滑膜肉腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

滑膜肉腫(かつまくにくしゅ)

synovial sarcoma

執筆者: 秋山 達

概要

 滑膜肉腫は青年期(15~35歳) の男性の軟部に多く発生する悪性腫瘍です。滑膜という名前がついていますが滑膜から発生した腫瘍ではありません。膝などの四肢の関節の近くに発生することが多いですが関節とつながっていることはまれです。また、悪性腫瘍がほとんど発生しない手や足にも発生することがあります。比較的ゆっくりとした発育を示します。平均2~4年の経過を取るといわれており20年の経過を示したものも知られています。疼痛を伴ったり、腫瘍内部に不整な石灰化を伴ったりすることもあります。

病因

 腫瘍が発生するおおもとの細胞はまだ解明されていません。しかし、近年、滑膜肉腫に特異的なキメラ遺伝子(染色体の一部がちぎれて他の染色体と融合してできた遺伝子)が明らかになっており、腫瘍を発生させる原因となっている遺伝子である可能性が非常に高いと考えられています。滑膜肉腫におけるキメラ遺伝子は18番染色体上に存在する遺伝子SYTとX染色体上に存在する遺伝子SSXが、新たに SYT-SSXという融合遺伝子を生じたものです。この遺伝子レベルの異常は、ごく少量の腫瘍組織があれば検索可能であり、当院病理部では遺伝子診断に使用しています。SYT-SSXを対象とした治療研究が現在いろいろな施設で行われています。

臨床症状

 初発症状は、局所の腫張(はれ)であることが多いです。腫瘍部分に疼痛を伴うこともありますが、一般的な症状ではありません。腫瘍は比較的緩徐に成長する場合が多いようです。腫瘍の硬さは比較的軟らかいものから硬いものまで様々です。関節の近くに発生しても関節の動きが障害されることはほとんどありません。

診断・鑑別診断

 滑膜肉腫が疑われる場合、画像検査を行った上で切開生検術を行います。画像検査は単純レントゲン、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像)、PET-CTを行います。これらの画像検査は手術方法の決定や化学療法の効果判定のために必須です。血管造影を行う施設もありますが当科ではMRIをはじめとする他の画像検査技術が発達したため行っておりません。以上の検査を行った上で、病巣部から診断を確定するために組織小片を手術により切り出します。この手術を切開生検術といいます。病理組織像(顕微鏡で見た像)が他の腫瘍と紛らわしい場合もあるのですが、先ほど述べた遺伝子診断が行える施設が増えてきており、病理組織像が紛らわしい場合は遺伝子診断を行うこともあります。 

 滑膜肉腫の診断と治療には専門的な知識と経験が必要なので、骨軟部腫瘍を専門に扱っている病院で診断されることをお勧めいたします。

治療

 滑膜肉腫治療の原則は手術(治癒的広範切除術)を行うことです。症例数が少ないため化学療法の効果についてはっきりとしたエビデンスはありませんが行う施設が多いようです。場合により放射線療法を行います。

 治療内容については悪性線維性組織球腫と同じです。悪性線維性組織球腫を参照ください。

 滑膜肉腫は手や足など小さいうちに発見しやすく、広範切除術を行うと機能が大きく損なわれる場所に比較的よくできるため、辺縁切除と放射線療法で経過を見ることがあります。

 当院では腫瘍の直径が5cmを超えない場合、化学療法を行わず、上述の方法で経過を見ることがあります。症例数は多くないですが、術後再発ならびに転移がなく、ピアノが弾ける方もおります。ただし、放射線療法は放射線照射に伴う様々な障害が発生する可能性があり経過を見ていく必要があります。そのため、どのような場合でも行うわけではありません。

予後

 滑膜肉腫は一般的には極めて悪性度が高く、5年生存率は30~50%,10年生存率は15~30%とする報告も有ります。局所再発、転移ともに治療から時間が立ってから発生する症例も存在し、長期にわたる経過観察が必要な腫瘍です。 

(MyMedより)推薦図書

1) 岩本幸英 編集:骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls),文光堂 2005

2) 日本整形外科学会骨・軟部腫瘍委員会:整形外科・病理悪性軟部腫瘍取扱い規約,金原出版 2002

3) 森岡秀夫 編さん、戸山芳昭 監修、大谷俊郎 監修:骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4),羊土社 2009
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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