntamoeb disparと呼ばれる非病原種に区別され、病原種であるE. histolytica嚢子に汚染された食物、水の経口摂取で感染する。生活環は栄養型と嚢子で構成されるが、感染能力があるのは成熟嚢子のみである。潜伏期間は数日から数ヶ月におよぶが平均2~4週間である。従来海外渡航者が感染することが多いといわれていたが、近年では、海外渡航暦がない国内発症例が多く、福祉施設などでの集団感染も報告されている。また、男性同性愛者にも多く認められ、性感染症(STD)の一つと考えられる。無症状の嚢子保有者が感染源として重要である。

病因

 経口摂取されたE. histolytica嚢子が小腸で脱嚢して栄養型虫体となり、栄養型虫体が大腸粘膜に侵入し、潰瘍を形成すれば腸アメーバが成立する。腸管腔のみに存在すれば無症状の嚢子保有者として推移する。大腸炎症例のうち5%ほどが腸管外病変を形成する。その大部分は肝膿瘍である。アメーバ性肝膿瘍は、大腸粘膜に侵入した原虫が経門脈的に肝に達して微小膿瘍を形成、やがて肝膿瘍に進展する。まれに、心嚢、肺、脳、皮膚などの赤痢アメーバ症も報告されている。

 病状の推移は、患者の全身状態、基礎疾患の有無、治療歴などに左右される。

臨床症状

 腸アメーバ症は比較的ゆるやかな発症で、粘血便を伴ういわゆるイチゴゼリー状の下痢と腹痛が主症状であるが、数週間程度の間隔で症状発現と寛解を繰り返すことが多い。次第にこの間隔が延長して慢性化していく。

 アメーバによる潰瘍の好発部位は盲腸から上行結腸にかけてとS状結腸から直腸である。

 腸外アメーバ症では、しばしばアメーバ性肝膿瘍(amebic liver abscess)が続発する。肝膿瘍では発熱(38~40度)、右季肋部痛、同部圧痛、肝腫大、嘔気、嘔吐などを伴う。この場合腸管の症状は軽症の場合があり、注意を要する。

検査成績

 腸炎の症状が認められた場合には、一般的な採血とともに血清アメーバ抗体価の測定を行う。慢性例や広範囲な症例では高い抗体価を示すことが多いが、急性例やAIDS合併例では低抗体価を示すことがある。

 糞便からの赤痢アメーバ原虫の検出では、偽陰性例が多く認められるため糞便検査は繰り返し実施する必要がある。内視鏡を用いた生検による赤痢アメーバ原虫の検出は、潰瘍の中心部からの検出率が高い。生検組織中でのアメーバ原虫はHE染色のみでは見落とす場合があるので、本症が疑われる場合にはPAS染色が重要である。顕鏡による嚢子の検出では病原種と非病原種の鑑別ができず、その鑑別には種特異的なDNAの検出が有用である。

 アメーバ赤痢は、直腸と回盲部が好発部位で、大腸全体にも炎症が及ぶ場合でも所見が強いのは直腸と回盲部である。アメーバ性大腸炎では、急性活動期、慢性活動期、消退期、治癒期の各病期により多彩な所見が認められる。一般的に最もよく経験されるのは急性活動期であり、大小不同で浮腫状のタコイボ様隆起、粘膜ひだの限局した浮腫、大小不同で不整な潰瘍、潰瘍辺縁の易出血性と発赤、紅暈を伴ったアフタ性病変など所見が認められる(図1)。



 また、肝膿瘍を伴っている場合には画像診断が補助診断として有用である。肝膿瘍では腸管の症状は軽症で、肝膿瘍で発見される場合もあり、肝膿瘍を見たときには逆に腸管症状の有無からアメーバ赤痢、アメーバ性肝膿瘍を鑑別疾患に入れなければならない(図2)。しかしながら、アメーバ肝膿瘍の約半数は腸管症状を伴わないため、腸管症状がないからといってアメーバ性肝膿瘍を否定することはできない。


診断・鑑別診断

 本症の診断は、1)糞便や生検材料からの赤痢アメーバ原虫の検出、2)種特異的なDNAの検出、3)血清抗体を検出する血清学的診断法、4)内視鏡、注腸X線による大腸粘膜面の変化、5)腹部超音波、腹部CTなどの画像診断が用いられる。しかし、病歴も聴取も重要で、開発途上国からの帰国者、男性同性愛者などの有無や免疫状態も考慮して総合的に診断される。実際には、糞便や生検材料からの赤痢アメーバ原虫の検出と血清抗体価さらに内視鏡所見から診断することが多い。

 従来、細菌性赤痢との鑑別が重要であった。しかし、渡航暦がないものが増加するにつれ、近年は潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患との鑑別が必要となってきた。大腸の診療を中心としている医療施設では、炎症性腸疾患を見た場合にはアメーバ赤痢を鑑別疾患に入れなければならないのが実情である。アメーバ赤痢は、潰瘍性大腸炎と同様に寛解と再燃を繰り返す。特に軽症で慢性化したアメーバ性大腸炎では潰瘍性大腸炎に似た所見を呈する。潰瘍性大腸炎と診断してステロイドホルモンを使用した場合にはアメーバ性大腸炎は増悪する。アメーバ性大腸炎で穿孔を来たした症例の約半数は潰瘍性大腸炎と診断されていたという。炎症性腸疾患との鑑別診断で重要なことは、病変の多彩性が認められることである。アメーバ性大腸炎では、大小不同で浮腫状のタコイボ様隆起、粘膜ひだの限局した浮腫、大小不同で不整な潰瘍、潰瘍辺縁の易出血性と発赤、紅暈を伴ったアフタ性病変など多彩性が認められる。また、好発部位がかの診断も鑑別診断に役立つ。

治療

 病型にかかわらず、化学療法が基本である。

 メトロニダゾールを第一選択とし、通常750mg/日(赤痢症状が強いときは1,250~2,000mg)を7~10日経口投与する。作用は殺アメーバ的で、大腸症状は多くの場合、速やかに反応して治療開始後数日後から粘血便は消失し、有形便となる。治療効果が不十分な場合には、4週間の休薬後再投与、あるいはテトラサイクリンを併用する。肝膿瘍では、膿瘍が大きい場合や症状が強い場合に外科的にドレナージを行うこともある。伝播可能期間は、糞便中に病原性のあるアメーバの嚢子を排出している期間であり、治療しない場合には数年にわたるとされる。非病原性であるE. disparのみの感染であれば治療は不要であり、無症状でE. histolyticaかE. disparかの鑑別が困難な場合には、治療は行わず経過観察とする。

予後

 治療には前述の化学療法が用いられるが、治癒率は90%程度である。

最近の動向

 近年、アメーバ性大腸炎は、STDの一つとして考えられるようになり、男性同性愛者における報告例が増加している。また、AIDSなど免疫不全症に伴う易感染性疾患の一つとして重要である3)

参考文献

1) 小林 潤、新里 敬:赤痢アメーバ症.最新医学 54;1537-1544,1999
2) 永倉貢一:赤痢アメーバ症.臨床検査 43;1633-1636、1999
3) 北野厚生、松本誉之、押谷伸英、ほか アメーバ赤痢、 胃と腸 3

(MyMedより)推薦図書

1) 西原崇創 著、古川恵一 監修:そこが知りたい!感染症一刀両断!,三輪書店 2006

2) 辻村啓 著:わかりやすい感染症,文芸社 2007

3) 藤田紘一郎 著:寄生虫のひみつ ムズムズするけど見てみたい「はらのむし」たちの世界,ソフトバンククリエイティブ 2009
 

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