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執筆者: 土屋 滋
米国の統計による悪性リンパ腫の発生頻度は、9歳までの小児悪性腫瘍では白血病、脳腫瘍についで第3位、10歳から19歳では白血病、脳腫瘍を超え第1位となり、それぞれの年齢群の悪性腫瘍の10-16%、25-27%を占める。分類上は、大きくHodgkin’s disease(ホジキンリンパ腫、HL)とNon-Hodgkin’s lymphoma(非ホジキンリンパ腫、NHL)に分けられる。ホジキンリンパ腫の5年生存率は90%を超え、またNHLの生存率は限局型で90-95%、進展例でも60-90%と大幅に改善されており、後遺症なき治癒を目指した大規模な臨床研究が、わが国でも行われている。新WHO分類による疾患の位置づけを、小児期に発症する悪性リンパ腫に絞り、表1に示す。
先進国においては、15歳から20歳に発症の最初のピークがあり、50歳以降に第二のピークが存在する。米国のデータによると、20歳以下人口百万人あたりのHL発症頻度は12.1とされている。一卵性双生児の一方が発症すると、他方の発症のリスクが100倍に上昇することから、何らかの遺伝的背景の存在が示唆されている。またウィスコットアルドリッチ症候群や毛細血管拡張性小脳失調症などの先天性免疫不全症や後天性免疫不全症でも発症のリスクが高まる。また、EBウイルスが一部のHLの発症に関与していることが明らかにされている。
表1に示すように、HLは大きく古典的HLと結節性リンパ球優位型HLの2つに分類される。

両者ともにホジキン細胞あるいはReed-Sternberg(RS)細胞という数は少ないが、径15-45μmの巨大な腫瘍細胞の存在が腫瘍の本体であることで特徴づけられる。周辺の細胞の大多数が反応性の非腫瘍細胞であることは、他の悪性腫瘍とは大きく異なる。RS細胞は、リンパ節胚中心のB細胞が腫瘍性に、クローナルに増殖したものであることが証明されている。
結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)は、男女比5:1で10歳未満の小児に多く、その90%は末梢のリンパ節腫脹を主体とする限局型のものである。腫瘍細胞にはCD19、CD20等のB細胞抗原が発現しており、CD30がほとんどの症例で陰性であることが、古典的HLと異なる点である。生殖細胞系列でのFAS変異による自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)との関連が指摘されている。
まず臨床的に無症状のA症状と、1)原因不明の39℃以上の発熱、2)3か月以上の経過で体重が10%減少、3)盗汗を呈するB症状に分類される。 病期については、HLのAnn Arbor病期分類が広く使用されており、表2に示す。

なにもない場合とB症状を呈する場合とがある。
リンパ節腫脹、腹部腫瘤、縦隔腫瘤。
背炎症性変化、あるいは感染症の既往が認められず、持続性・無痛性、かつ拡大傾向のある鎖骨上窩あるいは頚部リンパ節腫脹を呈している患者では、リンパ節生検を考える前に、胸部X線写真を撮影する。リンパ節生検あるいは腫瘍生検による病理診断が、確定診断には必須である。通常の病理標本の他に、免疫染色あるいは分子遺伝学的検査などを施行するために、十分なリンパ節標本の採取が不可欠である。針生検は、通常行わない。画像診断も、病期の決定には欠かせず、超音波検査、MRI、CT、ガリウムスキャン、FDG-PETスキャンは重要である。骨髄穿刺も必要である。
小児HLは化学療法と、場合により低線量の放射線療法が有効であり、治癒率は約90%とかなり高く、治癒後のQOLの維持、晩期障害・二次がんの軽減が大きな課題となっている。治療方針は病期、診断時年齢、B症状の有無、肺門部リンパ節腫脹、リンパ節の大きさなどにより決定される。代表的な治療法の概略を表3に示す。男児の性腺機能の温存と心臓毒性に配慮された治療計画でとなっている。

NHLは、5歳から19歳の小児年齢層に発生する悪性腫瘍の8-10%を占める。HLのように10歳以降急増するようなことはなく、全小児年齢層にわたり、人口100万人あたり約10人と一定の発症率を示す。
小児のNHLは、成人のそれが限局性のものが多いのに比し、病気の進んだびまん性のものが多いことが特徴である。表4に示すように、大きく(1)前駆Tリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)・前駆Bリンパ芽球性リンパ腫(B-LBL)と,(2)成熟T細胞リンパ腫・成熟B細胞リンパ腫の2つに分類される。

成熟型はさらに、バーキットリンパ腫(BL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLBCL)、未分化大細胞リンパ腫(ANCL)にわかれる。発症頻度は、BL40%、LBL30%、DLBCL20%、ANCL10%となる。我が国のデータでは、T-LBLとB-LBLの比は、おおよそ2:1である。表4に示すように、小児NHLは、白血病と同じく、免疫グロブリンやT細胞受容体遺伝子を中心とする特徴的な染色体転座を持つものも多く、また、ALCLのように染色体転座によりALK、NMPキメラ遺伝子が新たに形成され、それらキメラ遺伝子中の活性化腫瘍遺伝子の発現が、腫瘍化の引き金になると考えられている。また、t(8;21)とBLといった、ある特定の染色体転座と、ある特定の病型のNHLという関係もこの表から読み取れる。
NHLもEBウイルスと密接な関係を持つ。一つはアフリカBLがEBウイルスにより発症すること、二つ目として、SAPに変異があるX連鎖リンパ球増殖症患者は、悪性リンパ腫を発症し易い疾患であるが、EBウイルス感染による致死性伝染性単核症に罹患しやすいことが知られている。
NHLの約70%が腸管、骨髄、中枢神経系への浸潤を呈する進行性のものであり、その進展速度は急速である。従来よりNHLの進展度を示すために、Murphyによる病期分類が行われており、それを表5に示す。

