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acute rheumatic fever
執筆者: 武井 修治
病因が確定された唯一の自己免疫性炎症性疾患。A群レンサ球菌感染が先行し、その2~3週後に発熱、関節炎、心炎、皮疹、不随意運動などを続発する。臨床的には心炎から弁膜障害を残す:リウマチ性心疾患:[rheumatic heart disease :RHD)が問題となる。先行するA群レンサ球菌感染症罹患時に、抗生剤を適切に使用すれば予防可能である。本邦では1970年頃から:ARF:の発生は激減し、1980年~1990年には424例の報告に留まり、2004年度の小児慢性特定疾患治療研究事業に登録されたARFは42例、RHDは2例に過ぎない。しかし、世界では発展途上国を中心に毎年5,000万人がARFに罹患し、そのうち30万人がRHDを発症し、累計RHD患者は少なくとも15.6億人に達しており、グローバルには過去の病気ではない。罹患頻度の高い地域では、5~15歳の発症頻度が高く、5歳未満発症例は5%未満と稀である。性差はない。
A群レンサ球菌の関与が明らかにされている。ARF患者では1)A群レンサ球菌感染症(咽頭扁桃炎や猩紅熱)の先行があり、2)咽頭からA群レンサ球菌の検出(20〜30%)、3)ASOなど抗A群レンサ球菌関連抗体高値(90%以上)が認められ、また4)無治療の1)の患者の3%にARFを発症することなどが、その根拠として挙げられている。しかしA群レンサ球菌の感染を受けた全員がARFを発病するわけではない。菌側の要因として菌体成分の一つであるM蛋白(M3,M5, M14, M18, M24)が、宿主側の要因として特定のHLA抗原(HLA-DR 4,2,1,3,7, DRB1*16 alle, Allotype D8/17)が挙げられ、これらの要因が抗原類似性に基づく交差反応や、T cell活性化による細胞性免疫亢進を介してARFの病態を構築するものと考えられている。
発症2~3週前に先行感染と思われる上気道感染症(咽頭扁桃炎)が約半数にみられる。
四肢の大関節(膝関節、足関節、手関節)を中心に、非対称性の関節炎が約70%に出現する。股関節などの体軸関節にはみられない。関節炎は数時間から一晩で出現し、しばしば動けないほどの強い疼痛を訴えるが、持続することなく24時間ほどで自然に消退する。そのころには別の部位に新たな関節炎を発症するため、移動性関節炎と表現される。ARFの関節炎は無治療でも数週以内に自然消退するが、アスピリンや非ステロイド系抗炎症薬NSAIDsが劇的に奏功することがARFの特徴の一つである。関節破壊やレントゲン写真の異常はみられない.
約50〜60%の患者に見られる。初期には臨床症状に乏しいが、経過が遷延すれば心不全症状(浮腫、倦怠感、頻脈など)が出現する。心炎は弁膜炎を主体とした心内膜炎であるため、弁の機能障害による心雑音を聴取する。特に僧帽弁(63%)、大動脈弁(5%)、その両者(30%)に多い。聴診では僧帽弁閉鎖不全による逆流を収縮期雑音として心尖部に,大動脈弁閉鎖不全による逆流を拡張期雑音として心基部に聴取する。通常はルーチンに行なう胸写や心電図から、心拡大、不整脈(期外収縮,第I度房室block)などの所見で気づかれ、心エコー検査で弁膜障害が見つかることも多い。
10〜20%にみられる一過性の皮疹で、短時間で消失する。体幹、大腿部などの四肢近位部に好発するが、顔面にはみられない。細い線状の淡い紅斑が不整な輪状を形成し、中心部の皮膚色は正常である。痒みは伴わない。急性期のみならず,遅発性にみられることもある。

