膵炎・膵癒合不全 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

膵炎・膵癒合不全(すいえんすいゆごうふぜん)

Pancreatitis Pancreas divism

執筆者: 楯川 幸弘

概要

 膵炎は、膵臓が自ら分泌する消化酵素(トリプシン、アミラーゼなど)によって消化されてしまう病気です。急性膵炎と慢性膵炎があり、小児では、急性膵炎の頻度が高い傾向にあります。膵癒合不全は、膵液の流れる膵管(腹側膵管:Wirsung管、背側膵管:Santorini管)の癒合形態の異常によっておこります。

 膵臓の発生(1)腹側膵の回転前

 膵臓の発生(2)腹側膵の回転直後

 膵臓の発生(3)腹側膵と背側膵の癒合

病因

 小児の急性膵炎の原因は、外傷性がもっとも多く、次に代謝異常などの全身疾患、先天奇形、薬物、感染などがありますが、原因不明の特発性のものにしばしば遭遇します。

病態生理

 急性膵炎では、膵周囲への多量の水分および電解質の喪失に加え、嘔吐や胃内容吸引により、脱水および電解質バランスの乱れが起こります。重症例では、脱水に伴いhypovomemic shockや、膵臓の壊死により糖尿病状態に陥ってしまうこともあります。

臨床症状

自覚症状

 腹痛、背部痛、悪心、および嘔吐などの症状がありますが、小児では腹痛や嘔吐などの典型的な症状に乏しく、不機嫌、意識障害、あるいはショック症状などで発症する場合もあります。

他覚症状

 腹部に圧痛や、場合により腸管蠕動の低下に伴い腹部膨隆などの症状がみられます。

検査成績

 血液検査では、白血球が増加し、アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1およびトリプシンなどの膵臓から分泌される酵素が血中に増加します。血清アミラーゼのうち、アイソザイムで膵型アミラーゼの上昇がみられた場合、膵疾患が強く疑われます。尿中アミラーゼ値の上昇とアミラーゼ・クレアチニンクリアランス比の上昇がみられることがあります。それ以外にphospholipase A2、PSTI(pancreatic secretory trypsin inhibitor)の推移は、重症化をみるうえで有用です。

 画像診断では、胸腹部単純X線、超音波検査、CTスキャンなどが施行されています。X線では、胸水や腸管麻痺による腸管の拡張がみられます。超音波検査では、膵臓の腫大、エコーレベルの低下、膵臓周囲の液貯留などが検出されます。CTスキャンでは、膵臓の腫大、膵実質内部の不均一、膵周囲の炎症などがみられます。

診断・鑑別診断

 膵炎の原因として、先天性奇形の鑑別診断が必要です。膵癒合不全、輪状膵、総胆管嚢腫、膵・胆管合流異常などがあります。膵癒合不全に関して、膵管の癒合形態の異常は膵管癒合不全、すなわち腹側膵管と背側膵管が癒合しない場合と、両膵管は癒合するもののその過程で生じる種々の膵管癒合異常が考えられます。この場合、MRCPや内視鏡的膵胆管造影(ERCP)を施行することになります。

治療

 膵炎に対する治療として、できるだけ早期に診断し、保存的治療を試みることが重要です。安静を保ち、鎮静剤(ブスコパン、硫酸アトロピン、ペンタジンなど)を使用することがあります。絶飲食とし、膵外分泌を抑制し、中心静脈栄養などの点滴からの栄養や電解質の補正を行います。胃管を挿入し胃液の吸引を行い、H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬などの制酸剤を用い、胃酸分泌を抑制して膵外分泌を制御します。メシル酸ガベキサート(FOY)、メシル酸ナファモスタット(フサン)、ウリナスタチン(ミラクリッド)、CDPコリン(ニコリン)などの抗酵素製剤の使用や、ソマトスタチンアナログ(サンドスタチン)を用い、直接膵外分泌を抑制したりします。感染性膵壊死や膵膿瘍、腹腔内感染症や敗血症の予防に対し、抗菌薬を投与します。壊死組織に対して、外科的ドレナージや壊死組織の切除が必要になることもあります。

 膵癒合不全に対し、内ステントや副乳頭形成術が施行されることがあります。

予後

 内科的治療後に、膵臓に袋状の仮性嚢胞ができ、その内部で出血や感染を合併することや仮性動脈瘤の形成がみられることがあります。重症例では、多臓器不全に陥ってしまい、死亡に至ります。急性膵炎と肥満の関係について、予後、合併症については、肥満例で有意に重症化しやすいと報告されています。

最近の動向

 最近では、症例が少ないが、自己免疫性膵炎疾患について論議されています。血清IgG4のサブクラスの増加が報告され、ステロイド治療が奏功しています。

 重症急性膵炎に対し、膵臓に直接メシル酸ナファモスタット(フサン)の持続動注を行うことで、良好な治療成績が報告されています。

参考文献

1) 清水俊明:急性膵炎. 小児内科、vol.31,増刊号、pp500-504, 1999

2) 梶本博子、他:メシル酸ナファモスタットの持続動注(CAI)が有効であった重症急性膵炎の1症例. 小児科、vol41, No.9, pp1663-1668, 2000

3) 神澤輝実、他:自己免疫性膵炎における血清IgG4値の測定の意義. 臨床検査、vol.46, no.10, pp1155-1157, 2002

4) 安田秀喜、他:膵頭部の分枝型膵管内乳頭腫瘍に対する背側膵・腹側膵切除. 手術 vol 56, No.8号、pp1011-1012、2002

(MyMedより)推薦図書

1) 岡田正 著:系統小児外科学,永井書店 2005

2) 急性膵炎診療ガイドライン2010 改訂出版委員会 編集:急性膵炎診療ガイドライン〈2010〉,金原出版 2009
 

免責事項

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