肛門周囲膿瘍・痔瘻 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

肛門周囲膿瘍・痔瘻(こうもんしゅういのうよう・じろう)

perianal abscess, anal fistula

別名: 肛囲膿瘍 | 乳児痔瘻

執筆者: 小高 明雄

概要

 小児の肛門周囲膿瘍および痔瘻は、生後6ヶ月までの男児に好発する。肛門部の急性化膿性炎症によって膿が貯留した状態が肛門周囲膿瘍で、この膿が排出された後に、トンネル状の細い管が形成されたものが痔瘻である。

病因

 生後6ヶ月までの乳児は、免疫力が弱い(免疫グロブリンの産生が少ない)ために、便中の細菌に感染してしまうことによって発生すると推測されている。

病態生理

 肛門小窩に開口する肛門腺に便中の細菌(主に大腸菌)が感染して膿瘍を発生する。この膿瘍は肛門周囲の皮下組織内に拡がり、排膿されると、肛門小窩から皮膚までつながった瘻管が形成される。

臨床症状

 排便する時やお尻を触られると泣き出すなど、肛門部付近を痛がる症状が出る。下痢を伴うことが多い。肛門周囲の皮膚に発赤と圧痛を伴う腫脹を認める。ほとんどの例で肛門の側方に発生する。肛門の両側に発生することもまれではない。最初は発赤を伴う硬いしこり(硬結)を触れ、さらに進行すると発赤と腫脹の範囲が拡大して、中心部がプヨプヨして軟らかくなる。膿瘍が自潰して表面から膿が出ていることもある。

治療

 発赤や硬結の場合には、局所の清潔保持(坐浴)による保存的治療が勧められる。この時、抗生剤の内服薬または軟膏が短期間だけ使用されることもある。波動がある場合には、外来にて切開排膿が行われる。自潰または切開によって排膿がみられたら、自宅でも指で周囲を圧迫して(圧迫療法)、膿瘍腔や瘻管内に溜まっている膿を搾り出すようにする。

予後

 保存的治療または切開排膿と圧迫療法によって、ほとんどが1歳前後までに治癒する。それ以降も再発を繰り返して痔瘻が残った場合には、手術(瘻管切除術)も検討される。また、難治性の場合や幼児期以降に発生した場合には、<クローン病>や<慢性肉芽腫症>などの免疫異常を来たす基礎疾患がないかどうか、検査も必要である。

最近の動向

 十全大補湯という漢方薬の有効性が注目されている。十全大補湯は乳児にも問題なく内服させることができて、その効果として、切開排膿処置の回避、治療期間の短縮、来院回数の減少、再発率の低下などが報告されている。

診断・鑑別診断

 臨床症状から診断される。膿瘍が形成されているかどうかは、波動(腫脹部位の両端に指をあて、一方の指で腫脹部位を叩くと振動が他方の指に伝わる)の有無で調べる。これは体表の超音波検査でも調べられる。皮膚炎である<おむつかぶれ>とは診察によって容易に鑑別できる。女児の膣前庭部や陰唇に開口する痔瘻も感染して炎症症状を起こすことがあるが、この場合は先天性の瘻管であることがあり、区別して取り扱われる。

参考文献

1) 上野 滋:小児肛門周囲膿瘍・痔瘻の簡便治療法. 外科治療 96(2):199-200, 2007.

2) 内田広夫、岩中 督、西 明、川嶋 寛、工藤寿美、佐竹亮介:乳幼児肛門周囲膿瘍112例の検討. 埼玉県医学会雑誌 39(5):620-622, 2005.

3) 村松俊範、照井エレナ:肛門周囲膿瘍・痔瘻に対する十全大補湯治療. 小児外科 37(3):311-315, 2005.

執筆者による推薦図書

1) 石田正統、中條俊夫、土田嘉昭 監修、橋都浩平、岩中督 編集:新版 小児外科学,診断と治療社

2) 岡田正 編著:系統小児外科学 改訂第2版,永井書店

3) 岩川眞由美 著:小児外科ハンドブック 見て診て小児外科,医学書院

(MyMedより)推薦図書

1) 岩垂純一 著:実地医家のための肛門疾患診療プラクティス,永井書店 2007

2) 金廣裕道・中島祥介 監修:STEP外科〈2〉消化器外科・小児外科,海馬書房 2009
 

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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