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Pneumothorax
外側を胸壁、腹側を横隔膜、内側を心臓などの縦隔臓器として、それらを覆う中皮細胞によって囲まれる左右に分かれた二つの空間を胸(膜)腔いう。この中皮細胞を含む膜が、胸膜であり、壁側胸膜、縦隔胸膜、および肺をとり囲む臓側胸膜がある。気胸は、この空間に気体が貯留した状態をさす。
気胸は、胸壁から、横隔膜を通して腹部から、また肺や縦隔臓器を通してなど、気体が胸腔に侵入することにより生じる。この気体が肺や縦隔を圧迫することにより症状が、出現する。一般的に気胸と言う場合は、肺に何らかの原因で穴があき空気がもれて生じるものと考えてよい。肺に穴があくような明らかな要因もなく突然生じる自然気胸と事故や中心静脈穿刺(医原性)などで肺が傷ついて生じる外傷性気胸に分かれる。さらに自然気胸は、肺に明らかな基礎疾患がないやせ形の男性で20歳前後に発症のピークを持つ原発性と肺気腫などの基礎疾患があり60歳前後にピークをもつ続発性に分類される。狭義の気胸は、原発性と続発性の自然気胸をさす。
子宮内膜が横隔膜や肺に存在し月経時に剥がれ落ちて気胸を生じる。
気胸による胸腔内の圧が大気圧以上に高まり肺や心臓などを圧迫して呼吸・循環に支障をきたす。ショックに陥ることもある。
肺のブラ(肺胞の一部が嚢胞化)やブレブ(臓側胸膜内にできた嚢胞)が破裂して生じることが多い。そしてこれらは肺の頭側(肺尖)にできやすい。これらが発生する原因として、喫煙による末梢気道の炎症や、成長期において胸郭の成長速度に肺・胸膜が追いつかず胸腔の陰圧によって脆弱な部分に生じる損傷などが考えられているが、家系内の発症パターンよりFBN1遺伝子の異常などの関与も最近報告されている。こうして生じたブラ、ブレブに何らかの原因で圧がかかり破裂する。一方、一部にはブラ、ブレブの存在が証明されない気胸がみとめられ、異常なPleural porosity(胸膜の穴)が存在するとも言われている。
肺気腫、間質性肺炎、カリニ肺炎、リンパ脈管筋腫症、嚢胞線維症などの基礎疾患が存在し、生じるもので肺自身に疾患を持つため肺機能が低下しており軽度の気胸でも重症化する可能性がある。
空咳、胸痛、息切れ、呼吸困難、動悸などが突然生じる。緊張性気胸の場合は、呼吸困難、血圧低下でショックをきたすこともある。
発症側での呼吸音の減弱、胸郭の動き左右差、打診で鼓音などをみとめる。
胸部X線で、縮んだ肺の輪郭や、無血管領域もみとめる。胸部CT(必須でないが、可能なら施行)では、気胸腔が存在する。ブラ、ブレブや基礎疾患の有無がわかることもある。
症状をとる治療、肺の穴を治す治療、再発を防ぐ治療を考慮する。症状は気体が貯まって生じるため気体を体外に出すことが治療になる。貯まった気体はゆっくり体内に吸収されるため、症状のない軽度の気胸の場合は、あえて体外に出す必要はない。肺の穴の多くは、自然に治癒する。自然治癒を待つ治療を保存的治療ともいう。穴が治癒しない時は、穴を塞ぐ治療をする。再発の予防は、肺に穴が生じないようにブラ、ブレブを切除したり、肺の胸膜を壁側の胸膜に癒着させることで可能となる。
初発時に、保存的治療により軽快した場合は、再発予防処置はとらない。初発気胸の再発率は約30—50%前後であるので半分以上は、再発しないことになるからである。保存的治療から手術を考慮する場合は、リークが持続する(3-5日以上)、肺が拡張しない、両側気胸、血気胸、社会的要因(職業)などである。再発を繰り返すとさらに再発率は高まるため、再発気胸に対してはその予防が必要となる。手術によって再発率は約10%以下にできるが、癒着療法を追加することによってさらに再発率を低めることができる。

原発性に準ずるが、基礎疾患の存在は高い再発の可能性と気胸が時に生命にかかわる疾患となる可能性があると認識し、初回より再発の予防処置をとる必要がある。
気胸が軽度(胸部レントゲン写真にて胸壁と肺胸膜の距離が2-3cm)で臨床的に安定していれば安静のみか、穿刺吸引(針または細径のチューブにて胸腔内の気体のみ吸い出す)する。数時間の観察で悪化がなければ、外来で経過を診てもよい。気胸が重度(上記以上)か、臨床的に不安定ならば入院にてチューブドレナージを施行する。ドレナージは一般に中腋窩線上の2あるいは3肋間より施行する。緊張性気胸を生じている場合は、即時にドレナージを施行する。十分時間をかけて肺を拡張させることが再膨張性肺水腫の予防となるため持続吸引より水封管理がよい。ドレナージ後安定すればチューブにハイムリッヒ弁(逆流防止弁)を装着することにより、外来通院が可能である。
カメラを使用し拡大視して行う胸腔鏡下手術(VATS)と胸を開ける開胸手術があるが、小さく開胸しカメラも併用する胸腔鏡併用手術も頻用されている。胸腔内でなされることが同じならば、負担のすくないVATSがよい。一般にはVATSで始めて、困難な時に小さな開胸を追加する。VATSは、再発率で開胸術にやや劣るとされている。気胸の原因となるブラ、ブレブの多くは肺尖部に存在し、原因となったものを含め自動縫合器にて正常部で切除する。術後に、ブラ、ブレブが新しく発生することや、術中に小さなものを見落とすことがあるため、切除部および周囲の肺尖部に人工の膜を貼付けて再発を予防することも施行されている。
癒着療法は、胸腔内に人工的に炎症をつくり、その反応により臓側の胸膜と壁側の胸膜を癒着させる。炎症を生じさせるために、胸腔に薬剤を注入する方法と壁側の胸膜を機械的に刺激する方法がある。薬剤を注入する場合、胸腔内全体に炎症が生じるため全体の癒着が期待できるが不完全な場合もある。使用する薬剤としては、ドレナージチューブよりOK-432、ブレオマイシン、ミノサイクリン、自己血、フィブリングルーなどがある。外国ではタルクが好まれるが日本では保険適応はない。壁側の胸膜への機械的刺激は、手術時に器具で擦過することや、一部切除することにより施行される。この場合、刺激された部分の癒着が生じるので肺尖部などのブラ、ブレブの生じやすい部位の癒着を期待し施行される。
初発の原発性自然気胸を保存的に治療した場合に再発率は約30—50%であるが、再発、再再発時そのリスクは約60%、80%と上昇する。VATS は再発率を5-10%に、開胸術は3%前後におさえる。喫煙者に生じた気胸では、軽快後の禁煙が再発の予防になるとの証拠はないが、発癌のリスクなど他の理由より禁煙すべきである。
1) 日本気胸・嚢胞性肺疾患学会 編:気胸・嚢胞性肺疾患規約・用語・ガイドライン 2009年版,金原出版 2009
2) 林寛之 著:ERの裏技 極上救急のレシピ集,シービーアール 2009
3) 佐々木克典 著:外科医のための局所解剖学序説,医学書院
4) 南淵明宏 著, 茨木保 絵:ナースのちから (CABG手術編),三輪書店 2006
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