胆管癌 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

胆管癌(たんかんがん)

bile duct cancer

執筆者: 木村 文夫 宮崎 勝

病因

 胆管癌の病因は他の胆道癌と同様に明らかにされていない。拡張型の膵・胆管合流異常には胆管癌の合併が高率に認められる。発癌機序としては慢性炎症が癌遺伝子の発現を誘導する可能性が想定されている。またPSCの 5-10%に胆管癌を合併すると報告されている。

臨床症状

自覚症状


 初発症状は黄疸が多く、掻痒感、軽度の上腹部痛、体重減少などが半数以上の症例で認められる。入院時には多くの場合黄疸を伴い、体重減少、食思不振などもみられる。無黄疸無症状症例では検診や他疾患治療中の肝機能障害を契機に発見されるとの報告がある。

他覚症状


 他覚的所見としては肝および胆嚢の腫大を認めることが多いが、原発巣を触知することはほとんど無い。

検査成績

 血液生化学黄疸を伴う症例では肝機能検査でAST, ALTの軽度上昇とともにT-Bilirubin, Al-P, γGTPの中度から高度上昇を示す。腫瘍マーカーではCEA, CA19-9の上昇を伴うことが多い。

診断・鑑別診断

 画像検査胆管癌の診断では癌の占拠部位と胆管に沿った水平方向への進展と垂直方向への進展(肝動脈、門脈、肝、膵)をとらえる必要がある。

腹部超音波検査(US)


 胆道癌を疑った場合に最初に行うべき画像診断は腹部超音波検査である。特に、肝内胆管拡張をとらえることは容易であり、閉塞部位を推定することが可能となる。

CT


 造影CTでは、胆管壁の血流動態の評価が可能であり主占居部位の診断に有効であるが、精密な進展度、深達度診断は困難である。MDCTによるMPRは癌の垂直進展の診断に有用である。



 肝門部胆管癌症例のMPR。肝門部の腫瘤と門脈右枝への浸潤が明瞭に描出されている。

MRCP


 MRCPは、胆管・膵管の全体像をとらえることが可能で、胆管の狭窄部位の同定や進展度の診断、膵・胆管合流異常の有無の確認、膵癌との鑑別に有用である。



 下部胆管癌症例のMRCP。

ERCP, PTBD


 ERCP, PTBDは結節もしくは結節浸潤型胆管癌の水平浸潤範囲の診断に有用であるが、偶発症のリスクを伴 い、手術可能症例においても直接胆道造影診断は必ずしも必要とされない。

EUS、IDUS、胆道鏡


 EUSは非侵襲的でありMRCP、CTの補助診断として有用である。IDUSはERCPおよびPTBD施行例であれば胆管へのルートを利用して施行 することが可能であり、進展度診断(血管浸潤の判定)に有用な診断法である。胆道鏡検査は胆管水平方向の進展度診断に有用である。

PET


 胆管癌診断におけるPETの役割については定まった見解は得られていないが、遠隔転移の診断についての有用性は報告されている。

図1 肝門部胆管癌症例のMPR。肝門部の腫瘤と門脈右枝への浸潤が明瞭に描出されている。

図2 下部胆管癌症例のMRCP。

治療

 中下部胆管癌に対しては膵頭十二指腸切除が基本術式になる。肝門部、上部胆管癌に対しては癌の進展範囲に応じた肝葉切除+胆嚢・胆管切除が基本術式となる。高齢者などで耐術困難と考えられる症例では、縮小手術として胆嚢・胆管切除を考慮すべきである。



 膵頭十二指腸切除では術前胆管ドレナージは必ずしも必要ではない。しかし、肝葉切除を伴う胆嚢胆管切除では術後肝不全危険性があり、術前胆管ドレナージや術前門脈塞栓術が施行されている。



 肝転移、遠隔転移、腹膜播種を伴うものは切除不能と考えられ、胆道ステント留置に加えて放射線・化学療法が行われている。

予後

 非切除例では長期予後は期待できない。全国胆道癌登録調査報告(1988-1997年、 J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002; 9:569-575)によると、胆管癌切除後の5年生存率は26%と報告されている。肝門部胆管癌および上部胆管癌におけるStage別切除後5年生存率はStage I 47%, Stage II 30%, Stage III 19%, Stage IV 12%、中下部胆管癌ではStage I 54%, Stage II 33%, Stage III 20%, Stage IV 15% と報告されている。治癒切除、リンパ節転移の有無、神経周囲浸潤の有無などが予後を規定する。

最近の動向

 切除不能進行胆道癌に対する化学療法では、塩酸ゲムシタビンおよびテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤 (TS-1)の保険適応が承認された。術後補助化学療法としての有効性に関しては今後の検討課題である。

参考文献

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(MyMedより)推薦図書

1) 辻井正・神代正道・二川俊二・沖田極・小林健一 編集:肝内胆管癌―基礎から臨床まで (肝・胆・膵フロンティア),診断と治療社 1999

2) 胆道癌診療ガイドライン作成出版委員会 編集:エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン,医学図書出版 2007

3) 糸井隆夫 編集:胆膵内視鏡の診断・治療の基本手技,羊土社 2008
 

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