MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。


meconium ileus
執筆者: 内田広夫
メコニウムイレウスとは膵嚢胞性線維症を原疾患とする粘調な胎便による回腸の閉塞である。1938年にAndersen1が“cystic fibrosis of the pancreas”の症状の一つとして報告した。
膵嚢胞性線維症は第7染色体上のcystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)遺伝子の突然変異によるもので常染色体劣性遺伝を示す2。上皮細胞でcAMP依存性のクロール輸送の異常が起きるため、水、電解質輸送に異常が起き、膵臓、汗腺、肺、消化器などの外分泌腺の異常を伴う。そのため、脂肪吸収不全、脂肪肝、膵炎、膵外分泌能の低下、耐糖能異常、粘調な分泌物が気管内に貯留することでおきる肺炎、多量の発汗による脱水、腸粘液腺の異常などが起きる。胎便が異常に粘調となり腸閉塞が引き起こされる、メコニウムイレウスは膵嚢胞性線維症の約10%で起きると報告されている3。膵嚢胞性線維症の発生には人種差があることが知られており、Caucasianでは3000出生に1例といわれており、もっとも多い遺伝性疾患の一つである。東洋人にはまれな疾患で30000人に1例である。
正常な胎便はその80%が水分で、残りはムコ蛋白、ムコ多糖類とビリベルジンにより主に構成されているが、消化酵素を含む膵液の分泌不全により胎便内の蛋白が分解されず、また、腸管粘膜から分泌される粘液も異常に粘調なため、胎便は粘調で硬くなり、腸管内に停滞し腸閉塞となる。
生後間もなく腸閉塞症状で発症する。胎便の排泄がみられず、胆汁を含んだ嘔吐がみられる。 腹部膨満も著明にみられる。肺合併症が新生児期に現れることはあまりない。
著明な腹部膨満がみられ、触診では腹部に固い腫瘤、胎便を触知できることもある。
腹部X線検査:小腸が著明な拡張し腸閉塞を示唆する像が見られる。腸管内で胎便とガスが混合されて泡沫状の気泡像(soap bubble effect)を示すことがある。小腸の拡張像が著しいにもかかわらず、air fluid levelが見えなければメコニウムイレウスが考えやすい。
microcolon像を示すことが多い。
腹部超音波検査:腸閉塞の所見、すなわち嚢胞状に拡張した小腸や拡張した小腸内に液体が貯留しているため小腸のKerchringが認められるkey board signなどがみられる。また、硬い胎便が腸管内に腫瘤として認められることもある。
新生児に腸閉塞が見られた場合には疑うべき疾患である。本症は膵嚢胞性線維症の合併症の一つであるため、まずは確定診断に必要な項目を検討する。膵液分泌の有無、膵酵素異常、トリプシン値の低下、肺合併症の有無などがあるが、汗の電解質が最も診断価値があり、Cl>60mEq/lで診断される。しかし、新生児の汗は採取が困難なため確定診断は難しい。
鑑別診断としては回腸閉鎖症、Hirschsprung病、Meconium plug syndromeなどがあげられる。
回腸閉鎖症ではほぼ同様の症状を示し、レントゲン写真、注腸でも鑑別しがたい場合がある。
Hirschsprung病の全結腸型も鑑別診断が難しく、直腸肛門弛緩反射、直腸生検を行っても完全な鑑別は難しい。
Meconium plug syndromeでは腹部膨満、胆汁性嘔吐、胎便排泄欠如などメコニウムイレウスと同様の症状を呈するだけではなく、レントゲン写真もほぼ同様である。時に壁内気腫像様のレントゲン像が見られるが、これは胎便と結腸壁の間に空気が入り込んだもので、生後早期にこのような像が見られた場合は、壊死性腸炎を疑うより、Meconium plug syndromeが考えやすい。
注腸造影では胎便と結腸の間に入り込んだ造影剤で二重造影様の所見がみられる。また、胎便が排泄された部位が細く造影され、あたかもnarrow segmentのようにみえることもある。水溶性造影剤で胎便が一度洗い流されると再発することはなく完治する。
Meconium ileusとMeconium plug syndromeをまとめて胎便関連性腸閉塞といわれるが、Meconium ileusとは膵嚢胞性線維症という基礎疾患がある場合に胎便が小腸を閉塞した状態をさし、何の基礎疾患もなく粘調な胎便で腸閉塞となる場合は meconium plug syndromeと診断され、後者では一度胎便を排出すれば腸閉塞が再発することはほとんどない。

(図1)著明な腹部膨満を認め、拡張した小腸が腹部から観察できる。

(図2)拡張した小腸を認め、回腸で途絶している。注腸ではmicrocolon像は認めない。

(図3-1)胎便で閉塞している部位で明らかなcaliber changeを認める。

(図3-2)caliber changeのすぐ口側で切開し、粘性の高い胎便を摘出し回腸瘻を造設した。その後経過は順調で、膵嚢胞性繊維症は否定的で回腸瘻閉鎖手術を早期に行えた。
メコニウムイレウスに対する治療はまずは診断と治療を兼ねて非イオン性造影剤(オムニパークやイオパミロンなど)を用いて注腸造影を行う。以前はガストログラフィンを希釈して用いることが多かったが、その際に劇症型の腸炎や脱水が引き起こされることが報告されており、ガストログラフィンの使用に関してはいまだに論議がある。
造影剤にアセチルシステインなどの粘性を下げる薬を混ぜることでより胎便排泄により効果があることも言われている4。
注腸造影により胎便が排泄されれば腸蠕動が回復することが多いが、腸閉塞を再発することもある。
保存的治療が奏功しない症例に外科的治療が選択される。術式としては、画一的な方法はなくその場に応じた治療が求められる。腸瘻造設、腸切開および胎便洗浄、腸切除端端吻合など多くの方法が行われている。手術により腸閉塞が改善しても、基礎疾患があるため十分な観察、治療が必要である。
1970年代でも手術後生存率は60%前後とあまり芳しいものではなかった。現在は全身管理技術の向上、呼吸器合併症の治療の進歩から90%以上の術後生存率がみられているが5、イレウスの再発などがみられている。膵嚢胞性線維症自体の治療も改善したとはいえ、平均寿命は約37歳であり、いまだに治療に関して問題は山積みとなっている。
1)Andersen DH: Cystic fibrosis of the pancrease and its relation to celiac disease; a clinical and pathologic study. Am J Dis Child 1938 56:344
2)Riordan JR, Rommens JM, Kerem B, et al: Identification of the cystic fibrosis gene: cloning and characterization of complementary DNA. Science. 1989 245:1066-73
3)Munck A, Gerardin M, Alberti C, et al: Clinical outcome of cystic fibrosis presenting with or without meconium ileus: a matched cohort study. J Pediatr Surg. 2006 41:1556-60
4)Burke MS, Ragi JM, Karamanoukian HL, et al: New strategies in nonoperative management of meconium ileus. J Pediatr Surg. 2002 3:760-4.
5)Escobar MA, Grosfeld JL, Burdick JJ, et al: Surgical consideration in cystic fibrosis; a 32-year evaluation of outcomes. Surgery 2005 138:560-71
情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。