狭窄性腱鞘炎 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)

stenosing tenosynovitis (trigger finger, de quervain disease)

別名: バネ指 | デュケルバン病 | ドケルバン病 | ばね指

執筆者: 三浦 俊樹

概要

 手の痛みの原因として頻度が高い病気に狭窄性腱鞘炎があります。指の曲げ伸ばしを行う腱はいくつかの場所で腱鞘というトンネルの中を通ります。この腱鞘には腱の浮きあがりを抑え効率的に力を伝達する役割がありますが、腱と腱鞘の間で炎症、“腱鞘炎”、がおこると痛みや動きの障害となります。いくつかの場所に腱鞘がありますが手のひらと手首の親指側が腱鞘炎の好発部位です。手のひらの腱鞘炎は指を曲げる屈筋腱の腱鞘炎で、進行すると指の曲げ伸ばしがスムーズにできず“ひっかかり(バネ現象、弾発現象)”が生じるため「バネ指」または「弾発指」と呼ばれています。幼児期にバネ指様症状がでることもありますが、これについては「手の先天異常」の項目を参照してください。手首の親指(母指)側の腱鞘炎は「デュケルバン病(ドケルバン病)」と呼ばれます。

病因

 糖尿病、関節リウマチ、透析患者に合併して生じる場合もあります。しかし大部分は原因不明で「使いすぎ」といわれることもあります。中年女性に最も多く生じます。

病態生理

 腱や腱鞘が炎症で腫れると腱鞘がつくるトンネルの大きさに比べトンネルを通過する腱が相対的に太くなるためスムーズに動かなくなります。バネ指では手のひら上で指の根元にあたるA1プーリーと呼ばれる腱鞘に炎症が生じています。物理的な炎症の結果、バネ指の方の腱鞘や腱では線維軟骨の異形成が生じていることも報告されてます。デュケルバン病は短母指伸筋腱の周囲の腱鞘炎です。指を伸ばす伸筋腱には手首の背側(甲側)に6つの腱鞘がありますが、短母指伸筋腱はその中で第1コンパートメントというトンネルを通っています。

臨床症状

 バネ指の場合、主な症状は手のひら上で指の根元にある“痛み”と指の曲げ伸ばしの際の“ひっかかり(バネ現象)”です。バネ現象は特に朝におこりやすくなります。また、痛みのため指を動かさないでいることで二次的に指のPIP関節(いわゆる第2関節)が固くなり痛みを伴うこともあります。バネ指は全ての指におこる可能性がありますが、環指(薬指)と母指(親指)に多く、示指(人差し指)と小指では症状が軽いともいわれています。デュケルバン病の症状は手首の親指側(橈骨茎状突起部)の痛み、腫れです。親指を握った状態で手首を小指側に曲げると痛みが生じます (Finkelsteinテスト)。バネ現象はありません。

検査成績

 通常の場合は触診によって診断がつきます。骨・関節の異常を伴っていないかX線を撮って確認する場合もあります。

治療

保存的治療

 狭窄性腱鞘炎ではまず、使いすぎを避けるようにします。消炎鎮痛効果のある外用薬(湿布や塗り薬)も使われますが、症状が強い場合には劇的な効果までは期待できません。症状が強い場合にはステロイド剤の局所注射が有功です。ステロイド剤には強さや持続期間の異なる多くの種類があります。トリアムシノロン(商品名ケナコルト)は持続期間(半減期)が中間型のステロイドで、局所麻酔薬と混ぜて局所に注射すると多くの場合症状が劇的に改善します。副作用としては、皮下脂肪が萎縮して皮膚が陥凹したり、稀に色素脱失(皮膚が白くなる)や色素沈着(皮膚が褐色になる)がおこることもあります。また、一過性に(数日)血糖が上がります。

 保存治療で効果が得られない場合、手術治療も検討されます。
手術では通常、局所麻酔をした上で炎症部位の腱鞘を切開します。バネ指の場合にはA1プーリーを完全に切開するとほとんどの場合でバネ現象は消失します。バネ指手術では腱鞘を直接観察するために1cm程度皮膚を切開することが一般的ですが、針や特殊な器具を用いてわずかな切開で手術を行う場合もあります。A1プーリーを切ったことで日常生活上支障が生じることは通常ありません。しかし、例えば関節リウマチの方では腱鞘切開ではなく滑膜切除も検討されます。関節リウマチの方は色々な要因で元々指が小指側を向きやすい傾向がありA1プーリーを切るとその変形が強くなる可能性があるからです。

 バネ指手術の合併症としては、腱鞘の切開が長くなり隣のA2プーリーまで及ぶと指を曲げたときに腱が浮き上がり疼痛・違和感の原因となったり、力が入りにくくなることがあります。また、腱・腱鞘の両脇には神経と血管が走行しており、神経が手術の際に損傷されると指の感覚異常が生じます。デュケルバン病の手術は手首の第1コンパートメントの腱鞘の切開ですが、疼痛の改善にはばらつきがある印象があります。手術の適応については担当医と十分相談しておくことが必要です。

予後

 バネ指では3回までのステロイド注射での長期的な症状改善は60 – 92%と報告されています。デュケルバン病でもステロイド注射は非常に有効です。手術では合併症がなければバネ指のバネ現象はほぼ確実に消失しますが、創部の疼痛はしばらく続くことがあります。

最近の動向

 バネ指では数回のステロイド注射を行ってもバネ現象が続き生活に支障があるようならば手術を行います。ステロイドの中ではトリアムシノロン(商品名ケナコルト)がよく用いられます。

(MyMedより)推薦図書

1) S・テリー・カナリ,藤井克之,三浪明男 著:キャンベル整形外科手術書 第9巻 手,エルゼビア・ジャパン 2004

2) 堀内行雄 編集:手の外科 (整形外科専門医を目指すケース・メソッド・アプローチ),日本医事新報社 2005,

3) 三浪 明男 著・編集:手関節・手指II (最新整形外科学大系),中山書店 2007

 

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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