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最終更新日:2008.11.18

肛門脱(脱肛)(こうもんだつ(だっこう))

執筆者: 竹末芳生

概要

排便時などに腹圧がかかると、肛門管粘膜が脱出する場合を肛門脱と呼ぶ。直腸全層が脱出する直腸脱とは病因、病態が異なる。肛門脱は内痔核が原因となることが多いが、ポリープなど他の先進部となる病変によっても起こりうる。脱出した内痔核、肛門粘膜が肛門括約筋によって絞扼され、嵌頓し戻らなくなった状態を嵌頓痔核と呼ぶ。

病因

[病因、病態生理]
肛門管粘膜下層には、血管、平滑筋(Treiz筋)、弾性結合組織により形成される肛門クッションがあり、いきみや不整な排便習慣により充血した肛門クッションにさらに肛門管から押し出す力が働き内痔核の症状となる。つまり肛門クッションの存在自体は正常だが、それがいきみなどの影響で症状を呈するようになった場合を内痔核と呼ぶ。これが繰り返され、内痔核を肛門管内に固定、支持しているTreiz筋や結合組織が断裂し、痔核のみならず周囲の肛門粘膜も一緒に脱出する状態が肛門脱である。全周が脱出することも稀ではなく、この場合、病態がまったく異なる直腸脱との鑑別が必要となる。内痔核自体は軽度でも粘膜脱出が主症状の病態もあり、欧米ではこれを粘膜脱として、通常の血管性痔核と区別している。嵌頓し戻らなくなった嵌頓痔核では外痔核(血栓性痔核)を合併する。

臨床症状

非脱出時には、排便終了時における無痛性の真っ赤な出血が主症状である。いきみ排便時に脱出するようになり、多くは自然に還納する(Grade 2)が、症状が進行すれば用手的還納も必要となり(Grade 3)、ときには常に脱出した状態となる(Grade 4)。脱出が慢性的になれば、粘液が下着に付着したり、便汚染が生じやすくなり、肛門皮膚周囲の掻痒や表皮剥離が問題となる。嵌頓痔核は急性発症で、 Grade3の内痔核が還納不能となった場合を呼ぶ。肛門外に内、外痔核が外反した状態であり、脱出部からの浸出液、浮腫を伴う激しい疼痛を訴える。血流障害も加わり、もし放置されれば潰瘍や壊死に進行する。尿閉も稀でない。感染の合併や、ときには2次性出血を生じる。

検査成績

還納性であれば、肛門指診、肛門鏡など通常の肛門検査を行い、内痔核やその他の病変の評価を行なう。嵌頓痔核では、乱暴に還納を試みたり、無理な肛門鏡検査などは避ける。脱出部の溝は放射状となっており、直腸脱は同心円状で鑑別上大切である。

治療

Grade 3以上の肛門脱は手術の適応となり、一般的には痔核結紮切除が行われるが、痔核そのものより粘膜脱が主な場合は余剰粘膜の切除も意識した処置が必要となる。最近では後述する自動吻合器を用いた痔核固定術(procedure for prolapse and hemorrhoid (PPH)、またはstapled hemorrhoidectopexy )が普及している。一方、嵌頓痔核においては治療方針に意見が分かれていたが、現在では氷嚢、下肢挙上などの保存治療は推奨されていない。発症後5日以内ならば積極的な治療が勧められ、麻酔下における用手的肛門拡張術または緊急痔核切除が行われる。用手的肛門拡張術はそれが奏功すれば症状は即座に解消され、翌日にも退院可能であるが、奏功率は50%前後で、時には悪化することもある。また括約筋損傷によるincontinenceも約10%に発症することが報告されている。そのため緊急痔核切除を推奨するものが多く、一見全周性で手術困難に思えても、浮腫組織は剥離が逆に容易で、通常3箇所の痔核切除で嵌頓痔核の処理は可能である。

最近の動向

PPHは初めの報告から約10年が経過したが、肛門脱にはよい適応となる。経肛門的に挿入した自動吻合器により痔核口側の直腸粘膜を環状に切除し、痔核を口側に吊り上げ固定し、脱出を防ぐとともに、痔核の支配血管である上痔動脈を遮断することにより、痔核血流を減少させる方法で、痔核そのものには処置を行わず、ある意味肛門クッション理論に沿った治療法である。手術時間は短縮化し、また肛門部知覚領域の処置は行わないため術後の疼痛が少ないこと、仕事復帰が早期に可能になるなどの長所があり患者満足度は高いが、術後出血の問題と、長期followにより痔核再発が痔核結紮切除よりも高率であることが報告されている。一般的にはgrade 3の内痔核で肛門外に著しい外痔核などの病変がない場合がよい適応となる。後述する直腸脱にはこの手技は用いない。

文献

Thompson WHE: The nature of hemorrhoids. Br J Surg 1975;62:542-552

Longo A: Pain after stapled haemorrhoidectomy. Lancet. 2000 ;356(9248):2189-90.

Eu KW, Seow Choen F, Goh HS: Comparison of emergency and elective haemorrhoidectomy. Br J Surg 1994;81:308-310

Jayaraman S, Colquhoun PH, Malthaner RA: Stapled hemorrhoidopexy is associated with a higher lonf-term recurrence rate of internal hemorrhoids compared with conventional excisional hemorrhoid surgery. Dis Colon Rectum 2007 July 27;[Epub ahead of pront]

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