直径約1cm程度の無痛性の小結節で、心炎合併例に多い。3〜5%にみられ、肘、前腕部に好発する。膝関節や手関節の伸側、後頭部、脊椎棘突起付近にもみられる。
基底核および尾状核の障害で、ARFの約5%にみられる。A群レンサ球菌感染から数週〜数か月後に発症するため, ARFとしての急性症状は消退している。ARF症状なしで単独で舞踏病として発症する場合もあり、ARFの症状か、判断が困難なことも多い。舞踏病では、情緒不安定などの精神症状や筋緊張低下を伴う。不器用になった、行儀が悪くなった、乱暴になったなど、行動異常として捉えられていることが多い。同一姿勢を維持することが難しくなり、しだいに不規則な四肢体幹の不随運動が出現する。手の回内運動を伴うことが多く、通常は片側性で、睡眠時には消失する傾向がある。
多関節炎や心炎がみられる場合は高熱を伴う。その他、食思不振、易疲労性、蒼白、多汗、腹痛などがみられる。
ARFに特異的な検査はないが、診断には急性炎症の存在と、先行するA群レンサ球菌感染の存在を証明することが必須である。
急性期には、ほぼ全例でCRP陽性、赤沈値の亢進、白血球数の増加がみられる。しかし舞踏病単独で発症した例では、急性炎症所見は認めないことが多い。
咽頭培養や迅速診断、それに抗体検査が行われる。 ARFにおける咽頭培養でのA群レンサ球菌の検出率は30%程度である。培養法では結果を得るまでに時間を要すため、迅速抗原診断が行われることが多い。迅速抗原診断とは、咽頭スワブ検体からA群レンサ球菌の多糖体抗原を短時間で検出する方法で、急性咽頭炎における診断特異度は95%以上と血液寒天培地を用いた従来の培養法よりも高いことから急速に普及している。しかし、初期のラテックス凝集反応を利用した迅速抗原テストでは、診断感度が培養より低いため、より感度の高い酵素抗体法(EIA法)やイムノクロマトグラフ法による迅速診断が望ましい。 A群レンサ球菌関連抗体としてはanti-streptolysin-O (ASO),anti-streptokinase (ASK)がよく用いられている。これらの抗体価は感染1〜2週後に増加し始め,ARFの急性期には増加している場合が多い。しかし実際に急性期に各抗体を測定してみると,それぞれの抗体陽性率は70〜80%程度である。そこでanti-deoxyribonuclease-B (DNase B)を加えた3つの抗体を同時に測定すると、いずれか1つ以上抗体が陽性となるのは95%と増加し、診断に有用である。 ARFの急性期にこれらの抗体価が低値である場合は、回復期血清を検討し,抗体価が4倍以上増加することを確認する必要がある。

Jonesの基準(1992)が用いられており、先行感染症が証明されれば、主症状2つ、あるいは主症状1つ+副症状2つ以上があればARFである可能性が高い。 Jones基準を用いて診断する際に、いくつかの注意が必要である。例えば、関節炎と判断するには関節の腫張、動かしたときの痛み、熱感が必要であり、痛みだけで関節炎と判断してはならない。また関節炎を主症状に採択した場合には、副症状の関節痛を採択してはならない。心炎の存在はARFに伴う症状、聴診所見,心エコー検査、心電図所見等を総合して判断すべきであり、心エコー所見(僧房弁や大動脈弁の閉鎖不全)や心電図所見(P-R時間延長)のみでARFの心炎と判断してはならない。また、後述する舞踏病や不顕性発症心炎では先行感染から数ヶ月以上経過していることが多く、先行するA群レンサ球菌の関与を証明できない。

心炎はJIA全身型でもみられる。しかしJIAでは心外膜炎が主体であり、心嚢液貯留がみられてもARFのように心内膜炎や弁膜炎がみられることはない。舞踏病は遅れて発症することが多く、先行A群レンサ球菌感染の証明が難しい。したがって先行症状なしに舞踏病単独で発症した場合はARFとの鑑別が困難で、チック、全身性エリテマトーデス、ウイルソン病などを鑑別する必要がある。

多発性関節炎から鑑別すべき疾患は、若年性特発性関節炎JIAと反応性関節炎である。JIAの関節炎は固定性で、手指・頸椎などの小関節まで侵され、 NSAIDsの反応が悪く遷延することから鑑別される。A群レンサ球菌感染後に関節炎を発症しARFの診断基準を満たさないものはレンサ球菌感染後反応性関節炎post streptococcal reactive arthritis (PSRA)と呼ばれている。感染からの潜伏期間は3日〜2週間とARFより短く、股関節(20%)などの体軸関節にも関節炎がみられる。NSAIDsへの反応が悪く、小関節も罹患する点はJIAと類似している。稀に心炎(6%)が起こることから、PSRAとARFとの異同が議論されている。

