上腕骨顆上骨折 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.29

上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)

supracondylar fracture of the humerus

執筆者: 芳賀 信彦

概要

上腕骨顆上骨折は小児の肘周辺骨折の中で最も頻度の高いもので、転落や転倒により生じる。一般に診断は容易であるが、適切な治療を行わないと後遺障害を残すことがあり、整形外科医にとって重要な骨折である。

病因

転落や転倒などで、肘過伸展位で手をついた場合に生じることが多い。

病態生理

肘過伸展位で手をつくと、骨皮質が薄く、また骨の断面積も小さい上腕骨の顆上部にストレスが集中し骨折を生じる。通常末梢骨片は伸展位をとり、程度が強い場合には後内側へ転位し、回旋を伴う。

臨床症状

自覚症状


肘関節の周囲に疼痛があり、肘を動かそうとしない。


他覚症状


肘関節の周囲に腫脹があり、時間が経過した骨転位の強い例では皮下血腫を認める。

検査成績

X線検査では上腕骨の顆上部に骨折線があり、末梢骨片は後内側に転位することが多い。


(図1)上腕骨顆上骨折

診断・鑑別診断

診断は受傷歴、臨床所見、X線検査による。転位の大きい例では診断は容易である。転位の少ない例は、肘内障との鑑別を必要とする。肘内障は親が子どもと手をつないで歩いていて、転びそうになったなどの理由で急に腕を引っ張った、といった受傷機転で発生し、橈骨頭を固定している輪状靭帯がずれて、上腕骨との間に一部がはさまる状態を指す。痛みのために患児は、肘を伸ばし前腕を回内位にしたまま動かそうとしない。肘内障の整復操作を行っても痛みが消失しない場合は、X線所見で転位の少ない肘周辺骨折を鑑別する。疼痛や腫脹がはっきりしているのにX線で上腕骨顆上骨折を認めない場合は、上腕骨外顆骨折や遠位骨端線離開(図2)を考える必要がある。骨端線離開では上腕骨遠位骨幹端部に対し、橈尺骨近位が内側へ転位してみえる。


(図2)上腕骨遠位骨端線離開

上腕骨顆上骨折には神経障害や血流障害を合併することがある。神経障害は骨折部での橈骨神経、正中神経、尺骨神経麻痺のいずれも生じるため、注意深く診断する。血流障害は、骨折部での上腕動脈の障害と、コンパートメント症侯群のいずれも生じる。放置するとフォルクマン拘縮を生じるので必要な治療を遅れずに行う。

治療

転位が少なくアライメントに問題がない場合は、整復操作を行わずにギプスまたはシーネで固定する。中等度の転位例では、徒手整復操作を行ってギプス固定、徒手整復後経皮的ピンニング、牽引による治療のいずれかを行うことが多い。徒手あるいは牽引により整復できない症例では観血整復を行う。

いずれの治療法をとるにしろ正確な整復位を目標とする。骨折部で内反・内旋・(伸展)の転位が残存しやすく、内反肘を残すことがある(図3)。


(図3)上腕骨顆上骨折後の右内反肘

予後

適切な治療を行えば外見、機能的予後ともに良好である。前述の神経障害、血流障害、内反肘には十分注意する必要がある。

最近の動向

中等度から高度の転位例に対して、早期に全身麻酔下に徒手整復操作を行い、整復位が得られたら経皮的ピンニング、得られなければ観血整復を行うという傾向がある。これは正確な整復位を目指すという意図の他、治療期間(入院期間)を短縮するという意味があると思われる。

執筆者による主な図書

1) 五十嵐隆 編集(芳賀信彦、共著):目でみる小児救急,文光堂

2) 藤井敏男 編集(芳賀信彦、共著):小児整形外科の要点と盲点,文光堂

3) 越智隆弘 総編集、藤井敏男・中村耕三 専門編集(芳賀信彦、共著):最新整形外科学大系 24巻 小児の運動器疾患,中山書店

4) 日本整形外科学会小児整形外科委員会 編集(芳賀信彦、共著):骨系統疾患マニュアル 第2版,南江堂 5) 越智隆弘 総編集、中村利孝・吉川秀樹 専門編集(芳賀信彦、共著):最新整形外科学大系 21巻 骨系統疾患、代謝性骨疾患,中山書店
 

執筆者による推薦図書

1) Spranger JW, et al:Bone Dysplasias, 2nd ed,Oxford

2) Morrissy RT, Weinstein SL:Lovell and Winter’s Pediatric Orthopaedics,Lippincott

3) Herring JA:Tachidjian’s Pediatric Orthopaedics, 4th ed,Saunders

(MyMedより)その他推薦図書

1) 井上博 著:小児四肢骨折治療の実際,金原出版 改訂第2版版 2002

2) 岩本幸英 編集:小児の骨折・外傷―手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction) ,メジカルビュー社 2007

3) 安田和則 編集:下肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction―整形外科手術の新標準),メジカルビュー社 2007

4) 竹内義享・沢田規 著:写真で学ぶ四肢関節のキャスト法,医歯薬出版 2004

5) 福 国彦・丸毛啓史 編さん:救急・当直で必ず役立つ!骨折の画像診断―全身の骨折分類のシェーマと症例写真でわかる読影のポイント,羊土社 2008

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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