気管支炎・肺炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.19

気管支炎・肺炎(きかんしえん はいえん)

執筆者: 小太刀 康夫

概要

 喉頭より上部の炎症である上気道炎(鼻炎・咽頭炎・扁桃炎など)・クループ症候群(急性喉頭炎・急性喉頭蓋炎など)に対し、それより下部の炎症である下気道炎の中でも最もよくみられるのが、気管支炎と肺炎である。下気道炎とはいうものの、上気道炎を伴っているものがほとんどで、広範囲な気道炎症が生じているととらえるべきであるが、主たる炎症の場をとらえて気管支炎・肺炎という。 

病因

 原因により感染性と非感染性に分けられるが、感染性ではウイルス、細菌、マイコプラズマ、クラミジア、真菌などが原因となる。非感染性では、薬剤性、アレルギー性、特発性などがある。

病態生理

 生体において肺は、血液の酸素と二酸化炭素のガス交換を行う機能を分担するが、気管支炎・肺炎があるとその機能を十分に行えなくなる。すなわち、気道分泌物の増加、気道粘膜の浮腫により気管支では気流の通過不良が生じ、肺胞では有効な換気面積が減少する。それゆえ、「換気血流不均衡」が生じ低酸素血症を生じる。一方で、二酸化炭素については、酸素の約20倍もの拡散能を有することや代償的な過換気をすることなどから高二酸化炭素血症を生じることは少ない。しかし、急性細気管支炎、広範囲な無気肺、大量の胸水、気胸の合併などでは換気量が保てなくなるため、いわゆる「肺胞低換気」となり高二酸化炭素血症をきたす。

臨床症状

 数日間の鼻汁、くしゃみなどの上気道炎症状にひき続き発熱、咳嗽、痰を認めるようになる。起床時のしつこい咳は入眠中に貯溜した痰によるもので、痰の喀出困難による嘔吐も小児ではしばしば経験される。さらに喘鳴、多呼吸、チアノーゼ、哺乳不良、頻脈などを認めるようになり全身状態不良に陥る。胸痛を認めることもある。

検査成績

 血液検査において、細菌性では白血球増多、核の左方移動、CRP高値があり、ウイルス性、マイコプラズマ感染ではその限りではないとされているが、実際にはこれに合わない症例も多い。混合感染も多く、これらの検査所見は参考にするが決定的なものではない。

 特異的な病原体の検出法として細菌では、血液培養や上気道細菌叢の影響の少ない洗浄喀痰培養が望ましいが、実際は鼻咽頭培養で代用していることも多く、この場合は上気道細菌叢の影響を考慮して判断しなければならない。

 ウイルスでは、RSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどは抗原検出キットがあり、短時間で判定できるため有用である。血清抗体価は急性期と回復期で4倍以上の上昇を認めれば有意とする。

 マイコプラズマでは抗原検出キットがあるが、感度が悪く判定には熟練を要する。血清IgM抗体検出キットもあるが、急性期の陽性率は半数以下であるため、これが陰性であってもこれのみでマイコプラズマ感染を否定する根拠にはしない。血清抗体価で急性期と回復期で4倍以上の上昇を認めれば有意と判断する。寒冷凝集素価はウイルス感染症でも上昇することがあり非特異的反応ではあるが他の所見とあわせて診断の参考にする。

 胸部レントゲン写真は気管支炎・肺炎を診断、評価するのに重要な検査である。気管支炎では気管支周囲陰影、肺炎では肺実質の炎症を反映する肺野の浸潤陰影を認めair bronchogramなどの特徴的所見を認める。それぞれ無気肺を合併していることも多い。浸潤陰影は細菌性では均質で区域性の浸潤陰影であり、ウイルス性肺炎は細菌性に比べ不均質で淡い浸潤陰影、マイコプラズマ肺炎はその間に位置しウイルス性に近い所見とされるが、他の検査所見とも総合して判定する。肺野に認める区域性の均質陰影で容量減少性のものは無気肺であるが、側面写真やシルエットサインなどを参考に病変区域を推定し、肺理学療法を行う参考にする。

診断・鑑別診断

 病歴では発熱・咳嗽の経過、咳嗽の性状(乾性、湿性)など疾患の概要を把握するのと同時に、水分・食事摂取の可否など全身状態にも気をつける。発熱は百日咳、クラミジアでは通常認めない。ウイルスやマイコプラズマ感染の初期は乾性咳嗽であるが、次第に痰が増え湿性咳嗽に変わることが多い。RSウイルスによる乳児の急性細気管支炎では、粘稠度の高い痰による気道閉塞に注意する。膿性痰を伴う場合は細菌性(もしくは細菌の混合感染)を疑う。また、気管支喘息や肺炎などの下気道疾患既往の有無、家族や所属する集団での流行疾患にも注意する。

