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最終更新日:2010.02.22

心房中隔欠損症(しんぼうちゅうかくけっそんしょう)

atrial septal defect (ASD)

執筆者: 磯松 幸尚 益田 宗孝

概要

概要・病因


 全先天性心疾患の8-10%を占め,次に述べる心室中隔欠損症に次いで高頻度であるとされる.欠損孔の部位により,二次孔欠損型(70%),一次孔欠損型(20%),静脈洞型(10%)の3種類に分類される.

病態生理

 右房と左房を隔てる心房中隔に欠損孔があるために,通常は(左房圧が右房圧より高いので)左右短絡を生じる(厳密には右室のコンプライアンスが左室のコンプライアンスよりも高いこと,による).乳児期早期には右室コンプライアンスが低いために左右短絡が生じにくく,成長とともに右室コンプライアンスが高くなるに従い,左右短絡が増加する(図1A).


臨床症状

 多くの例は思春期まで無症状であり,学校検診時に心電図異常あるいは心雑音を指摘されて発見されることが多い.加齢とともに動悸・息切れ・易疲労性などの症状を認める頻度が増す.40歳以上では心房細動・心房粗動等の不整脈,僧帽弁逸脱,肺高血圧症,うっ血性心不全などを合併することが多いとされる.

検査成績

1)経胸壁心エコー検査が必須である.心房中隔の断裂像として心房中隔欠損孔が認められる.カラードプラー法により欠損孔を通して左房から右房に流れ込む短絡血流が検出される.更には,肺体血流比・推定右室収縮期圧等も算出可能である.

2)経食道心エコー検査(幼小児では全身麻酔が必要になることもある)では,経胸壁心エコー検査では診断が困難な多孔性欠損或いは静脈洞欠損の診断に有用である.また欠損孔の位置・欠損孔周囲の辺縁組織の有無や長さの評価等,治療法の決定にも有用である.

3)心臓カテーテル検査では肺体血流比・左右短絡率の算出,肺動脈圧の測定,肺血管抵抗の評価が重要である.また本症に肺静脈還流異常の合併が疑われた場合には,診断に有用である.

治療

 外科的治療(手術による欠損孔閉鎖)とカテーテル治療がある(後者については下記の【最新の動向】を参照されたい).人工心肺を用いた体外循環下に心停止として,欠損孔を閉鎖する.幼小児例では欠損孔の直接閉鎖が,成人例ではパッチ閉鎖が選択されることが多い(図1B).パッチの材質は自己心膜またはゴアテックスを用いる.
 我国では通常小学校入学前の手術が一般的であるのに対して,欧米では2-3歳での手術が多い.就学前の5-6歳では体重が15-20 kgに達していることが多く,そのためにいわゆる無輸血手術(他家血を使用しない)が80-90%の症例で可能になることが理由の1つである.
 成人例に於いて心房細動・粗動を合併した症例に対しては欠損孔閉鎖に加えてメイズ手術(心房細動・粗動に対する手術)を行う場合もある.また,手術創をなるべく小さくする小切開手術を積極的に採用する施設もある.

図1B


予後

 心房中隔欠損症単独例における手術成績は,日本胸部外科学会の調査によると2001-2005年において0.2から0.4%の術後病院死亡率(理由の如何を問わず同症に対する手術後に死亡した場合)が報告されている.

最近の動向

 2006年4月からカテーテル治療が健康保険適用になった.カテーテル治療は,septal occluderと呼ばれる欠損孔閉鎖専用の装置を欠損孔に留置することにより,欠損孔閉鎖を行うものである.一般的には二次孔欠損型が対象となるが,全ての二次孔欠損症例が適応になるわけではない.欠損孔の大きさ・位置や欠損孔周囲の辺縁組織が閉鎖装置を留置するのに十分な余裕があるか否か,等によってカテーテル治療の適応が決定される.

執筆者による主な図書

1) 安井久喬 監修,角秀秋・益田宗孝 編:先天性心疾患手術書,Medical View
 
2) 高本眞一 監修,角秀秋 編:
小児心臓外科の要点と盲点 (心臓外科Knack & Pitfalls),文光堂
 
3) 新井達太 編:心臓外科,医学書院
 
4) 門間和夫 編:ガイドラインに基づく成人先天性心疾患の臨床,中外医学社
 
5) 岡田昌義 監修,松田暉・藤原巍・安倍十三夫・今村洋二・北村信夫 編:心臓血管外科の最前線,先端医療技術研究所
 
6) 四津良平 監修:心臓血管外科テクニック,メディカ出版
 
7) 矢崎義雄・島田和幸・井上博・永井良三 編:別冊・医学のあゆみ 循環器疾患,医歯薬出版
 
8) Yasui H, Kado H. Masuda M, ed:Cardiovascular Surgery for Congenital Heart disease,Springer

執筆者による推薦図書

1) 龍野勝彦・重松宏・幕内晴朗・四津良平・安達秀雄 編:心臓血管外科テキスト,中外医学社
 
2) 川島康生 編:心臓血管外科,朝倉書店
 
3) 小柳仁・黒澤博身 編:心臓血管外科手術のための解剖学,Medical View

4) Stark J, de Leval M, ed.:Surgery for congenital heart defects,Saunders
 
5) Kirklin JW, Barratt-Boyes BG, ed.:Cardiac Surgery』 Churchill Livingstone

(MyMedより)その他推薦図書

1)高橋長裕 著:図解 先天性心疾患―血行動態の理解と外科治療,医学書院 第2版 2007

2) 中澤誠 編集:先天性心疾患 (新目でみる循環器病シリーズ),メジカルビュー社 2005

3) 坂本喜三郎 監修,四津良平 総監修:心臓血管外科テクニック4 先天性心疾患編 DVD付 (DVD Book CIRCULATION VISUAL BEST),メディカ出版 2009

4) 門間和夫 著:こどもの心臓病 (お母さんシリーズ (4),日本小児医事出版社 改訂第7版 1999

5) 菅野敦・橋本創一・玉井邦夫 編集,池田由紀江 監修:ダウン症ハンドブック,日本文化科学社 2005

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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