虫垂カルチノイド - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

虫垂カルチノイド(ちゅうすいかるちのいど)

carcinoid of the appendix

執筆者: 岡田 真樹

概要

 虫垂壁の粘膜深層に存在する神経内分泌細胞を発生母地とする腫瘍と考えられているが、生物学的悪性度が高い神経内分泌細胞癌との異同など、その本態についてはまだまだ不明な点が多い。
欧米では虫垂切除300例に1例の割合で虫垂カルチノイドが認められ、虫垂に発生する腫瘍ではもっとも多く認められる。また全消化管カルチノイドの中で虫垂は12.0%、直腸は25.4%と虫垂カルチノイドより直腸カルチノイドが多い。本邦では全臓器のカルチノイドの中で虫垂カルチノイドは4.7%である。新生児乳児を除く小児を含めたすべての年齢層に認められるが、30歳代から40歳代に多い。これは虫垂の神経内分泌細胞分布密度の年代的変遷に一致する。性別では女性に多い。

病態生理

 虫垂先端に1cm以下の硬い灰白色から黄色調の被膜を有さない小腫瘤として認められることが多い。2cm以上の大きさのものは少ない。組織学的に次のサブタイプに分類される。

classic carcinoid

 腺房様あるいはロゼット形成を伴う小型腫瘍細胞が腫瘍塊を形成する。核分裂像を認めることは極めてまれであるが、筋層や漿膜に浸潤する。腫瘍細胞は嗜銀製、好銀性でジアゾ反応陽性であり、免疫染色ではneuron-specific enolase (NSE)やchromograninなどが陽性である。

adenocarcinoid

 腺管構造分化を伴うカルチノイドであり通常ムチンを認める。ときに原発性または転移性虫垂腺癌と間違われる。好銀性で核分裂像や核異型は伴わない。

goblet cell carcinoid ( mucinous carcinoid tumor, crypt cell carcinoma)

 粘膜下層に印鑑細胞の小細胞塊を形成し、筋層や漿膜へ浸潤する。他のタイプに比べて悪性度が高い。E-cadherinやβ-cateninの発現は虫垂印環細胞癌との鑑別点である。

臨床症状

 カルチノイドに特異的な症状はなく、多くは急性虫垂炎と診断されて虫垂切除が行われ、その病理学的検索からカルチノイドと診断される。カルチノイド症候群を呈することはない。多くが1cm以下であり術前に診断することは極めて困難である。切除した虫垂の肉眼的・組織学的検索が必要である。

治療

 通常認められる1cm以下のカルチノイドは転移を起こすことはなく、虫垂切除で十分である。2cmを越すカルチノイドは所属リンパ節に転移を起こすことがあるため、リンパ節郭清を伴う右半結腸切除術または回盲部切除術の適応である。しかしgoblet cell carcinoidは他のタイプよりやや悪性度が高く、小さくてもリンパ節郭清を伴う腸管切除が必要である。

予後

 虫垂カルチノイドの予後は全般には良好であるが、2cmを越えるものはリンパ節転移や肝転移の可能性がある。5年生存率は欧米では76.3%、本邦では71.3%である。

執筆者による主な図書


1) 岡田真樹 著:腸間膜、虫垂.新臨床外科学第4版:587-596, 2006,東京、医学書院

(MyMedより)推薦図書

1) 牧野尚彦、篠原尚 著:イラストレイテッド外科手術,医学書院

2) 加藤高明 著:3D Anatomy,日本医事新報社
 
3) 佐々木克典 著:外科医のための局所解剖学序説,医学書院

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