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Single Ventricle
執筆者: 北川 哲也
一つの主心室に両側房室弁または共通房室弁が同時挿入する心房心室並列異常を主徴とし、しばしば円錐動脈幹奇形を合併した複合心奇形の総称である1-4)。先天性心疾患の2%を占め、比較的多い疾患である。解剖学的には主心室の他に痕跡的流出路腔(rudimentary outlet chamber)を伴うこともあるが、この痕跡的心室腔には房室弁は存在せず、心室機能はない。
単心室では主心室において動静脈血の混合が完全に起るように考えがちであるが、実際には各心房からの血流が層状をなして流れ、favorable/unfavorable streamingを認め、混合は少ない。unfavorable streamingが起りやすい大血管転換や肺動脈閉鎖を合併すると、チアノーゼは高度となる。
臨床像は心室形態にそれほど関係なく、むしろ合併奇形により定まる。臨床的に肺血流量の多少により、肺血流増加群、減少群、適度な群に分けられる。肺血流増加群ではチアノーゼは軽いが乳児期早期より肺血流が増加して心不全をきたし、左室型単心室の多くがこのタイプで予後不良である。
肺血流減少群ではPS/PAがあると、新生児期より著明なチアノーゼが現れる。右室型単心室の大部分がこの群に属し、右胸心、無脾症候群を伴う場合が多い。
1)心電図所見
左室型単心室の心電図は特徴的で、左軸変異ないし上方軸と、左室肥大パターンを示す。
2)胸部X線
左室型単心室 {S,L,L} では左第1弓と第2弓が突出して見える。この突出部は左側にある流出路腔とそれより起始する上行大動脈による。
3)心エコー図所見
断層法では主心室に中隔が無く、拡張期に互いに接するふたつの房室弁と流出路腔を観察する。痕跡的心室が観察できることもある。主心室と痕跡的心室の間に中隔があり、中隔が房室弁の前方にあれば左室型単心室DILV、後方にあれば右室型単心室DIRVである。
4)心臓カテーテル・造影検査
肺血流増加群の左室型単心室においては、VSDがrestrictiveであるか、nonrestrictiveであるかが治療方針や生命予後に大きく関わっている。肺循環では、肺動脈・静脈圧、肺血管抵抗や肺動脈狭窄の程度、肺血管床の大きさ、性状などを知ることが重要である。
本症の1/3は肺血流増加型で、一見VSDに似た症状を呈するが、よくみると軽度の全身チアノーゼを認める。左心低形成症候群、三尖弁閉鎖、純型肺動脈閉鎖、心室不均衡型房室中隔欠損との鑑別が必要である。
治療の最終目標は、1心室修復としての機能的根治であるFontan手術を施行し、よりよい単式循環を確立することである。この循環がいい状態で成立するには、洞調律であること、肺血管抵抗が低いこと、いい体心室機能を有することなど、種々の条件が必要であり、その条件を獲得するため、生下時より的確な診断のもとに個々の段階的治療プランをたてて進めていくことが必要である。フォンタン手術としては、従来の心房・肺動脈連結法(APC法)にかわり、大静脈・肺動脈連結法(TCPC法)が主流となり、手術適応が拡大されている。TCPC法としては側方トンネル法と心外導管法があるがその優劣については議論のあるところである。一方、手術危険因子を有する症例では、両方向性グレン手術を先行させる段階的フォンタン治療戦略とするか、孔付きフォンタン手術を試行する戦略がとられている。
左室型単心室で肺動脈絞扼術後にVSDが小さく、大動脈弁下狭窄が進行するときには、VSD拡大術、Norwood手術、Damus-Kaye-Stansel手術、姑息的大血管転換術等の適応となる。
左室型単心室では心室中隔作成術が適用されることもある。適応は、左室が十分広く、正常の170%異常の拡張末期容積を要し、肺血管閉塞病変がないこと、房室弁が2分割できることなどである5)。
50%は1カ月以内に、74%は生後6カ月以内に死亡する。特に予後が悪いのは、大動脈縮窄や離断を伴う肺血流増加性の左室型単心室と、PS/PAを伴う右室型単心室や左室型単心室(多くは無脾、多脾症候群)、特に心外型の総肺静脈還流異常合併例である。肺血流が適度に保たれた本症では乳児期の発症は無く、学童期に心雑音や軽度のチアノーゼ、X線上の心拡大に気付かれるが、房室ブロックによるAdams-Stokes発作、脳膿瘍、心内膜炎などを来さなければ予後は比較的良い。
Fontan手術の比較的良好な遠隔予後が確認されつつある現代では、完全房室ブロック、心室機能障害等の問題点の多い心室中隔作成術の選択が減少している5)。
1) Anderson RH, et al. Cardiac specialized tissue in hearts with an apparently single ventricular chamber (Double inlet left ventricle). Am J Cardiol 33: 95-106, 1974.
2) Jacobs ML, et al: Congenital heart surgery nomenclature and database; single ventricle. Ann Thorac Surg 69 (suppl): S197-204, 2000.
3) Van Praagh R, et al. Anatomic types of single or common ventricle in man; morphologic and geometric aspect of 60 necropsied cases. Amer J Cardiol 13: 368, 1964.
4) Lev M, et al. Single (primitive) ventricle. Circulation 39: 577, 1969.
5) Kurosawa H, et al. Septation and Fontan for univentricular atrioventricular connection. J Thorac Cardiovasc Surg 99: 314-319, 1990.
1) 高本眞一 監修,角秀秋 編集:小児心臓外科の要点と盲点,文光堂 2006
2) 龍野勝彦 他 編著:心臓血管外科テキスト,中外医学社 2007
3) 日本胸部外科学会卒後教育委員会 編著:胸部外科において何が標準術式となりうるか,日本胸部外科学会
4) 寺本滋 他 監修,内田發三 他 編集:四肢動脈疾患のすべて,へるす出版
5) 前田肇 監修,今脇節朗 編集代表:静脈およびリンパ管疾患と外科 メデイカルトリビューンブックス,日本アクセル・シュプリンガー出版 1997
1) 宮田哲郎 編集:一般外科医のための血管外科の要点と盲点 (Knack & Pitfalls),文光堂 2010
2) 高橋長裕 著:図解 先天性心疾患―血行動態の理解と外科治療,医学書院 2007
3) 国立循環器病センター心臓血管部門 編:新心臓血管外科管理ハンドブック,南江堂 2005
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