ギョウ虫症、回虫症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

ギョウ虫症、回虫症(ぎょうちゅうしょう、かいちゅうしょう)

Enterobiasis,Ascariasis

執筆者: 渡辺 克也

概要

ギョウ虫


 ギョウ虫は、古くから日本にいる寄生虫の一つで、ヒトからヒトへと感染し、衛生環境が良くなっったにもかかわらず、幼稚園児、小学校低学年児及びその母親を中心に5-10%の割合で現在もヒトに寄生している。これは、感染の場が主として保育園、幼稚園、小学校といった集団生活の中にあり、感染した子供が家庭で両親などに感染させるためである。

 ギョウ虫の成虫は盲腸やその周辺の粘膜に頭部を付着させて寄生している。メスは、子宮内の虫卵が成熟すると、夜中にヒトが寝ている間に肛門から這い出して肛門周囲の皮膚に一度に約一万個もの卵を産卵し、そのままそこで死ぬ。産卵された虫卵は、肛門周囲の適当な湿度と温度により3-7時間で感染性を持った幼虫蔵卵となって、手指、下着などに付着して簡単に口から感染するとともに、下着やシーツに付着してまき散らされチリとともにヒトの鼻や口に入って感染を引き起こすこともある。ギョウ虫は虫卵を飲み込んでから約3週間で成虫になり、50日で卵を産み始める。

 ギョウ虫症は10歳未満の小児に多く、症状は肛門周囲の激しいかゆみ(メスの産卵時に引き起こされる)、肛門周囲のかきすぎによる湿疹、睡眠不足、神経質、夜泣きなど、まれに虫垂炎に似た症状もある。


回虫症


 回虫症は、世界で人回虫症の感染者は14億人、回虫に原因する腸閉塞などで年間6万人が死亡していると推測されている。日本国内での感染率は1%未満と考えられている。

 衛生設備が整っていない地域によくみられ、トイレや下水道の普及が十分でないことや、不衛生な習慣が残っていることが原因で起こる。感染は、土壌などにいる回虫の卵が食べ物につき、それを食べることで起こる。口から入った回虫の卵は、小腸で幼虫になる。幼虫は小腸壁から門脈を経てリンパ管や血流に入り、肺へ到達する。肺に到達した幼虫は肺胞に入り、そこから気道を上昇し、再び飲み込まれて小腸で成虫になり産卵する。人には人回虫があるように動物それぞれに適応した回虫が存在する。回虫は小腸の中でブラブラしてはねているだけである。鉤虫や鞭虫のように腸に食いついてという事はない。適切な組み合わせが守られ大量に寄生されない限りは比較的穏健な寄生虫といえる。

 犬や猫あるいはアライグマの回虫といった本来は人に取り込まれたくない回虫が誤って人に取り込まれてしまった時、人の健康に障害を与える可能性を生じる。これを幼虫移行症と呼ぶ。回虫が人の体内に侵入した時、本来のライフスタイルにしたがって幼虫は人の小腸の壁にもぐりこみ移動を始めるが、人回虫以外の回虫では不適切な宿主の体内に入ってしまったため、人回虫のように小腸に戻ってくることができず体内のどこかで行き詰まってしまう。肝臓や肺あるいは脳であれ、止まってしまった場所に応じて人の健康に害を与える心配がでてくる。実際には肝臓や肺といった予備能力の大きな臓器では、何事もなかったかのように過ぎていく。特異な例として眼球に侵入した場合の眼球移行症、中枢神経系に侵入した場合の脳脊髄線虫症と呼ばれるものがある。

回虫症では、無症状のことが多いが、幼虫が肺に移動するときに、発熱、せき、喘鳴が起こることがある。小腸で回虫が増えると腹痛がおきたり、腸閉塞が起こることがある。成虫が口から吐き出されたり、便の中に出てきたりといった心理的に不安な状況もありえる。成虫が胃、総胆管、膵管、虫垂などの小孔に詰まると激しい腹痛が起こる。

検査成績

 ギョウ虫症はウスイ法(セロハンテープ)によって、肛門周囲に産み付けられた虫卵をテープののりの面に付着させスライドグラスに貼付けて顕微鏡で検査する。ギョウ虫は夜中に肛門から這い出し、その周囲に卵を産み付けるため、朝起きた時に卵をとる。また、毎日産卵するとは限らないので、日を変えて2-3回検査することが必要である。

 回虫症は有機栽培野菜などの食歴や海外渡航歴を参考にし、検便で虫卵を検出して診断するが、この方法で診断されることはほとんどなく、上腹部痛の精査で行われた内視鏡検査で胆道に迷入した虫体が発見されたり、大腸内視鏡検査での虫体摘出、あるいは虫体が肛門から排出されたり、吐出して発見される。多くは幼若な虫の一匹だけの寄生で、便の虫卵は陰性である。

 それから、わけの分からない肺病変、肝病変、中枢神経系病変があって、好酸球増多やIgE上昇を伴う場合には、やはり寄生虫感染を疑って血清学的なスクリーニングを行うべきである。血清診断は大学の寄生虫学教室か検査会社に依頼する。

治療

 内服薬で行う。

 ギョウ虫症の場合、検査で家族の誰かがギョウ虫卵陽性と分かったら、家族全員で駆虫する必要がある。

 回虫症の場合、小腸以外に留まっている回虫の幼虫に対する有効な薬剤による治療法はない。幼虫の居場所によっては外科的に摘出することもある。パモ酸ピランテル(商品名 コンバントリン)、メベンダゾールを処方する。ただし、胎児に影響を及ぼす懸念があるため、これらの薬は妊婦には使えない。

処方例


 処方A コンバントリン(錠剤、ドライシロップ)10mg/kg 空腹時屯用 10日~2週間後に2回目を服用する。(生き残った幼若虫が成熟するため)

 処方B 再発を繰り返すなら メベンダゾール(錠剤)200mg/日 分2で3日間(保険適応外)(体重20kg以下の小児では半量など適宜減量が必要である。)

 幼虫移行症: 次のような組織内殺線虫剤を使う。

 処方A ミンテゾール(成分名 チアベンダゾール)(錠剤) 25-50mg/kg/日 分2 1-2週間連用する。

 処方B エスカゾール(成分名 アルベンダゾール)(錠剤) 10-15mg/kg/日 分3 2-4週間連用する。

文献

吉田 幸雄、有薗 直樹:図説人体寄生虫学.南山堂、pp94-99,pp106-107,2006

藤田 紘一郎;寄生虫症.小児内科 小児疾患の診断基準.Vol33増刊号pp830-831,2001

渡辺 克也:蟯虫症、回虫症. 小児疾患診療マニュアル 五十嵐 隆編.中外医学社,pp106-107,2005

(MyMedより)推薦図書

1) 岡部信彦 監修、米国小児科学会 編集:最新感染症ガイド・アトラス 日本版RED BOOK ATLAS,日本小児医事出版社 2010

2) 上村清・木村英作・福本宗嗣・井関基弘 著:寄生虫学テキスト,文光堂 2008

3) 藤田 紘一郎 著:寄生虫のひみつ ムズムズするけど見てみたい「はらのむし」たちの世界 (サイエンス・アイ新書),ソフトバンククリエイティブ 2009
 

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