悪性線維性組織球腫(軟部) - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

悪性線維性組織球腫(軟部)(あくせいせんいせいそしききゅうしゅ(なんぶ))

malignant fibrous histiocytoma (MFH)

執筆者: 秋山 達

概要

 悪性線維性組織球腫は、骨ならびに軟部の両方に発生する原発性悪性腫瘍です。「肉腫」と呼ばれる筋肉や骨などに発生する「がん」の仲間です。肉腫の詳しい説明については骨肉腫の項を参照ください。骨と軟部に発生するものでは振る舞いが異なります。
最初に軟部に発生するものを説明いたします。
 軟部悪性線維性組織球腫は40歳以上の方に多く発生する高悪性肉腫です。性差は若干、男性に多いようです。悪性軟部腫瘍の中で最も多いといわれている腫瘍で、人口10~50万人に1-2人がかかるといわれています。最も発生頻度が高いといわれている胃がんが、人口10万人に84.6人(2001年)発生すると報告されていることから考えると、多いとはいえ、非常にまれな腫瘍であるといえます。発生部位は下肢の深部が多いとされています。初診時に約5%の症例で、画像上、明らかな転移性病変を持っているといわれています。転移性病変がある場合は、予後が悪くなります。

病因

 腫瘍が発生するおおもとの細胞や原因については、まだ解明されていません。放射線照射を行った部分や、まれな例としては、潰瘍形成部、瘢痕部などに発生することがあるといわれています。

臨床症状

 初発症状は、局所の腫張(はれ)のみであることが多いです。腫瘍が非常に急速に成長する場合や、炎症反応を引き起こす型のものは疼痛を引き起こすことがありますが、通常は疼痛を伴いません。

診断・鑑別診断

 悪性線維性組織球腫が疑われる場合、画像検査を行った上で切開生検術を行います。画像検査は単純レントゲン、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像)を行います。これらの画像検査は、手術方法の決定や化学療法の効果判定のために必須です。  
 PET-CT(陽電子放射断層撮影-CT)を行って、局所ならびに全身の評価をする場合もあります。血管造影を行う施設もありますが、当科ではMRIをはじめとする他の画像検査技術が発達したため行っておりません。以上の検査を行った上で、病巣部から診断を確定するために組織小片を手術により切り出します。この手術を切開生検術といいます。切開生検術ではなく、外来で針生検術を行うこともあります。どちらの方法を行うかは腫瘍がどこにあるかということと、画像所見などから決定されます。悪性線維性組織球腫の診断には専門的な知識と経験が必要なので、骨軟部腫瘍を専門に扱っている病院で診断されることをお勧めいたします。

治療

 悪性線維性組織球腫をはじめとする肉腫治療の原則は、手術(治癒的広範切除術)を行うことです。悪性線維性組織球腫自体の症例数が少ないため、化学療法の効果について、はっきりとしたエビデンスはありませんが、行う施設が多いようです。放射線療法は補助的に使う場合が多いようです。当院では手術と化学療法を組み合わせて行い、必要に応じて放射線療法を追加いたします。患肢温存術(腫瘍がある手や足を残す手術)を行う一般的な治療法の場合、手術前に3回程度の化学療法を行い、手術後、さらに3回程度の化学療法を行います。化学療法のための入院は一回3週間程度、手術を行うときの入院は手術後にリハビリと化学療法を続けて行うため、6週間程度の入院となります。

手術:

 悪性線維性組織球腫は肉眼的に確認できる腫瘤の周囲に腫瘍細胞がしみこんでいるため、手術では、一見正常な周囲の組織を含めて大きく切除する必要があります。この手術法を「治癒的広範切除術」といいます。治癒的広範切除術を行った場合の再発率は通常10%程度といわれています。血管や神経が巻き込まれている場合などは、切断せざるを得ない場合もありますが、患肢を温存する手術が現在は主流になっています。欠損した骨や関節部分は人工関節などで再建します。再建の方法にはいろいろな方法があり、その方法ごとに長所と短所がありますので、個々の症例ごとに適切な方法を患者様と相談の上で決定します。また、軟部肉腫全体にいえることですが、MRIで確認すると皮膚の下を、腫瘤の直径から想像されるよりもはるかに広がっている場合があります。当然、この広がっている部分に周囲組織をつけて切除する必要があり、皮膚が大量になくなります。皮膚がないと体を外界から守るバリアーがなくなることになります。その上、化学療法や放射線療法ができなくなります。このような場合は、体のほかの部分から血管をつけた皮膚を持ってきたりして、なくなった部分を補う必要があります。この方法を「皮弁形成術」といいます。皮弁形成術は特殊な技術が必要であり、確実に皮弁を生着させるためには経験を要します。皮弁形成術が必要な場合、当科では形成外科のグループとチームを組んで行います。良好な成績が得られているので、安心して化学療法や放射線療法を行うことができます。

化学療法:

 骨肉腫やユーイング肉腫などの一部の肉腫を除いて、肉腫治療における化学療法の治療効果に対するエビデンスはありません。これは肉腫の種類が非常に多い上に、肉腫一種類あたりの症例数が極めて少ないからです。しかし、悪性線維性組織球腫をはじめとする高悪性度肉腫に対して化学療法は有効性があると、経験上、感じていて、化学療法を行っている施設は多いです。悪性腫瘍は発生した場所で大きくなるのみならず、他の臓器に転移を生じます。主に肺などの主要臓器に転移し、放置すれば致死的となります。患肢にある腫瘍は手術で切除可能ですが、完全に治療するためには目に見えない転移巣まで制御する必要があります。CTやPET-CTで明らかな転移が確認されていない場合でも血液の流れなどにのって身体の他の部位に微小転移巣を形成している可能性は否定できません。微小転移巣の治療は抗悪性腫瘍剤を使った「化学療法」でのみ可能です。化学療法剤は腫瘍の大きさが小さいほどよく効くので画像上明らかな転移巣が見つかっていない時点で行う必要があります。

放射線療法:

 放射線は当てる量を増やすにしたがって、強く腫瘍の成長を抑えます。放射線の量を増やしていけば、局所において腫瘍の成長をある程度抑えることはできます。しかし、肉腫は放射線に反応しにくく放射線療法のみでは根治は難しいとされています。また、放射線は強く当てれば当てるほど様々な問題を起こすことが知られています。一番問題になるのは放射線照射部に新たな二次性のがんが発生する可能性があることです。そのため、最初から放射線照射のみを行うことは余りありません。われわれは手術不能な症例や手術の補助療法として放射線照射を行います。当てる線量は腫瘍ならびに全身の状態や、どこに腫瘍があるかにより決定されます。

予後

 悪性線維性組織球腫は一般的には極めて悪性度が高く、5年生存率は50~60%とされています。死亡原因は肺転移によるものが一番多いです。

(MyMedより)推薦図書

1) 森岡秀夫 編さん、戸山芳昭・大谷俊郎 監修:骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4),羊土社 2009

2) 日本整形外科学会骨・軟部腫瘍委員会:整形外科・病理悪性軟部腫瘍取扱い規約,金原出版 2002

3) 岩本幸英 編集:骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls),文光堂 2005
 

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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