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最終更新日:2010.06.22

房室中隔欠損(ぼうしつちゅうかくけっそん)

atrioventricular septal defect

執筆者: 益田 宗孝 磯松 幸尚

概要

 心内膜床欠損症は先天性心疾患の2~4%を占める疾患で、心内膜床の形成癒合不全により房室弁の形成不全と心房間(心房中隔欠損)や心室間(心室中隔欠損)の交通の残存を来す疾患である[1]。我が国における回診根治術の成績は早く的に向上しており、日本胸部外科学会の2005年年の集計では病院死亡率は不完全型で1%、完全型で3.5%であった[2]。肺血管病変が進行する前の根治が推奨されている。

病態生理

 病態は左右短絡量によって異なり、不完全型に比して完全型で症状が早期に出現し重症化する。


不完全型


 心房中隔欠損症と同様の病態を示す事が多く、心房レベルでの左右短絡による牛地の容量負荷と肺血流の増加を生じる。左側の房室弁の逆流を伴うと早期に心不全症状が出現する。


完全型


 心室中隔欠損により大量の左右短絡を来すことより、乳児期より肺高血圧を来しやすい。肺血管病変の進行が早く、特にダウン症候群を合併している場合には注意が必要である[5]。

臨床症状

自覚症状


 心不全が出現すると、多呼吸、多汗、哺乳困難、体重増加不良を呈する。


他覚症状


 短絡量が少ない不完全型の場合には、㈼音の固定性分裂と胸骨左縁第2~第3肋間で駆出性収縮期雑音を聴取する。短絡量が多い完全型の場合には、胸骨左縁第3~第4肋間を中心に汎収縮期雑音を聴取する。

検査成績

胸部X線検査


 不完全型では左第2弓の吐出をと軽度の心拡大を、完全型では心拡大に加えて肺うっ血の所見を認める。


心電図


 左軸偏位、不完全右脚ブロックが特徴的である。右室肥大または両室肥大を伴う。


心臓エコー検査


 通常心臓エコー検査にて確定診断が可能である。不完全型では四腔断面像において流入部心室中隔の短縮と心房中隔一次孔欠損を認め、両側の房室弁が同じレベルに心室中隔の頂上に付着している。完全型では四腔断面像において心房中隔一次孔欠損と心室中隔欠損が認められる。Rastelli分類については、共通前尖の腱索が心室中隔頂上に結合しているか(A型)、完全に遊離しているか(C型)で判別できる。


心臓カテーテル検査


 左右短絡量、肺高血圧の程度や肺血管抵抗の測定ができる。


心臓造影検査


 左室造影正面像でinlet/outlet dispropotionによる goose neck sign とよばれる特徴的な所見を呈する。房室弁の逆流の程度や心室中隔欠損の有無を判定できる。

診断・鑑別診断

 診断は前述の如く、心臓エコー検査で可能である。鑑別診断としては不完全型では心房中隔二次孔欠損症がある。完全型ではファロー四徴症との合併を認めることがある。共通房室弁ではあるが心室の低形成を伴うものでは手術方針が異なるので、鑑別が重要となる。

治療

 原則として外科治療となる。不完全型では一期的に根治可能な場合が多いが、完全型では姑息手術を先行させる場合もある。

姑息手術


 完全型で乳児期より肺血流増加による心不全症状が進行し、肺高血圧となった症例で、根治手術が適当でないと判断された症例に行われる。左肋間開胸または胸骨正中切開にて主肺動脈絞扼術を行う。

根治術


 体外循環を使用して心停止下に行う。不完全型では心房中隔欠損閉鎖と僧帽弁の裂隙閉鎖を行う。完全型では心房中隔欠損及び心室中隔欠損閉鎖と、左側房室弁の裂隙閉鎖を行う。Single patch 法、two patch法(figure)及びsimplified single patch法があるが、two patch法が一般的である。

予後

不完全型


 乳児期より心不全を呈する症例では左側房室弁の逆流や左心系の狭窄の合併が多いため、予後は不良である。僧帽弁の逆流による再手術の頻度も高いが生命予後は比較的良好である。僧帽弁の逆流がない者では予後は良好である。

完全型


 自然予後はきわめて不良で小児期に死亡する例が多い。乳児期早期に根治した症例の予後は比較的良好で[6]、予後規定因子としては僧帽弁逆流の遺残や再発、肺高血圧の残存、左室流出路狭窄の進行がある。Down症候群では予後が不良とされていたが、早期に根治すれば予後規定因子にはならないことがわかってきた[7]。

最近の動向

 完全型の根治術としては前述の如くtwo patch法が一般的であるが、近年、simplified one patch法が簡易な方法として脚光を浴びている[8]。長期予後についてはこれからの検討が必要である。

定義

 Becker とAndersonら[3]は心内膜床欠損の定義を正常心臓との比較で以下のように行っている。また、房室弁の形態より不完全型と完全型に分類されている。

定義


1. 正常な心臓では三尖弁の中隔尖の付着は僧帽弁の付着よりも心尖部寄りに位置しており、その間に筋性中隔と膜性中隔からなる心房心室中隔が存在する。心内膜床欠損では三尖弁と僧帽弁は同じ高さに位置しており、基本的に5つの弁で囲まれる共通の心房心室接合部を形成している (common atrioventricular junction)