急激に発症し、しかも発見時には腫瘍はかなり進展していることが多い。発見時の主な腫瘍の存在部位は、腹部33%、縦隔26%、末梢リンパ節17%、頭頸部12%、皮膚・骨・卵巣・硬膜外・中枢神経系12%である。
腹部であれば、腫瘤の触知、発熱、腹痛、嘔気嘔吐、食欲不振、体重減少、腹水、小腸閉塞(腸重責症)。胸部であれば、前縦隔腫瘤、呼吸困難、咳漱、胸水、上大静脈症候群、上縦隔症候群、気道閉塞。縦隔腫瘍を呈するNHLは白血病化を起こしやすい。末梢リンパ節では、頚部、鎖骨上窩、腋窩部リンパ節腫脹が多く、鼠径部リンパ節からのリンパ腫は稀である。
リンパ節生検あるいは腫瘍生検を行う。ただし、上縦隔症候群・上大静脈症候群を合併している時は、気道閉塞から呼吸停止を起こしやすいので注意が必要である。腹水、胸水、髄液も診断を得るための重要な検体である。骨髄穿刺、骨髄生検も必須の検査である。得られた細胞の表面マーカー、染色体分析、キメラ遺伝子解析、免疫組織化学的染色からも診断上有益な情報が得られる。EBウイルス抗体価・EBウイルスゲノムの確認は重要な意味を持つことがある。
頭頸部にリンパ節腫脹を来す感染性疾患、縦郭の胚細胞腫瘍、腹部の神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、白血病など、良性・悪性の腫瘍形成性病変は鑑別診断の対象になる。
治療については、簡単に表6にまとめた。

我が国では、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)が、NHLのうち、LBL、DLBCL、ANCLについて治療研究をおこなっている。ホームページから情報を得ることができるので、興味のある方は、そちらを参照されたい。
T-LBL症例が、上縦隔症候群・上大静脈症候群を合併している時は、気道閉塞から呼吸停止を起こす危険性があることは、既に述べた。必要に応じ気道確保、プレドニゾロンの使用等を考慮する。BLを始めとしたNHLの治療でもう一つ忘れてならない合併症がある。腫瘍壊死症候群である。腫瘍負荷が多く、かつ増殖力の強いステージIIIとIVのBL、B細胞急性リンパ性白血病、T細胞白血病・リンパ腫症候群(T-ALL/LBL)に起こりやすく、急激な腫瘍の崩壊に伴う、急性腎不全、高尿酸血症、高リン血症、低カルシウム血症、高カリウム血症を来す。高カリウム血症は心停止を誘発する。十分な利尿、アロプリノールの使用、尿アルカリ化などを図り、また、治療初期には1日数回にわたる電解質、クレアチニン、尿酸などのモニターをしつつ、この合併症への対応をおこなうことが重要である。
NHLの新しい治療薬として、ヒト化CD20単クローン抗体であるリツキシマブが注目されている。すでに成人領域では有効性が証明されているが、小児領域での臨床研究はこれからである。さらに再発・難治性T-ALL/LBLに対しプリン誘導体であるネララビンが注目されている。再発症例に対しても高い奏効率が報告されており、市販が間近に迫っていることもあり、この薬剤を組み込んだ臨床研究の成果が期待されている。
わが国での認可が待たれている高尿酸血症治療薬、ウレートオキシダーゼは、尿酸を水溶性の高いアラントインに変換し腎臓からの排出を促進する。この薬剤は、腫瘍壊死症候群に対する対応法を大きくを変える可能性があり、臨床の現場では待ち望まれている薬剤である。
1)Percy CL et al. Lymphomas and reticuloendothelial neoplasms. In Ries LA, Smith MA, Gurney JG et al., eds.:Cancer incidence and survival among children and adolescences: United States SEER Program 1975-1995. NIH Pub. No. 99-4649., pp35-50, 2006.(also available online)
2)癌情報サイト http://cancerinfo.tri-kobe.org/
1) 太田茂 編さん:小児ガンのABC―一般の方、保護者、学生、医療者に向けたわかりやすい小児がんの話,三恵社 2008
2) 甲田英一・伊川廣道・山下直哉 他 著、中島康雄・前川和彦 監修:臨床研修医のための画像医学教室―小児科領域,医療科学社 2009
3) K.W. チャン・R.B. レイニー 編集、R.Beverly,Jr. Raney・Ka Wah Chan 原著、森鉄也 翻訳:小児がん―MDアンダーソン癌センターに学ぶ癌診療,シュプリンガージャパン 2008
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