胸郭動揺/フレイルチェスト - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

胸郭動揺/フレイルチェスト(きょうかくどうよう)

flail chest

執筆者: 森 正一 光冨 徹哉

概要

 肺のガス交換は、吸気・呼気に生じる肺の体積変化に連動しておこる。肺は、胸郭の中(胸腔)に存在し、常に空気のない状態まで縮もうとする力を持っている。一方、胸腔内は陰圧となっており肺を膨らまそうとする力となる。吸気時には横隔膜が収縮し腹側に下降する。同時に胸壁では肋骨が挙上され胸郭全体の容積が拡大する。胸腔内の陰圧が増大し肺が拡張し肺全体に空気が吸い込まれる。一方呼気時は、横隔膜が弛緩し頭側に上昇するとともに、肺、胸郭のもとに戻ろうとする力によって胸郭、肺の容積が減少して空気が吐き出される。




 フレイルチェストは、主に前方から側方にかけての連続する3本以上の肋骨が同時に前後側2カ所で折れた場合に生じる。この損傷を受けた胸壁片は、健常胸郭との連続性を失い動揺しやすくなり、吸気・呼気時に従来と逆の動きをして、換気障害をひき起こす。

病因

 外傷などによる多発骨折で生じる。2カ所以上で骨折した肋骨が3本以上連続すると(前方の骨折が胸骨でもよい)骨性胸郭からの連続性を失う。この胸壁片はフレイルセグメントとよばれる。(画像2)

病態生理

 吸気時での胸腔内陰圧が増大すると、フレイルセグメントが内側に落ち込む。胸腔内圧の十分な変化が起こらず、患側の肺の拡張は不十分となる。そして、対側の健常肺は、正常に拡張し空気を吸い込むため外気からのみでなく患側肺へも吸い込む力が作用し益々患側の拡張が妨げられる。呼気時には、胸腔内陰圧の低下(胸腔内圧の上昇)に伴いフレイルセグメントが外側に突出すると同様に十分な圧変化が起こらず肺の虚脱が不十分となる。健側では、肺の虚脱が生じ、気体が外部へ押し出される。しかし、この時に患側肺へも押し出され益々肺の虚脱が妨げられる。いわゆる従来の胸壁の動きと逆の動きが生じ、正常の換気が妨げられる奇異運動(呼吸)が生じる。




通常この外傷には、肺挫傷をともなっておりガス交換能が低下している。さらに、骨折からの疼痛のため十分な呼吸運動および喀痰ができず無気肺および肺炎を合併し換気不全に拍車をかける。

臨床症状

自覚症状


 肋骨骨折による疼痛や呼吸困難が生じる。


他覚症状


 胸壁の変形、呼吸時の胸郭の動揺、奇異運動、呼吸速拍、チアノーゼなどが生じる。

検査成績

 胸部、肋骨レントゲンにて連続する3本以上の多発肋骨骨折で同一肋骨が2カ所以上で折れている。胸部CTでは、多発肋骨骨折と付随する胸部外傷の存在が明らかとなる。血液ガス分析/パルスオキシメーターで、PaO2の低下がみとめられる。

診断・鑑別診断

 呼吸時の胸壁の動揺、奇異運動と上記の多発肋骨骨折の存在より明らかとなる。

治療

 疼痛による呼吸および喀痰の抑制が、合併症を招くとともに病態を悪化させる。軽症の呼吸障害の場合は、疼痛管理と気道の浄化および酸素の投与でよい。呼吸障害が高度の場合、胸壁の動揺が原因であるためその固定をはかる必要がある。胸壁の固定には内固定(保存的)と外固定(外科的)がある。一般には内固定が施行されることが多い。外固定は、血胸などの他の胸腔内外傷による手術適応時になされるが、硬膜外麻酔の範囲を超えるような多数の肋骨骨折(9本以上との意見あり)時、さらに著しい胸郭変形時にも施行される。

疼痛管理 


 NSAID、オピオイド、肋間神経ブロック、硬膜外麻酔で除痛をはかり換気を増大および自己喀痰を促進する。 

内固定 


 気管内挿管し、CPAP(持続気道陽圧)やPEEP(呼気終末陽圧)を併用した人工呼吸器管理を施行し、胸郭動揺を抑制し胸壁が固定されるまで待つ。おおむね1−2週間ほどで人工呼吸器から離脱可能である。しかし、肺炎や圧外傷を含めた合併症のリスクが高まるため、気道分泌物の処置などに留意することが必要である。

外固定 


 全身麻酔下で肋骨ピンやプレートによるフレイルセグメントの固定を施行する。

(MyMedより)推薦図書

1) 寺沢秀一・林寛之・島田耕文 著:研修医当直御法度―ピットフォールとエッセンシャルズ,三輪書店 2007

2) 村田喜代史、上甲剛、池添潤平 編集:胸部のCT,メディカル・サイエンス・インターナショナル 2004

3) 佐々木克典 著:外科医のための局所解剖学序説,医学書院

4) 南淵明宏 著, 茨木保 絵:ナースのちから (CABG手術編),三輪書店 2006

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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