2. 正常な心臓では大動脈弁は三尖弁と僧帽弁との間に一部食い込むように位置しているが、心内膜床欠損では共通脳室弁口となるために大動脈弁は前方に偏位する(unwedging of the aorta)。

3. 正常な心臓では僧帽弁は2弁で構成されており、乳頭筋は前外方と後内方に位置するが、心内膜床欠損では左側房室部は3弁で構成され、乳頭筋は前後に位置する。

4. 正常心臓では心尖部から房室弁までの距離(流入部)と心尖部から半月弁までの距離(流出部)は同じであるが、心内膜床欠損では心室中隔流入部が欠損するために流入部が流出部に比べて短縮している(inlet/outlet dispropotatio)。

5. 左室流出路に狭窄を認める。


分類


1. 不完全型

 一次孔欠損とも呼ばれ、両心室にまたがっている共通前尖と共通後尖は結合しており、(tongue)、弁口は左右に分かれている。左側房室弁は前後の弁の間に裂隙を生じている(cleft)。

2. 完全型

 tongueが欠損しており、共通前尖と共通後尖との間が分離している。通常、心房中隔一次孔欠損と心室中隔欠損を伴う。完全型は共通前尖の形態によりさらに3つの型に分類されている(Rastelli分類)[4]。A 型は共通前尖が右室側にほとんど入らないで腱索が心室中隔や内側乳頭筋に挿入、B型は共通前尖が右室側に中等度入り腱索が右室心尖部付近の乳頭筋に挿入、 C型は共通前尖が高度に右室に入り腱索は心室中隔とは結合せず、前乳頭筋に挿入する(free floating type)。

参考文献

(1) 鈴木清志:臨床発達心臓病学2版、高尾篤良・他監修、中外医学社、東京、1997、pp415-422

(2) Kazui T, Osaka H, Fujita H. Thoracic and cardiovascular surgery in Japan 2004. Annual report by the Japanese Association for Thoracic Surgery. Jpn J Thorac cardiovasc Surg 2006: 54; 363-368

(3) Ho SY, Baker EJ, Rigby ML, Anderson RH. Color atlas of congenital heart disease, 1st ed (ed. by Ho SY, Baker EJ, Rigby ML, Anderson RH) Mosby-Wolfe Publ., Barcelona, 1995, pp65-75

(4) Rastelli CC, Kirklin JW, Titus JL. Anatomic observations on complete form of persistent common atrioventricular canal with special reference to atrioventricular valves. Mayo Clin Proc 1966:45; 296-308

(5) Yamaki S, Horiuchi T, takahashi T. Pulmonary changes in congenital heart disease with Down’s syndrome. Their significance as a cause of postoperative respiratory failure. Thorax 1985: 40; 380-386

(6) Masuda M, kado H, Kajihara N, Onzuka T, Kurisu K, Morita S, Shiokawa Y, Imoto Y, Tominaga R, Yasui H. Early and late results of total correction of congenital cardiac anomalies in infancy. Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 2001: 49; 497-503

(7) Masuda M, Kado H, Tanoue Y, Fukae K, Onzuka T, Shiokawa Y, Shirota T, Yasui H. Does Down syndrome affect the long-term results of complete atrioventricular septal defect when the defect is repaired during the first year of life? Euo J Cardiothorac Surg 2005: 27; 405-409

(8) 麻生俊秀、房室中隔欠損(心内膜床欠損)—完全型—、心臓血管外科テキスト、龍野勝彦、重松宏、幕内晴朗、四津良平、安達秀雄 編集、中外医学社、東京、2007, pp107-112

執筆者による主な図書

1) 安井久喬 監修,角秀秋・益田宗孝 編:先天性心疾患手術書,Medical View
 
2) 高本眞一 監修,角秀秋 編:小児心臓外科の要点と盲点 (心臓外科Knack & Pitfalls),文光堂
 
3) 新井達太 編:心臓外科,医学書院
 
4) 門間和夫 編:ガイドラインに基づく成人先天性心疾患の臨床,中外医学社
 
5) 岡田昌義 監修,松田暉・藤原巍・安倍十三夫・今村洋二・北村信夫 編:心臓血管外科の最前線,先端医療技術研究所
 
6) 四津良平 監修:心臓血管外科テクニック,メディカ出版
 
7) 矢崎義雄・島田和幸・井上博・永井良三 編:別冊・医学のあゆみ 循環器疾患,医歯薬出版
 
8) Yasui H, Kado H. Masuda M, ed:Cardiovascular Surgery for Congenital Heart disease,Springer

執筆者による推薦図書

1) 龍野勝彦・重松宏・幕内晴朗・四津良平・安達秀雄 編:心臓血管外科テキスト,中外医学社
 
2) 川島康生 編:心臓血管外科,朝倉書店
 
3) 小柳仁・黒澤博身 編:心臓血管外科手術のための解剖学,Medical View 4) Stark J, de Leval M, ed.:Surgery for congenital heart defects,Saunders
 
5) Kirklin JW, Barratt-Boyes BG, ed.:Cardiac Surgery』 Churchill Livingstone

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
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