 診察は、症状をきたす原因がどこにあるのかを念頭おきながら行う。気管支炎・肺炎などの下気道炎では胸部聴診で断続性副雑音 (crackles)を聴取するが、輸液や去痰薬の吸入などで痰が柔らかくなってから副雑音がはっきりしてくることもある。また、乳幼児では気管支径が細いので炎症性浮腫による気道狭窄のため連続性副雑音(wheeze)を同時に聴取することも多い。肺炎や無気肺の病変部位では換気不良のため呼吸音は減弱し、打診では濁音となる。胸水貯留の場合も呼吸音の減弱と濁音を認める。

 最終的に病歴、診察所見、検査所見などを総合し、主たる病変部位とその原因となる病原体を考慮し診断とする。

治療

全身管理

 軽症で水分・栄養摂取可能、内服可能な場合は外来で経過観察する。自宅では安静、加湿などを指示し、さらに排痰をうながすこと、全身状態、呼吸状態に注意するように伝える。

 中等症、重症は入院加療を原則とする。全身状態を評価し水分摂取不良なら維持輸液を、チアノーゼを認めるなら酸素投与をモニタリングしながら行う。

対症療法

 鎮咳・去痰薬の投与および肺理学療法を行う。このうち麻薬性鎮咳薬は、鎮咳作用が強く排痰を阻害し症状の増悪をきたす可能性があるので急性期には用いない。痰の切れが悪いときは、作用機序の異なる去痰薬を2剤併用する。肺理学療法は、去痰薬の吸入後に病変部を中心にタッピング、スクウィージングを行い、吸引して排痰を促す。

処方例

 ヒベンズ酸チペピジン 3 mg/kg 分3
カルボシステイン 30 mg/kg 分3

塩酸アンブロキソール 0.9 mg/kg 分3

塩酸ブロムヘキシン吸入液 1回0.5 ml 1日3回(希釈しネブライザーで吸入)

原因療法(抗菌薬)

細菌感染症

 細菌性肺炎の原因菌として小児では肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ・カタラリスが多い。希ではあるが、乳児や基礎疾患を有する者では黄色ブドウ球菌の可能性も検討する。

 外来治療では経口抗菌薬を使用するが、耐性化への影響などを考慮しアモキシシリン(AMPC)の使用をまず考慮する。しかし耐性状況などからβラクタマーゼ産生菌が疑われればアモキシシリン・クラブラン酸(AMPC-CVA)、トリル酸スルタミシリン(SBTPC)とする。

 また、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)やインフルエンザ菌でβラクタマーゼ非産生ABPC耐性菌(BLNAR)が疑われる場合には、セフジトレン・ピボキシル(CDTR-PI)やセフカペン・ピボキシル(CFPN-PI)などを使用する。

処方例

アモキシシリン(AMPC) 40 mg/kg 分3

セフジトレン・ピボキシル(CDTR-PI) 9 mg/kg 分3

セフカペン・ピボキシル(CFPN-PI) 9 mg/kg 分3

 入院治療では原則として静注抗菌薬を用いる。耐性状況などを考慮し起因菌不明の場合、スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)を第 1選択とする。これら抗菌薬に対する反応が不良でPRSPが疑われる場合にはセフトリアキソン(CTRX)、メロペネム(MEPM)に、インフルエンザ菌でBLNARが疑われる場合にはセフォタキシム(CTX)、CTRXなどに変更する。

処方例

スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC) 150 mg/kg 分3 静注

セフトリアキソン(CTRX) 60 mg/kg 分2 静注

メロペネム(MEPM) 60 mg/kg 分3 点滴静注

セフォタキシム(CTX) 100 mg/kg 分3 静注

マイコプラズマ感染症

 マイコプラズマは細胞壁を持たないためペニシリン系やセフェム系などのβラクタム薬は無効である。マクロライド系やテトラサイクリン系を使用する。マクロライド系はテオフィリン製剤との併用する場合は、その血中濃度への影響の少ないロキタマイシン(RKM)やアジスロマイシン(AZM)を使用する。ミノサイクリン(MINO)は著効するが、歯牙への影響を考慮し、学齢児以上で他の薬剤が無効の場合に用いる。

処方例

クラリスロマイシン(CAM) 10〜15 mg/kg 分2

アジスロマイシン(AZM) 10 mg/kg 分1 3日間

ミノサイクリン(MINO) 2〜4 mg/kg 分2

ウイルス感染症

 RSウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルスなどが多い。インフルエンザウイルス以外は特異的治療法がなく、対症療法が中心となる。RSウイルスに対しては、早期産児などでヒト化モノクローナル抗体パリビズマブの筋注が予防として用いられているが、治療としての適応はない。

処方例

リン酸オセルタミビル 4 mg/kg 分2 5日間(インフルエンザウイルスに対して)

最近の動向

 日本小児呼吸器疾患学会/日本小児感染症学会より「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2007」が刊行されている。2004年版より大幅に内容が改訂されており参考にされたい。

(MyMedより)推薦図書

1) 山本淳 著:最新図解 よくわかる小児ぜんそくの本―別冊かんたん記入式「ぜんそく日記」つき,主婦と生活社 2003

2) 清益功浩 著:咳事典 咳を科学する-その咳、大丈夫?危険!-,医薬経済社 2010

3) 砂川慶介・尾内一信 編集:小児の肺炎,医薬ジャーナル社 2004
 

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