A群レンサ球菌感染症後に、脅迫性障害やチックなどの精神・神経症状を急激に発症することがあり、pediatric autoimmune neuropscychiatric disorders associated with streptococcal infections (PANDAS)と呼ばれている。しかし、PANDASでは心炎や多関節炎などはみられず、ARFの診断基準も満たさない。PANDASでは突然出現したチックや脅迫性障害などの症状は一過性に寛解するものの、A群レンサ球菌感染の度に症状の再燃・悪化を繰り返す。
ペニシリンG (PC-G)が第一選択薬である。2-5万単位/kg/day、通常60〜120万単位/dayを分4で10〜14日間内服する。PC-Gがない場合はABPC (25-50mg/kg/day分4)、AMPC (30-40mg/kg/day分3-4)、ACPC (25-50mg/kg/day分3-4)などが用いられる。
多関節炎に対してアスピリン50〜75mg/kg/dayが用いられる。反応は良好で、約2週間で臨床症状は改善するが、炎症反応が消失するまで約1〜2か月投与する。肝障害などでアスピリンが使えない場合、ナプロキサンが有効とする報告がある。心炎に対してはステロイドが用いられる。発症から3週以内の例ではプレドニゾロン40mg/day、4〜6週以上経過した例や大動脈閉鎖不全を伴う例では60mg/dayから開始する。心炎や炎症所見の改善を確認し、投与2〜3週後から減量を開始し、2〜3か月で漸減中止する。舞踏病に対しては抗痙攣薬、鎮静薬を使用し、重症例ではプレドニゾロン30mg/dayが併用される。
患者はA群レンサ球菌に感受性が高く、再感染でARFを再発しやすい。A群レンサ球菌感染症1回あたりのARF再発率は、初発または最終再燃時から1年以内で41%、2年以内で28%とする報告がある。またその再発リスクは既にRHDをもつ患者で高く、再発すれば既存の弁膜障害は悪化する。したがって、再発予防のための抗生剤予防内服が重要である。予防内服を継続すれば80〜90%の症例で再発を抑制でき、予防内服しない場合はその20〜50%が再発するという。特に発症5年以内は再感染によるARF再発のリスクが高い。ペニシリンG 20〜40万単位/dayが勧められている。心炎がない例では発症から5年間または18歳まで、心炎があり弁膜症を残さなかった例では20歳までとされている。心弁膜症を残した症例や手術例では一生継続することになる。
心炎による弁膜障害が予後を左右する.初発時に心炎を認めない場合,再発時に心炎を新たに起こすことは稀と考えられている.初発時に心炎があった場合,発症4週以内に適切な量のステロイドが開始されれば,心雑音は比較的短期間で消失する.しかし発症6週以上を経て治療が開始された場合,心雑音が消えるまでに数年を要し,僧帽弁や大動脈弁に永続的な障害を残す可能性が高い.またその場合,再発すれば弁膜障害は悪化する. ARFはself limitedな疾患であり、関節炎や舞踏病は後遺症なく治癒する。したがって弁膜障害を残さない限り、生命や生活予後は良好である。1950~1960年代に欧米からなされ報告での死亡率は初発時に0.4~0.6%、再発時に2.3~3.0%であった。一方、WHOの報告によれば、世界では年間23万3千人がARFあるいはRHDに関連して死亡しているという。
ARF診断のためのJonesの基準は、1944年に初めて策定された後もたびたび変更や改定が繰り返され、診断特異度は高まるものの、その度に診断感度の低下が指摘されてきた。特に流行地域では1992年基準でさえ診断感度が問題となっている。そこで、再発例の基準を緩和したWHO基準(2002-03)が流行地域で推奨されている。

1) Carapetis JR, et al: Acute rheumatic fever. Lancet 2005; 155-68.
2) Ayoub EM, et al: Acute rheumatic fever and post-streptococcal reactive arthritis. In the Textbook of pediatric rheumatology, 5th ed, Ed Cassidy JT and Petty RE. Philadelphia, Elsevier Saunders, 614-629, 2005.
3) Dajani AS, Ayoub E, Bierman FZ, et al: Guideline for the diagnosis of rheumatic fever: Jones Criteria, updated 1992. Circulation 87:302-307, 1993
4) Veasy LG, Wiedmeier SE, Ormond GS, et al. Resurgenece of acute rheumatic fever in the intermountain region of the United States. N.Engl J Med 316: 421-427, 1987.
5) 宮崎 博 :リウマチ熱および小児溶レン菌関連疾患の各種溶レン菌抗体に関する研究.医学研究55: 200-204, 1985.
6) 藤川敏,矢花利捷,日比生秀一,他:Anti-deoxyribonuclease-B(ANDase-B)測定の臨床的意義と他のレンサ球菌抗体との関連について.リウマチ20:11-21, 1980.
7) Shulman ST, Ayoub EM. Poststreptococcal reactive arthritis. Curr Opin Rheumatol 14: 562-565, 2002.
1) 横田俊平・武井修治 監修:若年性特発性関節炎―トシリズマブ治療の理論と実際2009,メディカルレビュー社
2) 大関武彦・近藤直実 総編集:小児科学(第3版),医学書院
3) 加藤忠明 監修:小児慢性疾患診療マニュアル,診断と治療社
4) 加藤忠明・西牧謙吾・原田正平 編著:すぐに役立つ小児慢性疾患支援マニュアル,東京書籍
5) 駒松仁子 編集、松下竹次 監修:キャリーオーバーと成育医療,へるす出版
1) 塩沢俊一 著:膠原病学,丸善
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