糖尿病の運動療法 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.01

糖尿病の運動療法(とうにょうびょうのうんどうりょうほう)

Exercise therapy in diabetes

執筆者: 田村 好史 綿田 裕孝

概要

 2型糖尿病において、運動療法は食事療法、薬物療法と共に重要な治療方法の一つである。運動療法の目的の一つはインスリンの効き(インスリン感受性)を高めることにより血糖値を低下させることにある。そのため、運動を適切に行えば糖尿病を改善し健康を維持する有効な手段となりうる。その反面、運動には合併症の悪化などのリスクもあることより、適度な負荷や頻度を考慮すること、事前のメディカルチェックをすることが重要となる。

運動の種類、強度、頻度

 「いつでも、どこでも、一人でも」できる運動である歩行が勧められる。ただし、高度の肥満がある場合や、下肢の関節の負担が懸念される患者に対しては、ゆっくりとした歩行、プール歩行、自転車などの、膝関節に負担のかからない種目から選択し、負荷量を徐々に増加させる。安全性や効果、継続性を考えると、運動強度の目標としては最大酸素摂取量の50%程度が適度であると考えられる。

 しかし、最大酸素摂取量を測定することは施設的な問題から困難なため、一般的には心拍数や自覚強度を元にした運動強度の設定を行う。目標心拍数は50歳未満の場合は100~120拍 / 分以内、50歳以降は100拍/分未満とする。

 また、合併症や他の医学的問題を有さない場合には自覚的運動強度を用いた方がより簡便でなじみやすい。その場合の自覚強度としては「楽である~ややきつい」程度が指標となる。「きつい」運動は、血糖上昇を来たす可能性もあるだけではなく、大抵の場合は長続きしない場合が多い。

 頻度については基本的に毎日運動を行うことが望ましい。日常生活の一部である通勤、レジャー、家事などはすべて運動であり、そのような全体的な身体活動を上昇させることを目標とすると継続しやすい。1日に15~30分程度の歩行を2回、できれば毎日行うことを一つの目標にする。

 運動により増加したインスリン感受性は1−2日で運動前のレベルに戻ってしまうことより、2日に一度は多く活動することが望ましいと考えられる。

運動を続けるコツと注意点

 前述した運動の種類、強度、頻度を指標として運動を行うが、実際に「1日に15~30分程度の歩行を2回、できれば毎日行いましょう」ということを目標にしても、仕事などで忙しい場合は継続することは容易ではない。そのような場合に比較的継続しやすい運動パターンとしては、普段利用するバスの停留場を一つ手前で降り歩くようにする、休みの日でも1回は外出するなど普段の生活での活動量を増やすことを目指した方が継続しやすい。その場合、歩数計で1日 8000~10000歩を目標にし、目標値に満たない時は歩行による追加の運動を行うようにする。その他、一緒に運動するパートナーを持つことも運動継続のためのコツである。

 運動療法は合併症の程度や血糖コントロール状態によって制限を加えた方が良い場合もあるため、その開始に当たってはメディカルチェックを行い担当医と相談する。また、運動を開始しても体重が減らないからという理由で運動を中止してしまう場合がある。これは、運動で消費するエネルギーがそれ程多くないことと、運動により筋肉量が増えることが原因であると考えられる。また、運動したことにより多少食べても大丈夫であろうという間違えた考えが、逆に血糖コントロールを増悪させる場合もある。運動中に摂取しがちである糖質を多く含むソフトドリンク(スポーツドリンクなど)も血糖コントロールを悪くする要因となりうることがあり、注意が必要である。

運動療法を禁止あるいは制限した方がよい場合

 運動療法は糖尿病のコントロールに重要な治療法の一つであることは間違いないが、その時の合併症や血糖コントロールの状態によっては、運動を制限した方が良い場合がある。例えば、糖尿病のコントロール状態が極端に悪い場合(空腹時血糖値250mg/dl以上など)や、重篤な合併症を持っている場合 (増殖網膜症による新鮮な眼底出血がある、腎機能の低下、狭心症などによる心肺機能障害、高度の自律神経障害)などでは、運動が逆に病態を悪化させてしまう可能性がある。また、糖尿病の神経障害がある場合は、足の感覚低下により足病変を合併するリスクが高まる可能性があり、普段からの足底のチェックが勧められる。いずれにしろ、運動開始するにあたっては糖尿病治療の主治医や関連疾患の主治医と相談の上、運動の可否、程度について指導してもらうことが重要である。

参考文献

1) American Diabetes Association:最新糖尿病の運動療法ガイド(中尾一和監訳)medical view, 1997

2) 糖尿病治療研究会 編:新版 糖尿病運動療法のてびき、医歯薬出版、2001

3) 日本糖尿病学会 編:糖尿病治療ガイド、文光堂, 2006

(MyMedより)推薦図書

1) 日本糖尿病学会 編集:糖尿病専門医研修ガイドブック―日本糖尿病学会専門医取得のための研修必携ガイド,診断と治療社 2009

2) 井藤英喜 著:専門医がやさしく教える 血糖値&糖尿病,PHP研究所 2008

3) 福田正博 著:専門医が教える 糖尿病ウォーキング! (扶桑社新書) ,扶桑社 2009

4) 相磯嘉孝・秋里美 監修:おいしい!簡単!毎日の糖尿病レシピ,ナツメ社 2009
 

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